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>>ミスアマノ
「お願いします、黒の陣営が、島の平和が明日で終わってしまう可能性があります。考え直してください。因縁を忘れていた身でおこがましいのも分かっていますが、安寧が戻らないことがわかって受け入れる訳には行きません。お願いします、時間をください……」
レリックを壊されたのだ。
マスジョウにとってそれは、友達を殺されたのと同義なのだった。
一番かわいそうなのは、ピョン太なんだろう。
ずっと自分の支えでいてくれたのに、知らない間にゴミとして捨てられて。
もう一度生まれ変わったと思ったら、今度は突然、ガラスケースに入れられて見世物にされ、最後にズタズタにされたのだ。
マスジョウが守ってやることも出来ず。
殺した者たちをカンタンに許してしまう。
ピョン太の気持ちはどうなるんだろう。
そう思うと、スッキリしていたハズの胸に少し影が差した。
自分のレリックを粉々にしたいと望む人もいたけれども。
もう一度撫でてあげたかった。
>>侵略者
「……ちょっとォ、レリックについてお願い聞いてくれるンならダメもとで言うわよ。
アタシのピョン太には、それ以上酷いことしないでね。その子、モノじゃないから。アタシがそっちに居たらお墓作ってあげたいくらいなんだから」
野次馬の終わりが近付いている気配を感じる。
結果はどうであれ生徒達の、参加者の、ヨダカの傷がこれ以上深くならないことを願いながら、男は重く頑丈に施錠していた『澤田 真司』の記憶の鎖を解く覚悟を固めることにした。
「あー、違うわ」
頭をガリガリと掻きむしった。
「あの子を殺したのはアタシなんだった。誰もあの子を殺してない。アタシの選択であの子を殺したんだったわね」
急に頭を抱えてしゃがみこむ。
本当に、唐突に、辛くなってきた。
小学生のとき、学校で嫌なことがあると一緒に寝た。
中学生のとき、声変わりをからかわれてこっそり涙を流したとき、ピョン太の耳が涙をぬぐってくれた。
高校生のとき、受験でノイローゼになったときもピョン太を撫でるともう少し頑張ろうという気になれた。
大学生のとき、初めての一人旅にもこっそり付いてきてもらった。
刑事になって、仕事が辛いとき、携帯に撮ったピョン太の写真を見て癒されていた。
「ゴメン。ゴメンね」
本当に急に、涙がこぼれてしまった。
>>ヨダカ
[それは、話し合いが終わった夜のこと。
食堂の扉を開いて、マリアは中へと入りました。]
ヨダカさん、こんばんは。
今、少しいいですか?
[朝食を食べたあと、少し外に出ていたのです。
晩ご飯は家で済ませて、ふと思い出して。もう一度、ここへ戻ってきました。
もし、店主がそこにいなければ、扉を閉めて食堂を後にしたことでしょう。]
「…タニグチちゃんについて、黒の陣営では?と思っていましたが、クラタ氏がなぜ昨日ではなく今日わたしの事を偽物だと言ったのか、という点・なぜノギ氏が狙われたのかわからないという点でした。現在まとめていた所までをお伝えします。」
「ではまず、彼女の本質を見たいという人物1日目。ニシムラ氏とハフリベ氏。これは仲が良いからという事なのでしょう。ハフリベ氏は因縁も着いていることですし、ルークなら見れれば見たいところ。」
「ミズタニ氏を挙げることで黒の陣営同士なら、初めに出すことのメリットはあるでしょうか。確かに、彼女が挙げたことにより他のルークの方に見てもらえる可能性はあります。実際、ミズタニ氏はアリアケサラガールの所へ回りました」
「しかし、自分の希望する人が他のルークの方へ回ることを目的としているならば、決定が下った時に反対するでしょうか。退場して欲しい、と言っていた人2人が当たったからということでも反発はありますが、ここは本物らしい行動です。」
「レリックを砕きたいという人のうち、本質をみたのはニシムラ女子。静かだったという理由は“怪しくないところ”これはノギ氏と相対しての結論でしょう。」
>>+111 ナガオ
「ムキムキ……」
ボディビルダーよろしくムキムキマッチョな先輩を想像してしまい一瞬思考が停止してしまう。
「……、はい、かっこいいです」
似合ってるなんて言われればちょっと楽しげに声を揺らして、アンダーソン、なんて呼びながら。
きっと。こんなことになっていなければ、彼と一緒にゲームで遊ぶこともなかったのだろう。それが良かったのか悪かったのか、自身の心臓たるレリックを壊された、不安定で朧げな存在の自分にはもう何も言うことすら出来ないけれど。
彼の。アンダーソンの言葉に。
かけがえのないこの時間だけは。どうか消えないでほしいとどうしようもなく願ってしまった。
>>+119 ニシムラ
彼女の視線に、蛇に睨まれた蛙のように肩は跳ね身を竦める。
「おわ、び……えと、その…、女の人には花を贈ると、良いって、聞いて………。寮に…チューリップが咲いていて、だから、持っていこうと、して。でも………もう……すみません、手元に、なくて…」
申し訳なさそうに視線を彷徨わせる。
確かに彼女へと渡そうと思っていたチューリップと勿忘草は、今もイーハトーブに飾られているのだろうか。
決定が決まる、少し前のことだろう。
>>+116 ニシムラ
「あら、それはスゴい。じゃあ、アナタはきっと、自分が一番可愛く見える方法を知ってるのね。それって、とっても素敵なことだわ」
軽く手を叩く。
「ふふ、百たたきの刑なんて、古風じゃないの。顔がパンパンになっちゃうわね。そう、それと同じくらいアナタの手もパンパンになっちゃう。
……個人的には、デコピンをオススメするわよ。2、3発なら大丈夫ってどっかのグレートティーチャーが言ってたから、何か問題あったら、あそこのチヌくんにお願いね」
そう、チヌの方を軽く指さしてウインクしてから、その場を離れただろう。
>>151 ヨダカ
[目当ての人物がいた事にホッとします。
席へはつかず、ヨダカさんの元まで歩きました。]
お礼、言ってなかったなって思って。
ガトーショコラ、美味しかったです。ありがとございました。
[ぺこり、と軽く頭を下げました。
あの日のお礼を言いそびれていたのを思い出したのです。昨日から話し合いを沢山していましたから。]
……それだけ、なんです。
ごめんなさい、夜遅くに訪ねてしまって。
でも、お礼はちゃんとしなくちゃいけないなって、思ったから……
[困ったように眉を下げて微笑みました。
だけど、あのお菓子があったからこそ彼と会話が出来たのも事実でしたから。きちんとお礼をしたかったのです。]
>>+88 マスジョウ
[彼の丁寧な答えに、ミズタニの心は軽くなるような。逆にもやっとしたものが広がる。
けれどすぐに、気にしなくてよい、という言葉に救われたような気持ちになって。考えることをやめた。]
ふふ、ママの言葉はすごい!
そう言われたら、ほんとにそうな気がしてくる。
[続いて告げられた、占いの結果。
それはなんだか、あまり良くはない内容のようで。]
……やめておいた方がいい、かぁ。
[マスジョウを、ちらりと見てから。
そっかぁ、と俯く。
そして、テレビを見つめて。
決定を聞いたのは、そんな時だったかもしれない。]
>>153 侵略者
びりびりに破けた成年誌がばさりと降ってくる。
それをハフリベは、咄嗟に体で受け止めた。
「……俺のことなんだと思ってるんですか、あの人。」
ノギセイジロウの顔を思い出す。
輪郭の整った甘い顔立ち。ハフリベが知っている彼は、話したこともない人の財布を拾って走ってくれる、模範的な先生だった。
彼がナイトと名乗った時の失望は言い知れない。
一見、ただの成人向けの雑誌。でもこれは、ノギセイジロウの身分証明書なのだという。ベンナの十字架だ、と思った。
「……給料はもらえるんですよね?」
なんて、毒にも薬にもならない皮肉を返して。
ハフリベは体を起こした。
「僕の…レリック……」
自分が今ここにいると言うことは。
自分のレリックが砕かれていると言うことで。
あの子の、香川芽衣の教科書はきっと、ビリビリに破かれているのだろう。
「……、…僕の、せいだ……」
長崎律は、中学生の時、友人のいじめに気づきながらも、自身にまで火の粉が及ぶことを恐れてその友人を助けずに見捨てた。
その後悔を持ち続けながら、高校は地元から離れたところを選び進学した。
もう、大丈夫だと思っていた。
現実は想像よりも非情で。入学して一番最初に仲良くなった、自分が困った時に手を差し伸べてくれた女の子がいじめに遭ってしまった。
再び逃げ出してしまった自分は、そんな臆病な僕を捨てた。
だから。こんな僕を捨てた僕はきっと、彼女に手を差し伸べることが出来ていると。僕さえここにいれば、もう、友だちの心が壊れていく様を見て見ぬふりすることはないんだと。
だからこそ、それなのに………
[周りを見たら。
何故か、暗い顔をした人達がいた。
そんな顔を、させたかったわけじゃないのに。
なんでそんなに悲しむの。
まるで自分が、悪者みたい。
……ううん、そんなことない。
全部終わったら。きっと皆、わかってくれる。
ね、そうだよね?
誰に問いかけるでもなく。
そんなことを、考えた。]
>>157 ヨダカ
[確かにこの食堂の店主は気まぐれで、気まぐれ故に、そういえばなぞなぞが解けないとオムライスしか注文できない…なんてこともありましたか。……それも、今では遠い記憶です。けれど、楽しかった記憶でもあるのです。
口の端を僅かに上げる綺麗な店主には、こちらも微笑みで返して。]
そうですね、……うん。
リツくんとも、また会えるように……
[こくりと、小さく頷きます。
そして、続く提案にはくすくすと笑いました。]
……ふふ、どちらでも。ワタシは、どちらも大好きですから。なんなら、ヨダカさんお手製の新作デザートとかでもいいですよ?
[ヨダカさんの作る料理なら、なんだって幸せな心地になれますから。いつかその願いが叶う日を信じて。]
……ありがとう、ヨダカさん。
それじゃぁ、おやすみなさい。
[もう一度だけお礼を言って、マリアは店を出ました。
静かな静かな夜の道を、ゆっくりと歩いて帰ったのでした。]
こんな時に居て欲しい友達が、もう居ないと。
今になって実感するのだった。
ミズタニに言った、別れた時に気づくというのは、何も恋愛だけの話ではなくて。
身内が死んだ直後、その死を実感できないように。
今になって、急に時間差で。
どれほど、ピョン太が自分の助けになってくれていたか、失ったものの大きさを、実感してしまった。
>>マスジョウ
自分のレリックには何もするなと侵略者に告げるマスジョウに、ふと思う。
「ね、ママさんはあのレリック、好きだった?」
それならば、自分たちがしようとしていたこともあるいは悪だったのかもしれないと。
ぬるい空虚に包まれながら思った。
>>+123 カワモト
「あ、……う…………」
見ていた、そんなことを言われたら益々居た堪れなくて、たじろぐような声が漏れる。
話しながら髪を耳へと掛けた彼女の仕草は、やっぱり綺麗で。
正直に話すのもどうかと思いながらも適当な嘘も思いつかず。彼女の女性らしく線の細い腕の動きを目で追いながら。彼女の最後の言葉に困ったように眉を下げた。
「彗、さん……っ、…僕。あんなことがあって…どうしたらいいのかわからなくて……っ……彗さんが、声をかけてくれて嬉しかった、です…っ…僕も、彗さんと話せてよかった…。本当はちゃんと、花も、渡したかったけれど……。…、ありがとう、ございました。」
なんて言えば正解なのか。そんなことはわからないけれど。今、黙るわけにはいかなくて。静かに彼女へと頭を下げた。
アリアケさんの時と同じだ。ハフリベはライターの火を、雑誌に寄り添わせる。
覚束ない炎が舐めるように紙の上を這う。破けた紙に燃え移っていくさまを見て、それを足元に投げた。
露出度の高い女優がでかでかと載る表紙が、炎に蝕まれて焼け落ちていく。
「………」
義務でもなんでもないのに、ハフリベはそれが塵になるまで見守っていた。
静謐さすら漂う眼差しで。まるで、この世界でただ一人生き残った墓守みたいに。
ハフリベは、昨日の深夜にアリアケさんの鉛筆に火をつけた時と同じ心境になった。
これは選択に伴う責任だ。
自分たちが考え、選びとったことへの。
いつも死体を埋め終わった時には、綺麗に均された土の上で、黙祷を捧げるのが先輩との暗黙のルールだった。
そこにある意味は知らない。けれど、先輩がそうしていたから、ハフリベもそうした。
そっと、手を合わせる。
『屠る』はハフリベの役目のはずだから、ノギセイジロウがハフリベにそれを見出したのは正しかったのかも知れない。
彼のレリックはほどなくして、残るものなく焼け落ちた。
「ハフリベさん、ごめんねぇ」
嫌な役割を負わせたものだと思った。それでも。
自分だけが見た目だけでもレリックの重責から逃れたとは思いたくなかった。
「おやすみなさい」
『あたしは』ーー
>>+128 アリアケ
声をかけられて、ハッとする。
ハンカチは人に貸してしまったのを思い出して、親指の付け根あたりで、涙をサッと拭った。
しゃがんでいたが、その場にごろん、と大の字になった。真っ直ぐに天井だけを見つめる。
「……好きだよ。とっても好き。
いつだって味方でいてくれた大事な友達だから」
いつもの女性言葉ではなく、低い声でそう答える。
素直じゃなかっただけで、香坂秀輝も絶対に、そうだったはずだから。
大切な何か。わたしに今まで欠けていたモノ。
それをひとつひとつ抱えて、彩られる世界に生きてみたい。
そんな少女の無垢な願いは、残酷にも崩される。
最初は、些細なことだった。
あの人がわたしの話に呆然と相槌を打つ。何度か話が噛み合わないこともあった。
心配して声を掛けても『大丈夫よ』の一点張り。
採点ミスが増えた、板書ミスが増えた、クマが増えた、怒ることが減った。
そして、何より────笑顔が消えた。
一度噛み合わなくなった歯車は、決壊の終焉へと道を辿る。
それでも変わらない彼女の毅然とした態度に、一抹の寂しさを覚えた。初めて彼女に対して不満を覚えたのも、この時だった。
絶対大丈夫な訳ないのに。どうして、わたしを頼ってくれないのだろう。
その理由を知るには、わたしが幼すぎた。心も、体も、あの人から見たら子供でしかないのだから。
そんな当然の事に気づけていたのなら、結末は変わっていたのかな。
さて、公園に着きました。噴水のないところです。シンと静まり返っているのは、いつもと変わりません。ここが落ち着きます。
今日こそ飲みますよ、1番のやつ〜
片手で開けられたらすこしは格好がつくんでしょうけど。非力なのでそんなことは出来ず。
うむ。お酒は美味しい。休肝日を挟んでいたので、ちょっとアルコールが回るのが早いみたいで。すぐに身体が火照ります。
まあ。仕方ないです。受け入れます。
あ、どっかで聞いてるでしょうから伝えます。わたしのレリックは放ったらかしにしていて下さいね。好きにしてください。その場合、その人を変態と呼んでやりますけれど。
「さよなら、わたし」
当たり前です。乙女の心臓を好き勝手するのですから。
幼さのままに、感情の揺れ動くまま、あの人の家に押しかける。こんな稚拙な手しか思い付かないあの日のわたしを、心の底から呪いたい。
そこにあったのは、空っぽの家と窓辺に座るあの人。
玄関が空いていた。不審に思って入ったわたしは、思わず息を飲む。
初めて会った頃の面影もないあの人に、寄り添う。溢れ出す涙は止まることを知らず、壊れたロボットのように、言葉を零す。
全てを知っても尚、わたしに出来ることはなかった。
愛しい人に、自分では何も出来ない絶望感。
それと同時に、そんな彼女に心からこみ上がる激しい愛しさと、支配欲が身を支配した。
わたしだけは、そばにいなくちゃ。
わたしだけが、あの人をわかってあげられる。
わたしだけが、あの人の味方で、一番であればいい。
─────ねえ、わたしだけを見て?
飾られた家族写真は机に伏せて。あの人をわたしで満たしていく。
幸せだった。二人きりでいられれば、どこだってよかった。
「ここを二人の愛の巣にしませんか?」
頷いてくれない彼女へ、違和感を感じる隙間もない程に、満たされている位には。
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