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>>154 テルミット
「テルにー…」
ひとり。広場を後にした背中に。
テルミットから掛けられた声にリーンは振り返った。
「手伝ってくれるの?ありがとう。あのね、猫の顔の形をした髪飾りなんだけど…」
特徴を細かに伝えながら、彼の顔を見る。
サラが私を指名した時、テルミットは最終的な判断は彼女に託すと言っていた。
それでも、リーンは彼が優しいことを知っている。自分のことを大切に思っていることを知っている。リーンにとってはもう、それだけで十分だった。
「ちゃんと、誕生日のお礼が言えてなかったね。テルにー、プレゼントありがとう。使ってみたら、本当に自動でインクが補充されていくからびっくりしちゃった。どういう仕組みなのかな。」
そうして彼に向かって笑って見せる。彼の罪悪感が、少しでも薄らぐように。
ヘンリエッタにはルーツを占うつもりはなかった。
そんなものは自分たちの間にはいらないのだ。
「テルミット、オブゼビオ、アイリーンの中から1人選んで占います。」
誰に告げるでもなくそうこぼして、ルーツとまた向かい合う。
熱が出ているのだもの。ルーツの様子を見てもう眠そうならふたりでベッドに潜り込んで。
ルーツの左手を繋いで眠っただろう。
「おやすみなさい。ルーツ。」
きっと、いい夢が見られるはずだ。
░▓▒▓█▓░░▓▒
「……」
「よく動いてくれているじゃないか。
さあ、既に私の命運は託した。
私に、私の行いは正しいと……示してくれ」
>>162リリアーヌ
「……どうして、そこまで
何故貴女はそこまで、そうなりたいと思うの」
サラには、分からない。
何故。彼女との時を無くしていなければ、もしかして分かったのだろうか。別の言葉を、掛けられたのだろうか
「……そんなにも」
自分の時が動き続けることが。
止まることと同じ程に、苦しい。
自分が時を進めることを、何よりとしているサラにとって。理解し難く。
けれど、どれ程の苦しみなのかは、想像は出来ないが測る事は出来る。
私が。リリアーヌの友人であったのなら。
きっとリリアーヌを傷つけたのは、私が先。貴女を死にたいと思わせたのは、私。
>>172 リリアーヌ
「そりゃぁ、俺にもう一度、命の時計を造るきっかけをくれたからだ。もう二度と、命の時計に関わることなんてないと思ってたしな。
……マザークロックのおかげで少しばり関わることにはなったが、分解なんて本当は時計職人がすることじゃぁない。
時計職人の本来の意味は、命を刻む時計を造ることだから、な。」
そう言ってから、黙ったまま箱を開ける少女を見守っていた。
しばし訪れる静寂。先に口を開いたのは彼女の方だった。
「……あぁ、聞いてたよ。嬢ちゃん、夢みたがりなんだってな?」
蓄音機から零れる音を聞いていた。
彼女がサラに言っていた言葉も、全て。
「……そうさなぁ。なら、聞くが。なんの為にその時計を直そうと思ったんだ?」
資格がないと言う少女に、優しい声音でそう尋ねた。
>>169 アイリーン
拒否されても仕方ないと思ったが、アイリーンは振り返って探し物の特徴を教えてくれる。
「わかった、一緒に探そう。なに、猫探しも落し物探しもしたことはある。きっと見つかるさ。」
優しく言って、カバンから《砂塵除去ならおまかせくんγ》を取りだし、起動させた。砂塵はよく吸うので探しやすくなるし、砂塵以上の大きさの物はノズルに吸い付くから誤って吸い込んでしまうことはないのだが…………こまめに停止してゴミを手動で捨てねばならんのがまだ改良の余地ありだな。
それでも、細かな塵を吸い込めば多少視界は良くなるだろう。ノズルにくっついてくれれば儲けものだ。
「何、礼を言われるほどの事じゃない。リーンには充分お返しを貰っているからね。
ん?アレの秘密を知りたいかね?本来は企業秘密なのだが、誕生日特権だ、特別に教えてあげよう!!中に凝縮した固形インクがセットしてあってだな、空気中の水蒸気を集めて液体にする仕組みなのだよ!
だから……不具合やインク切れが見られたら、すぐに持ってきてくれ。メンテナンスしよう。」
得意分野の話をするテルミットの表情は、自然と明るくなっていた。
>>175 サラ
「……嬉しいわ、サラ様」
本心でもあったはずです。リリアーヌはゆっくりといいました
「たとえ、それがわたしを味方に引入れるためのものだったとしても、嬉しい。……でも、ごめんなさい」
ゆるゆると、リリアーヌは首を振りました。
「もし、二人とも眠りについた先、そこでもサラ様がそう言ってくれるなら、優しい眠りの世界でおともだちになりたいな」
リリアーヌにはそれが純粋な願いであるとわかりません。貴族としての責務で言っているのだろうと、そう思っていました。
「その時は、きっと、」
小さな声で言います。聞こえたでしょうか。聞こえなかったでしょうか。
「その時こそ、とっておきの時計を見せてね」
>>176 レーヴ
「レーヴさんがつくる命の時計、素敵なんだろうなあ」
リリアーヌはしゃがみ込んでいた足を崩して、体育座りをしました。
「ほんとは、直すのやだったかなって心配だったの。だから、よかった」
認められても、思ったような糾弾はされませんでした。リリアーヌがああいったせいで、今日レーヴは砕かれてしまうようなものなのに。
「なんで、かあ。……なんでだろ。あのね、トッティの顔が浮かんだの。ダズリーさんに宝石を嵌めてもらったとき、きっと、トッティ、時計綺麗にしたら喜んでくれるだろうなあ、って」
明るい赤毛の少女を思い浮かべました。最初に倒れている彼女を見つけた時にわいた感情は、嫉妬、でした。もしかしたら、そんな醜い感情の罪滅ぼしだったのかもしれません。
>>70 >>71 サラ
騎士と名乗った頃のこと。
私の騎士、という響きはテルミットの心の奥をくすぐった。
「私も真にそうであれば、と思っている。きっと、盾にくらいはなろうさ。」
テルミット渾身の蒸気式ブレードを、サラは熱を帯びた目をして見つめる。彼女はやはりテルミットと、テルミットの発明品、そして目指すものへの理解者であった。
「ははは…………モーーーールトベニッシモォォォ!!!流石、サラ嬢はよくご存知だ!
以前より密かに頭の中に入れて置いた設計図が役に立つ日が来て正に僥倖。きっと、この国の伝説の騎士になってみせましょうぞ!!
……おっと、この剣の名前……遠き国の伝説にある《エクスカリバー》なども悪くは無いのですが。不肖テルミットには決めきれず。この機にサラ嬢が名付けてくれると光栄なのですがね」
こちらへ向けるサラのたおやかな笑みは、物語の姫君そのものであった。
>>180 リリアーヌ
「……嫌なわけないだろ?友達の頼みなんだ。俺は、大切な友達の頼みは断らない主義なんだよ。」
約束を破ったことがあったか?と、クスリと笑えば、リリアーヌに倣ってレーヴも地面に座り込んで足を伸ばした。
「……そうか。嬢ちゃんがそう言うなら、きっとトッティは喜んでくれてるだろうな。」
彼女のトッティに対する真意はわからない。けれど、きっと友人を思っての行動にだけは、嘘はついていないだろうと確信する。だから。
「…なら、その時計を嬢ちゃんが持つ資格は十分あるじゃねぇか。
友達の為に直したいって、綺麗にしたいってそう思ったんだろ?」
その想いが本物なら、直したい気持ちが本物なら。
「例え、嬢ちゃんが夢みたがりだったとしても。そんなこたァ関係ねぇ。友達の為にその時計を直したなら、その時計を持つ資格があるのは嬢ちゃんだけだ。
…まぁ、仮にトッティが、嬢ちゃんがそれを持つことを拒否したとしても………いや、あの子ならきっとそんな事はしないだろうけどな。
……キシシ、まぁ、もし拒否したとしても、俺の想いが入った時計を、俺が直した時計を、俺が嬢ちゃんに持ってて欲しいって願ってるんだ。
それが、その時計を持つ嬢ちゃんの資格だよ。」
あぁ、それとダズリーの想いもな。と、付け加えると、歯を見せて笑いながら。彼女の頭を優しく撫でた。
『ふわ、眠くなってきちゃったあ。
今日は、最後に一言だけ何か言ってから、寝よぉ。
トッティ真似っ子上手かな?上手く隠れられてるかな?ふふっ!明日も上手くいくといいなぁ。』
>>ヘンリエッタ
甘いチョコは色々な形、翼や花、それに───。
マーマレードを入れた紅茶はオレンジを香らせてアロマのように眠気を誘う。
私は右手を眺める。描かれた星、リボンは幼いけれど、線に迷いはない。
理解者「運命って言葉は人生で使えば使うほど価値が軽くなるなんてどこかのスノップが言ってた。
それでもルーツはこの言葉をあなたに聞かせるわ。例えそれが残響になろうとも。
あなたとルーツの出会いは運命。
繋いだこの手から思いがどれだけ伝わってるかは分からないけど、いつまでも、この時間が続けばいいのに、なんて思ってる。」
ベットサイドランプの灯りを消す。
光は奪われ、部屋にも夜が訪れる。カーテンの隙間から覗けるのは今日も今日とて朧月。
ふと、目を移すと彼女はスヤスヤと寝息を立ていた。
教えて、どんな夢を見ているの?
そんな顔をずっと眺めていた。
繋いだ手は、リボンと同じように紐帯となる。
だけど私はそれを解く。
ごめんね、とヘンリエッタの頭を撫でる。
チョコの中に星の形を見つけてしまったのが全てだ。
何故か衷心が叫ぶ。
そっとベッドを抜け出した。
「おはよう、先に行ってるね。」とメモを残す。
心残りは彼女の寝起きを見られない事だけで、それはあまりにも大きくて。
夜の街は昨日より風が強い。
恋しくなったのはカーディガンではない、彼女だった。
どこにいるかの検討なんてついていない。
でもやり残したことがある。
言ってやりたいことがある。
>>185 レーヴ
ぱっと生気づいたように頬に赤みが刺します。
「なかった!」
そうして、手の中の時計を見つめます。レーヴの言葉を聞きながら、ぼろぼろと。さっきは出なかった涙が溢れました。優しい手のひらが、頭を撫でます。
「そうだね、っ……そうだよね……っ」
顔を覆います。こんなリリアーヌでさえ、許されるのでしょうか。許してくれるのでしょうか。
リリアーヌは我慢できなくなって、レーヴへと抱きつきました。
「ごめんね、ありがと、レーヴさん」
明日から、この太陽のようなひとはいないのだ、そう思うとリリアーヌはいっそう、ぎゅうとつよく抱きつくのでした。
>>182シルヴィ
「えぇ。勿論。史上最大の敵であったと記してあげる
……その為には。何故貴女達がこんなことをしたのか、知る必要があるのだけれど。
何故私達の時は奪われんとしていたのか。何故殺し合わなければいけなくなったのか。
あるべきものを、あるべき場所に戻しに来た。と言ったそうだけれど
故人を偲んで。前へ進んでいくためには。何故私達は殺されかけ。そして、隣人を殺していくことになったのか。
死の理由を解明しなければ。人は、その死の時に脚を取られて進めなくなってしまうから」
敗けるつもりは無いからこそ。
私は。私が屠った過去の者達へと。そして未来へ、それを語らなければならない。
……魔女を誘った最大の理由は。これを聞くためだった
皆の死を。突然起こった、ただ不条理だっただけものにしない為の。
アイリーンとの探し物に一段落ついた頃。
「むむむむ……もうこんな時間か。結局、エルス医師とルーツ嬢に見せるものを作る時間が無かったな。
ええい!一日があと三時間……いや!三十分長ければ、何か一つ余分に作れると言うに!」
均等に時を刻む命の時計の響きを、失った目に感じつつ、どうにもならんことを恨んだ。
時を戻すのも、一日を増やすのも、きっと神様でさえ難しい。
「さあ、今日も時間は惜しい!王城の工房に戻り、よい歯車様を選別しよう!《ヴェルウォーク》のメンテナンスをせねば、とても休めん!」
テルミットは頭の中の設計図たちを広げながら、右足のブーツの機巧も起動して、人のいない夜の中を全力で駆け抜けた。
『トッティ、トッティの時計、表も直してもらって、ほんとに嬉しいよ!!リリーちゃん大好き!!
トッティ、リリーちゃんのことずっと友達だと思ってるよ!!』
[直接声を掛けられないもどかしさで、頭の中で叫ぶ。リリアーヌが何者でも関係なかった。少女が、《みんなのおうち》以外で、初めてあだ名で呼んだ友達なのだ。
明日からも、リリーちゃんと一緒に頑張れたらいいな、と思いながら、少女は王城の工房で眠りにつくだろう。]
>>191 サラ
「何故、か。
変わらんのではないかな。例えばご公女が、友と過ごす時間にかようにも精巧で緻密な創作菓子と気品高い紅茶を欲すのと同じように、私は私でこの国の宝である《マザー・クロック》が欲しくなった。
魔女の名に相応しい、悪役としての動機だと思っているがね。そこに疑問の余地と何かしらの回答を得ることの意味があるとは、答えを持つ私さえ見出せないが。
聞くが、万が一にでもこの私の行為が正当性ある義心によって、などだったとしたら、そこに貴様らは憐憫の情を抱くか?
すまぬが、同情される趣味はないな。
……まあ、貴様にとって先の回答が有意義だったというのであれば、そうなのだろう。
さて、まるでこれでは私がもてなしたようだ。
"次があるのなら"、今度は私の方こそ、意義があったと思える会にしていただきたいものだ」
*/
彼女にしては、恐らくそれは優しい方の言葉であったろう。
その意図が伝わっているかどうかまで確かめることもなく、シルヴィは立ち上がる。
伝わっていようがいまいが、彼女はそのことに興味はない。自分で今述べた通りに。
/*
>>190 リリアーヌ
「あぁ。そうだ。……その時計は、ちゃんと嬢ちゃんが持っててくれ。」
レーヴに抱きつく幼い少女の背を擦りながら、優しい声音でそう言って。
「キシシ、礼を言われる覚えはあるが、謝られる覚えだけはねぇぞ?」
と、冗談めかして言いながら。彼女が泣き止むその時まで、手を止めることはなかった。
──リリアーヌが泣き止んだ頃。
頬に残る涙の跡を、優しく指で拭いとって。
「よし。その時計を持つ資格をちゃんと認められた嬢ちゃんにだけ、俺の秘密を教えよう。」
そう言えば、自身の左腕に着いていた腕時計をそっと外す。
腰に下げたポーチから、ひとつの道具を取り出せば、それを使ってその腕時計の裏蓋を取り外した。
「実は、みんなに名乗ってるのは本名じゃなくてな。
ほら、ここ。文字が彫ってあるだろ?」
裏蓋の内側。そこには、『08/13 espoir-trust , rêve-trust』と丁寧な文字が彫られていた。
「俺の本当の名前は、レーヴ・トラストだ。その隣に書かれてるエスポワール・トラストってのは俺の兄貴の名前だけどな。」
そう言うと、苦笑する。
「ま、ファーストネームは本名だからあんまり意味はないんだが……嬢ちゃんにだけは、俺の本当の名前を知ってて欲しくてな。」
そして、裏蓋を閉めると、そっと、彼女の手にその時計を握らせて。優しく手のひらで包み込んだ。
「友達からの最後の願いだ。この時計の針を止めないでやってくれないか。
……無理にとは言わない。もし、明日も嬢ちゃんの時が止まっていなければ。ほんの少しだけでもいいんだ。1日だけでもいいんだ。
この時計の針を、前へと進めてやって欲しい。」
顔を合わせると喧嘩ばかりの兄から贈られた、唯一の腕時計。
その時を止めることだけは、どうしても出来なかった。
「…………頼む、リリアーヌ。」
真っ直ぐに彼女の瞳を見つめて。願った。
月日が流れても、王子と少女は互いを想いつづけていました。
そんな中。人間の国の国王は、豊かな妖精の国の侵略を考えていました。強欲な野望を持つ王は、かつてから隣国を狙っていたのです。
王子はその事実を知り、妖精の国の危機を知らせに魔女のもとへと向かいます。その頃には、森の妖精たちも王子を心から歓迎し、受け入れるようになっていました。
そして。ついにその時を迎え、人間たちが大群になって妖精の国に攻め入ろうとしました。
魔女はすぐに異変に気付き、兵士たちの前に降り立ちます。
彼女が一声叫べばたちまち地鳴りがし、大木がまるで動物のように動き出しました。猪にまたがる樹木の兵士の大群が現れました。そして、地面からはドラゴンが出現します。
魔女も自身の力を用いて全力で戦い、やがて隣国の兵たちを撃退することに成功しました。
王子は彼女やこの森が無事であったことに安堵します。
また、父王も怪我はあったものの、命に別状はありませんでした。どんなに非道な人間であっても、それが愛する王子の父であったから。魔女は彼への情で、命までは奪わなかったのです。
なす術もなく追い返された人間たち。その圧倒的な戦力差に、もう父が隣国に手出しすることはないだろうと、王子はどこかで楽観していました。
『オズワルド、でかしたぞ。まさかお前があの魔女と面識があったとは』
森からの帰り道。城の裏門からこっそりと部屋に戻ろうとした王子の前に、笑顔で父王が立ちはだかるまでは。
>>195シルヴィ
「私達の勝利の伝記に、それだけの記述じゃ味気ないでしょう?
きっと誰も、納得しないわ。相手にも理由があったのだと。自分達が受けた傷が深ければ深いほど、深い理由を求めるものよ。
憐憫?まさか。
確か、貴女の飼い竜に言ったと思うのだけど。この国が。貴女の何かしらの犠牲で成り立っているとしても。
その上で。これまでにこの国が重ねた時間は誇られるべきもので。
そこを過ごす、無数の民の時間も。善き時間であると。胸を張って言うと。
同情なんて。それこそ、この国の素晴らしい時の礎となったであろう貴女への、侮辱でしょう。
えぇ。とてもとても。
恋を知っている魔女。私はそれを知ることで。
貴女と、ただ憎しみをぶつけ合う以外の闘いが出来そうよ。
あら、それもそうね?失礼したわ。
では、"次の機会に"。
今度こそ、貴女にとって意義がある茶会にもてなしましょう」
──リリアーヌと別れたあと。
>>サラ
「よぉし、待たせたな、お嬢さん。
……んじゃ、はい、これ。」
明るい口調でそう言うと、腰に下げたポーチから木製の懐中時計を取り出して彼女へと手渡した。
そして、受け取ったサラの手を取り、力を込めたなら。真っ直ぐに、彼女の瞳を見つめて。
「……俺は、最期までお嬢さん達の選択を信じ続けるよ。
俺の時計が砕かれた事で、道が開けるのなら。それ程嬉しい事はねぇ。……まぁ、あの医者だけは気に食わねぇがな。」
そう苦笑すれば、手を離す。
そして、数歩後ろへと下がれば空を見上げた。
黒い煙に覆われたそこには、星空はなく。真っ黒な闇がレーヴ達を見下ろしていた。
「……この力を与えられた時から、ずっと覚悟はしてたんだ。いつかこうなる事はわかってた。
そもそも、最初に2人も偽物が出てきた時点で、俺はすぐにでもこの時計を砕かれる運命なんだなぁなんて思ってた程だ。」
キシシ、と冗談めかして言いながら。
ふと、柔らかい風がレーヴのピアスを揺らす。城から漏れる明かりに当たれば、金色のピアスがひとつ煌めいて。
空を見上げていた顔を下げ、サラを真剣な眼差しで見つめた。
「迷うな。自分の選択した答えを信じ続けろ。
誰が何と言おうと、誰がサラを責めようと、俺はその選択を間違いだなんて思わねぇ。
俺が二人も眷属を見つけたのは、サラと、その短針のおかげだ。
だから、俺はここまで信じてついてこれたんだ。」
そう言うと、その表情を崩して。ヘラりと笑えば。
「……大丈夫。お嬢さん達ならやれるさ。
この国をどうか、救ってくれ。」
「…………貴方が、本物であれば良いのに。いいえ。偽物でも。その言葉は、真摯に受けとりましょう。
ありがとう。そう言ってくれる人がいたのなら。私は迷わず、時を前へと進めていける。
貴方が本物なら。私達の勝利まで、後一歩。
勝った気で見守っていて。信頼へと、当然に応えて見せるから」
微笑む。サラの。リリアーヌとの、空白の時間の架け橋だったのであろう友人へ。
「勿論よ。
……いつか、貴方が言っていた。
私が無くした時間も。きっと取り戻して見せるから」
考えてみれば分かることでした。王子は自分が出かけていることが気付かれないよう、侍女に城を空けている時のことを任せていました。幼い頃から自分のそばにいる彼女を、父よりも母よりも、王子はこの国で信頼していたのです。
しかし、王子の侍女であるということは、王の召使いでもあるのです。
ここのところ頻繁に外出をしていた王子を心配していたのか。それとも、隣国への侵攻に良い顔をしていないことに気付いていたのか。そもそも。いくら不出来な王子といえど、彼が王族の一人であることに変わりありません。
いつからそうであったかは分かりませんでしたが。王子はずっと、見張られていたのです。
王は言います。
よくぞ隣国の主を懐柔した。あれは真正面から立ち向かって敵う存在ではない。それは、此度の戦いで明白だ。お前は頭がいい。どんなに強力な魔女であっても、女であることに変わりない。
──チャンスをやろう、と。
有無を言わさぬ低い声で、父王は言いました。魔女が並み外れた力を持つのは、彼女が持つ《マザー・クロック》のおかげ。それをこの国に持ち帰ってくることができたら、国王の座とこの国の未来を託そうと。そう、宣言したのです。
>>198 リリアーヌ
少女はその願いに頷いてくれただろうか。
いや、きっと、頷いてくれても頷いてくれていなくても。
時計の針を進めなくとも、その腕時計だけは持っていて欲しいと譲ることはなかっただろう。
──時が来る。別れの時が。
もう一度だけ、その小さな身体を抱きしめる。優しく、それでいて強く。
そして、そっと身体を離せば、柔らかく目を細めて少女を見た。
「……俺は、ずっとリリアーヌの味方だからな。
それだけは、どうか忘れてくれるな。」
最後に、彼女の頬に手を添えて。涙が流れているのならそれを拭いとって。
レーヴはゆっくり立ち上がり、少女の元を去っていった。*
大好きだったこの国も、この街も、これで見納めだ。
今から、レーヴは永い永い夢を見る。
いいや、でも、その夢は、きっと──
サラがその剣を振り上げる様を見ていた。
ただただ、真っ直ぐに。
木製の懐中時計に剣が差し込まれる、その瞬間。
レーヴは、目元に濃いクマのついた瞳を柔く細めれば、ぽつりと呟いた。
「──あぁ。これで、ようやく眠れる。」
プツリ、と電源が切れたように。
レーヴの視界は暗く、黒く。塗りつぶされた。**
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