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[それは何処か物悲しく儚げな、
港町の夕暮に、船乗りがよく口ずさんでいた]
《――――――…》
[朗々と口にするのは、歌のような詠唱。
立てた剣の柄より放物線を描く様に、
波紋のように広がる淡い光。
昔から、光を扱う魔法はとにかく不得手で。
自分がそういう存在なのだと知っていた。
もはや殆ど魔と成り果てた今、
どれほどの意味があるかは分からないが]
[己が人としての魂が、揺らぎ消え果てしまう前に。
その残渣の欠片を代償に。
魔の力を弱め、人を癒す呪いを。
もしも"次"があるならば、僅かでも届けば良い。
或いは何の意味もないことかも、しれないが]
魔王。
[呪いを終えれば顔をあげ、眼前の男へ目を細める。
刃の無い剣の柄の先を、相手へ真っ直ぐ差し向けて]
―――――――…ッ。
[立ち上がろうとして、崩れ落ちる。
文字通り、体勢だけでなく、存在そのものが。
ずるりと闇と同化するように、溶けだして。
からりと。
溶けた手から落ちた剣の柄が、転がり音を立てる。
その存在の終りを、示唆するように*]
[――少年と別れ、少女は魔神と共に毒の沼を行く。
竜に騎乗する時に感じたそれとは異なる、独特の浮遊感。
湯気のように立ち込める毒気も、魔王城に近付く程に纏わり付く瘴気も、不思議と感じられなかったか。
まるで――そう、幽霊となってしまったかのような。]
[やがて視界に入るのは、魔の地を覆っていたそれよりも暗い黒雲。
簡素な岩山に佇む、厳かな魔王城。
この世の絶望を一身に背負ったかのようなその姿を、少女は呆けたように見上げて。]
………?
アイン、さん……?
[――門の前に佇むその人影に、首をかしげた。
だが、声をかけようとも、彼がこちらに気付く様子はない。
そのまま魔神に連れられて、少女は城門の中へと入っていった。]
[一層濃くなる瘴気。
本来であれば弱りきった少女を蝕み、一息に殺してしまうであろうそれは、まるで存在しないかのように避けて通っていく。――それでも幾らかを吸引してしまえば、口元を押さえて咳き込んだ。
――既に侵入者があった為か。
城の中に蠢く魔物はただでさえ飛び出た目玉を血走らせ、物騒な武器を手にしている。
中には、何者かに殺戮された死体の山さえあった。床ばかりではなく、天井にまで破壊の跡が見られ、――どれだけの戦いがあったのか、今は想像することしかできない。
そうして、幾つ目の角を曲がった頃だろうか。
――無数の屍。無数の血糊の中。
ぽつりと置かれた、干からびきった、赤い実。]
………、
……………りんご?
[放置されていたためか、瘴気を帯びてぐずぐずに腐り始めている。
遠慮がちに。足を止めた少女は、それを拾い上げ。
――思い出したのは、いつかの街での、会話だっただろうか。*]
― 北部・魔王城前 ―
[>>138異形の竜は魔王城の城門前にたどり着くと羽ばたきながら着地をした。
幾ばくか駆けながら勢いを殺し、停止するとその場に巨躯を横たえた。
背中に吐瀉物があっても気にすることはない。
そもそも外骨格の上からなので感覚に薄いのである。
異形の竜の役目は望む者を運ぶだけ。
フリッツの時と同様に魔王城の門前に運べば役目は終わったとばかりに動かなくなった**]
― 魔王城・門 ―
[どさり、と。
沼を抜けた途端、転がり落ちるように、少年は異形>>148の背から降りた。
そして空気を貪るように喘ぐ、そこもまた濃い瘴気に満ちた地ではあったが、毒液そのものよりはまだ呼吸に伴う苦痛は少なかった。
それでも、その行為により多量の瘴気を更に取り込んでいることに変わりはないのだが]
[もう動きたくないと訴える体を無理矢理起こし、少年は立ち上がる。
そして魔王城の威容を見上げた。
視界が定まらず、この場で抱くべき感情も思い出せなかったが、ただ、進まなくてはと思う。
魔神と共に去ったダリアを、追わなくてはならないのだから]
[しかし、門に数歩近付いた所で少年の足は止まる。
苦痛に支配されぼやけていた感情が、それ>>141を見た瞬間に形を取り戻した]
アイン……。
……勇者、さま……?
[ずっと、探していた人だった。
面影はそのままに、しかし生気のない顔に土気色の肌。
名を呼び近付く少年を認識すれば、それは与えられた役割通りに、剣を構え侵入者を排除しようとする]
勇者さま!
[少年の叫びごと引き裂くように、かつての勇者は剣を振るう。
咄嗟に避けた少年を、焦点の合わぬ瞳がぎろりと見た]
[――呼び掛けても無駄だとはわかっている。
それと似た術は何度も目にしていた]
こんな所で、……会えるなんて。
[掠れた声で語り掛けるように言いながら、少年が抜いたのは光の剣]
本当なら、これは、きみが使うはずだったんじゃないの。
[勇者の証とも言える得物を、かつて勇者と呼ばれていた少年に向ける]
ねえ、エステルさんも、タンガリザも、チャペも、いなくなっちゃったんだよ。
ダリアには酷い怪我をさせちゃった。
……きみが一緒にいたら、もっとうまくやれたかなぁ?
[言っても詮無いことだろう、アインを手に掛けたのが、仲間だったはずのチャペだったのだから。
少年は力ない微笑みを浮かべた後、腹に溜まる重苦しいものを地に吐いて、再び顔を上げた]
でも、……今は僕が勇者なんだ。
[アインの面影を残す門兵は、話を聞いてなどいないのだろう、再び剣を振り上げていた]
ダリアを助けなきゃ。
魔王と戦わなきゃ。
……僕が、やるしかないんだ。
[少年も光の剣を振るい、そして魔の者が鍛えたのであろう剣を受け止める。
かつて、鍛錬としての手合わせは幾度かしたことがあったか。
未熟な少年では勇者には勝てず、それでもさすがだなぁと笑っていたのだ]
行きます……勇者さま。
[誰も聞いてはいない宣言と共に。
少年は呼吸を止めるようにして、一歩を踏み込んだ**]
[――――――嗚呼、頭が]
[がんがん、がんがん、がんがん、止まない]
[音?痛み?それすら分からない]
[引き千切られて気が狂いそうだ。否、とうに狂っている]
[抱えきれない闇ばかりが溢れて、後には何も残らない。
負の感情ばかりが募るけど、
行き先を失い心臓が握り潰されているようで。
もう何も思い出せない。
此処は何処?床に転がっている此れは何?
目の前にいるこれは、誰?
只管に苦しいばかりで。此れがまた、永劫続くのか]
[魔王より放たれた一撃が、闇を切り抜ける瞬間。
もし、其処に少女の姿が現れたならば。
黒い瞳は一瞬だけ、我に返ったように。
じっとそちらを見つめただろうけれど]
[斬り捨てられて床へ醜く潰れ落ちたのは、
どろりと黒い液体の溶けだした何か。
屍体というなら、屍体だろう。
人ならば触れるだけで害をなすような、悍ましさ。
魔と呪に絡め取られたまま]
[白猫は影猫から身を隠しながら過ごす。
どうしても守りたかった相手は、今や己に仇なす存在となってしまった。]
ミャウゥ……
[チャペの記憶が残っていれば、どう思うだろうか?
きっと優しい顔をして影猫を撫でようとするだろう。チャペとはそういう猫だった。]
[チャペが影猫のために戦ったあの地。
そこにはもうチャペの亡骸は無かった。
元々が影なのだ。魔力が完全に霧散すれば、跡形も無く消えてしまう運命だ。
後にはチャペがいつも持ち歩いていた手編みのポーチと、零れ落ちた掌大の尻尾付きボールだけがそこに残っていた。]
[食べることも、肥料になることもない、食物としての意味を喪失した、赤い実。溜め込まれた瘴気は、持つだけでも掌から少女を蝕み、食らわんとする。
早鐘。悪寒。臭気。
――けれども、少女はそれを手放すことはできず。
枯れ果てた赤い実を携えて、城を更に奥深くへと進む。]
――――、
[魔物はまだ、多くがうろついている。
壁にしみついた血糊も、元からあったであろう魔素の染みも。恐らく正常に育った人間が見れば、恐怖を催し、嫌悪に溺れ、『さすがは魔王の城だ』とでも語るのであろうか。
――呼吸が拒む。
――足が拒む。
息を止めようとしても、開いた眼球からあらゆる呪が入り込み
少しずつ少しずつ、少女から生命を殺いでいく。]
っ、………
[魔神の影響下にあってなお、目を細め、口を強く閉じる。
――一瞬、置き去りにした少年のことが頭に浮かび。
振り払うように、ただひたすらに前へ、前へと歩いた。]
[暗示のかからなかった愛し子が一匹、その場に近づく。
ボールを見つけると、警戒心と好奇心を交互に見せながらゆっくりと近づき、つんっとボールをつつくと、転がったその様子に驚いて飛び退き、唸り声を上げる。
しかしやはり好奇心に負け、再びボールへと近づいていく。
それを幾度繰り返したか。とうとう影猫は、ボールに擦り寄り遊び始めた。
もう届かない悲しき思い。その証だけが独りぼっちで残るのだった。**]
[途中で、魔神は少女へと道行きを示し、姿を消そう。
闇の中では見ているかもしれないが、その方が面白いとばかりに。
少女が無視されるのは、玉座の間の内に入るまでか。**]
[身体は重く。
意識は薄く。
呼吸は苦しく。
正常に育った人間からすれば、少女のそれそのものが狂気の沙汰か。自ら地獄へ歩み行く少女の肌は再び竜鱗が浮き、実を握った指先も、砂へと変じようとする。
時間が足りない。
命が足りない。
身体が足りない。
――それでもまだ、たった一つ。遣り残したことの為に。]
そう、なの?
[少しばかり荒くなった呼吸で、魔神の言葉に目をまるくする。
手の中の赤い実を見つめ、臭いを嗅いでみるが、そこにどのような奇跡が起きたのかなど、分かるはずもなく。]
…………、ん
たべてみる
[意を決したように、齧る。]
[――舌触りとか。味とか。
そういった問題ですら、もはやない。
噛んだ瞬間に広がる腐乱臭は鼻を抜けて脳へ至り。
染み出る液体は口腔いっぱいに飛び散って。
まるで――泥を煮立てて、飲んでいるかのような。
食への冒涜。圧倒的な呪詛の塊。
――嗚呼、この実は腐っている。]
ぅ、…っ
[嘔吐感が襲ったのは、魔素の影響だけではあるまい。
胃からせりあがった酸味と混ざり合い、更に臭気は酷くなる。
口元を押さえ、――ぐっと呑み込んで。]
…………、
[一口。また一口。
涙を堪えながら、なんとか食べきれば。
――確かに、女性の言う通りの効能はあったらしい。
砂化していた指先は、再び元へと戻り。
肌に浮いていた竜鱗はそのままだったが
奥へ進むごとに酷くなっていた息苦しさは、薄れた。]
……ほんとだ
[驚いたように、目をまるくして。
手に付着した実の液体を、まじまじと見つめた。]
[――フリッツが命を賭して遺した『呪い』は、再び少女に歩くだけの力を与える。全てが元通りになることは無かったが、それでも、望みを叶えるだけの時間の猶予を。
途中からは、女性の姿が見えなくなり、一人きりで歩かなければならなくなったが。手に残る実の感触だけを支えに、ひたすらに歩いた。]
[知らない。――知っている。
分からない。――分からないはずがない。
でも、過ぎった"彼"とは、あまりにも違う。
形が違う。いろが違う。気配が違う。
あれではまるで、形を持つことを許されない、化け物だ。
でも。]
…………、
[どろりと溶けた液体のような"それ"を、ただ見つめる。
球体に包まれ。玉座の間からいなくなるまで。
じっと、目が離せないまま、呆けたように瞳に映していた。**]
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