情報 プロローグ 1日目 2日目 3日目 4日目 5日目 6日目 7日目 エピローグ 終了 / 最新
[1]
[2]
[3]
[4]
[5]
[6]
[7]
[8]
[9]
[メモ記入/メモ履歴] / 発言欄へ
(──それが証拠になるんだよ)
ヤマダの様子をちらりと一瞥し、しかしタカナシは言わなかった。ピアスの向き、ジャケットの不自然な皺、つくはずのない髪の毛の癖、そして襟の角度。性の気配はひとりでに匂い立つこと。第三者ならなおのこと嗅ぎ取る気配を。
小屋を出てしばらくして、背後で草を踏む音がかすかに響いたが、ヤマダは野鳥に気を取られて気付かない。
(──そんなこと、口が裂けても言わないけど)
いつから感づかれていたのか、むしろそれに自分が気付いたのがいつのことだったか、タカナシはもう覚えていなかった。汗ばむタカナシの首筋に、今前を歩くヤマダが熱い舌を這わせた。衣服の下に隠された素肌には、ヤマダが吸い付いた証拠である鬱血。背徳感がタカナシを高揚させるようになったのはいつからだっただろうか。もう、覚えていなかった。
(──嘘ばっか吐いてきたから、何が本当だったか、もう、覚えてない)
タカナシのもとに寄ってきたスズメが高らかに鳴く。野営地には煌々と火がくべられ、夕闇に溶けた木々が一陣の風に揺れた。車座になった仲間たちが、肉がいい具合に焼けたと呼んでいる。
(──ね、ぱちゃたん。)
二人の関係は恋人同士ではなかった。互いが互いに向ける好意には気が付いていた。だからこそ示し合わせたように歩み寄り、抱き合い、触り合った。
二人のどちらかがそれに言及するのは、すなわち今の関係の終焉と同義だった。餓狼の命運を背負っていると言っても過言ではない彼らには、恋愛に惚ける時間と余裕はなかった。狡さには、互いの背に腕を回した瞬間には既に気付いていた。
そして彼らは、今日もこうして仲間の目や言及を避けるように、密やかに逢瀬を交わす。世界から逃げるように、主をなくした置き去りの空き家へと籠もる。
それが村の邪魔者と化した二人の、脆くて危険でそして気持ち良い逃避行だった。ふたりのあいだには、隠し事ばかり。でもね、たまには本当のことを言う。
なぜなら俺は、
[1]
[2]
[3]
[4]
[5]
[6]
[7]
[8]
[9]
[メモ記入/メモ履歴] / 発言欄へ
情報 プロローグ 1日目 2日目 3日目 4日目 5日目 6日目 7日目 エピローグ 終了 / 最新