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―花山院邸・奥座敷―
[その薄闇の帳の中、
狐の体は無我と共に在りました。
淡い狐火は傍らには無く、茫とした目で赤き式を見上げるのです。]
――花山院邸・奥座敷――
[帳を破り捨てかねぬほど乱雑に退け――かといって怒っている訳では無いようだ。]
――ふん
邪魔したな。
[添いあう二人を見た。]
つねひと。
お前、花山院明輔という名に覚えはあるか。
[逢うたら、云いたい事があったように思う。けれども、それらは浮かんでこずに]
ご自分の責すら果たさず、愛しい人と共に在る事を望んだ貴方を、怨めしいと、憎んだりいたしました。
貴方の寵を受けるあの男を、憎いと思いました。
それでも、死んだと判るとその憎しみはどこかへと消えたのです。
ただ、悲しい。貴方の悲しむさまを思うと、やはり憎いと思うたのはただ自分が醜いだけであったのだと、思う。
[歩き、若宮の傍へと腰を落として]
[あかい霧が渦を巻く……闇から滲み出てきたそれは、おとこに幾重にも纏わりつくように漂い、]
忘れぬ、おれは決して諦めぬ、
必ずや黄泉還りて、季久さまを、
[地を這う怨みの──否、それは妄執の声。低く低いおとこの声。]
[めり、]
[額からふたつ、何かが生え出でるように皮膚が盛り上がる。]
[ふ、と一息ついて]
…恋う者に忘れられるとはこの世で最も惨いことよな。
愛しいものに先立たれると、どちらが辛いものか。
[ちらりと見える先には狐と僧形のもの。あれらも恨みつらみを全身に受け止める者たちか]
あの狐、私が笛など落とさなければ穢れにまみえることもなかったろうに。憐れなことをした。願わくばそのまま人の世に在うこと能えばよいが。
おれは。
あいつを、安倍の影居を殺したいと思った。
貴方を、殺したいと思った。
それだけ、憎く思えた。
白藤さんが目の前で死んで、手に薬を塗ってくれた汐さんも死んだ。
知っているお人が亡くなってしまうのは、悲しい。
おれが、貴方を手にかければ、六条院の人たちはより悲しむだろう。
貴方の祖父は、おれを正式に養子に迎えたいといってくれた。
その言葉に報いる為に、おれは貴方を手にかけることはしない。
あきすけ…さま。
永漂さまが下仕えの者達にそう呼ばれて居たのを聞いた気がします。
…恐らく、あの方が俗世に居た頃の御名前かと。
[件の法師の事だろうと、いちはつ殿に教えるのです。]
[裂けんばかりに盛り上がった皮膚、]
[しかし、]
違う──!!
[喉から絶叫迸る。]
違う、のだ……
[がくりと肩落とし、蹲る。
たちまちの内に、二つの突起は縮み、平らかに。]
…ぁ……。
[唇は確かに、あまねのきみ、と軌跡を描いたのに、声は出ず、音にもならず。
彼の独白を聞きながら、少年は少しずつ引いていく涙を袖元で拭いながらまっすぐに視線を向ける。
瞳が一度、二度、と伏せられ、再び唇が軌跡を描く。
今度は「ごめんなさい」、と。
けれど、音にならない]
…?
[自分で、そこで初めて気がついたように喉に手を当てる]
――花山院邸・奥座敷――
永漂。
そう、法名永漂と”綴ってあった”な。
[一人合点をした。]
そいつは呪を、己の意で扱うことが出来るのか?
──大路──
[墨染め法衣のおとこは 大路に立つ。
多くの人々は 空を見上げ 赤い雨の話をしている。
大路の角で見つかった 腰から下だけの死体の話も混じる。]
季久さまに出会うて、影居の生は本当に報われたのです……
生きていて良かったと、初めて思えた……
だから、もう良い、もう良いのです……
[若宮の頬に手を伸ばし、指で流れた涙を拭って]
もしおれが、安倍を手にかけたのだといったら、貴方はおれを怨むのだろうな。
[細い体をそろりと抱いて、すぐに離れる]
六条院に戻るといい。おれはもうあそこへは戻らない。
愛しい人を殺されたと、怨むのならおれを怨め。
六条院には世話になったと、伝えてくれ。
もう一つ。
身分も弁えずに。おれは貴方が好きだったんだ。
貴方がおれを憎いと、忘れずにいてくれるなら、それでいい。残る旅路で、貴方の手に掛かったとしても、おれが申すことは無い。
[若宮の口が動いて、何かをいおうとしていることは判ったけれど]
[しばしあっけに取られていたが元に戻ることに表には出さぬが心底安堵したようで]
…お前に忘れられた宮があまりに哀れとは思わぬか?
気持ちがお前を鬼とする程の物であったら宮はお幸せなのかもしれぬよ。
私には縁のないものだがな。
[泣く様はあえて見ない。ぽん、と肩を叩き*]
[帳から外を見ると、先程の法師の姿はなく]
今なら、あの法師も居ないようだ。
若君様の足でも、六条院まで戻るのはたやすいだろう。
……声が、でない、か。
その内に、心の傷がいえれば、出るようになるだろう。
癒えずとも、文字で伝えればよい。
[短刀に伸びた手にはもう力無く]
[若宮の頭へ伸びた手は、ゆるく撫でて]
――甘いのは、おれだ。
[今ならば、我が物に出来るのかもしれないと思ったけれど。泣いて、尚それを我慢しようとする姿を見て、その気は失せてしまった]
[恨むかと、問う声に。
戻ればいいと告げる声に。
僅かに首が横に振られる。
もう、今更戻れないと、ばかりに]
………っ。
[首を、幾度も横に振る。
伝えたい言葉は幾らもあるのに。
音に、ならない。
だから、涙にしかならない]
呪…を?
[未だ半ば夢の中に居るような様子で、聞き返します。]
己で出来るのであれば、あの方は…
[件の方の兄を死なせた時の事を思い出して、思い至ります。]
あの方は、幾度も兄上様を怨み呪っておりました。
されども…その時には思い果たせず、
…わたくしが、その思いに添うて…ようやく果たせたようなのです。
[その時のことを思うと、やはり胸が痛むのでした。]
怨み辛みに近しきところにあれど、あの方が己で出来るとは、わたくしには思えぬのです。
[労わるような橘の仕草、肩を叩く手、]
きっとおれは、全部抱えて魂の奥底に封じてしまえば、
季久さまをこれ以上傷付けずに済む、と思ったのだ。
一時、苦しんでも……否、死ぬまで忘れられずとも、
おれの手で、季久さまを滅ぼしてしまうよりは……
だが思い出してしまった以上、いつおれは鬼と変じるか分からぬ──。
――花山院邸・奥座敷――
ほう。
[無我と恒仁を見比べ]
……何故お前がそのものへ添うのだ。
お前を此処へ囲っているのは”明輔さま”か?
[何度も横に首を振る姿]
[藤の香りが漂い]
[若宮の思いを伝えるかのように]
戻らなければ、みなが心配するというのに。戻れないと思うのはご自分だけだ。一度捨てたとして、それを誰も責めないだろう。
戻りたくないのなら僧にでもなるといい。
安倍の後を追いたければ、自分で身を投げろ。
冷たい反応に思えても、おれは、貴方の気持ちをはかる事は出来ない。おれは、ただの人なのだから。
でも、そうだな。
さすがに、若君一人残して、ここを出ることは出来ないよ。
[言って、若宮の隣へ腰を下ろした]
[猫の呪は迷うているのか。
民家の軒先をくぐり、湯とともに薬を飲もうとした顔色の悪い女の足元を走り抜ける。
猫に導かれるおとこが、通り過ぎるとき、女は手にした椀を取り落とし、薬と血を吐いて倒れた。
────…猫の駆け抜ける道々で、薬を飲んだものが死んでゆくは偶然か。
おとこは、ただ、数珠をかかげ、経文を唱える。されども、猫を祓うことはなく。]
[ふるふると、糸の伝えるものを今は声として感じ取ることができる、
若宮の声を聞くことは怖ろしい、
若宮の苦しみの声を聞けば、鬼と化すかも知れぬから。]
(今生で手に入らぬのなら、この世の理曲げてでも)
[だが一方で嬉しく、いとしくもあるのだ。]
(ずっとあなたのお側に居りまするよ……)
[その二つは表裏一体、同じ恋うるこころから生ず。]
[憎しみも、愛も、清も不浄も。
はなからそれは不可分のものであるのかも知れぬ。]
[こくりとひとつ頷いて。]
えぇ。
あの方は…かつてわたくしが山河に在りし頃、迷いて行き倒れて居られたのです。
酷くやつれてうなされるあの方を、わたくしは哀れに思いました。
うわ言で幾度も、父と兄への恨み言を。
あの方の辛い心が、兄を妬み恨むこころが、
…少しでも楽になればよい、と。
わたしは、汐どのに「白藤どのを殺した《者》はおらぬ」と、云った。
(怨念はもはや人に非ず)
けれども、汐どのは呪を作られてしまったのですねえ。
[何時の間にか、猫とはぐれたおとこは、以前に汐にそうした様に、傍らにある黒い狐の首筋に触れる。]
ああ…
兄上は、あなたを好いておいでのようでした、汐どの。
[触れた手のひらは、愛撫するように狐の首を上がり、そのまま長い髪を梳く。今は銀ではなく黒く長いぬばたまの髪を────]
……他の事を考えた方が気も紛れるか。
[ふ、と口の端歪めて自嘲った後で、]
ところで。
お前、本当に一度も誰かを愛しいとか恋しいとか、思ったことは無いのか。
せめて、女に文を出すとか、好き男よと思ったとか、抱きたいとか抱かれたいとか。
[*おそろしく真顔で尋ねた。*]
[隣にある人影に、俯いて。
それは、確かに温かい気配なのだけれど]
[求めているものとの違いは、はっきりと]
…っ。
[唇が、何度謝罪の言葉を紡いだのか。
申し訳なさで、彼を見ることも出来ない。
少しだけ、間が空いて彼の袖を少しだけ引く。
迷い子のするように]
――花山院邸・奥座敷――
それで、いまお前はそいつ
[こちらへおもてを向ける無我を指し] をはべらせて居るのか?
[すこしせせら笑った]
[黒髪] [ぬばたまの] [糸ひく おんなの呪]
気がつけば、引き取られた先──花山院の兄弟が
兄をのぞいて、絶えてしまった事も。
その兄が、子を成せぬことも、母上の呪かと思うていたのだけど。
兄は、おとこ──だけを好む性質だったようだ。
わたしはそれも忘れてしまいたかったが、あの大殿の屋敷で、兄が汐どのを見つめるあの気配で、思い出してしまいました…。
わたしが 今更に汐どのを怨むことはなし
ただ…────
─大路─
[黒き狐は法師が胸に擦り寄りて、心地よさげに目を細めるのです。
漏れる吐息すら、その耳に届いたかもしれません。
名も知らぬ人々が死にゆく様を、クスクスと笑み零して眺めているのです。]
[鏡は見ぬようにしていた、
見ればまた揺れる。]
[今は若宮の声、魂に繋いだ糸から伝わる気配だけで、
充分 なのだから。]
[クスクスとこぼれる 黒狐の声]
…・・葛木
おまえは、行き倒れていたわたしを
兄がおとこを愛することが堪えきれぬわたしを
二度助けてくれた。
[抱きすがり座り込んだまま、空に手をのばす。目に見えぬ誰かをくびり殺すような動作。]
―花山院邸・奥座敷―
…はべらせ…て。
[ふと、その言葉に無我をじっと見やるのです。]
わたくしは…、
この方の受けた仕打ちが、背負う重荷が、
痛ましくて仕方がないのです。
それでもこの方は…己が事は顧みず、わたくしの罪すら背負おうとしてくださる。
[裾を握られ、若宮の方を見やる]
謝らなくていい。
若君様が、謝る必要など無い。
おれは、こうやって横にいても、あいつが死んだことを喜んでるかもしれないんだから。
だから、怨まれた方が、いいよ。
――花山院邸・奥座敷――
それが役目だからだろう?
そうせねば、在る意味など無いのではないのか?
[無我の面を視線で撫で]
そういうものの筈では無いのか
それとも――――妙に情でも沸いたかな
[むつまじいものどもが憎いという、
誰のものとも知れぬ文が頭を過る。
二人……と、数えたものか
彼らがむつましく見えるのは、呪の所為か。]
まあいい。
私には関係の無いことだよ。
邪魔をしたな。
[つ、と下がる。*]
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