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[……今の反応は?
女も、少女のただならぬ様子に気付いた。
だが尋ねるのにも気後れして。
知らない振りは、できなかったけれど。]
そう、ランス。
あいつなら、……なにか、知っている、かもしれない。
[違和感が強く、強くよぎっていた。
それを言葉に還元できないまま、ぎこちなく話す。]
[感情の発露、少女の記憶に関わるなにかがあった。
…………それは。
喜ばしいはずの、ことなのに。
触れてはいけなかった予感がした。]
大切な友達。
[その言葉はとても温かい。
けれど温かいが故に、胸に突き刺さる。]
だからこそ、おれはおまえを危険な目に遭わせたくない。
それに、言ったろう。
おまえはこの村に、なくてはならない。
ナデーシュや、スー……マスターのことだってあるだろ。
[差し差されたままの左手を握りたい。
けれどそれすら出来ず、手は、力無く下がったまま。]
ぎゃー!触手まみれで死ぬのはいやーっ!
[ぬらぬらと光るそれらに顔を青ざめさせる。
一瞬体を硬直させてしまったのを見て取ったのか、カインに体を抱えられてしまう。
奇妙なステップを彼が踏んだと思ったら、景色がぎゅん、と過ぎ去っていく。
とりあえずいろいろ思うところはあるのだが。
私が荷物扱いされるなんて、とか。
いざとなったら私だってズボンを下ろすことをためらわないぞ、とか。
あれ、私は彼の前であの姿を見せたことあったっけ、とか。
忘れちゃったなあ、なんて。
何か落っこちてきたから、それを反射的に口にくわえた。
甘い。
やがて、過ぎる景色に変化が表れる。
鬱蒼として恐ろしい、奇妙で正気じゃない生気のある森から、
どこか、何かを諦めたような、精気の枯れ果てた地のような。]
構わないよ。
集落か、教会か。
その辺にいるだろうさ。
[脳内に警鐘が鳴り響く。
直感のすべてがやめておけと忠告する。
しかし。
それが何になるだろうか?
硬直して痛みすら覚える足を動かして、
なにも考えるなと自分に言い聞かせて。
不自然な笑みを浮かべた。]
[世界が猛スピードで飛んでいき、その速度がゆるくなってきた辺りで、特別にこの森でも大きな部類にあたる木に激突した。
むしろよくここまで、途中の樹木に遮られなかったものである。
抱えていたパースを、反射的に庇うよう、煙草くさい服でぎゅむと抱きしめてから、どさり、比較的低めの草の生い茂った大地に落ちる。
ばさばさ、斑模様の葉っぱが灰の代わりに二人の上に降ってくる。
そこは、歪な植物に侵食されつつあっても、誰かが暮らしていたと判る場所。]
……っぐ〜〜〜〜、痛あ……
[第一声はまだパースを抱きしめる姿勢で動けないまま、当然の呻きだった。]
手紙狂い パースは遅延メモを貼りました。
[特に何事も無く家にたどり着くと、わたしは後ろ手に扉を閉めます。
マスターの奥様の遺品である化粧台が、わたしを出迎えてくれました。
鏡越し、すっかり痩せてしまったわたしの顔と、目が合います。
知らないうちに解けかけていた包帯に、そっと手を触れました。
結び目に手をかけると、簡単にそれは解けて行きます。
嗚呼、やはり、広がっている、と。
晒された左の頬を見つめて、わたしはそう思いました。
もともと肌はそこまで焼けていないのですが、それだけでは済まされないくらいに肌は白く染まっています。
爪を立てると、チョークのように表面が削り取れます。
表面にはもう、感触はありません。
ただ、水などに触れると、この渇いた白い肌は酷く、痛むのです。
今はただ痛むだけのこの咽喉も、そのうちに灰へと変わっていくのでしょう。
灰が齎すこの病の悲しい所は、死してしまうとそのまま亡骸も灰と化してしまう所です。
何れ死ぬなら、わたしも、マスター達と同じお墓に入りたいと思っているのに。]
[分かっているのだ。
どうせ灰のもと、誰もが死ぬのだと。
自分もそうなるのだと。
それはあのとき、前の村で。
夫が死んだときに思い知らされた。
逃げるようにその村を離れ、今の住まいに移って。
毒舌もいくらかなりをひそめて。
この土地で骨を埋めても後悔はしないと。
決めたことを、忘れてはいない。]
さ、おいで。
こっちを抜ければ早い。
[少女の前に立って、脇道に入る。
空を見上げたのは涙が滲むのを忘れるためだ。
自分にも羽が欲しいと、女は強く思った。]
研究者 トロイは、ランダム を能力(占う)の対象に選びました。
……それが。
それが、君の望みなのかい。
[分かっているのだ。これは男の我儘だ。
ギュルを教会へ連れ戻したのも、
ランスを引きとめようと腕を伸ばしているのも]
君にとって、一番救われる選択なのか。
[手が取られることは、なく]
………………………。
ごめん。いつも、我儘ばかりで。
[男は声を震わせながら、笑う]
君を困らせるようなことを、よく言って。
[ぽたり、ぽたり]
本当に優しいのは、君の方だって。
いつだって思ってた。
[涙を流しながら、
それでもできるだけの笑顔を、友人へ向けた]
[唇をかみしめながら、わたしは顔に包帯を巻き直します。
えいっ、と心の中で掛け声をかけながら立ち上がると、化粧台へとずんずん歩んでいきました。
引き出しの一つから、飾模様の入った、両の掌を広げた程度の大きさの箱を取りだします。
蓋を開くと、わたしにとっての宝物がまだ、朽ちることなく残されています。
箱が無事な間は、きっとまだ、大丈夫でしょう。
その中から一つ。
わたしが初めて舞台に立った時にマスターから頂いた髪飾りを取りだしました。
そっと髪のひと房を結いあげて、そっと髪飾りをつけます。
灰となってしまった頭皮から、ごそりと髪の毛が抜けおちましたが、元より髪の量は多い方なのです。
大丈夫です、気にしていません。
髪飾りをつけ終われば、鏡とにらめっこし、小さく頷きます。
明日の朝はこれでいきましょう、と、小さく笑いました。]
[そんな風に、宝物箱の中を整理していけば、マスターから頂いたものがいくつか出てきました。
その中から、わたしの声を収めた音楽盤を選びます。
もう蓄音機は壊れてしまったけれど、これだけでも持って行って貰いましょう。
そうして、音楽盤は傍らに置き、宝物を箱に片付けようとして、手が止まります。
一つの小瓶に目が留まりました。
小瓶には、飴玉の様にも見える透き通った玉が2つ、3つ、入っていました。
いつだったか、酷く咽喉が痛み、その日の演奏を諦めようかと思っていた時がありました。
その時にポラリスさんから頂いた、異国の魔法の薬です。
普通の薬と違い、特別な魔法が練りこまれていると彼女は説明してくれましたが。
今のわたしのこの身体に、それは効果があるのでしょうか。
わたしは瓶をじっと見下ろしながら、暫し、考え込んでいました。**]
[教会へ行く道の途中には、先程寄った酒場がある。
誰かが立ち寄っているかもしれないと考えれば、
教会方面へ向かう前に酒場に立ち寄るかもしれないが、
セルマは居住区・酒場・教会の何処へ向かおうとしたろう。]
[唐突に呼吸のつまる感覚。衝撃。
みしりときしむ音は、カインか、カインが激突した何かか、その両方か。
密着度が上がったせいで、紫煙のなごりが目にしみる。
土の香りも葉の香りも、かつてのものとは全く違うから戸惑う。]
……ひょい。
ひゃいん、らいひょーふか。
[唇で食んだ飴が押されてつまらないように注意しつつ、まず、ぽんぽんと彼の背をタップする。
呻けるのならそこまで心配無用か、などと早合点しながらも、労るように彼の背中をさする手の動きにした。
鹿のお陰で馬の痛みはほとんどないから。]
いひゃいのは、わはった。
ひゃぐさめてひゃるから、
ひょりあえず、ひょけ。
[ひょけ、の命令にのろのろと従い、らいひょーふだと、力なく手を上げて見せた。
カインの飴の行方を、若干涙目のあまり良いとはいえない目つきが見つけ、何かを言おうとして、背中の痛みにみっともなく呻く。
元々の小さなとある一族の住処が其処だと、意識はしてもはっきり確認し認識するには暫しを要した**]
[教会と墓地は共同になっている。そして墓地があるのは――例によって村の外れだ。死は忌避されるものであり、死病の発生する恐れのある墓地もまた、隔離しやすいよう外れとなる。
かつては小ぢんまりとしながらも荘厳さを保っていた教会も、訪れる人の減少に伴い、また灰によって痛み、荒れ果てていた。
空の灰色を伴って、非情に薄暗い退廃的な印象を醸し出すものに変わっている]
いや。
我儘を言っているのはおれだ。
[首を左右に振る。
友の涙を見れば、胸がひどく締め付けられた。
けれど、涙は出なかった。
災いを振りまいておいて、泣くなど。
できるはずがなかった。]
今まで散々甘えておいての、これだ。
文句のひとつでも言ってくれ。
投票どうしよう。
ランスとエステルは突然死にそうにはないから、そこを避けるか。
マンダムもといランダムも危険かしらん。
毒舌家 セルマは、占星術師 ヘロイーズ を投票先に選びました。
人造妖精 エステルは、占星術師 ヘロイーズ を投票先に選びました。
[――ぱちり。
視線が見慣れない天井とぶつかり合う]
………、おねえさん?
[眠気の取れきっていないふわふわした声で誰かを呼んで、
すぐに、自分で自分の言葉に首をかしげることになる]
なんで。
――ここでねてたんだっけ。
文句か。そうだな。
賭け勝負の結果が分からないまま逃げるなんて、
ずるいよ…。
[泣いたことなんて、
最近ではほとんどなかったのに。
涙を乱暴にぬぐいつつ、何とか言葉を続けて]
投票を委任します。
人造妖精 エステルは、手紙狂い パース に投票を委任しました。
投票を委任します。
人造妖精 エステルは、中毒 カイン に投票を委任しました。
[ゆっくり身を起こすと、身体から毛布が滑り落ちた。
拾い上げて被せなおして、はたと気付く。
思い出したとも言うべきか]
これ、もしかして。
さかばのおねえさんが?
[辺りを見回すが彼女の姿はない。
それを認識すると同時に。
目を覚ましてから――いや、その前からずっと傍を取り巻いていた暖かさが、
すっと消えていったように感じて。
震える。
毛布をしっかり被ったままソファに身を沈めてそれをこらえようとする]
――…っ。
[くぐもった声が漏れるばかりで。
スー自身も気付かないうちに流れ、ナデージュの手で拭われた涙のあとからまた、
もうひとすじ涙が流れることは、なかった**]
[彼がいつもよりも鈍い動きで動くのは、背中が呪わしく痛むからだろう。
原因となった樹木を目視して、これは痛いと顔をしかめた。]
おお、ひょしひょし。
[とりあえず約束通り慰める。
その角についていた土くれをやさしく撫でて落としてやり、背中をそっとさすってやる。
涙目なんて珍しいものも見れたが、その視線は己の口元にあるから]
ひゃるいな、つい、はんひゃへきに。はは。
[悪いだなんてかけらも思ってないような清々しい表情を浮かべ、ばきり、と噛み砕いた。
あたりは―とても、静かだった。
死にすぎて死にきった場所のように、その静けさが耳に痛い。*]
投票を委任します。
研究者 トロイは、中毒 カイン に投票を委任しました。
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