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歌手 ソランジュ は、冒険家兼フリーライター トマ を占った。
次の日の朝、結社員 シュザンヌ が無残な姿で発見された。
《★占》 冒険家兼フリーライター トマ は 人間 のようだ。
死は恐怖と疑惑を生み、廃墟の町に集った人々の間に疑心暗鬼が生まれた。
猶予の刻は終わり、あらたな滅びが始まる。
現在の生存者は、歌手 ソランジュ、冒険家兼フリーライター トマ、旅人 ガイ、学生 ポーリーヌ、大学生 ニコ、宿無し ザジ の 6 名。
>>1:181
――…異変。
[言葉を飲み込んでみるものの、うまくいかない。
シュザンヌの言葉を、ただ反芻することしかできなかった。]
わかりました。
いえ、自分には何が何だかよくわからないですけど…。
でも、貴女が必死になって何かを伝えようとしている…その事実を無下にすることはできません。
[肩で大きく息を吐く。]
まったく――…「恐怖」がどこかに潜んでいるっていうのに、その正体がわからないなんて、厄介だ。
ありがとう、シュザンヌさん。
いろいろあって疲れたでしょう?
今日はゆっくり休んでください。
男の自分がここにいたら、ゆっくり休めなくなっちゃいますから、そろそろ失礼しますね。
[いつもより雑な足音を立てながら、階段を降りる。
口に煙草をくわえ、ぼーっとした表情でシュザンヌの言葉を頭の中で反芻する。]
――…さっぱり意味がわからん。
「恐怖の元」が分からないのに警戒しろだなんて…どこをどう警戒すればいいのやら。
[ポケットからライターを出し、手の中でくるりと回す。]
灰皿、どこだろ。
―旧バンクロフト邸エントランス―
うぃーす、おじゃましまーす
[扉を押し開ける音。
続いて気の抜けた青年の声が響いた。
声と裏腹、青い眼はあたりを油断なく見ているようである。]
…いっか。
[どうせ誰も見ていないだろうと高を括った。
それに、覗き見てくるような男もいるまい。
この場所はそもそも廃墟なのだから
人がこれ以上に増えることもきっとないはずだ、と。
ジーンズを脱ぎ落とし、ワンピースを脱ぎ落とし
下着や靴さえも脱いでしまえば手元に残るのは
自宅から持ってきたバスタオルと眼鏡だけ。
髪を下ろせば背の中ほどまでまっすぐな栗色の髪が落ちる。
眼鏡とタオルはすぐに手の届くところに置くと
井戸から水を上げた。
いい歳をした女が無防備すぎるといわれたら
きっとそれまでだったが
この須らく異常な場所では何が常識なのか]
[シュザンヌはそのまま、考え込んでいるみたいだった。]
水、もっと汲んでくるわね。
ほんとうは、もっと大きな水筒があればいいんだけど。
[あたしは、彼女が飲みきまってしまった空のボトルを持って部屋を出た。
今ここにいる皆。
その事情は、それぞれ全然違うはずだし、それが今日なのだって偶然だ。
そうでしょう?
だから、もしその全員の命を狙う理由があるとすれば。
あたしたちがここにいること、そのものくらいしか思い浮かばない。
自分の縄張りに入った者を絶対に許さない、偏執的な人が住んでいるとか?]
―旧バンクロフト邸・エントランスホール―
[カチッ。カチッ。カチッ。カチッ。カチッ。
オイルライターの蓋を開いては閉じる]
……おう。随分と遅かったな。
[階段の最下段に腰掛けた男が、不機嫌そうな顔で声を掛けた。
片手はライターを落ち着きなく弄っている。]
[階段の途中で、ガイの姿が見えた。]
ガイさん。
ライター持って何しているんですか?
ああ、そうだ。
煙草を吸いたいんですけど、この屋敷に灰皿ってありますかね?
[煙草の先をくいくいと上下動させながら尋ねた。]
―旧バンクロフト邸エントランス―
おう、寄り道してたらちょっとな。
――ああ、こっちの車も駄目だったよ、
ご丁寧に放火済み。
[大きく肩を竦めた。
記者――トマの姿を見止めるとよう、と片手を挙げた。]
>>7
おう……って、そっか。ニコの車もか……
何だか凄い話になってきたなぁ。
持ち主に気づかれることなく、同じ日に、何台も車が放火されてるなんて……。
[煙草を一度指で挟んで、大きく溜め息を吐いた。]
まったく――…どこの誰がそんな真似できるんだか。
旅人 ガイは、宿無し ザジ を投票先に選びました。
>>8
確かに。家財道具一式、ご丁寧にごっそり持っていかれてますし。大物から小物まで、何もない。
今のこの屋敷の取り柄は「雨風凌げる」ってことぐらいですかね。
あ、ライター持ってるなら、煙草、ご一緒します?
>>10
ええ、目を覚ましましたよ。
まだ少し憔悴しているようにも見えましたが…
一応お話はできるみたいです。
ソランジュさんにお任せして、自分は一足先に出てきました。
俺は煙草やめたんだ。
[とぶっきらぼうに答えたすぐ後に、]
……いや、持ってるなら一本くれ。
[内容のわりに「渋々」とか「嫌々」と形容されそうな態度で立ち上がった。]
>>13 >>14
はい、1本どうぞ。
セーラムだけどいいですか?好みが分かれますけど。
[箱から煙草を1本取り出し、ガイに手渡した。]
シュザンヌさんは――…
[しばし考え込み、告げる。]
「皆の生命を狙っている者がいる、マイルズ氏はその予兆だと思ってくれ」と。そして「異変があったら教えて欲しい」と――…
何故そんなことを言うのか、その理由までは教えて貰えませんでしたけどね。
冒険家兼フリーライター トマは、宿無し ザジ を投票先に選びました。
>>22
――…いえ。
少し顔色が良くなさそうだったので、気になりまして。
とにかく、ガイさんも気をつけてくださいね。
そして、何かあったら、シュザンヌさんに連絡をした方がいいのかもしれません。
[ザジの車は、通りを抜けて無理矢理スピードを落とさぬまま角を曲がろうとした所で、消火栓にぶつかり、無意識の操作でバック。
鋭利な瓦礫(ガラスが含まれていたかもしれない)の上を激しく滑る感触があった。
タイヤがパンクしたのだろうか。]
ひ、と?
[ザジは、自分が遠ざかった所為でもう見えない炎上車の方を振り返りながら、慌ててブレーキを踏んだ。最終的には、窓硝子がすでにすべて落ちた商店のウインドウにのろのろと突っ込んで停止した。]
……ああ、あああ
あああ。
はあ、はあ、あ。
[軽く胸や太腿を打ったが、大きな怪我はない。
荒い息を付いてハンドルに倒れ込むと、落下する車のフロントガラス。
手のひらがザクリと切れて、赤い血が流れた。]
[それから、急に息苦しさを感じて、眉根を寄せた。
手をかざす。目の近くの皮膚──そうちょうど火傷の痕の上に滴る血の雫。]
あかい
あまい
否、…………
無人のはずのヘイヴンに
何故?
私以外の人間が……。
宿無し ザジは、学生 ポーリーヌ を投票先に選びました。
……ああ。
[重い息を吐いて。今度は頬ではなく、手のひらの傷口を直接舐める。
そのまま、暫くの間、血の味と香りを味わうように目を閉じて、荒い呼吸だけを繰り返した。]
─ 壊れたレンタカー ─
[どれ位の時間、そのままの姿勢で目を閉じていただろう。
血の流れた手首には、もう唾液が滴っているだけの状態になってから、ザジは緩慢な動作で、落ちた手帳と助手席に置いてあった荷物が散らばっているのを集めた。
曲がったドアを押して、外へ出るのに四苦八苦する。
結局は、車内にあった工具箱の道具でドアを半ば破壊して外へ出た。何故か胸が詰まり息が苦しく、今の自分の様子を友人が後で知ったならば、向こうが激怒して強制送還の目に遭うだろう事すら想像する事が出来なかった。]
あかい 血。
あかい 炎。
……否、ひとが居た、として。
誰、誰でも 良い……。
他に誰が居ても、私には関係が、無い。
私は ただ……、
この町で起きた出来事。
厄災の真実に触れる事で、私が失ったもの を……。
[ザジは、性質の悪い恋煩いのように疼きざわめく胸を押さえて、よく見れば大量のマネキンが床に転がっている商店と、壊れた(タイヤもパンクしていて走行が困難ではないかと思われる)車を放置して、歩きはじめた。
もし自分が立ち去った後、他と同じようにこの車が炎上しても、ザジが気に留める事は無いだろう。]
[『それ』は破壊された商店の前の街路に佇み、去りゆくザジの後姿を眺めていた。
道にはガラスの破片と、砕けたマネキンの肌色の欠片があたり一面に散乱している。]
…… あ。
[ボロボロの手帳と鞄を強く握り絞めたはずが、落とした。
何故か急激に嗅覚が鋭敏になり、ここからは離れた、複数の車の炎上跡の煙が突き刺さる。自身の顔の表面が焼かれた時の臭いまでもが鮮明に甦り、長い前髪を乱して身をかがめて呻いた。]
……ああ、ああ。
あああ。
いやだ、兄さん。
違う、
ちがうッ!
[何故自分が「兄」と口にしているのか、ザジにはよく分からない。
何故なら、どうやって火傷をしたのかも覚えていなければ、兄の記憶も無かったのだから。]
[ 静止する世界 ]
[ 黄金 ]
[それを何と表現すれば良いのか。
自身の上を流れ、簡単に背けられた眼差しに、脳が──掻き混ぜられるようで。]
──……ッ!
[言葉を失い、その場に前のめりにうずくまる。]
[背筋を流れる電流。
息が止まる。酸素が足り無い。これは、まるで──]
…… 待ッ
[言葉を口に出来たのは、優美な獣のような背を見せつけて「彼」が去った、後。]
[再び目を上げた時、『それ』の姿はどこにもない。
白昼夢か、或いは過去の記憶の残滓か。
夢を見ているのは、町か、人か。**]
─ それから ─
[少しふらつき、時折呻き声を上げるものの、再び歩き始めたザジの足取りは速いと言っても良かった。手当もしない新鮮な傷口、熱に浮かされたような意識。
それでも、良心が贖罪を求めたのか、ザジは何時の間にか十字の無い奇妙な教会に辿り着いいていた。奇妙と言っても、ザジは繰り返しなぞったヘイヴンの地図をほぼ記憶しており、教会への道のりは目印になる役所跡と図書館のお陰で、困難ではなかった。また、そこに十字が無くとも教会である事はすぐに分かったのだったが。]
あ。
[見つけたのは、廃教会の前で何やらメモを取っている明るい色彩の若者の姿>>1:158。廃墟──朽ちて機能を失った町に不似合いにも感じられる生者の気配。]
―エントランス―
なに、って。
それこそオバケでも見たみたいな顔してたからさ。
[すぐ表情を戻してしまった男の眉間あたりをすれ違い様指し示す。
青い目は若者らしい好奇心にきらめくようであった。]
ナニ?気になるコトでもあった?
[火をつけぬままのくわえ煙草が言葉にあわせて揺れる。]
[さてこちらの青年、
正体不明の闖入者に後をつけられているとは気づいていなかった。
精々、足音がしたような気がする、と感じる程度。
この屋敷に向かっていることもなんなくわかるに違いなかった。
――さすがに“そちら側”は専門ではない。]
無愛想なやつー。
[気づかぬまま、ちぇー、と青色の半目。]
[>>44ニコの顔をじっと見つめる。
なんとなく彼が興味津々という様子でガイを見たくなる気持ちがわかった気がしたから。]
とりあえず――…外、行ってくるね。
ガイさんの言う通り、お屋敷に火をつけたらまずいから。
[そう言って、エントランスから外に出た。]
―旧バンクロフト邸・入口―
……あれ、なんか臭うな。
[すん、と鼻をならして首を傾げる。]
血の臭い?しかも、すっごく新鮮な。
いや、血?なんで?
[セーラムが持つ特徴的な煙の匂いの向こうに、僅かながらに血の臭いがする。普段はそんなものを感知できなのに、何故わかるのだろう。]
――…?
これが、異変、なのかな。
[トマの周囲に、血の残り香を持つ異様な雰囲気の男が居るということは、気づけずにいた。]
―エントランス―
[払いのけられた手を
またもひらっと翻しポケットへ。]
りょーかい、
俺はちょっときゅーけいするわ。
[言って、栄華の残り香漂う屋敷の天井を見上げた。]
……バンクロフト邸、か
[ちいさく呟く。
笑みはなく、青い目は鋭く細められていた。]
おい、他のやつらは?
[肩越し投げ掛けた声は妙に反響した。]
[煙草をいったん指に挟んで、喉をごくりと鳴らした。
何故自分がそんなことをしたのかが分からないが、妙に心地いい感触を喉の奥に押し込めたい――…そんな気持ちになったのだ。
血だ、そう、血の臭い。妙に甘美な心地の正体は。そう感じるまでに、さほど時間は必要なかった。きわめて癖が強い煙草の匂いの隙間をぬって、甘く柔らかな血の匂いがトマの肉体に侵入し、彼の内臓をねちっこく撫でるのだ。]
[もう一度煙草を口にくわえ、その特徴的な強い臭いを肺に入れる。そして彼は、ふらりとした足取りで、裏庭の方へと向かっていった。]
ー井戸ー
ひ、っ
[頭から被った水は疲労で火照った肌には冷たく、
最初は心臓が止まりそうなほどのものに思えたが
続けていくうちにあまり気にならなくなった。
髪に石鹸を擦り付けても最初は泡がたたず、
根気よく繰り返して漸く石鹸が石鹸らしい泡立ちを
見せた頃には足元が泡だらけになっていた]
…凄いなあ
[自分でやったことに感嘆を溢しながら
タオルに手を伸ばす。
つつまる優しさが日常を思い出させて
少しだけ瞼が熱くなった]
…どうしよう
[辺りには石鹸の匂いがする。
でも、それよりも血の甘い匂いにばかり意識がいく。
じわじわと、頭の奥までそのことしか考えられなくなりそうで]
こわい。
[口に出したら涙が落ちそうで
それだけは我慢した]
―旧バンクロフト邸・裏庭―
[水をどこかにかけている音がする。井戸の周りに誰か居るのだろうか。それから、石鹸の匂いも。]
――…石鹸?
[煙草をくわえたまま、唇が小さく動く。
足元でぴちゃぴちゃという水音が踊り、浅いぬかるみの中に入ったトレッキングシューズの爪先がじんわりと汚れていった。
まるで引き寄せられるように、少女が水浴びをする場所にたどり着いた。]
[このままではタオルの柔らかさに負けてしまうと
タオルをはずして体を洗うことにする。
太くもなく細くもない体だが
裏の森を背景に白い肌がぼんやりと浮かぶようにある。
ぬかるんだ足元はともかくとして
何日かぶりに汚れを落とした少女は
最終的に明るい表情を見せた。
考えるより先に体が反応した結果だった]
二人の足音が遠ざかっても、シュザンヌはまだ考え込んでいた。
『奇妙な旅人』は今この町にいる。それは炎上する車を見た時に確かに感じた。
だが、炎のヴィジョンの主は『彼』ではない。
あのイメージは『彼』と強く結びついているが『彼』そのものではなく、『彼』と関係した誰かが抱いているイメージなのだ。
不可解なことは色々あった。
『奇妙な旅人』は人狼禍のあった場所を周期的に訪れるが、今回はそれが早すぎる。最低でも2世代以上が基本なのに、大火災から10年も経っていない。
結社の調査がきっかけで彼をここに呼び寄せてしまったのなら、あの写真は一体誰が何の為に公表したのだろう。
どうして今日この日に集まると分かったのだろう。
やあ――…水浴び?
ここの水、結構気持ちいいよね。
おなかが弱くなければ、少しくらい飲んでも問題なさそうだし。
[紫煙を吐き出しながら、トマはポーリーヌに語りかける。
口調は穏やかではあるが、前髪の間からのぞく彼の目はどこか獣のような色をしていた。]
それにしても、自身も混乱していて、あまり良い説明ができなかったのが悔やまれる。
せめて、かつてヘイヴンを襲った連続殺人者がこの町に戻ってきて、あなたたちを狙っている可能性がある、とでも言えば、彼らもいくらか理解しやすいだろうか。
次はそう説明しようと考えた時。
きゃっ?!
[後ろから声が聞こえるまで気づかなかったのは
自分がたてていた水音のせいなのだろう。
一瞬慌てたかのような顔で振り返り、
急いでバスタオルに手を伸ばす。
せめて前だけでも隠したかったのだ]
…す、すみませんごめんなさい!
暫くお風呂入ってなかったから水があるって聞いてそれで…っ
[慌てた声と共に頭を下げれば、
まだ水の滴る栗色の髪が滴と共に跳ねる]
[――いつの間に入り込んだのか、『それ』が扉の前に立っていた。
日が翳り、陽光が届かなくなった部屋半分の暗がりに『それ』はいて、シュザンヌを観察していた。
澄んだ琥珀色の瞳は、底に黄金の光を湛えていた。]
>>55
――…別に謝ることじゃないよ?
だって「俺」も同じことしたし。
[トマはくすりと笑い、すっかり短くなった煙草を投げ棄てた。ポーリーヌから続く細い水路に火が触れて、小さな音を立てて消えていった。
ぴちゃり、ぴちゃりと水音を立て、ポーリーヌの方へと近づいていく。そして彼女の白い腕に向けて、日に焼けた手をそっと伸ばした。]
シュザンヌにはそれが誰か、すぐには分からなかった。
「……マイルズ?」
眼を見開いて、闖入者を凝視した。
そして、それが誰かを理解すると、動けなくなった。ひくりと喉が鳴る。頭の芯に痺れが拡がり、部屋を包む炎の赤を幻視した。
その一方で、この訪問をずっと前から予期していたような奇妙な感覚も覚えていた。
…緊張感ないかな、と思って
[口の中でもごもごと言葉が続く。
近づいて来ることには不安はなかったが
伸びた手が動くと流石に驚いた。
石鹸の匂いの中に、煙草のにおいが混じる。
不意に、強く他のにおいが感じられた]
…怪我、してます?
[ほんの少しの、血のにおい]
高まる緊張の中で、思考があちらこちらへ飛んで乱れた。
どうして気付かなかったのだろう? ずっと傍にいたのに。
いや。最初に出会った時に、ヴィジョンはもう答えを教えていた。
私が視たのは、彼が私に重ねていたのは、一人でなくて二人の結社員の顔と姿、それが混じり合って、だからすぐに誰とは分からなかったのだ。
一人は、『彼』の実在を証明するのと引き換えに恐ろしい代償を支払った
もう一人は、
>>58
――…怪我?
[首をこくりと傾げて、柔らかな笑みを浮かべる。]
どこからか血の匂いはするけれどもね。
少なくとも、俺のじゃないよ。
[ポーリーヌの腕を、トマの指がそっと這う。]
そして、キミのものでもない。
――…じゃあ、誰のだろう?
―旧バンクロフト邸エントランス―
[煙草に火をつける。
細く長く煙が流れた。]
んー……
[見聞するように調度品やら部屋の作りやらを見る。
埃をはらい、指先で確かめた。
その様子は、調査でもするようである]
――……やーな感じだなァ……
おねーさんたちは大丈夫かね。
[ふ、と煙を吐き出して歩きだす。]
僕の立ち回そうな場所に、あなたたちが仲間を配置して待ち伏せしているのはずっと前から気が付いていましたよ。
昔はあなたたちの相手をするのも、それなりに面白いゲームでしたが。
科学技術とやらがこれだけ発達したからにはもう駄目です。
髪の毛一本迂闊に残せやしない。
[肩を竦め、笑い含んで囁く。
『それ』は今に至るもあくまでモデルに忠実に模倣を続けていた。]
それに、もう罠をはって待ち構えるなんてできなくなるでしょうし……ね。
[『それ』は身を屈め、慇懃に礼をした。]
さようなら、マドモアゼル・マレー。
短い間だったけど、あなたとの旅は楽しかった。
[触れられると、肌に電気が走ったような
そんな錯覚を少女は覚えた。
正確には、それはただの錯覚だったのだが、
その刺激に対して確かに身を強張らせた]
…知らないうちに、とかではなくて…?
[冷えていた肌に、青年の体温が重なり
そこからじわりと疼くような熱が肌に広がって
体を隠すタオルを無意識に強く握った]
[圧倒的なヴィジョンが訪れた。
深く暗い原生林、
火刑台の下に詰まれた粗朶の山、
粗末な毛織のスカートを翻して走る少女、
からだを開かれる時の苦痛と精液の苦い味、
曇天の空と灰色の海が水平線の彼方で溶け合い、
降り注ぐ火花、人体の焼けるにおい、燃える町。
それはシュザンヌの意識全てを攫い、魂すらも運び去った。]
>>64
あははっ……まさか。
一応これでも身体が資本の仕事なんだから、怪我に気がつかないとかなら、ちょっと変だよね。草で切ったとかなら、ともかく。
[ポーリーヌの腕をぐっと掴み、彼女の手首に噛みつこうと、口を開けた。]
――静寂。
斑に赤を塗りたくった、真白い四肢を投げ出して、彼女は独り影に沈んだ部屋に横たわる。
ブルーグレイの瞳が虚ろに宙を見つめていた。
それはそうかもですけ、ど
[掴まれた腕に走るのは痛み。
眉をしかめ、表情が歪む]
…トマ、さん?
[歪んだ表情のまま少女が見たのは
自分に食らいつこうとするおとこの顔。
見える未来は自分につく歯形のあとと
きっといっそう濃くなるだろう血のにおい。
手を振り払うべきか、否か。
躊躇いよりも先に勝ったのは]
い、やぁっっ!
[未知に対する恐怖。
振りほどこうと、もがいて]
[トマはポーリーヌの手首に思いきり噛みついた。
噛みついた場所から、血脈のリズムが伝わってくる。
少女特有の柔らかできめ細かい膚の感触を舌と歯で味わう――…ポーリーヌの目を、茶色に染まった獣の目でじっと見つめながら。
いくばくかの時間の後、トマは口と手をポーリーヌの腕から離した。それはあくまで悲鳴に反応した動きではなく、彼の意志で。]
――…ごめんね?
[獣と人間の狭間のような表情で、にこりと笑った。]
[抗いきることはできず、手首に残るのは
獣に噛みつかれたかのような歯形のあとと
そこから滲む赤い血のにおい]
…いや、
[肌を、傷口を、舌で嬲られるその感触は
少女にとっては未知のもの。
自分から漸くトマの指と下が遠退くと
ひとつ、ふたつくらい後ろに後ずさり
怯えたように明るい色の瞳からぽろぽろと涙が落ちた。
自分が知らないものに怯えるその様は
幼い子供に少し似ていた]
―正面玄関―
[どこからか短い女の悲鳴のようなものが聞こえてきて、ハッと我に返った。
立ち上がり、辺りを見回す。
響きからして屋敷の中ではない、多分裏手の方だと検討をつけて、小走りに裏庭に向かった。]
おい!! 何かあったか?!
[普通であれば、この広い屋敷ではよほど大きな声でない限り、離れた裏庭からの悲鳴などなかなか聞こえるものではないことには気付いていない。]
―旧バンクロフト邸―
[ぎし、と床が軋む。
埃の乱れた場所を追うように歩いていたが]
っ、――……?
[微かに悲鳴のような音が聞こえた気がしてとって返す。]
おい、どーした?
[やや大きな声で呼び掛けた]
いや
[手負いの獣のように震える。
聞こえてくる声に怯えながら、呻く]
やめて
怖いの
[聞こえる声に抗おうと]
あたしを、変えないで
[叫ぶ]
───思い出させないで…!
なんでだろうね?
ちょっとした「出来心」ってヤツ――…?
[ぽろぽろと涙を流すポーリーヌの目を見て、自分の心臓がどくんとはねるのを感じた。彼女の手首と自分の口内から漏れ出る、芳しい血の香りを感じて、手で口許を拭った。]
いい匂いがすると思わないか?ポーリーヌ。
いい、におい?
…知らない、そんなの、知らない…!
[首を横に振る。
必死に否定を繰り返す。
本当はわかっているのだけど、認めたら
自分もきっと彼のようにようになってしまうのだと
そんな朧気な不安が声になる。
だからだろう、裏庭に現れた帽子の男に
縋るような明るい色の瞳を向けたのは]
――…そう?
[くすりと笑って、ポーリーヌの様子を観察する。
唇に人差し指をあて、]
何故だろう?
キミの血がね――…妙に「美味しい」んだ。
わかる?――…わかってもらえると、嬉しいんだけどな…
[ポーリーヌの視線の先に、誰かの人の影があるのだろうか?首を傾げ、少しだけ後ろに視線を向けた。]
―裏庭―
[裏庭に辿り着くと、井戸の前に二人の男女が見えた。
ニコの背ごしに、白い素肌をタオルで申し訳程度に隠したポーリーヌが見えて、まず度肝を抜かれた。
だが、何よりも。
目に涙を溜めた少女の、縋るような眼差しが男を射た。
白い頬には濡れた筋が幾つも痕を残していた。]
こ、の
[頭にカッと火がともった。
激情に視界を赤く眩まされたまま、トマに飛び掛った。]
[だいたい、異常って言ったって……。
旅行先でいきなりこんな事件に巻き込まれて、何が起こっているかもわからなかったら、誰だって普通じゃいられないわよ。
頭痛はもう、意識するのを忘れるくらい、鳴り続けているし。]
[怒りが理性を黒く――否、鮮血の赤で塗り潰した。
たとえ何を言われようと、頭が言葉と認識しなかったろう。それは雑音に過ぎなかった。
抵抗や反撃にも躊躇せず、容赦なく殴りつけた。殴り続けようとした。]
わからない、わかりたくないです
[理解してしまったらお仕舞いだと
頭の奥で誰かがいっている。
けれどそれが誰なのかはわからない。
裏庭に増えた人影がこちらに近づいてきて
彼もまたそうなのだろうかと身を竦めた。
けれど掴まれることもなく、それどころか目の前で
起きたことに呆然として]
[ガイに思いきり殴られ、よろりと後退する。
口の中に広がる血の匂いに、思わず口許を弛めた。
少女の血の匂いと、彼の血の匂いが交差し、混じり合い、絡み合う。
彼は暴力に抵抗をしない。
抵抗をせず、まるで鉄の仮面を被ったかのように、ガイの目を見て、笑っているだけ。]
[声が、聞こえた。
否、それは聲だ]
…だ、れ
[聞き覚えのあるような
それでいて違うような]
……誰か、いるの
[脳裏に過る、金色の瞳の]
[雄]
[トマの胸倉を掴み、笑みを浮かべた口元に拳をぶつける。
殴打の嵐は止まらない。
威嚇に歯を剥き出した男の顔は悪鬼じみて、まるで笑っているようだった。]
[裏庭からは水音がして、あたしは一度引き返した。
もう一度水浴びしている誰かを見てしまいたくなんてないし。
水を汲んでいるだけなら、すぐ戻ってくるだろう。
あたしはがらんとした廊下に戻って、ゆっくり歩いた。
打つたびに頭に響く脈の速度に合わせて。
あたしの脈拍のリズムはたいてい、速度標語ならラルゲットの範囲に収まる。
でも今は、もっと速いみたいだった。
アンダンテ(ゆっくりと歩くような速さで)。
肺を大きく開いて、深い呼吸。
リズムに合わせて、肩の筋肉を動かす。
普段はそれで、けっこう硬くなった身体をほぐせるんだけど。]
いらえは奇跡のように返ってきた。
音声に直せば非人間的な響きを伴うであろう、短いこたえ。
「 イ ル 」
ノイズは潮の如くに低く小さく遠くへと退いていった。
今やはっきりと聲は意思を伝えていた。
ああ、もう。やだなぁ。
そのへんにしてよ、ガイ。
歯が折れたら、困るじゃない。
[薄ら笑いを浮かべた後、地面に血へどを吐いた。]
あーあ、もったいない。せっかく甘かったのに。
でもさ、キミもなかなかの表情をするね。
怒っているの?それとも――…笑っているの?
[つんと、甘い匂いを感じた。
汗の匂いだろうか。
一日、晴れた外にいたんだから、きっとあたしも相当、汗臭いに違いない。
せめて、タオルを濡らして拭こうかな。
あたしはリズムに合わせて、深く息を吸い込む。
甘い――乾いた汗よりずっと甘い匂い。]
[一旦殴る手を止めると、熱は急速に醒めていった。
男はトマの胸倉を掴んでいた手を離すと、己を恥じるように俯いた。
帽子のつばが男の顔の上半分を隠し、両目の辺りに濃い影が落ちた。]
―旧バンクロフト邸―
……おい!? どーしたんだよ!
[もうひとつ、呼び掛ける。
ぎし、と足の下で床が哭く。]
っ、――……?
[鼻下を手の甲で押さえた。
なにかのにおい。
ねばつくにおい。
ざわ、ざわ、と背中を逆撫でするような感覚がある。
きつく眉を寄せた。]
[頭痛が引いていく。
まだ少し耳鳴りはするけど……そんなに不快じゃない。
でも何だろう……。
まるで、誰かがあたしの知らない曲を頭の中で歌ってるみたいな感じ。
これが何ていう曲だか思い出せたら、もう気にならなくなるんだけど。
っていう、いらいらする時の気持ち。]
[あたしはそのリズムで歩き続ける。
アンダンテ(ゆっくりと歩くような速さで)。
――歩くのには向いている。
深く息を吸って――リラックス、眼を閉じる。
甘い――空気を吸う。]
[甘い――あたしは眼を開く。
ああ……彼女はすごくきれいな真っ白い膚をしてるわ。
それが嫌いだから、あんなにしっかりスーツを着ていたのかしら。
少しあたしと似ていたのね。
そんなことをゆっくり、あたしは考える。]
[震えながら後ずされば、ず、と
爪先に泥がまとわりつく。
目の前で起きた乱闘に目眩を感じながら]
…っ
[咄嗟に、着替えを掴んで走り出した。
ここでなければよかった。
だれも人のいないところに。
泥を纏う草むらの上にポツンと
転がり落ちていたのは少女の眼鏡と
少し溶けた固形石鹸だった]
[あたしは甘い――その痺れるくらい甘い匂いの源に、指を触れる。
温かい皮膚を流れる、まだ腐っていないきれいな血。
ぬめる――きらきら光る赤をつけた指を、あたしは――。]
[あたしは、シュザンヌの胸の上に、屈んでいた。
彼女の真っ白な……真っ白な身体の中心から、まだ流れ落ちている……。]
あ……あぁぁ。
[彼女の瞳は――まるで鏡に写したみたいに――あたしを見つめ返している。
瞬きもしないで――。]
>>84 >>85
あーあ。楽しそう、だったんだけどな。
また元のカオに戻っちゃったね――…
[血の色に染まった歯を見せて、ニィっと笑ってみせる。
それはまるで、ガイに見せつけるかのような仕草でもあった。]
ねえ、ガイ。
そうやって誤魔化してるけどさぁ、キミ、知らないフリして実は知ってるコトって、いったいいくつあるの?
ふふ……そうだよ、この屋敷のコトだってそう。
キミは何かを「知りすぎている」気がするんだ。
――…殴ってもムダだよ。
俺を殺しでもしない限り。
だって俺、こんなに殴られてるのに、勃ってきたもん。
[口を閉じ、舌先を小さく出した。]
――――……おい?
[ざわざわ、ざわり、と頭の奥が警鐘を鳴らす。
鳴っているのに、吸い寄せられるように銀髪の元に近づいていく。
どろり、とまとわりつくような、かおり。
鮮やかに、まるで絵画のように塗りたくられた――――]
っ――――、……!!!
[息を、飲む]
[あたしは
彼女に
触れた。]
ね、ねえ……。
[あたしは、振り返る。
誰もあたしを助けてくれるはずがない。
そんなこと、わかっているのに。
きっとまるで――助けを求めるみたいな顔をして。]
ーバンクロフト邸・厨房ー
[走った後を残すように、泥の足跡が
廊下の上に点々と続く。
その場所には他の部屋と同様に
あまり目立った忘れ物はない。
大きく息を吸い込み、それから膝を折って座り込んだ。
濡れた体を、足の泥を、タオルで拭うと
漸く着替えに袖を通す。
ふんわりとしたデザインの、真っ白なレースのワンピースへ
羽織るように袖を通し、フロントのボタンを一つずつ止める。
その手が、途中で止まった]
…う
[袖から伸びた手首には噛み痕がまだ覗く。
それがなんだか辛くて涙が綿生地に水玉を作った]
……シュ ザン ヌ 、…… ?
[目眩がするよほどたちこめるかおり。]
…… ……な、ん、
[ふら、と近づく。
虚空を映す双眸はもう瞬きをしない。
側にかしずく銀の髪が何故だか人間離れして見えた。]
これは、 いったい
[頭に響く聲は、居る、といった。
聲だけが聞こえるのがひどく辛い]
助けて
[その聲に縋るのは恐怖以外の何者でもない。
けれど、少しだけ人間を信じられなくなった今]
怖いの
[冀う聲の相手は、天使か悪魔か]
[ぐ、と拳が目元を擦り
口からこぼれるのは届きもしないだろう恨み節]
…いるなら、見てないで助けてよ…!
[縋る相手は金色の幻。
あのとき、確かに自分の前にいた。
ニコやトマの声が聞こえる前のあの刹那。
胸を焦がすような強烈な既視感が
ほんの少しだけ恋しかった]
[すがるような目と目が合う]
――――っ、 ……
[青色を眇め、それから
咄嗟に手をさしのべた]
離れろ、
……だめだ、ここにいたら
“酔っちまう”
[赤に、血に、――――何に?]
でも……彼女。
ねえ、彼女まだ……。
[温かかった――。
あたしは子どもみたいなことを言ってる。
馬鹿みたいなこと。
当たり前じゃない……。
彼女はほんの十分か二十分前には、まだ生きていたんだもの。
人の身体ってそんな簡単には冷たくならないものよ。
あたしは――おかしい。
ルースに腕を掴まれて、こんな距離で――平気で、演技もしないで喋ってる。]
――…やっぱり、いつものだんまりか。
キミはこの街のコトにやたら詳しいから、何か教えてくれるのかと思ってたんだけどね。
俺さぁ…血を舐めただけでこんなにエクスタシー感じたことって、人生の中で今まで無くてねぇ。ああ、これがミス・シュザンヌが言ってた「異変」ってヤツかなぁ、あははっ…
――…ねぇ、ガイ。
キミの血って、どういう味がするの?
せっかくだから味わっておいた方がいいのかなぁ、って思うんだけど。どう思う?
っ、いいから……
[視界から赤を隠すようにソランジュを引き寄せた。
苦い顔をして、彫刻のように動かないシュザンヌをにらむように見る。]
……くそ、なんだってんだいったい……!
「 ワ カ ル ハ ズ 」
最後にそれだけを伝えると沈黙した。
無音の音に包まれているという気配だけ残して、町を覆っていたノイズは嘘のように綺麗に消えていた。
>>105
やだなぁ、冗談だよ――…
[舌先で自分の唇を舐め回し、にこりと笑った。]
――…なぁんてね。
いつかキミの血を貰いにいくときもあるかも。
その時はよろしく、ガイ。
[指先を唇に当て、そっと離す。
投げキッスのような要領で。
ガイの表情を一通り眺めてからクスクスと笑うと、井戸の側から離れていった。]
/*
本日のQ&A
Q.何故、素村人を希望したのですか?
A.中の人が途中で不測の事態を起こしてもどうにか対応できるようにするためです。
――…今の俺は、多分狼の人よりも暴走してる、自信ある orz
*/
[酔ってしまう?
いいえ。もうとっくに、酔っ払っているような気分だわ。
あたしは引き寄せる彼の腕に、体を預ける。
ダンスのポーズみたいに。
あたしの掴まれた手の先で、塗れた指が乾いてしまう……。
……ああ。
さっき、そのまま舐め取っていたら、どんな味がしたんだろう。]
[ガイから離れて、少しだけ歩いた頃。]
あ……れ?
[どくりと心臓が脈を打ち、内臓がざわめきだす。]
え……どういう、こと……?
[鼓動が不規則になり、激しい目眩と嘔吐感に襲われる。
歩みは徐々にふらつく様なものとなり、自身の身体を支えきれなくなってきた。]
やめ――…てよ、そういう――…の
[旧バンクロフト邸のエントランスにたどり着いたところで、トマは意識を失い、前のめりに*倒れた*]
[痛みを覚え、拳に目を下ろすと、腫れ上がり関節の皮膚が擦り切れていた。
指を伝う血はトマのだけでなく、自分の血も混じっているのだろう。
不意に愉悦の滲んだトマの声が脳内で再生された――「キミの血って、どういう味がするの?」
男は、自分でも気付かぬうちに、魅入られたように拳を口に近づけ、舌を伸ばして血を舐めていた。]
[近くに血の、においがする。
コントラストが鮮やかすぎて花のようだ。おかしい]
……とにかく 、
他に知らせないと
[エスコートするには血腥く少々不格好。
しかしながら、せめて、と肩をひとつ撫で]
行くぞ、
[そう、促した。]
[酸化していない血は、何となく甘いような気がした。
そこで、事態の異様さに気付き、顔を顰めた。]
……くそっ。
[吐き捨てて、男は井戸の水で拳の傷を洗い始めた。**]
―バンクロフト邸厨房→廊下―
[厨房で一頻り感情を沈めたあと、
途中だった釦を閉めるという作業を終わらせる。
靴もきっと井戸の側に置き忘れて来てしまっただろう。
立ち上がると鼻をひとつすすったあと、
自分の荷物のことを思い出して立ち上がる。
あんなことがあったあとだ、このままこの邸に
居続けるのは気持ちが躊躇われた。
土の汚れのついたタオルを手に歩き出す。
ぺたぺたと柔らかい足音が廊下に響く]
[ぺたぺたと、足音は続く。
やはり少女の足は迷うことがない。
何がどこにあるのか、無意識の自分が答えを知っている。
そのことが不安になったのか、一度足を止めた。
表情は暗く、タオルを握り締める指先は白い]
…おかしい、よね。
[誰に問うわけでもなくぽつんとこぼした。
不安が不安を呼んで、また眦が熱くなる。
自分が動くことで、空気が流れることで
どこかから感じるにおいに気付く。
古く、時を長く隔てて熟成された葡萄酒のような]
[心地よく感じるそれが、濃い血のにおいだと気づいたとき
声にならない悲鳴を留めようとして
土と石鹸の臭いのするタオルを咄嗟に口に当てた。
トマの言っていたことを、明確に意識する。
けれど、血のにおいの濃さは彼といた時とは
比較にならないほど濃く感じる。
考えなくてもすぐに推測が出来た]
っ、誰、か
[大怪我をしているのか。
それとも、と続きかけた思考を
頭を振ることで咄嗟に否定した]
[聞こえた言葉に悲鳴を殺す。
墓地───。
無意識が、理解する。
あの場所は、いいにおいで一杯だった。
子供心に、そう思ったのを思い出す。
思い出して、また怖くなった]
…!
[ああ、まただ。
どこかから、まるで紙飛行機みたいにこえが聞こえる。
叫びそうになった声を殺し、唇を噛む。
それからまずは、血のにおいの流れてくるほうへ進む。
とにかく何が起きているのかを知らなくてはいけない。
知らなくては先に進めない。
おぼろげに、理解する。
やはり、自分はこの街に生まれ、この街に生きていたことを**]
[彼の掌があたしの背中を撫でる。
あたしたちは、部屋を横切ってゆく。
クルミ材の床の上を、まだしっかり噛み合わないチェイスみたいに。
あたしは笑い出してしまいそうだ。
だって――こんなに――]
[突然、それが止まった。
予想もしないブレイク。
あたしは、ダンスの途中でレコードを停められたカップルみたいに、廊下の真ん中に突っ立っていた。
ううん。
おかしいのはあたしだけ。
彼はずっと真剣な顔で、あたしのことを――。]
……あ、あの、
ごっ、ごめんなさい!
[あたしはニコから体を離そううと、慌てて腕を引いた。]
―旧バンクロフト邸・エントランスホール―
[疲れ切って玄関に戻ると、エントランスにトマが倒れていた。
『また』やってしまった、と気付くと、男の顔からさあっと血の気が引いた。]
おい、しっかりしろ!!
[慌てて駆け寄り、抱き起こす。
脈を計る為に首筋を探る手は、気を抜くと震えてしまいそうだった。]
っ、え――――っ と、
[ソランジュが慌てる様子に、
地中海色の目を瞬いて離れるがまま]
や、謝るこたぁねーけどさ ……
[小さく肩をすくめて]
ま、役得? みたいな?
[おどけて見せるが、表情はやや固い。
血のにおいは薄れるどころか濃くなる一方だ]
>>123
[ガイが自分の脈を取る手が触れる。
おそらく触れれば分かるだろう――…彼の脈は、ごく普通に動いていることが。
だが――…]
お…うえええええぇぇぇぇ…っ
[うつ伏せのまま、口の中から吐瀉物が勢いよく飛び出した。]
[指の下で動脈は確かに脈打っていた。呼吸もある。
ホッと安堵の吐息をもらすと同時、思わず神に感謝を捧げそうになった。
が。]
……げっ。
[口から盛大に吐瀉物が飛び散るのを見て、仰け反った。]
ゲホッ…ゲホ……うぇ…
――…気持ち悪い…
[うつ伏せのまま、エントランスの冷たい床の上で蠢いている。]
――…あ。
[うっすらと目を開け、目の前の人物にぼやけた視線を向ける。]
――…誰?
[足元から背中を這いのぼってくる、甘ったるい匂い。
腐りかけた花みたいな……。
息をするだけで、くらくらする。]
あ、ああ……。
ありがとう、あそこから……その、引っ張り出してくれて。
ええ、あなたの言うとおりよ。
皆に……、知らせなきゃ!
ねえ!
誰かいる!?
[あたしは彼に背を向け、とにかくその場所から遠ざかろうと、走り出した。]
バッカヤロ……
[うごうごと床を蠢くトマの背を擦ってやった。
あたりに充満した酸っぱい悪臭を吸い込まないように、口で息をしている。]
[歩いていくと、声がする。
それは聞き覚えのある声だった]
…っ、何かあったんですか!
[ぺたぺたという音の感覚が狭くなった。
走って声の主を探す。
道が無意識にわかっても声は方向までが限界である。
ただ、途中からは血のにおいが濃くなるほうと
声の聞こえる方角が重なり始めたことで
そちらが声の主がいる方角だと理解した]
>>129
その声は――…ガイ、さん?
[ゲホゲホと何度も咳き込み、その場にさらに胃の中のものを吐き出した。]
――…すみません。
なんか、こう…血の臭いが…ものすごく、気持ち悪くて…
[吐瀉物と唾液が混じった液体を、手の甲で拭った。]
なんなんだ、これ――…「さっきのこと」といい…
[うつ伏せの状態からゆっくりと起き上がり、四つん這いになって首を左右に振った。]
[あたしが角でぶつかりそうになったのは、少女だった。]
あっ。
あなたは……これ以上行っちゃだめ。
[あたしは、こんな場所で何を言ってるんだろう。
彼女が幾つなのか……あたしは知らないにしても。]
いいえ……見たいなら、あたしには止める権利はないかもしれないけど。
覚悟……して入って。
シュザンヌが、部屋の中で死んでいるから。
皆は……どこにいるかしら?
――…あ。
それより…さっきは、すみません。
何だか、身体の中が、凄く変な感じになって…
全身がぐっちゃぐちゃになる感じがして…
やったことないですけど……麻薬やってる時って、こんな感じなのかなぁ…って…
[ガイに背中を擦られながら、ゆっくりと起き上がる。]
それから――…ポーリーヌに謝らなくちゃ…
謝って許される話じゃあないですけれども…
っ!?
…す、すみませ…
[ぶつかりそうになって慌てて身を引く。
頭を下げながら謝罪すると
前進を引き留める声に、首を捻った。
だが、続いた言葉は止めるに十分だった]
死んで…って、何で。どうして。
[微かに唇を噛み、それからゆっくり口を開く。
血のにおいに、眉が寄る]
…さっき、裏庭で
[今は解らないと首を横に振る。
止めた足は、また動き出す。
止められた方に向かって]
[手は貸さなかったが、傍で起き上がるのを見守った。]
何か分からんが、気にするな。
……それより悪かったな、殴って。
[目を見られないように顔を背け、小声で付け加えた。]
[手をはたいて立ち上がり、階段を目線で示す。]
そろそろ暗くなるし、今後のことを話し合うためにも皆集まった方がいいんじゃないのか。
シュザンヌさんも呼んでさ。
裏庭ね?
わかったわ。ありがとう。
[あたしはまた歩き出す。
ポーリーヌは濡れた髪をして、着ているものも変わっていた。
じゃあ、あの時水浴びしていたのは彼女なんだわ。
あたしは、彼女の大胆さに感心した。
それから――薄っすらした不安を覚えた。
裏庭に出るドアを開ける。
どうしてこんなに、歩きにくいんだろう。
鬱蒼とした木のせいで、あんまり暗くて……。
ああ……夜が、来るんだわ。]
いえ――…
嫌ですね、ああいうのを覚えてる、って。
何だろう――…そう、血の臭い。血だ。
アレを感じたら、急に――…
[ガイの方を見て、こくりと頷く。]
そうだ…「異変」。
「異変があったら教えて」って、シュザンヌさんに言われていたんだっけ…
――…行きましょう。
[階段の方に向けて歩き出す。
最初の一歩で自分が出した吐瀉物を思いきり吐き出してしまい、心の底から嫌そうな顔をした。]
いえ――…
嫌ですね、ああいうのを覚えてる、って。
何だろう――…そう、血の臭い。血だ。
アレを感じたら、急に――…
[ガイの方を見て、こくりと頷く。]
そうだ…「異変」。
「異変があったら教えて」って、シュザンヌさんに言われていたんだっけ…
――…行きましょう。
[階段の方に向けて歩き出す。
最初の一歩で自分が出した吐瀉物を思いきり踏んでしまい、心の底から嫌そうな顔をした。]
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