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不滅隊隊長 スィフリアは魔神 ヒエムスに投票を委任しています。
薬売り レヴィーカは魔神 ヒエムスに投票を委任しています。
魔神 アウルムは魔神 ヒエムスに投票を委任しようとしましたが、解決不能でした。
不滅隊隊長 スィフリア は 魔神 アウルム を追い出すことに決めた。
薬売り レヴィーカ は 魔神 アウルム を追い出すことに決めた。
案内人 ユーグ は 魔神 アウルム を追い出すことに決めた。
帝王の妻 エルハーム は 魔神 アウルム を追い出すことに決めた。
魔神 ヒエムス は 魔神 アウルム を追い出すことに決めた。
魔神 アウルム は 案内人 ユーグ を追い出すことに決めた。(ランダム投票)
魔神 アウルム は宮殿から追い出された……
案内人 ユーグ は、帝王の妻 エルハーム に退去の力を使った。
夜が明けると、帝王の妻 エルハーム の姿が宮殿から消えていた。
夜が明けると、案内人 ユーグ の姿が宮殿から消えていた。
現在宮殿に残っているのは、不滅隊隊長 スィフリア、薬売り レヴィーカ、魔神 ヒエムスの3名。
― 夜明け前 ―
[緑の中から空仰ぎ、天へと祈り続け――…銀月が沈む頃。
宮殿から退ける人の子の想い受け、天使はその姿揺らめかす。]
どうか、神よ――…迷い子を導きたまえ。
心強き舞姫を守りたまえ。
[宮殿に残る二人を案じながら、纏う翠の紋様が乱れゆく。
やがて―――天使が舞い降りるは、砂の海に佇む廃墟。]
― 廃墟 ―
そして神よ。
人の世界に戻りし子らをしばし見守るをお許しください。
我は、人の子自らの意志で指輪を外させること敵わず。
なれど、その心に撒いた種を芽吹かせる、今一度の時を――…
[”天使”を退去する呪に弾かれし身に、指輪も駱駝も食料もない。
それを不服とすることもなく、翠なる天使は膝折り*祈り続ける*]
― 青と白銀の塔 ―
[赤と黄金の塔が主を失っても、空は偽の陽光に満たされた。溢れる噴水の煌めきも、翡翠色の若葉にそよぐ庭も、月下香のかぐわしささえ、僅かにも褪せはせず]
[けれど、魔宮の回りを取り巻く空気の一部が、確かに何らかの熱情を失っていることに、気付く者もあったろう]
[白銀の魔神の手には、淡い色の緑柱石の駒一つ、それは鳥の姿に変ずる事無く、徐々に透き通り、透明な水晶のような氷の塊となってやがては自ら溶け消えた]
[魔神の冷たき白い手に残るはひとひらの柳の葉。風がそれを窓の外へと攫っていくのを、銀の魔神は言葉無く見送った**]
─オアシス都市─
[昨夜のうちに漆黒の男と目見えぬ人物のどちらとも邂逅するは叶わず。その日は仕方なく宿にて休息を取った]
[明くる日、都市が祈りの声やその時間を告げる音に満たされる頃。男は宿の部屋を出、外へと]
私が宮殿より追い出されて幾日か。
そろそろ誰かと契約が成されていてもおかしくはないが、果たして。
[己に知る術はなく、ただ想いを馳せるのみ。自然、視線は廃墟がある方へと向かうか]
―オアシス都市外れ―
[もともと不機嫌そうな表情は
輪をかけて不機嫌に見えたろう。
陽射しが影を作る崩れかけた建物の傍
かの廃墟があったほうを見つめて眼を細めた。]
――契約者は、
[出たのだか。
呟き、首を横に振った。
自身の左手を見下ろす。
指輪はもう其処には無い。
握り締めて、眼を閉じたまま空を仰いだ。]
― 廃墟 ―
嗚呼…そなたらが元へ参ろう。
放たれし魔神の声に、惑わされぬ前に。
[陽炎の如く翠なす姿は移ろい、透き通り消えて――…]
― オアシス都市外れ ―
[ただびとの目には見えぬ姿を現すは、オアシスの外れ。
黒衣の傍へ佇み、翠がかる指先を伸べる。
宮殿にて言葉交わした縁より、その瞳は天使を映すこと適おう。]
――ユーグにより、魔神放たれし。
そは、黄金のアウルムなり。
[見上げる頬へ伸べた指先は植物に似た涼やかさ。
透明な声音が清涼な風を運ぶ。]
― 朝/宛がわれた部屋 ―
[指輪から告げられる言葉で目を覚ます。
願いを叶えて貰ったと。
其れほど話したわけではない、金の陽気(に見えていた)な魔神かの人の顔を、想う。]
…エルハーム、殿
[同時、かの天使も去ったと。
武人は気だるげに寝台の上、ごろりと寝返りを打った]
―オアシス都市外れ―
[声が。
――声がした。]
――、……、 …
[その指先は玉のごとく透きとおるように見えた。
“この世のものではない”存在なれど
得た縁は眸に映すことを許す。]
あんたは――
[続いた言葉に、眼を見開き 息を飲んだ。]
…… 案内人 が ?
[さわ、と涼やかな風。
漆黒の髪を揺らして通り過ぎていった。]
[それと時同じくして、錬金術師の元の耳元にも涼風が吹いた。
コーネリアスが宮殿を想い風に耳澄ませば、同じよに。]
『――ユーグにより、魔神放たれし。
そは、黄金のアウルムなり。』
[透明な声音が伝えるのは、同じ言葉。
そして、ヒジャービルにのみ、もう一度涼風が言葉を運ぶ。]
『そなたは”エルハーム”の排除を願わず。
ゆえに我も約を果たさねばならぬ――…』
― オアシス都市外れ ―
[漆黒の髪を涼風が撫でるよに揺らした。
見開かれた同色の眼に浮かぶ感情を、透き通る翠は見つめる。]
…そう、天使退けし指輪持つもの。
魂の安寧の意味知らぬもの。
あの者が何を願ったかは、知らぬなれど…
[僅かに伏せた睫の影で、哀惜の情が瞳に過ぎる。
囁く声音は溜息のよに掠れて消えた。]
― オアシス都市外れ ―
天使避け――
あの案内人が、持っていたのか……。
[翠の眼、翡翠の色。いつか見た玉の色。
少しの間だけ見上げて、また黒を伏せた]
――… よく分からんやつだったがな。
何を願ったのだか……
[瞑目の後、見あげた空には本物の太陽が煌いている。
眩しげに眼を細めた。]
……哀れむか、天使。
[問いかけに返すのは、微かな頷き。
魂の安寧捨てたユーグの行く末を天使は憂う。]
あの者は闇に堕ち、再び神の御許にては安らげぬ。
傷つき疲れ消え行くであろう魂……子を失うは哀しきこと。
[天使の憂いに満ちた瞳が、男を翠の泉のよに映す。
宮殿から退けることでしか守れなかった人の子を。]
……黒き瞳のザファル。
そなたは、神に声届かぬと言った。
我は今しばしの時、ここにある。
そなたが慟哭を語るがよい……神に代わり*耳傾けよう*
─オアシス都市・中心部─
[廃墟の方角より視線を外した後は、市場の見物も長くは続かず、人の行き交うを道の端にて眺む。運良くば宮殿にて見ゆる者が通らぬかと考えながら]
……──?
[ふと、細き瞳が行き交う人々から外れる。そよぐ涼風。この地にはどこかそぐわぬもの。耳を澄ませば聞こゆ、聞き覚え無き透明な声音]
……そうか、あの案内人が。
あの男からも何を望むかを訊きそびれたな。
叶いし望みは如何なるものか。
[それは伝え寄こした声に返すと言うよりは、独り言に近く。続きそよいだ涼風に、視線を流れ来る方へと向けた]
その約を知りし貴殿は如何なる者か。
斯様な技を為せるなぞ、少なくとも人に非ず。
[男は未だ彼の人物の正体を知らぬ。涼風の流れを感じれど、その居場所を察するまでは至らず。答え返るまでは通りの隅にて人の行き交うを*眺む*]
―オアシス都市外れ―
…銀の、は まだあの宮殿に居るのか…
[遠くを見たままぽつり、呟く。]
――…、 死んだ後のことなんか、
知ったことじゃねぇ、と想っていたが――
[首もとの黒い外套を引き上げる。
口元は隠れて見えなくなった。]
…――そうか。
[沈む眸に浮かぶのは追憶のいろ。
天使の眸は凪いだ泉のごとく人にはない透明さを湛えていた]
…、 今更だ。本当に――今更だ よ。希みは断たれちまったし
――ああ、でも それが 器だったって ことだろうか、な
[く、と自嘲ぎみにわらう。自身が追い出された理由を最早知る由も無いゆえ]
本当は
[ぽつり と 言葉は落ちる]
……――静かに眠ってんなら
叩き起こすのは
お門違いだったのかも しれねぇな。
[外套の下、指を沿わした胸の辺り
しゃらりと鎖の音がする]
不滅隊に焼かれたあの里で
死ぬべきだったのは おれだと
ずっと思っていたのに――
[問わず語り、都市の端、
未だ錬金術師に見えず。]
─ オアシス都市・中心部 ─
[涼風の吹く方を見れば、その遥か先は廃墟――宮殿在りし方角。
されど、風はそこから生まれるのではなく。
通りの隅にて人の行き交うを眺む男の耳元に、また涼風が吹く。]
『あの者が何を願ったかは、知らぬ。
我は天空神が御使い――”天使”と呼ばれし者。
魂の堕落救うべく”エルハーム”の姿と願い借り舞い降りた。』
[涼風に茉莉花が仄かに香る。]
『ゆえに、そなたと約したのはエルハームの姿した我。
帝王が妻の願い、そなたに明かさん。』
―早朝・廃墟―
[ 明(さや)けく瞬く星々を闇色のヴェールに縫いとめた夜の女神が、曙光に射られて西つ方へと疾く走り去る。
女神の裳裾は白く色褪せ、月の面は隠されて。
替わりに、薔薇色の旗棚引かす黄金の戦車が天空へと駆け上がり、そして昼の時が始まる。]
――……「おじさん」、「おじさん」。
― オアシス都市・外れ ―
白銀の魔神は未だ封じの内。
レヴィーカは自らの意志で誘惑を退けた。
なれどスィフリアは……未だ。
[ザファルが遠くを見て呟きし言葉に、天使は緩く首を振る。
黒衣の男が口元を隠し、追憶に浸る姿を静かに見つめ。
自嘲気味にわらうさまもただ黙して、語られるを待った。
ザファルを退けし意思は、天使のみの力ではなく。
魔に堕つべき器かと問われても”天使”は否としか言えぬゆえに。]
[問わず語りに口挟むことなく、天使は男が鳴らす鎖の音を聞く。
ただ「死ぬべき…」との声には、その腕に翠の指先を添えて、]
……。
[淡い唇を動かすことなく、頭を横に振った。
そうして、話の続きを促すよに*僅かに首を傾けて見せる*]
―オアシス都市・外れ―
……そうか。
不滅隊の蛇も、まだ あそこか…。
[ほんの少し、眉を寄せた。]
大きな力を得て願いを叶えんのが“堕ちる”ことなら
神様はなんで―――
[ため息は掠れた。
鎖の音を止める玉の指先に、はたと顔を上げる。
首を横に振られたなら、何処か泣きそうな顔をして]
―廃墟―
[ 一夜明けて、廃墟の朝。
ここは白亜の宮殿でもなく、魔神の居た黄金の塔でもない。
倒れた柱と崩れた壁、流れる砂に研磨されて荒れ果てた栄華の跡、遺構に過ぎぬ。
そこで、昇った太陽を背にして、黄金の魔神は案内人の傍らに座って顔を覗き込んでいた。]
アンタを詰ったって意味ねぇよ。
帰って来やしねぇんだろ……。
[俯いて顔は強い光の下陰になる。]
大莫迦な、錬金術師だった。
魔術師の末裔の中に飛び込んでくるような
大莫迦野郎だった。
[促しに、 少しずつ低い声が紡ぐ]
里にさえ来なければ …おれと街で会わなけりゃ
不滅隊の襲撃に巻き込まれることも無かったのに。
嫌いだよ あんなヤツ
笑って死んだやつなんか嫌いだ。……大嫌いだ。
[矛盾を孕みながら*言葉は続く*]
─オアシス都市・中心部─
[涼風を追った視線は再び廃墟の方角へ。されど彼の地よりそよぐにしては違和の残る涼風が耳元を掠める]
あれが他に口にしておらぬなれば、誰も知らぬ願いなのだろうて。
[契約成した男に関しては一人肩を竦める。続く名乗りに男はその場で僅かに驚く表情]
……魔神殿達が言う招かれざる客とは、なるほど貴殿のことか。
私が約したは翠の君でありながら翠の君ではない貴殿なのだな。
[共に運ばれ来る仄かな茉莉花の香。語りかけて来る人物がそうであるのだと得心が行く]
約を違えず為してくれるはありがたいこと。
不自由なきと思える王の妻の願い、如何なるものや。
来訪、心待ちにしている。
[いずれ、と告げる涼風に、軽く口端が持ち上がった。それを最後に風は己が下へ届かなくなる]
……天空神が御使い、”天使”か。
聖と魔が仲違うは避けられぬものなのかね。
…まぁ、私には与り知らぬところ、か。
[呟きは喧噪の中へと*掻き消えた*]
[ 男が魔神を認めると、にぱりと花の咲いたように笑う。
近くで駱駝のいななく――と言うよりは喚くと言った方がしっくりくる――声がした。**]
−朝日の登る砂漠−
[常のように呼ばれ目を開けた。
自らが床として居る場所の、絹とも藁束とも違う感触に懐かしさを覚え、目を細める。
細めた視界の先には太陽の髪を持った魔神。
その髪を透かし、燃え上がらせるは真の太陽。
逆行のなか、金の魔神が笑むのが分かった。]
ああ、おはようございます。
良い朝で。
今日も暑くなりそうだ。
[真実の太陽は、魔神にも廃墟にも平等に無慈悲な熱を注いでいる。
駱駝の鳴き声に、自らが居る場所をぐるりと見回した。]
[ 駱駝が二頭、半ばで折れた柱に繋がれて、如何にも退屈そうに首を振っている。鞍と共にその背にある荷は水と食料なのだろうか。
黄金の髪の魔神は立ち上がり、世界を抱くように両手を広げて、その場でくるりと回った。]
[前にこの廃墟を見たのは宵の刻。
今、夜は明けて、まことの太陽はその朽ちた様をありありと照らし出す。
子供のように、手を広げ回る男を面白そうに見た。
その表情を確かめようと、自信も立ち上がり首を延ばす。]
― オアシス都市・外れ ―
[神への言葉に柳眉は落ちる。
それでも唇が反論や言訳を紡ぐことはなく。
泣きそうな顔を、心配の色浮かべる瞳が見つめる。
俯いて濃い影に隠される表情。
覗こうとはせず、添えた指先で手の甲を優しく包み込んだ。]
笑って…、
[大莫迦野郎と、嫌いだと言われる、笑って死んだ錬金術師。
『その者、自らの命散るを悔いてはおらぬのであろう…』
今は神の御許で眠る魂に想い馳せ。
矛盾を孕む言葉がその嘆き全て吐き出すよう*静かに耳傾ける*]
― 中庭 ―
[水晶の如く煌めく清水が、涼やかな音を立てて水面を叩き。ごく淡い霧となった水の粒は、その傍らに佇む銀の魔神の白い肌に触れると、花の形の小さな結晶となって風に舞った]
――自室――
[指輪が告げるのは、魔神に願いを叶えられて消え去りし者の名]
ユーグ……。
――礼を言うのを忘れてしまったわね。
望みを叶えられて……幸せ、なのかしら。
[彼の者の望みは結局知らぬままだったが。
アウルムの目に留まるものであったのは確かな事]
エルハームとあの天使も。
今も一つなのか、別々の道を歩んでいるのか。
――寂しくなっちゃったわね。
[客人はもはや、自身とスィフリアの二人のみ。
魔神も一人は宮殿を去った]
[ 砂混じりの風を、早くも肌を刺す朝の日差しを、その全身で受け止める。
回転する動きで振り向き、こちらを見る男に笑いかけた。]
こういうの、「娑婆の空気はうまい」って言うんだよねえ。
[もっと日が高くなれば、砂漠の移動は厳しい。
今のうちに先へ歩もうと言おうとして、相手があまりに楽しそうだったから困った顔でため息を着く。]
あんたのそんな顔が見れるとは思いませんでしたよ。
[砂の敷布に胡座をかき、肩肘ついて破顔した。
魔神の気の済む迄、付き合うつもりでその場に座す。
誇りっぽい風のなか、微かに茉莉花の香りが混じる気がした。]
ま、それでも、お勤めは果たさなきゃね。
[一度は舞の道を捨てた女が、再び"仕事"として舞うはこれが初めての事]
――こういう結果になるのなら、皆の前で舞えば良かったわ。
まあ、いずれ縁あって舞を披露出来る日も来るでしょう。
[今も近くの街に留まる者が居れば、存外に早い再会となるやもしれないが。今の女に、それを知る術はない]
さあ――
[立ち上がる女は今、全身を覆う群青を纏ってはいない。
代わりに纏うは同色の、肌も露わな舞踏衣装]
行きましょうか。
[そして女は、己の舞台へと向かおうと、一歩を踏み出した]
薬売り レヴィーカが「時間を進める」を選択しました
[噴水の傍には、以前に魔神が出現させたのよりも広い天幕が張られ、その下には白い月下香と人の世には有り得ぬ濃い瑠璃の色の蘭花によって飾られた舞いの舞台がしつらえられている]
ねえ。
これから長い付き合いになるんだしさ。もう「おじさん」て呼ぶのは変だよねえ。
「おじさん」は何て呼んで欲しい?
[ 屈み込んで、胡坐をかいて座った男の顔を覗き込む。]
実際の年齢はさておき、おじさん、も悪か無いですがね。
[覗き込む男に苦笑してから少しだけ考え込む。]
俺の育った部族は、本当の名前には力があると考えていました。
真の名前はみだりに口にすべきでない、と。
だから、ユーグで良いですよ。
飽きたらまた別の名前を考えます。
そういや、あんたの名前は誰がつけたんですか?
名前。
ああ、「アウルム」ね。
過去の契約者のひとりだよ。
見た目と、能力から……ね。
[ くすりと微笑ったは、過去を思い出してか。]
そうそう。
魔神も真の名は決して明かさないんだよ。
真の名を知られると、相手に支配されてしまうからね。
――舞台袖――
[己がために設えられた舞台。
天幕の下は、この世のどの舞台も及ばぬほど華やかに飾りつけられていた。
月下香の白と名も知らぬ蘭花の瑠璃の、鮮やかな対照]
――光栄に思いますわ。
斯くの如き舞台で踊れる事を。
[指輪と使い魔たちに向けて、女は敬意を表す。
人の記録には残らねども、己の記憶の内では永遠に輝き続けるであろう――
魔が作りだし、魔が奏でるこの舞台]
[女は観客が揃うまで、感激に潤む目で周囲を見詰め続けていた。
この舞台袖からの情景を、己が目に焼き付けんとするかの如く]
おや、俺の一族は魔神の血でも混じっていたかな。
[にやり笑って、少し遠く、崩れ落ちた舞台を見下ろす。
青の舞姫が踊っていたのはこの舞台だろうか。]
過去の……ってのは、ここを作った魔導士殿ですか。
アウルムって言うのはどんな意味なんですか?
見た目、はともかく、あんたの能力ってそう言えば見たことが無いですね。
……変なところから突然出てくる能力、とか。
― 中庭 ―
[天幕の張られた客席。
飾り付けられた、舞台。
武人は目を細め、ゆっくりと歩み――客席へと、足を踏み入れた。
レヴィーカが舞姫だとは知らぬが自身無い事は判って居たので]
…ふむ。
[小さく、こくりと喉を鳴らす。
召使がすっと、冷たい飲み物を差し出してきたのを、手袋をした侭の手で受け取った]
それはおまけみたいなもんだよ。
アウルムってのは「黄金」て言う意味。
物の組成を変えたりしてちょちょいと金をね……って知りたいの?
[ きょとりと首を傾げる。]
でもまあ、あれはあんまりそういうのには興味は無かったかな……。
[ 庭園のあった辺り、目を向け、僅かに目を伏せた。]
薬売り レヴィーカは、魔神 ヒエムス を投票先に選びました。
――舞台――
[そろそろ観客が揃う頃合いだろうか。
さざめいていた使い魔達が、定位置にて楽器を構えるのが見える。
女は一度深く呼吸をし――そして曲の前奏が始まれば、群青の飾り布を揺らめかせ、舞台の中央へと進み出た]
錬金術師殿が聞いたら泣いちゃいそうな能力ですね。
黄金には興味ありありですが、聞いたところで俺には作れなそうなので良いです。
[朽ちた柱は四阿があった場所だろうか。
枯れ木すら残っていないその場所に、魔神の目が伏せられる。]
興味の無いことは知らない方が、人生は楽しいもんですよ。
他にも知りたいことはいっぱいあるし。
[あれ、が誰を差すのかはわからねど、そんなことを口にした。]
[舞台の上には、客席の二人の会話は届かない。
元より、舞への集中を途切れさせるつもりはなかったのであるが]
[律動はより激しくなってゆく。
揺れる蜂蜜色の影に、紫の瘢痕は今も存在を主張して]
―中庭―
[楽器を鳴らせぬ少年は、グラスが離れたトレイを持ったまま、主たる魔神にそっと一礼した。
隙を見計らって、視線を舞台に置く。
――世にも「美しき」舞姫の舞台が始まるという。
美を「力」とせんと望んだ娘の舞。
いかなるものだろうかと、期待と、ある種の戦慄が入り交じった表情で、舞台の中央を見つめていた。]
…知っておられましたか。
[魔神の言葉に、こくり、頷く。
自身の舞は戦いの前のものだから、彼女のとは違うのだろう。
楽の邪魔にならぬよう、一言だけ。]
[楽の中に加わる一音を聞きとれば、舞の調子にも僅かな変化を加える。
客席と視線が交錯すれば、武人と使い魔、それに魔神もこちらを見詰めているようで。
女は安堵と感謝の笑みを浮かべ、尚も舞い続ける]
其方に、昔話をしよう。
[楽の音に魔神の声が重なる。声自身が妙なる楽の音の一部のように響き、舞を邪魔する事は無い]
かつて、二柱の魔神を従えた魔術師があった。
魔術師は、魔神との契約を永の時に渡り守り続け、魔神は魔術師を主とするに不満はなかった。
だが、時の果て、人の子たる魔術師の心に、人たる故の変化が起こった。
[ 月下香の苑であった辺り、向ける瞳には金の睫毛の影。]
……ともかくさ。
ここはもういいよ。ここにはもう何も無い。
[ 目を上げ、にっかりと皓い歯を見せ、]
それよりさ、もっと愉しいところへ行こう。
人間の沢山居るところ。
退屈させないって言ったよね。
[ ユーグに向かって手を伸ばした。]
─オアシス都市・中心部─
[彼方で己が名を紡がれていることなぞ露知らず。男は道の隅から人の流れの中へとゆらり踏み入れる]
[暇を潰すよに歩むは礼拝者集まる礼拝堂の前。中に入るでもなく道を挟んで正面に立ち、建物を見上げた]
……天空神……神、か。
[降り注ぐ日差しにアガールの布の奥で瞳を細める。『神』と言う言葉に思うところある男は、それを呟いたきり思案を巡らすよにただ礼拝堂を見つめた]
[傍に居るヒエムスが、スィフリアに言葉をかける。
だがその言葉の詳細を聞くのは、ずいぶんと無粋なものであるような気がして、少年は一歩下がって舞台をじっと見つめることにした。
銀月の魔が放つ言葉は、冷たく凛とした風となって頬に触れる。その風の冷ややかさとは裏腹に、何故か少年はかあっと頬を熱くしたのだった。]
―オアシス都市・外れ―
……―― なんで、
[首を横に振った。
優しい色を宿す天使の眸に、居た堪れない様に
手で顔を覆った]
おれには、わからなかった
……わからなかったんだ……
大嫌いだ
でも、 死んでほしくなかったんだ―― … !
[言葉尻は 掠れて上手く形にはならずにいた。]
魔神を…殊に、そのうちの一人を…死して後、己以外の手に渡すを恐れ、命尽きる間際の最後の力で、遂に砂漠の果て、自らの宮殿に封じ込めたのだ。
人の子の恋情とは、斯くも理不尽なもの。
しかも、その相手は、人の子の向けし想いに、数百年の時を経て封印から逃れるその時も、気付きすらせぬままだったというのに。
[ここにはもう無い。
金の塔も銀の塔も。舞姫の踊る舞台も、妖魔が奏でる風の音も。
いつか、再び会えるだろうか。]
そうですね。
取りあえず日が高くなる前に、休める場所へ移動したいもんです。
[だんだんと強くなる日を眩し気に仰ぎ、差し出された手を引く。]
沸騰死は遠慮しておきますよ。
せっかく願いを叶えたってのに、そうそうに行き倒れなんて死にきれない。
俺の魂は神様のもとにはいかないみたいですし、早々に死ぬわけにはいかないんで。
[説得しきれなかった翠の天使を思い笑う。
もし自分が死んでも、あの天使には自分の声が聞こえるのなら、それはそれで面白いかもしれない。]
― オアシス都市・外れ ―
[手で顔を覆うザファルに、優しい色の翠が痛ましげに揺れた。
人の子の想いが、天使の心に響く。
手の甲に触れていた指先は、そっと漆黒の髪に伸びる。
母が幼子を撫でるよに。]
嫌いでも…死が辛いのだな。
己が命との交換を望むほどに。
わからないのは笑みの意味か。
それとも……
[掠れる言葉尻に、透明な声が優しくかぶさる。]
[少年は、おんなの舞を黙って見つめている。
楽の音と絡まる指先がゆるやかな円を描き、蜂蜜色の長い髪と調和した「かたち」を作り上げる。
それがおんなの艶というのを、ミシェルはよく知っていた。
それが、美しいものであるということも。
強く、美しいおんなの姿。
それが目の前に在る舞姫が魔神に願おうとしたそのものであったことを彼は知らずに居たが――唇が、微かに動く。]
――『なんだ。うつくしいじゃないか。』
[重い紫色に染まった傷痕を晒して踊るおんなを、黒い前髪の間から、うっとりとした視線で見つめていた。]
─オアシス都市・中心部─
[そよぐ茉莉花含む涼風。ふわりはためく視界の布。流れ来る方角にゆっくりと視線を向ける]
どこに居ても私の居る場所が分かるのだな。
[便利なものよ、と僅か口端が持ち上がった。左手の親指と人差し指で輪を作り、その中に軽く息を吹き込む。普段なれば使わぬ探索の法。わざと弱め作りしその呪でそよぐ涼風の許を探ろうと繰るは、暇を持て余しての所業か]
恋情、ですか。
[ヒエムスの言葉に、相槌と耳をそばだてる以外、ひとことだけ零した。
その美しい横顔を、じっと見詰めたままあ、額の音と舞姫の足音のリズムのよさの心地よさに身を預け]
─ オアシス都市・中心部 ─
[流れくる方角は変わらず、探ればオアシスの外れに行き着こう。
けれど先程とは異なり過ぎ去る香りは渦を巻く。
今は人気のない礼拝堂、その飾り窓に翠の影が揺れた。]
『人の子の想い、結びし縁。
ましてや神の象徴たる場ならば。』
[翠の影は、手招くよな、あちらに行けと追うよな、曖昧な揺れ。]
…その「相手」とやらは、封印から逃れたのち、気づいたのですか?
[楽と舞の邪魔にならぬ声音と音量
ヒエルムが答えずとも構わない、といった、まるで独り言のような呟きをひとつ、落とした]
…その「相手」とやらは、封印から逃れたのち、気づかれたのですか?
きづかれたなら、どうしたのでしょう…?
[楽と舞の邪魔にならぬ声音と音量
ヒエルムが答えずとも構わない、といった、まるで独り言のような呟きをひとつ、落とした]
[ くいくいと手を引いて、繋がれた駱駝の方を指すして歩こうとする。
さくりと足元で砂の音。]
ユーグは天空神の信徒だったの?
信徒じゃないならどっちみち行けないよ。あれは神に魂を売り渡した者だけが行くところだからね。
天国なんてあんな詰まらないところ行かない方が良いよ。酷いところだって仲間内じゃあ評判だよ。
俺は行ったことないけど、下僕の無礼さを見れば大体分かるね。
[ 大げさに顔を顰めて首を振った。]
気付きはせぬだろう。アレは、人の子に構いつけはしても、それを深く顧みることはない。
逃れし封印の訳など、思い煩う筈も無い。
[舞の静けさに似て、再び紡ぎ出される声は低く囁くよう]
清きスィフリア、次は其方の物語の続きを聞かせよ。
─オアシス都市・中心部─
[風吹くは廃墟の方角、呪を弾かれずに探りし結果は都市の外れ。それぞれに視線をやり、後に気付く香りの渦]
……──!
[戻した礼拝堂の飾り窓、翠の影が揺れるのを見る。枯色の瞳を見開き、僅か息を飲んだ]
…魔神の次は神の御使い。
本当に、此度のことは良き経験となり得そうだ。
[手招くよな追い払うよなその動きに、男は通りを渡り礼拝堂へと近付いた]
―オアシス都市・外れ―
[黒髪に触れる指先を拒むことはない。
ただ唇を噛み締めた。]
――嫌いだ。
[裏腹の言葉だった]
……―― 生きててほしかった。
[矛盾していた。
分からないと首を横に振った。
頑是無い子供のようであったかもしれぬ]
[笑顔から一転、表情を変える魔神がおかしくて思わず笑う。]
仲間内では行った人が居るんですか? そいつは凄い。
天使が居るなら神様も信じてますよ。
今のところ、その御元に行く気はありませんが。
[魔神の足も砂に埋まるのを珍し気に一瞥して言った。
なんとなく、人ならざる者には重さが無いような気がしていた故。]
魔神は死んだらどうなるんですか?
[旅立ちが嬉しいのか嘶く駱駝にかき消されそうな声の問い。]
─ 礼拝堂 ─
[天空神の象徴たるその場は今は他に人影なく。
静謐な空気漂い、床には飾り窓から色鮮やかな光が零れる。
その光の柱の中に浮かぶは、透き通る翠の天使。
”エルハーム”とは異なる性別なき神の御使い。
扉を見つめる眼差しは凛としていながらも柔らかい。]
其方は秘術のみを消すを願う。だが、人の子の欲望とは果て無きもの、例え一度は記憶を消されようとも、再び同じ術を編み出すは必定。
真に禍根を断つを望むなら、秘術の探索を命じた者、その秘術を用いた者、全てを滅ぼすが早道。
[淡々と魔神は告げる]
それ聞いてどうするの?
[ 足を止め、契約者の瞳を暫しの間じっと見据える。
と、視線を外して前を向いて再び歩き出す。]
魔神はそう簡単には死なないよ。殺されない限りはね。
魔神は人間とは違って、死んだらそこで終わり。甦りも転生も無い。
[ 表情見せぬ声は淡々と告げた。]
― オアシス都市・外れ ―
[透き通る指先が、漆黒の髪を緩やかに撫でる。
噛み締められる唇は影の中で見えず。
顎のラインの微かな変化に、痛み気遣う視線を向けた。]
――…なぜ、嫌う?
[囁く声音は、その心の内へと誘う色。]
――…なぜ、生きててほしかった?
[頑是無い子供のような仕草。
わからぬなら、わかるよに導こうと天使は語りかける。]
もとより覚悟のもとでございます。
[それはエルハームとの話しの折り。
ヒエムスの言葉に、しっかりと深く頷いた。
中庭には、もう、翠の香りはせぬ――]
─礼拝堂─
[祈りの時間が過ぎたためなのか、中に人の気配は無く。男はゆっくりと礼拝堂の扉を開いた]
……──。
[静寂とはまた異なる清浄なる空気と気配。真直ぐに見やれば、飾り窓から零れる光の中に佇む一つの姿。見覚え無きそれは、見覚えある翠に包まれていた]
──貴殿が、エルハーム殿の姿を借り受けし天使か?
[凛としたその姿に、布の下から枯色の瞳を覗かせ姿を眼に焼きつけ。佇む翠に静かに問うた]
[遠く、少年の眼差しを女は捉える。
微かなる唇の動きは追えずとも、彼の視線の意味を解して満足げに笑んだ]
『有難う』
[呟いた形は少年の目に映っただろうか。
今宵の邂逅は人ならぬ者の記憶にも残るだろうか]
[楽は悲壮でありながら壮大に。
悲劇に向かい立つ者の姿を謳う旋律。
戦いの果てに待つ運命を、予知するが如きその曲調は――しかし結末を描かぬまま、勇壮な響きのままで、終幕を迎える]
[相手の目線が外される迄見返して、歩き出す妖魔に視線を向ける。
声と背だけではその表情は計れない。]
聞いてどうするかは考えてなかったな。
単なる好奇心なんで。
ああ、俺が死んだ後も契約が残るようだと困るなとは思いましたが。
まあ、死にたくなったら言って下さい。
死にたい程、退屈させる予定は無いんですが。
[のんびりとした声で言って、駱駝に鞍を乗せる。
手を延ばし、駱駝の首を軽くかいた。]
犠牲、という程大層なものではございません。
[身体に染み込む言葉。
それでも武人はなんとか背筋を伸ばした侭、鳩羽を揺らす]
愛する者、愛する大地、愛する国。
私の、全てでございましたから。
それに――せめてもの償い、というと自己満足ですね。
[苦笑の元、思い浮かべたのは初対面で厭う視線を投げて来た、黒い男の事]
─ 礼拝堂 ─
[扉が開き、透き通る翠の眼差しはヒジャービルを見た。
真直ぐな枯色の瞳を受け止め、天使は佇む。]
そう、我こそが”エルハーム”の姿と願い借りし者――…
[淡い輪郭が光に解け、瞬きの後に立つは”エルハーム”の姿。
人ではないことを示すよに、その向こうには祭壇が透けている。]
これで信じていただけるかしら、錬金術師よ。
[翠の紋様、ヴェールに添える深紅の爪、目尻の皺もそのままに。]
―オアシス都市・外れ―
[首を力なく横に振った。
拒絶の色は恐らく、薄い]
…… …それは、
[莫迦な錬金術師は月下香の花が咲く里で――]
……――
[唇が動くが声にはならない]
… うるさい
うるさい、 ……うるさ―― ぃ
[きつく閉じた眼から涙が一筋落ちた。]
[激しい音の波が、ミシェルの耳を貫く。
ヒエムスとスィフリアの会話を聞かぬようにしていたからかもしれないが、それ以上に、舞姫と音楽が彼の視線を捕らえて離さなかったからかもしれない。
結論が描かれぬ「物語」は、終幕を迎える。
戦いの果ての人生は、どこにあるのか。
それはまるで、これから先のレヴィーカの人生を暗示しているかのようにも見えた。]
[少年は、かの舞姫が、魔神に「願い」を叶えて貰えないことは知らない。だが、彼女の舞は、それを予感させるには十分なものだった。
そしてミシェルは、レヴィーカの舞から或る種の「光」が見えたような心地でもあった。この宮殿には決して射さぬ、太陽の「光」にも似た――]
死にたくなんかならないよ。嫌なことを言うなあ。
[ 憮然とした声。
前に立つ魔神は、何時の間にか真紅のストールを被って上半身に巻きつけていた。
振り向いた黄金の瞳が軽く睨みつけていた。**]
[舞を終えた女は、常の如く一礼を。
ただしそれは、其の舞台には二度と立てぬ事を知る、より情感を籠めたものであったが]
[そして顔を上げれば、歩み寄る白銀の麗姿が見えた。
思わず息を呑み全身の筋を張る]
見事な舞であった。双面の舞姫よ。
[黄金の魔神と共に、この宮殿を去った男が、かつて捧げた名で女を呼ぶ]
其方に、今宵の舞の礼を授けよう。
[魔神は舞台を飾る瑠璃の蘭花を手に取ると、そっと冷たい吐息を吹きかける。たちまち花は散り、ふっくらとした瑠璃色の花芯だけが茎に残った]
─礼拝堂─
[枯色の瞳に映る翠の君へと変化した天使。細部にまで彼の宮殿にて見えた姿となったそれに、ふ、と短く息を吐いた]
これで信じぬと言うてしまえばただの頑固者だ。
魔神の存在を信じて、何ゆえ貴殿を信じぬことがあろうか。
これでもこの手のことに関しては柔軟にあるつもりだ。
[そこまで言葉を紡ぐと、枯色は笑みに隠れる]
私が信じるか信じぬかを問答しにきたわけでは無かろうに。
聞かせてもらおうか、王の妻が望みしことを。
[魔神の白い指先が、花芯をそっと撫でると、その冷たさに花芯は震え、自ら避けて身の内に孕んだ一粒の宝玉を産み落とす]
其方が砂漠の魔神が夜を慰めし、希有なる舞姫である証と為すが良い。
[親指ほどもある深く青き蒼玉、その奥に凍れる銀の炎が揺らめくが見える。世に二つとなき魔界の宝玉を、銀の魔神は舞姫が手に落とす]
これは、其方のみに与えし物。故に其方と其方が認めた相続人以外の物に渡れば呪いを成す。もしもその宝玉を奪おうとする輩あれば、その者は命を落とすだろう。
[恐ろしき言葉を口にして、魔神は目を細める]
何処かで天空の遣いに出会い、魔の報償を受けたを咎められたなら、呪いがために、手放すこと叶わずと告げるがいい。
[悪戯めいて聞こえるその声音は、どこか、去り往きし黄金の魔神に似ていたかもしれぬ]
[拍手の音が鳴り響いている。
しかし魔神と対峙する女は、それに応える事が出来ない]
はっ。
[何時か聞いた二つ名を呼ばれ、女はヒエムスの前で畏まる。
礼と言われ差し出される蘭花を、瞼を震わせ見詰め]
あっ。
[冷たい息吹に花が散り花芯のみとなるを見て、小さく驚きの声を上げる]
― オアシス都市・外れ ―
[拒絶の色薄れた人の子の頭を、天使の腕は優しく抱く。
――その涙、見ぬように。
――その涙、受け止めるよに。]
……本当は、そなた、
[『――わかって、いるのだな。』
うるさいと繰り返す人の子に、言葉半ばにて口を噤み。
今しばらくの、時を置く。
そうして、天使は静かに告げる。]
――悔いあらば、死を前にして人は笑まぬ。
そなた、誇り高き死を、無駄にせんとはもう思うまいな?
[どこから出したのか判然としないストールを巻き付けて睨む魔神に、にやりと笑う。]
そいつは失礼しました。
楽しんで長生きして下さい。
[そう口にして、ふと目の前の魔神の片割れを思う。
彼の魔神は楽しんでいるだろうか。
その生の目的はどこにあるのだろう。]
長生きしてりゃ、いつかまた銀の君にも、他の皆にも会えますかね。
[今まさにあとにしようとしている廃墟を振り返り、呟く。]
[目をみはるレヴィーカの前から、魔神は音も無く、スィフリアへと向き直り、その日初めて、正面からその人ならぬ瞳を見つめた]
清きスィフリア。其方を契約者と認めるか否か、今こそ、その答えを渡そう。
─ 礼拝堂 ─
[錬金術師の言葉に、女は重たげな睫を揺らし笑みを掃く。
その姿、仕草、全ては宮殿で約したあの日のもの。]
ほほほ…約を違えたと言われたくないだけよ。
ならば、聞かせましょう。帝王の妻が望みしことを。
[舞姫に語ったと同じで、少しだけ異なる物語を天使は語る。
女としての地位を極めし後、望んだのは生きた証であること。
けれど、魔神には「血が欲しい」と告げる気であったこと。
それは子をなせる年ではないゆえの、駆け引きであること。
”エルハーム”としての動きまで語ったのは、対価の内ゆえに。]
……満足していただけたかしら。
それとも、平凡な望みと呆れるのかしらね?
[無論、それだけでは終わらなかった。
花芯より産み落とされるは、内に銀の炎を揺らめかせる蒼玉。
物の価値を知らぬ女にも、それが人の世になき宝玉である事は解った]
あ――
[両手に受け止めしその宝玉は、魔神の気を封じたが如くに冷たい感触。
しかしその冷気は決して女を拒絶せず。
持ち主となりし者の手の中で、美しき炎が瞬いた]
有難き――
真に有難き事で御座います……!
[跪き平伏す女は、己が舞が認められた喜びに打ち震え。
掌の中の蒼玉に、雫の煌めきが落ちた]
[魔神は、白き武人の前に歩み寄り、その白い指先を孔雀石色の鱗に触れる。以前、同じ場所で、それに触れたと同じように]
我が求めるは、我が主、我が盟約者。
[冷たい指先は、氷より尚冷たく、鱗に覆われた肌まで凍らせるがごとく、或いは、冷たきを極めて、遂には痺れ果てる熱の如くに]
――呪い、で、ございますか。
[死を為す呪い。魔の与えし宝玉の恐ろしさを胸の内にしかと刻んだ]
次にこれを手に出来るのは、あたしの認めた者……。
[魔神の意は受け止めたとばかりに、女は頷いた]
ならばこの舞台に立つ資格ありと見受けし者に、この宝玉は授けましょう。
――それを見定める目があたしにあるかはわかりませぬが――死するまでにはきっと養います。
[天空の遣いの下り――姿なき黄金の魔神を思い出し、女はくすりと両の眼で笑う]
ええ、ではそのように。
心配せずとも、これを易々と手放さぬだけの欲はありますわ。
[蒼玉を愛おしげに胸元へと抱けば、女は再び観客へと、そして楽を奏でし者らへと向き直り、心からの感謝を籠めて頭を下げる]
[そして――視線は今一人の客人、スィフリアへと]
我が、生贄にはあらず。
[魔神の指先から伝わる力が、孔雀石色の鱗を、爬虫類の瞳を、その魔法の源を剥がしとり抜き去って、その手に移す]
―オアシス都市・外れ―
……―― ッ 、…
[息を殺すような、泣き声を殺すような
小さく引き攣れた声が漏れる。
腕の中、退きはしない。寄りかかりはしない。
せめてもの矜持か]
……うるせぇよ……
[殆ど息と化した声は
天使の声と対照的であった]
……わかって る ――よ
だから謂った これは おれの
わがまま、 …だ った
[後に。 ごく、ごく僅か。小さく頷いたのだ]
[痛みは襲いはしなかった。ただ甘やかな痺れがスィフリアの肌を…今は人と同じとなった肌を震わせただろう]
其方は、其方の求める場所へと戻るがいい。
スィフリア。
[白い手には、一匹の小さな孔雀色の蜥蜴が、きょろりと目を動かして留まっていた]
…――っ
[鱗が、縦長い瞳孔の眼が。
剥がれる熱のような冷たさに、顎を想わず引く]
嗚呼、
[孔雀石色の頬から腕から背から、熱が奪われ、く、と、眼を強く瞑る。
聞こえる言葉に、顰めた眉は中央へと固く固く寄せられ]
[言葉は、続かなかった。
白い手に留まる蜥蜴は、正に自身の半身のようで
正視できぬといった風に、貌を背け]
…――っ
[俯いて。
武人は、鳩羽色の下、瞑目した]
― オアシス都市・外れ ―
[寄りかかりも退きもせぬ身体を、淡き翠の腕は穏やかに包む。
その矜持を尊び、頭を撫でた手は背へと下り静かに留め、]
――そうか。ならば、黙ろう。
[ごく、ごく僅かな。
それでも確かに伝わった頷きに、天使は穏やかに笑む。
心強き人の子を祝福する微笑。
愛し子を抱く腕は、ザファルの涙乾く頃、涙と共に*天へ上る*]
スィフリア――
[蜥蜴の血を引き剥がされ、人の身へと戻る武人を見詰める。
それはスィフリアの願った事だったのだろうか――わからぬ女は、祝福の言葉を掛ける事が出来ず。
掌に宝玉の冷たさを感じながら、人に戻りし武人の顔を見詰めていた]
─礼拝堂─
確かに、私が約したはエルハーム殿の姿をした貴殿であったな。
[あの時と同じ笑みを零す相手に口端が持ち上がる。
そして聞く、元となった翠の君の願い。紡がれるをただ静かに聞き、心の内へと書き留める]
……なるほど、生きた証、か。
平凡とは言わぬが……いや、想いは人それぞれ。
私が口を出すことでも無い。
子を護ろうとするは、親にとって当たり前のことでもあろうが。
それを為すには困難な立場であるのは理解出来る。
故に、魔神へその力を求めたのだろう。
しかし生きた証と言うものは、長くも短くも、等しく残されるものだと、私は思うがね。
王の妻となりしことも、子を為し産み落としたことも、証に相違あるまいて。
まぁ、それ以上を望んでしまったのだろうが、ね。
[口にするは己が考え。分析するよに淡々と言葉を紡ぐ]
[昨日の朝に見た、スィフリアの肌を覆っていた蜥蜴の鱗が消えてゆく。少年はただその様子を、じっと眺めていた。窓辺に立った、あの時のように。
そして、朝焼けの中で見たスィフリアの目が寂しげだったのは気のせいじゃなかったのだと、少年はそう思っていた。
何故あの時、己は鸚鵡から人型に化けてみせてやることをためらったのか。人間をからかって遊んでやることなど、造作も無かったはずなのに。
――その理由は、手に乗る蜥蜴を正視せぬ武人の姿の中にある。ミシェルは、そう確信していた。]
[冷たき月の笑み。
武人が、すっかり人へと戻った孔雀石色の大きな瞳で見上げた時に見られれば
その薄い唇が、僅かに開いて*]
─ 礼拝堂 ─
[分析するよなヒジャービルの言葉に、女が浮かべるのは苦笑。]
……口の多い男だこと。
[その言葉を最後に”エルハーム”の姿は掻き消える。
再び光の柱の中にあるは翠なす天使。
性別なきその表情に苦笑はなく、ただ穏やかに見つめて、]
――…約は果たされた。我は行こう。
そなた、その様子であれば心配は要らぬな。
[『過程を楽しむ』という真を知る錬金術師。
そこからは憤怒や憎悪、魔を求める悔恨の想いを感じない。
天使は透き通る翠の瞳を上下に瞬かせ、微笑む。]
『ヒジャービル、人としての英知求めるもの。
そなたに幸いあれ。』
[祝福は光の中に淡く解けて――神の絵が*男を見守っていた*]
[白き武人が受け取ったのは、かつて女が望んだものかもしれぬ。
しかし女はそれを羨みはしない。
女の真の願いは今、掌の上で輝いている**]
魔神 ヒエムスは、不滅隊隊長 スィフリア を能力(襲う)の対象に選びました。
魔神 ヒエムスは、薬売り レヴィーカ を投票先に選びました。
魔神 ヒエムスが「時間を進める」を選択しました
[国持たぬ吟遊詩人の元にも、天使は等しく訪れる。
そしてその穏やかなりし理想に、静かに微笑むだろう。
魔の力頼りて得た国は、あくまでも魔に属するもの。
ただ与えられた国は真の故郷にはならぬと説いて。]
[人の世に戻り仕舞い姫にも想い向けられればまみえよう。]
[けれど、ユーグの前に姿現すことはない。
魔に堕ちた魂を、天の使いは*見守らない*]
不滅隊隊長 スィフリアが「時間を進める」を選択しました
投票を委任します。
不滅隊隊長 スィフリアは、魔神 ヒエムス に投票を委任しました。
投票を委任します。
薬売り レヴィーカは、魔神 ヒエムス に投票を委任しました。
─礼拝堂─
性分でね。
気に障ったなら謝ろう。
[掻き消える翠の君を見やりながら口端を持ち上げる。再び姿を現す天の御使い。その穏やかな表情を見やりつつ]
約違えずにくれたこと、感謝する。
……さて、人の心とは移ろいやすきもの。
ましてや私の目指すものは──。
[心配要らぬと言う天の御使いに、自嘲めいた笑みを浮かべ言葉を紡ぎ、そして止める]
貪欲なる者は諦めも悪いのだよ。
いつまたこの想いが誘惑に負けるか分からぬ。
今は、手段無き故に今為せることを為すつもりではあるが、ね。
[祝福を残し光の中に溶け行くを見やり。口にするは天の御使いがまた心痛めそうな言葉。それが本心かは定かでは無いが、口にする間、枯色の瞳が僅か覗いて居た]
──知っているか、翠の天使よ。
錬金術師が目指すは、魂の精製。
神の領域を侵すものだと言うことを──。
[見上げるは己を見守るかの様な神の絵。けれど男が向けたのは挑発的な笑み。それを残し、男は礼拝堂から立ち去り行くので*あった*]
― オアシス都市・外れ ―
……――、 …
[ほんの少しだけ、眉間の皺が薄くなる。
笑みは温かく伝わった。
落ちた雫は砂に乾いて消えていく。
漆黒が映した翠帯びた御使いの姿は
たしかに とても うつくしかった。]
…… …―― 行くのか
[腕はなれるころ 小さく訊く。]
……――そうか
[透けて天に昇る姿を見上げ]
[また次の100年を、魔神は青と白銀の塔の内に過ごす]
[その傍らに孔雀石色の肌をした小さな使い魔の姿が、いつしか現れることもあったかもしれない**]
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