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案内人 ユーグは薬売り レヴィーカに投票を委任しています。
魔神 ヒエムスは不滅隊隊長 スィフリアに投票を委任しています。
魔神 アウルムは案内人 ユーグに投票を委任しています。
黒い外套の ザファル は 帝王の妻 エルハーム を追い出すことに決めた。
不滅隊隊長 スィフリア は 黒い外套の ザファル を追い出すことに決めた。
薬売り レヴィーカ は 不滅隊隊長 スィフリア を追い出すことに決めた。
案内人 ユーグ は 不滅隊隊長 スィフリア を追い出すことに決めた。
帝王の妻 エルハーム は 黒い外套の ザファル を追い出すことに決めた。
魔神 ヒエムス は 黒い外套の ザファル を追い出すことに決めた。
魔神 アウルム は 不滅隊隊長 スィフリア を追い出すことに決めた。
吟遊詩人 コーネリアス は 魔神 アウルム を追い出すことに決めた。
黒い外套の ザファル は宮殿から追い出された……
案内人 ユーグ は、不滅隊隊長 スィフリア に退去の力を使った。
夜が明けると、吟遊詩人 コーネリアス の姿が宮殿から消えていた。
《★占》 不滅隊隊長 スィフリアは 人間 のようだ。
現在宮殿に残っているのは、不滅隊隊長 スィフリア、薬売り レヴィーカ、案内人 ユーグ、帝王の妻 エルハーム、魔神 ヒエムス、魔神 アウルムの6名。
そしてまた日は昇り、朝が来る。
極寒の夜から灼熱の昼へ移り変わる、その間(はざま)の恵みの時がやって来る。
崩れた柱の影が生まれたばかりの光の中で長く尾を引く廃墟の中に、魔宮から現し世に立ち戻った者がまた。
─オアシス都市─
[早朝、朝日昇り切らぬ夜の寒が残る頃。目覚めた男は手帳へと向かう。書き記すは体験した出来事では無く、研究のための覚書。それは暗号と為し己以外読めぬように工夫されたもの。連ねる文字は、常の手記と何ら変わりは無いが]
……この世に真なる無はあらず。
無より有を生むは不可能と言うことか。
では他を基としての転換はどうか。
…戻ったら試してみるか。
[研究についての思案でしばし刻は過ぎて行く。
彼の宮殿より追い出されし者が居ることを、男はまだ知らない]
オアシスの畔に築かれた交易都市でも、夜明けの刻はやって来る。
藍から青へと変わる空の下、闇の静寂に包まれていた街を様々な音が満たしてゆく。
往来を行く人の足音。
目覚めた人々の交わす挨拶。
祈りの時を知らせる謡い。
早朝の祈りの声。
― 緑の中 ―
[”天使”は己に近き緑の中で、翠の紋様揺らし佇む。
透き通る翠の睫が白みゆく朝の空気に震えた。
白露零し現れた瞳が、指に絡む金銀の蛇に視線を落とした。
『自ら退去はせぬ』との想いゆえに未だ指輪はそこにある。]
――魔神は吟遊詩人が願い退けたか。
コーネリアス、そなたに幸いあれ。
[ほぼ言葉交わさぬままであった人の子を想い、祈る。
しばしの時を置き、淡い唇から零れるのは吐息めく言の葉。]
ザファルもまた、魔神の手から逃れたのだな。
指輪は天使たる我の意志を、人の子とは同列と見なさぬよう。
……そなたが為の祈りがそなたには仇なのであろうな。
[この地より逃そうとの思いより、心信じる祈りが発露した様子。
それが魔神の意図か否かまではわからぬものの。
宮殿の外に弾くは魔の誘惑から逃る近道ゆえに、皮肉めく。]
甘き堕落の果実より逃れたザファルよ。
その心に撒いた種が、そなたを救うを願おう。
宮殿から弾かれしが後悔でなく、幸いと思える人生を祈ろう。
[目の前から甘き堕落の果実を取り上げたことで怨まれようとも、
人の子の魂の安寧を、天使は祈る――**]
[天使の翠の薄布は暖かさすら感じる気がするのか、武人はその感触に瞬かぬ目を細めた。
それからは口を噤み、何も言えず――宛がわれた部屋へと戻れば、そのまま倒れるように寝入ってしまった。]
― 早朝 ―
[がば、と、身を起こす。
ゆっくりと頬に手を当てると、汗に濡れた硬いそれ。
見下ろす掌は、彩度の低い肌の色。
嵌めた指輪が、居なくなった人の名を告げてきた。
未だ殆ど話して居ない吟遊詩人と、]
…ザファル。
[昨日聞いた言葉と同時に思った名。
ぐ、と、小さく拳を握った。]
ちゅん、ちゅん、ちゅん。
ちぴぴぴぴぴぴ……
[屋根の上で鳴いているのは、真っ赤な鸚鵡。
宵闇、偽の太陽に照らされた空の境界線を眺めていた。]
――。
[遠く遠く 祈りの声が聞こえた。声が。
魔神の宮殿にはなかったもの。
光が射した。光が。
眩い太陽の光は、宮殿には――]
…、 ッ … !!
――、なに …
[冷たい、 露は魔神の居城の名残か。
砂は透きとおり最後の残滓を帯びながら
黒の上を滑り降りた。
其処は 廃墟]
――、 は
[小さく 乾いた声が漏れた。]
[外から、鳥の声が聞こえる。
白のマントを羽織り、蓮の蕾のような形の窓から外を見た。
屋根の上か、鳴き声の姿は見えず]
…――?
[見渡す限り、日の無い昼間の白亜の煌びやか]
……
[左手。 指輪はない。
慈悲深い天使の顔が過る。]
…――目論見どおりってわけだ
[く、と咽喉の奥を鳴らす笑いは
しかして苦さを酷く帯びていた。
砂を掴む。其処にはもう何もない。]
[砂を踏む足は重い。
総てが幻と消えた、その跡に]
―― …畜生。
[ただ残された、死なないようにとの
水と食物、心遣いか、最後の慈悲か、皮肉か。
夢ではないと、物語る。]
[夜明けの星が方角を指し示す。
ずるり ずるりと 外套は重く 黒い影を落とし
オアシスの都市へと、*向かう*]
ちゅん、ちち、ちちち。
[赤い鸚鵡は、或る窓の方をじいっと見つめている。]
ぴぴぴ、ぴぴ。
[かぱり、かぱり。口を何度も開けて、その方向から発せられる空気を食べている。]
[鳥の姿が見えれば、その動作に首を傾ける。
声は耳には心地良いのか、窓枠に肘をついて足を組んだ。
頬の鱗は露なまま、砂漠とは思えぬ清涼な風の感触を愉しむよう。
ひらり、ふわり。
天使から受け取った、翠の薄布が部屋の中から窓へと向けて
ゆっくりとはためいた]
[ぱかぱかと口を開閉する動きを止め、窓の向こうからやってきた人物を、再びじいっと見つめる。
ひとつだけ、こてりと首を傾げ。
次の瞬間、屋根から飛び立って、窓へ向かって羽ばたいた。]
ちちち……ぴぴぴ……
[鸚鵡の鳴き声とは明らかに違う、澄んだ声で鳴きながら。]
[真紅の鸚鵡へと、手を伸ばす。
今は顔を覆う布も手袋もせず、頬や甲に鱗は浮いた侭。]
お前はこの宮殿の住人か?
それとも迷い込んだか?
[澄んだ鳴き声に、柔い声音で語りかけた]
[こくり、こくり。
「ここの宮殿の住人か?」という武人の問いかけに応じるかのように、赤い鸚鵡は頷いた。
スィフリアの顔をじいっと見つめ、視線を落とし、そしてこちらに向かって来た手を眺める。]
ぴよ、ぴよ。
[スィフリアの手を興味深そうに眺めて、鱗が浮いた手の甲にそっと嘴を寄せようと試みる。]
[嘴寄せれば、鱗は硬く冷たいを感じられるか。
逆の手で鸚鵡の鮮やかな赤の羽根をそっと撫でようとしつつ]
そうか。
此処にずっと、居るのか?
この宮殿が現れぬ時も、此処に。
[少し前までは廃墟だった此処。
硬い横に避けた口を笑みの形にし、瞬き少ない目を一度、ぱちりと合わせた。]
[かぷかぷ、かぱかぱ。
嘴は無機質な音だけを立て、言葉を発することは無い。
冷たい鱗の感触を少しだけ味わった鸚鵡は、縮まってぽりぽりと自分の腹を嘴で掻く。]
くえ。くええー。
[と鳴き、鱗に覆われたスィフリアの手の甲に、自分の身体のぬくもりをそっと寄せた。]
現れぬ間の宮殿は、どうなっているのだ?
その間――
[腹を掻く様子に、瞳にも柔い笑みの色を浮かべ、手の甲に身を寄せるにそれを細めた。
手の甲で、そっと、背を撫でるように沿わせ、指でその嘴の下を擽るように転がした]
…鳥に話しても詮無いな。
[苦笑の篭る、声]
[ころころと猫のような声を上げながら、気持ちよさそうに首を伸ばす。
頭をぐっと伸ばしていた視線の先には、鱗に覆われたスィフリアの頬があった。鸚鵡は、自分もそれと気づかぬまま、はっとして凝視する。鸚鵡はスィフリアの手をすり抜け、腕を伝って肩までのぼり、]
きゅううん……
[と犬のような鳴き声を漏らしながら、頬に埋め込まれた鱗に頬擦りをした。]
魔神殿の愛玩動物か?
可愛いな。
[犬のように鳴く様。
眼を細めてその様子を愛でる。
落ち着く気がするような、穏やかな刻]
安すぎるって――そんな事。
[緩い笑みを見せるユーグに反論を試みるも、彼の手が髪に触れればそれ以上何も言えず。
代わりにと告げられた対価に、女は両の眼を円くした]
そんな……。
それでは、あなたの望みは。
[訊き返す言葉にも男は無言のまま、その場を立ち去った。
独り残された女は、金銀の指輪を反対の手で包む。
預けられた一つの意志――女が望む先は]
――朝・自室――
[そして消えたのは、女の望んだ相手ではなかった。
黒衣の男――望みは、死者の復活であったか]
あの者の望みこそ、人には叶えられぬものではないかしら――
[しかしそれでも譲る気がないからこそ、女は今も此処に居る。
それはもはや業と呼べるものかもしれぬ]
[そして今一つ告げられた名は、異国の詩人のもの。
結局、彼の楽に乗せ舞う事は叶わなかったらしい。
魔神の次に己が舞を目にしたという男の事を思い、女はしばし、届かぬ感謝の念を捧げた]
――回想・了――
― 青と白銀の塔 ―
[黄金の塔に笑う同族の気配は届いているのか、常と変わらぬ白い面を偽りの空に向ける]
嘆きのザファル、其方が嘆きは己が身に届かず。幸福なるコーネリアス、其方が望みは人の心に非ず。
[手の中には二つの駒。一つは光の下にあっても闇を抱きし黒曜石、今一つは黄昏の薄闇に似た紫水晶]
彷徨いし者達、彷徨う果てに何を見るか。
[二つの色が光の中に放たれる]
[闇より黒き翼のクロツグミ]
[淡き紫の羽に包まれしヒバリ]
[共に偽りの空に溶け消えた]
─オアシス都市・宿─
[手帳と向き合いどのくらいの時間が経っただろうか。ようやく男は手帳を閉じ、外へ出るべくアガールを被る]
さて、戻るにはどのくらいの荷が必要だったかな。
[しばし逗留を決めたとは言え、出発の準備も考えておかなければならない。その見積もりをすべく、必要な荷だけを持って宿を出た]
――現在・自室――
[宮殿を追われし者と未だ留まりし者を、指折り数える]
ここにいる人間も、随分と少なくなってしまったわね……。
[天空神の使いとやらが居るのであれば、更に少ないのかもしれず]
そろそろ――契約の相手を決める時も近いのかしら。
もしかして、内心では既に決めている?
[魔神に向けて送るは、何気ないという風な口調の問い。
答えの返る望みは薄いだろうが、純粋に興味はあり]
― 現在 ―
[戯れた赤の鸚鵡は、窓から飛びさっただろうか。
居るなら肩に止まらせた儘、武人は部屋を出て食堂へと向かった。
召使が、良い匂いのする食べ物を沢山並べて行く]
[手のなかの微かな振動に目を覚ました。
硬く握った手の内で魔神の指輪が名を告げる。]
案内人より先に行きますか。
[集まる人の意志により、弾かれたは黒衣の男。
かの男の願いは知らずとも、魔神に排された楽師の願いは知っていた。]
叶う願いは二つ。
残る願いは三つ。
さて、どうしたものか。
[広間の絨毯に寝転がったまま天を見上げる。
金銀で装飾された美しい天井に、羽を広げ立つは天使の彫像。]
「契約は必ず成されるとは限らぬ」
[群青の踊り子の指輪から声は響く]
「無粋な遣いも居座っていることではあるしな」
[その冷たき声は常と変わらず、けれど言葉の端々に珍しく苛立ちに似た気配が感じられたかもしれぬ]
[やってきた白い腕の使い魔に伝えるは、客人の探索。
緑の奥方を見つけたら、所在を自分に教えて欲しいと依頼して、鳥になり消えた妖魔を見送る。
彼は使い魔の主ではない。
願いを聞いてくれるのかは分からないがそれでも口にしないよりは面白いことが起こるかもしれない。]
ああ……そうよね。
[指輪から返る声。
答えをぼかしたか、今の宮殿に相応しき者は居らぬとの意かはわからぬが]
遣い、か……。
ならば、それの排除が先決か。
[ヒエムスの冷たき声に、常とは違う響きが混じる。
女の背筋を固くさせるそれは苛立ちなのだろうか]
天の遣い……誰の事かしら……。
[その存在は知れども、正体までは知らず]
……ユーグではないのだろうけど。
そうすると……あの二人のどちらか。
[そこで女は、すたんと寝台から両足を下ろす。
群青を身に纏い廊下へと歩み出る女。
その先で誰に出会えるかはわからねど]
[ 案内人の男の指輪が微かに振動する。
その音は黄金の魔神の声となって伝わる。]
天空神の使いの話を聞いてもなお願いが変わらないなら、塔に来るといい。
扉を開けておこう。
[ 密やかな伝言。]
[金の天使が見守る天井を何度か旋回し、天窓から消えた妖魔を見送って、廊下に出た。]
さて、ここに居座れるのもあと僅か。
今のうちに豪勢な食事でも頂くとするかね。
[数日の滞在ですっかり大きくなってしまった胃に手を当てると、指輪が震え、魔神の声を伝える。]
――廊下――
あ……ユーグ。
[廊下に出た所で案内人の姿を見付ける。
その指輪に伝えられた伝言の事などつゆ知らず、女は照れ混じりのような半端な笑みを送る]
昨日のあなたの意志……無駄にしてしまったかしらね。
ま、少なくとも、あたしは今も此処に居られる訳だけれど。
[そう言って、感謝の念を示すが如く一礼を]
[密やかな言葉は魔法によってかはっきりと聞こえたけれど、指を耳に持ち上げその声を味わう。
笑うように震える指輪に苦笑して、わずかに唇を寄せた。]
あー、どっちかと言うと、天使殿の気を変えてみたいんですけどね、俺は。
ま、あとでお会いしましょう。
―赤と黄金の塔―
[ 塔の丸屋根の、蕾の如きふくらみに腰掛け、偽りの蒼穹を眺む。
口元には、この数日絶えぬ笑みを。]
ああ、楽しいなあ。
ほんとうに楽しい。
― 青と白銀の塔 ―
[レヴィーカに天使の正体を告げることはせず、銀の魔神は窓辺に凭れ、腰掛けたまま空を見上げる]
[その耳に届くは、緋の使い魔の奏でる、捕われぬ風の響きか]
……本当にお前らしい。
いいなあ。実に、好い。
[ その言の葉は紺青の空に向かって吐かれ、指輪の持ち主には伝わらねど、続くいかにも痛快といった高笑いは辺り一帯に響いた。]
― 休息所 ―
[祈りの時はどれほど過ぎたか。
”天使”は翠なす睫を揺らし、浅く覗く瞳をさまよわせた。]
――…わたくしを、我を、呼ぶは誰そ?
[”緑の奥方”を探す案内人の意思。
微かに感じたそれを求め首を巡らせば、大空行く鳥。]
……おいで。
わたくしは、ここに。
[瞬くほどの間に”エルハーム”を象る姿へと戻り、手を伸べる。
女の姿と声に妖魔である鳥は警戒しながら旋回し、伝言を鳴く。]
― 緑の中 ―
[祈りの時はどれほど過ぎたか。
”天使”は翠なす睫を揺らし、浅く覗く瞳をさまよわせた。]
――…わたくしを、我を、呼ぶは誰そ?
[”緑の奥方”を探す案内人の意思。
微かに感じたそれを求め首を巡らせば、大空行く鳥。]
……おいで。
わたくしは、ここに。
[瞬くほどの間に”エルハーム”を象る姿へと戻り、手を伸べる。
女の姿と声に妖魔である鳥は警戒しながら旋回し、伝言を鳴く。]
[どこからか魔神の若い声が聞こえるような気がしつつ、廊下に目を向けるとそこには群青の女。
素直に頭を下げる女に苦笑して目を細めた。]
あんたは本当に……。
[素直だな。言いかけた言葉は言えば怒られそうな気がして唇にとどまる。]
代価は既にもらっているんだから、無駄に使うもお好きなように。
しかし、そんなにあの戦士殿が邪魔かね。
その願いは叶わないのだろう?
ユーグ、忠告を聞かず宮殿に自ら迷い込みし者。
そなたがなぜ、わたくしを探す?
[呟きに鳥は答えず、何処へか消えた。
女は睫を上下に緩やかに動かし、緑の中から抜け出でる。
双子の塔にある魔神の姿を目にしても凛と背を伸ばし宮殿へ。]
[何やら言い掛ける男に首を傾げるも、続く言葉に]
別の願いは叶うかもしれない――と、魔神様が言っていた。
何にせよ、契約されてしまえば同じ事よ。
[そう言って、しばし置く間]
――あたしとスィフリアは、どこか似ているから。
あたしが魔神様に近付くなら、一番障害となるは彼女ではないかしら――
[少しの沈黙の後、苦笑じみた声が、再び届いた]
ああ、まったく、お前は変わらぬな。アウルム。
[その声に、常のような皮肉な響きは乗せられていなかった]
似てるかね?
頑固そうなところは似てるかもしれないが……俺はあの戦士殿を余り知らないからな。
[群青の娘を見下ろし首を傾げた。]
まあ、白銀の君はあの娘を目にかけている気がするがな。
その前の日は、あの娘の排除に意志を向けていたじゃないか。
頑固そう? あたしもそう見えてるの?
[ユーグに返す言葉はやや冗談混じりのもの]
それよりも……境遇的な所、かしらね。
あたしが右の顔に持つものと同じだわ。
[話が白銀の魔神の事に移れば]
魔神様は、その意志を人に委ねているようよ。
だからあの日は――ザファルの意志をそのまま汲んでいたのではないかしら。
何故ザファルだったのかは知らないけれど――
ああ、これだけ俺が褒めてるって言うのに、それでも容姿の美を求める。
願いを諦めるよう説得してるって言うのに聞きやしない。
[悪戯めいて返す女に呆れた顔を向ける。]
境遇的には似てる、か。
俺はまだ、あの物語を最後迄聞いていないが、彼女の願いは別のところにあるんじゃないか?
[話題が今日脱落した黒髪の旅人にうつると、ふとその視線が遠くへ向けられる。]
ま、こうして立ち話してるのもなんだ。
いつ食えなくなるか分からない豪勢な飯でも食いに行こうぜ。
変わらぬものは退屈、そうではなかったか?
[再び返す言葉は、常の如くに揶揄を帯びて]
天使の誘惑に、あの男が揺るがぬよう祈るがいい。
[それは無論、天空の主にではなく]
――ま、そこは否定しないでおくわ。
[呆れた目を向けられても、女は平然とした調子で]
そうね、あたしも物語の先は知らないけれど――
少なくとも、スィフリアの願いは国や民のためであって、自身のためのものではないようね。
――だから余計に手強いと思うのだけれど。
[ふう、と溜息をひとつ吐き。
食堂へと誘う言葉には]
ああ、そうね。
――いつ此処を出されるかわからない、か――
[宮殿での生活を思えば、単純に惜しいという思いが湧き上がった]
――食堂へ――
ははっ……それはそうだ。
[ 白銀の魔神の揶揄に憂いの色が消え、]
「おじさん」が心変わりするようだったらそれはそこまでの人間だったってことだよ。
――俺は、そうなるとは思ってないけどね。
[ そう自信たっぷりに告げた。]
― 食堂 ―
[食堂の外まで漂う良き匂いと人の気配に、食堂へと現れる。
けれど、そこには求める人物はおらず。
女は緩く息を吐いた。]
……ここでもないのね。
気配の掴みにくいこと。
[召使の魔の気や宮殿の主の力が惑わすのかと、呟き。
先にあるスィフリアの姿に目礼を送る。
その肩にとまる赤い鸚鵡の存在に距離を保ったまま。]
さてね。
似て非なるから、手強いと思うのか。
[二人、食堂へと向かう道先に白い鳥が舞い降りる。
鳥ならざる鳥は、一礼するようにその首を下げてから、嘴で道の先を指すとまた飛び立った。]
……使いを果たしてくれたってことでいいのかね?
[飛び去る鳥に向かい呟くと、群青の薬売りとともに鳥が指した先へと向かった。]
――食堂――
[白い鳥と会話しているらしきユーグ。
会話の内容まではわからぬが、その嘴は行く先を指したようであった]
あの鳥……。
[問いを発するより早く、扉が開かれる。
そこには、スィフリアとエルハーム――残りの客人が揃っており]
御機嫌よう。
[ひとまず、挨拶を交わす。
部屋に満ちた食欲をそそる香りに、腹が鳴りそうではあったが]
おや、奥方だけでなく戦士殿迄。
これで、客人は全員揃ったか。
[鳩羽色に羽根休める鸚鵡には僅かに眉をあげ、室内の先客に手を上げて挨拶した。]
ちょうど、奥方にお会いしたかったんで。
昨日は良く休めましたか?
― 食堂 ―
[エルハームの会釈に、胸の前に手を組んで敬礼をひとつ。
その後現れたレヴィーカにも、ひとつ頭を下げて]
ごきげんよう。
どうぞ?
[赤い鸚鵡が居るなら、そちらに何か果実でも差し出しつつ]
――食堂――
[エルハームへ用がある様子のユーグを横目で見遣りつつ、自身はスィフリアの近くの席へと]
あら……綺麗な鸚鵡。
それとも使い魔かしら。
[赤い鸚鵡の羽根へ触れようとした]
昨夜は眠れたかしら?
わたくしは気にせずお食べなさい。
身体に力なくば、心の力も沸かぬもの。
[スィフリアにそう語りかけ、他を探そうと踵返しかける。
その前に食堂の扉が開き、女はヴェールの影で笑みを掃いた。]
御機嫌よう、レヴィーカ。
ユーグも随分と機嫌が良さそうだこと。
[食欲が表情に出た案内人を仄かにからかい、席につくを促す。]
どうだろう?
良い声色で鳴く鸚鵡だ。
[レヴィーカに顔を傾け、ローグへも頷く。
周りを見渡し――ひとつ、息を吐けば口元の布が揺れる]
少なくなったな。
……昨夜は物思いに耽っていたわ。
[半ば伏せた睫の影で、人の世に戻りし人の子を想う。]
会いたかったのは顔を見るためではないでしょう?
何か話があるのなら、こちらでも他でも伺うけれど。
…せっかくの食事が冷める前にいただく方がいいかしら。
[再び上げた眼差しは”エルハーム”らしく、量る気配。]
― 青と白銀の塔 ―
どうやら役者が揃ったようだ。
[食堂に集う人々の気配に、白い手の中、銀の駒をくるりと回す。変わる駒の色は何れか、今は知れぬ]
[大人しく撫でられる様子の鸚鵡に目を細めて]
楽の音もいいものだけれど、鸚鵡の声も素敵なのでしょうね。
[スィフリアにはそんな言葉を返し、既に料理の並べられた卓へと向き直る]
さて――この料理を口に出来るも、今日が最後となるのかしらね。
[まるで誰にも向けぬ独り言とでもいうように、しかしその割には通る声で、女は呟いた。
卓上の乾酪(チーズ)へと手を伸ばしながら、密かに周囲の様子を窺い]
機嫌、良いですかね?
きっと、奥方に会えて嬉しかったからでしょう。
俺が奥方を捜してることは、聞きましたか。
じゃあ、無作法かもしれませんが食事しながらでも。
[自分にと用意された食事だけでなく、他者の皿にも物欲しげな視線を向けて、天使の正面の席に着く。
鸚鵡の鳴き声には片眉をあげて、横目で笑った。]
最後になりそうは私だな。
[自身に、ザファルとおなじだけのものが集まって居たのは知って居る。
レヴィーカの言葉に、首を傾げて不思議そうな声を出しながら、赤の鸚鵡を撫でる]
わたくしの姿見る前から綻んでいた様だけど。
ええ、食堂で何も貰わず話すも無粋。
気にせずに食べるがいいわ。
[席に着き、召使から銀の杯を受取る。
清水に柑橘の汁を少し垂らした冷たい飲み物をしばし傾けて、]
――…何かしら?
[男がある程度食べたところで口を開く。]
それは――ユーグが昨日は、あたしに意志を委ねていたからだわ。
魔神様についてはわからないけれど、きっと、どちらかに――
だから、今日どちらに転ぶかはわからないわね。
[言って、武人の顔、髪の奥の爬虫類の瞳を見詰めようとする]
いえ、そんな事は関係なく、今日契約を結んでしまえばいいだけなのだけれどね。
――あの物語の続き、どこかで誰かに語ったのかしら。
[千と一夜続くと言っていた物語。
女の記憶の中では、ほんの序盤で途切れたままであり]
[緑の女に促されると、出された肉を大口で頬張り、にまりと笑う。]
ああ、お願いと言うか質問と言うか。
奥方はなんで、ここに居るのに、願うことは無いんですか?
無いなら出て行ってもらいたいなあと。
[肉を飲み込みながらも、視線は相手に合わせたまま。
たた、自分の前に回された皿には目を見張り、小さく頭を下げた。]
奥方は食事を採らないんで?
ところでさ、お前は今回契約したいと思うような人間は居るのかな?
[ さりげない様子で水を向けた。
ほんの気まぐれで尋ねたふうに装っているが、その真意は別にあると――長らく共にいた同属にならば――悟れる類のものであった。]
なかなかに…難しいものだな。
語っていないよ。
[爬虫類の眼は、鳩羽色の間から露。
もうそれほど隠そうとする意志も見られない、といった風。
小さな親指程の果実を取り、鸚鵡へと差し出しながら自身は良い匂いのするパンを手に取り、布の下から口へと運ぶ]
[トン、トン、トン、と、嘴の間で果実が踊る。
何度も、何度も、同じ仕草を繰り返しながら。
まるで曲芸のような動きを繰り返していた鸚鵡は、何度めかのバウンドで、果実を嘴で捕らえることに失敗し、ついに果実を落としてしまった。]
あああっ!もう!!
[スィフリアの肩から身を離し、鸚鵡が羽根を伸ばした――が、その羽根はいつの間にか、人間の手のようなカタチに変わっていた。]
味は、おいしい、のにっ!
[赤い鸚鵡の姿から少年の姿に戻った使い魔が、床に座り込んでいる。]
そうなのね。
……語れば魔神様の気を惹けるとは思わないの?
ああ、それとも――叶えさせたい願いの性質が変わったか。
[探るような言葉。瞳は露わになっているものの、人とは違うそれからやはり感情は読みにくい]
難しいのは、誰しも同じだわ。
魔神が何を望むかは読めぬもの。
けれど――より気を惹いた者が有利なるは、確かではなくて?
[人は己の意志では姿を変えられぬ。より相手の目を引くは――
それは女の望みを思えば、皮肉な事かもしれなかったが]
[健啖家な食事振りを眺めつつ、目を細めて男の笑みを流す。
食事については緩く首を振るだけで返さず。]
あら、どうしてそう思ったのかしら?
わたくしも願う事はあってよ。
[ユーグが何を知っているのか、緑がかる黒の瞳が探る。
しかし時間が限られているであろうことを思い、瞬いて、]
『我が願うは人の子の魂の安寧。
――…魔神への願いではなく、人の子への願いだが。』
[ヴェールの繊細な襞も唇も動くことなく。
透き通る翠になった瞳が囁くよに告げる。]
出て行かせたいなら、なぜ昨夜願わなかったの?
[それは指輪に示す意志のこと。
異なる力ある指輪を持つか否かはわからぬも、”女”の声で問う。]
惹けると思ったから語り出したのは間違いないよ。
いや、私だけが難しいと思ってるわけでもない。
[女の言葉に、声音に滲むは苦笑の色。
エルハームの方へと視線をちらと向けるは、何を想うてか]
望みを叶えて貰う為に望みを推測する、か。
探りあいだな。
[言いながら、指は鸚鵡へ]
─オアシス都市・市場─
[砂漠の中でありながら活気溢れるオアシス都市。交易拠点として利用されているため、人の出入りも多い。市の立ち並ぶ辺りは特に人が多く、景気の良い声が飛び交っていた]
「やぁ旦那、何かお探しかい?」
[食料品を扱う市で品を眺めていると、店主が声をかけてくる]
日持ちの良い食糧を探している。
今すぐ出立するわけでは無いのだが……取り置きは可能かね?
「受取日をはっきりさせてくれるんなら出来なくはないがね。
後は品と量によるかな」
[どの品がどのくらいあるのか等をしばしやり取りし、一通り話が纏まる。多少高価だが、と熟れた果実を一つ購入したところで、店主の視線がアガールから垣間見える顔に走る蒼に止まった]
「あー、旦那もしかして、噂の?」
…噂、とは?
「伝説の宮殿を見つけたとか何とか。
食堂で大口叩いてたって話を知り合いから聞いたもんでね」
ああ……あの時のか。
大口を叩いているのではなく、実際にこの眼で見て来たのだがね。
見ておらぬ者にはそう思われても仕方がない。
[僅かな嘆息と共に両肩が軽く持ち上がり。直ぐに戻しながら買った果実を口へと運ぶ]
……やはり彼の地で食したものよりは劣るな。
[極小さな呟きは周囲の喧噪にかき消されたようで、店主にまでは届かない]
「ねぇ旦那、あっしにもその話聞かせちゃくれやせんかね?」
残念ながら私は吟遊詩人では無いのでな。
語って聞かせることは向かぬ。
「いやそこを何とか!」
[断る男に店主はどうにか聞かせてもらおうと頼み込む。男はしばし果実を食みながら思案し]
……なれば先程の食糧代を少し安くしてくれるならば考えておこうか。
「ぅえ、そうきやすかい。参ったなぁ」
[予想外の返しに店主は苦笑しながら頭を掻く。男もからかうように口端を持ち上げていた]
ふうん。
[ 答えを聞いても黄金の魔神の表情は変わらなかった――変えないようにした。
声音にも、何も滲ませなかった。]
[色を変えて行く瞳の美しさに目を細めた。
その目が澄んで行く程に、女は若返るように見える。
茉莉花の香は今もその身を飾っているのだろうか。
食事の香辛料に、甘い匂いは掻き消える。]
俺は信心深い方じゃないんで、魂の安寧って奴がどうしたら得られるかわかりませんけど。
……つうか、安寧って言う言葉の意味が分かりませんけど。
[後ろの言葉は少しだけ小さくなるが、でも、と続けるこえは明瞭だ。]
金の魔神から、奥方こそが招かれざる客と聞きました。
俺は、天使だろうと望みがあるならここに居りゃあ良いと思いますが、その望みが俺の望みと相反するなら。
[言葉を切って眉を下げた。唇は笑みの形に。]
やっぱり排除するしかないんで。
ん?
[スィフリアの視線が気になったか、追うようにエルハームへと顔を向けて。
それでも女は首を傾げるのみであったが]
確かに、ね――
あたしは自分の願いをそのままぶつけて、叶えてもらえるとは思っちゃいないもの。
人間同士の中で立ち回る事こそ重要と考えるわね。
スィフリアは――そういう事、お嫌いなのかしら。
―オアシス都市―
[砂避けに頭から深く被った黒い外套の隙間
黒い眼は思案下に伏せられていた。
時折空を睨み、首を横に振った。
すれ違うものが道を譲る様を見るに、
余程剣呑な眼つきをしているのだろう。]
何故、昨夜、ですか?
そうですね。魔人殿にも御願いされたんですけど。
[ちらり、少し離れた床の上、人形をとった妖魔に苦笑する。]
折角天使様がいるってのに、話も聞かずに追い返すのって勿体ないなぁと思ったんで。
あ、俺以外が契約を結びそうな時に奥方が居てくれたら邪魔してくれるかなーと言うのもありました。
[天使の慈愛という名の誘惑を拒み、安寧なる只人としての生を捨て、願いのままに]
我が力を求める者はあるか?
[銀の魔神は、閉ざされた蒼穹へと、白い手をかざした**]
嫌いではないよ。
ただ、苦手なだけだ。
[肩を竦め、鳩羽を揺らしてレヴィーカを見返す。
うむ、と、口の中で唸るような音を出し
また、エルハームへと視線を一度]
そうだな。
今は、4人――半分。
[纏う衣装染める翠の紋様、口元を覆うヴェール、茉莉花の香。
全てが”女”を形作る中、瞳だけが”天使”の貌を覗かせる。]
……そうね。
人としての生と死のまっとうを願う、と言えばいいかしら。
『甘き誘惑に乗り魂堕つれば――、魂の安らぎはない。』
[エルハームの言葉で解きほぐしながら、天使が告げる。
黄金の魔神の名が出れば、柳眉を顰めて吐息を零し、]
そう――…我は天空神が御使い。
我が望みは魔神のものとは相反しよう。
しかして、そなたが望みは何なりや?
[笑みの形浮かべる男の唇を見つめて、女の声で天使は問う。]
[床から立ち上がり、恭しく一礼。
それから、元の仕事――召使いとしての仕事に戻ろうと、一歩下がって壁際に立つ。
スィフリアの方を見て、ミシェルはにこりと笑った。]
……半分に、なってしまいましたね。
[昨夜、魔神にお願いされたと言う男に、やはりといった表情。
続く言葉には、苦笑交じりの笑みが目尻に浮かんだ。]
…そなたらしいな。
なれど、話する機会くれたことは感謝しよう。
我のみの力では一時には説けぬゆえ、皆を導く時は必要なり。
苦手、か――
[スィフリアの言葉に頷いて]
――因果なものだわね。
お国のためを思うあなたと、自分の事しか考えてないようなあたしが、同じ時にこの宮殿の地を踏むとは。
[口を噤む様子のスィフリアにそう零しながら、こちらへ注がれた視線に気づけば女もユーグの方を見遣る]
[――丁度聞こえた翠の婦人の言葉に、思わず体を硬くしながら]
[一度、二度と視線を向けるスィフリアに、天使は翠の瞳を向ける。
その意を見通すよな、心配そうな、不思議な色合いを浮かべて。]
[相手の顔に苦笑まじりの笑みが浮かぶと、少しだけ肩の筋肉が和らいだ。]
ああ、さっきから堅苦しい言葉なのは、奥方が天使として話しているからですかね。
なんだろ……人として話していた奥方の方が言葉が柔らかい。
魂ってのがなんなのかよく分かってない俺には安らぎが無いって言われてみピンと来ませんが。
では、昔この宮殿を造ったと言う魔術師殿は魂の安寧って言うのは得られなかったんで?
―赤と黄金の塔―
[ 遮るものとて無い碧玉の空の下、遥けく見ゆる大地との境目を眺めつ独りごつ。]
さて。どうなるのかねえ。
[ 儘ならぬことを、儘ならぬままに愉しみながら。**]
[ユーグが投げた葡萄を受け取り、その果実の粒を凝視する。]
ありがと、駱駝のオジサン!
[仕えている相手に対する態度とは思えないような言葉だが、少年にとってはこちらの方が馴染みがある表現らしく、屈託のない笑みを浮かべてユーグに手を振った。]
……ぬーん。
[葡萄を口に含み、頬の中でころころと転がす。
左、右、左、前、左。リズミカルに葡萄を転がして「味わって」はいるものの、何故かそれを飲み込むことはしない。
なぜなら彼もまた、魔神が作りし使い魔、人ならざるものだからである。]
今の我は”エルハーム”の姿と願いを借りている。
ゆえに、望むならその言葉で語ろう。
[レヴィーカにも向けて、刹那、翠がかる天使の姿を現し。
言葉終える前に、再びエルハームへと戻る。
変わらないのは透き通る翠の瞳のみ。]
魂はいずれ神の御許に戻り、人として生きた疲れを癒されるの。
けれど、魔に魂堕ちれば神の御許には返れない。
魂擦り切れて消えるまで、願いへの代償を払い続けるのみ。
――我は、わたくしはその魔術師を知りはしない。
それはすなわち……
[全てを言葉にはせず、緩く首を横に振る。
瞳には蔑みや嫌悪でなく、憂いと哀惜が浮かんで消えた。]
――そう……。
[貴婦人が転じるは、翠色の天使の姿。
敵であるはずの彼女の姿は、しかし慈愛に満ちていて、抗い難い安らぎを与えるものであり。
次の刹那、再びエルハームへと戻った天使の変わらぬ翠色に、女は溜息をつく]
真の姿も偽の姿も、あたしの気に食わない存在って事かしら。
[天空神の教えを説く御使いを、しばし冷やかに見詰め]
[結局は店主が諦める形で問答は終了する。
僅かに残る果実を食みながら、男はふらり市の中を歩む。並ぶ市を一通り眺め終えると、市から離れるよに歩を進めた]
……む?
[歩む先で人垣が割れる気配。その先に見えた真っ黒な存在。それが彼の宮殿でしばしを共にした人物であると気付くには少し時間がかかった]
……ザファル殿、か?
[問いは自問するかのごとき声量に近かったか。その声が相手へ届いたかさえ定かにあらず。周囲を跳ね除けるかのような真っ黒の存在をしばし見やった]
神の身元へ戻れないということは、魂が無くなる迄ずっと、地上にとどまることが出来るってことですかね。
妖魔になるようなものなんでしょうか。
[大分少なくなった皿の中身を掬いながら、何かに思いを馳せるように頬杖をつく。]
俺には、人が死んだ後、魂がどうなっているかなんてよく分からないから、いまいちピンと来ないんですが。
そもそも、ここの宮殿の主二人には魂の安らぎはないんで?
あれ、妖魔には魂が無いんでしたっけ?
気に食わない、か。
やっぱり素直だねぇ。
[レベッカの呟きにくつりと笑い、先ほどから咥内で葡萄を弄ぶ妖魔と、飲み物以外口にしようとしない天使を交互に見る。]
天使様の救済は人に対してのみで、妖魔は救えないんですか?
妖魔を救う気はないんですか?
や、別に救って欲しい訳じゃないんですが。
[レヴィーカの声に耳澄ませ、冷ややかな視線を静かに受ける。
彼女が何を想い気に食わぬのか、それを想いながら。]
地上に留まる…とはまた異なるわ。
堕ちし魂の行方、それは魔の領域。
聞くはわたくしにではなく、彼らに。
――…彼らが嘘偽りなく答えるかはわからないけれど。
[問いを重ねる案内人に答え、濃い睫を震わせて伏せる。]
あれらは魔。
魔の安らぎは人の子とは異なりしものであろう。
[魔の救済を問う言葉に、隠しきれぬ驚きが瞳に過ぎる。
少しの思考を経て、翠のヴェールが曖昧に揺らめく。]
神は神、魔は魔。
そして人の子は人の子。
ありようの違う者を、同列には扱えないけれど――…
[ユーグの言葉に、天使はしばし声を途切れさせ*物思う*]
[彼らに、と言われれば少年の姿をした妖魔に思わず視線を戻す。
目だけの問いに、相手は答えてくれるのかどうか。]
堕ちた先が良いか悪いか分からないんなら、別に強く引き止める理由にはならないんじゃないかと思うんですが。
あんまり後悔する気はしないんですが……もし堕ちて後悔したらそんときは魂が救済される迄贖罪に励みますよ。
俺の願いは、あの面白い人にもっと面白い世界を見せてやりたいだけなんですけどね。
それも駄目ですか?
妖魔もまた、この世界に存在を許されてるんでしょう?
ありようが違えど、この世界には天使も妖魔も人間も混在してる。
契約の内容が、世界を滅ぼすだとか神様に喧嘩売るようなことなら止めるのも当然かと思いますが、俺は別にそう言うことがしたい訳じゃないし。
確かめた訳じゃないですが、戦士殿の願いなんてむしろ神様の意志に沿っていそうな気がしますが。
[その姿を、元に戻したいとかそんなんだろう?と、孔雀石に問いかける。
自分が天使に語る言葉は人の世しか知らぬ者の道理なのかもしれないと思ってはいたが。]
[ユーグの視線に、目をぱちくりとさせ応える。]
そうゆうのの詳しいコトは、ご主人様がよくご存じかと思いますけど、ボクが知ってる範囲で話すなら……
[喋った拍子に葡萄が大砲のように口から弾き飛ばされた。それに乗じたのか、ミシェルは赤い唇をめいっぱい尖らせた。]
そもそもの話として、ご主人様やボク達が、「安らぎ」たらゆーものを欲しがってるかって考えるのが不思議ですよう。
天使様のオウチでは「安らぎ」たらいうモノが大事かもしれないですが、ボク達のご主人様達が「安らぎ」云々って口にするの、ボクは聞いたコト無いですから。
「欲望とドキドキとワクワク」。
それがボク達のご主人様の得意分野ですもの。「安らぎ」なんて考えてるほど、ヒマじゃないんです。
人間の欲望を見て識って、いろいろ質問したりツンツンしたり、足りないなってヒトを追い出すのが、我らがご主人様、アウルム様とヒエムス様のお仕事。
魔神たるお二人は、ただの気まぐれでも無ければ、ダラダラと手当たり次第にヒトを欲望に落としてるんじゃないですよう。ちゃあんと「見極めて」いるんです。
ご自分の絶対的な力を与えても大丈夫な人間かどうか……ってゆうのを。
[天使が思うは、人の子と魔と神。
人の子は愛しきもの。魔は堕落せしもの。
天空神が定めし理が何ゆえか、正しく理解させるは悩ましきこと。
ユーグの畳み掛けるよな問い>>88に物思いは覚め、首を振る。
”エルハーム”の言葉では伝え難く、”天使”となりて、]
――…魂堕ちし先に神の御手は届かぬのだ、人の子よ。
神は堕ちし魂が苦しみ消え行くを見聞きすることしか出来ぬ。
そは人の世界挟みし神と魔の理なり。
――…ゆえに我らは魔の誘惑に堕ち行くを阻まんとする。
魔神はそなたより遥か永くを生き、果てに厭いて人弄ぶもの。
封じられし意味を思え。
そなたが魂、魔の戯れに投げ出すを見るは忍びない――
[堕ちし先の救済はないと告げ、ユーグの望みに瞳が憂う。
存在を許されているか否かは、語りはしなかった。]
スィフリアの願い…
[願いの順位に迷っていた人の子。
今、スィフリアが何を願うか、移ろう透き通る翠の瞳で見る。]
ユーグ、そなたが示すがあの姿戻すことなれば――…、
……神はそれを意に添うとは告げるまい。
人の子が成した報いは人の子が受けるもの。
過ちを全て消せば同じ過ちを繰り返し、その先は望めぬ。
なれど真の想いあらば、過ちを乗り越えし先に道を見つけよう。
[責めるではなく、けれど甘くもない神の使いとしての答え。
なかったことにするのではなく、乗り越えた先を求めよと。
厳しくも慈しむ透明な声音はスィフリアの耳に*響くであろうか*]
[少年の漆黒の目は、エルハームと名乗る天使をじっと見つめる。]
なんかオタメゴカシっぽく、ありがたーいオコトバを言ってるけどさぁ。
要約すると、「カミサマは見てるけど何もしないヨ」ってコトじゃないの?
ただ黙って見てるコト「だけ」の「ヒト」が、「我々が正しい!魔神は駄目な奴らだ!」って声高に主張しても、意味あるのかなぁ。
砂漠で水が無くなって死にかけてるヒトに、「これはそなたへの試練じゃ」って言ったって、死にかけてるヒトに鞭打ってるだけで、救われないよう。
それに堕落堕落ってヒト聞きの悪いコトばっか言ってるけどさぁ。
ボク達のご主人様は、誰に力を行使するか、ちゃあんと見極めてるんだ。魔神がホントに人間を堕落させたいだけならば、見境なく願いを叶えてあげればいいのさ。おっきな願いから、せこい願いまで、ね。わざわざ相手の願いを「吟味」して「選別」する必要なんて無いよ。
それに……
[周囲に居る人間達をぐるりと見渡して、]
「欲望」は、ヒトが願うチカラそのものなのさ。「欲望」そのものを持つこと自体を否定したら、人間はエネルギーを失って、ダラダラでヘロヘロに堕落しちゃうもの。
そうゆうチカラを持つこと自体を否定する「カミサマ」って……
― 青と白銀の塔 ―
[数多の使い魔の一人の目を通し、耳を借り、魔神は天使と人の子の会話を聞いている]
[大方は無関心に、手の中の駒を弄びながら。奔放たる小さき使い魔の不満には、僅かに目を細め、そっと吐息のような冷えた風が、丸い頬を撫でていったかもしれぬ]
[そしてエルハームの姿の天の遣いが「封じられし意味」を口にした時のみ、溜め息と共に首を振る]
「其方等の理に照らしては決して割り切れはせぬ事も、人の心の内にはあるのだよ、哀れな天使」
[真に哀れむような声が、指輪より届く。何一つ、否定も肯定もせぬままに]
[鸚鵡が少年の姿になるのに、大層驚いた貌をしてじっと、彼を見詰め、エルハームの視線に少し、背を反らせる。
それから語らいを聞き結ばれた口元は、布の奥でさらに噛まれ抑えられ、慈しみの含まれる透明な天使の声は、武人の瞳を揺らす]
私、は
[手で口元を覆う布に、触れる。
触感は裂けた口の、渇いた土くれのような]
天使様の仰る堕落だ。妖魔にとっては褒め言葉と受け取ればいいさ。
[鸚鵡のごとく口尖らせて、主を擁護する使い魔を宥めるように手をふって、再び頬杖つく。
視線の先は金の塔。]
封じられた意味、か。
俺もそれは気になっていたんだ。
魔導師殿に聞いてみたかったけど、その魂の行方は貴方たちにも分からないなら、塔の二人に聞いてみますかね。
[言って立ち上がる。
翠の天使を見下ろして、眉を下げた。]
俺も、自分の力を使わずに、他人の力で願いを叶えようってのは堕落だと思いますよ。
でも、願いを叶える為に、魔神の力を利用することは堕落とは思わない。
……謎かけみたいですかね。
[下がった眉が笑みの形に弧を描く。]
…私が堕ちるは構いません。
安寧等、望みはしない。
ですが可愛い我が隊の者は、安寧を望んでいます。
だから、
[それを望む。
エルハームを正面から両目で見ながら告げ
こくり、喉が動いた]
成した報いは受けるものでしょうか。
ならば只巻き込まれただけの者は?
成した者に報復しても、元戻らぬ者は?
乗り越えられた者は良くても、乗り越えられぬ者は死すだけでしょうか。
それを…、
[続きの言葉は飲み込まれる。
頬杖を付く案内人へと視線を向け、謎かけのような言葉に首を傾けた]
…そういえば。
魔神の解放、を望んだものは居ないそうですよ。
[自身が内に落とした事は、胸裏へと]
[言葉途切らし口尖らせる使い魔に、天使は透き通る翠を向ける。]
それはそなたら魔がそうとしか取らぬだけのこと。
そして、より渇く煉獄へと道誘うが魔神の契約なりや。
[それはいわば、人の世を挟んでの表と裏。
同じ物事であれど、互いの世界から見えるものは異なる定め。
ユーグが語る人の世しか知らぬ道理以上に相容れはせぬもの。]
[指に絡む金銀の指輪から届いた声の色。
やはり聞いているのかと使い魔から双子の塔へと視線が移る。]
『……人の心の内、知らぬと哀れむならば語るが良い。
魔の目で見し顛末と言えど、そなた等しか語れぬ言葉なり。』
[真に哀れみ含むヒエムスの声に、天使は指輪通し声を返す。
語らず無知を責めるか?と問う響きはさやけき静けさ。
答えをすぐ求めるでもなく、意識はすぐに人の子へと戻す。]
―赤と黄金の塔―
[ また一方の魔神もまた、給仕として侍る使い魔の耳目を通じて天使と人間たちの問答を聞き知っていたが。
同属とは異なり、指輪を通じて語り答えることは無かった。
洩れるのは、困ったような苦笑。]
[爬虫類めく縦長の瞳孔、手と布に隠された肌。
女は吐息払うよに一度瞬く。
立ち上がる音に、案内人の姿も首少し傾けて視界に入れ。
魔神に聞くという言葉に微かな頷きを返した。]
――…魔神に利用されぬとよいがな。
[下げた眉を笑みの形にして謎かける男に一言だけ返し。
背を見送ることもなく、きちんと武人の瞳を見た。
語られる言葉に憂いを浮かべても、逸らすことなく。]
えー?
じゃあ何でよ?
お前、いつもちゃんと教えてくれないではぐらかすじゃあないの。
教えてよ。けちらずにさ。
[ 冗談でも何でもなく、心底理不尽といった不満げな声。]
[スィフリアの言葉を全て聞き、天使は翠の睫震わせる。
迷い子が語る想いに過ぎるのは憂いのみだけではない。]
……そなたは己より他を想うのだな。
なれど生きる事は業を背負うこと。
そなたの可愛い部下とて――…
[途切れた言葉の先に想うは、黒衣の者の故郷。
武人の両の瞳を見返して”天使”は告げるべき言葉を紡ぐ。]
全ての事象は繋がっている。
過去も現在も未来も、一人一人がありて紡がれるもの。
なれど、真に無垢にて災い受けし者なれば、
人の世の苦しみ全て、神の御許にて手厚く癒されよう。
[死すといわれた言葉を、天使は否定も肯定もしない。
飲み込まれた言葉の先を促すこともなかった。
安寧望まぬと告げた武人を哀しげに見つめるのみ。
奇跡は天におわす神が起こすもの。
魔神の代わりに願い叶える為、使わされたのではないゆえに。]
――食堂――
[ユーグの微かな笑い声>>85に、む、と眉を立てる。
しかし反論出来るものでもないと、溜息を吐き]
ま、小難しい話は、あたしにゃわかんないけどねぇ――
[両手を持ち上げ肩を竦める。
しかし会話に聞き耳だけは立てているようで。
天使が視線を静かに受け止めるのを見れば>>86]
あたしはただ、持てる者に持たざる者の気持ちはわからないと言いたかっただけよ。
あなたは如何にしてその地位を手に入れた?
"エルハーム"の美貌であろうが、姿を借りる"天使"の力であろうが、同じ事だわ。
あなたはそれをしたのに、あたしにはするなと言うの?
あたしなんて、願いの果てを決めた時点で、堕落しきってるも同然だと思うけれど――
ま、煉獄に落ちようがどうだっていいのよ。
喜劇も悲劇も舞台は舞台、ってね。
[百年後の世に名を残す――
かつて女が語ったその言葉は、単なる勘違いであったはずなのだが**]
…時は巻き戻らぬと聞きました。
今後同じ事を繰り返さぬよう願うは、私が背負いし業ならば背負うは厭いません。
現在災い受けし者が、死した後癒されるならば…少し、安心しました。
[天使の声に、目線は逸らさず瞬きもせず頷く。
未だ瞳は揺れ幾分か、潤い染みて]
魔神殿は、惑わせる為に美しいのだと。
ですが、貴方も同じように美しく見え、どちらが惑わしかは判りません。
只、どちらも心地が好い…
[小首を傾げた]
同じ惑わされるならば、願いを叶えたい。
そう思うは、現金でしょうか。
[言って、武人は席を立ち窓辺へとゆっくり歩む。
外を見れば、夕闇から夜へと空は色を変え始める頃かもしれぬ]
冷たい気配に惹かれるはこの身を流れる血ゆえか。
その美に揺れしか――
[小さく呟きながら、見詰めるは双子の塔]
[ 「忘却」は人と異なる魔神にはありえぬが、それでも「忘れる」という語を用いたは、要は「過ぎたことは気にするな」と言いたいらしい。]
お前か、我か、何れかがこの地より解き放たれれば、忘れることも叶おう。
そう、遠くはなさそうだがな。
[ゆらりと気怠い仕草で、白い手を振った]
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