情報 プロローグ 1日目 2日目 3日目 4日目 5日目 エピローグ 終了 / 最新
[1]
[2]
[3]
[メモ(自己紹介)記入/メモ履歴/自己紹介] / 発言欄へ
そこでアルマンは語りを止め、口を閉ざした。
彼は本から目を上げて、あなたを見た。
どうやらこの中には、村人が6人、人狼が2人、占い師が1人、妖魔が1人含まれているようだ。
古書蒐集家 アルマンが「時間を進める」を選択しました
仲間と言うほど親しくも無いが、ね。
気にしてはおらぬよ。
[道を空けた男には険の無い穏やかな声で返す。それからも全く気にしていないと言うことが伝わるだろう。
抑揚無き声を耳にすると、おや、と言うよな表情へと変わり]
伝説通りなれば、お二方がここより解放されるは契約する者が現れた時のみ。
長くに渡りそれが為されておらぬは──と、失言でしたかな。
もし気分を害したなら申し訳ない。
[奥底の考えを見せぬ笑みが再度浮かんだ]
古いとは申せど、この百年の間の品ですわ。
それより古い品なら既にお持ちかもしれませんもの。
[白銀の魔神に捧げられる希少本は、詩や物語、歴史の書。
流し見るのは奔放な少年と、完璧に控える緋の者。
前の百年の夜より古き書なら、彼らに集めさせているかもやと。]
[高価そうな本が鸚鵡に啄ばまれていくのを見て、女は思わず、ヴェールの陰で笑みを漏らした。
くす、という吐息は、ごく近くにいた者ならば耳にしていたかもしれない。
そしてその鸚鵡が本の中身を喋り出したのには、左目を丸くし興味深げな視線を送る]
[自己紹介を遮るように響いた鳥の鳴き声。
振り向くと、いつの間にか鮮やかな色の鸚鵡が書を啄んでいる。]
……腹、壊しやしませんかね。
[その書物が貴重なものであろうことは、背表紙だけ見ても推測が付く。
どれほど貴重なものかは計れなかったけれど。
啄まれた本を物惜しげに見ながら、ああ勿体ないと呟いた。]
仲間と言うほど親しくも無いが、ね。
気にしてはおらぬよ。
[道を空けた男には険の無い穏やかな声で返す。それからも全く気にしていないと言うことが伝わるだろう。
銀の魔神の抑揚無き声を耳にすると、おや、と言うよな表情へと変わり]
伝説通りなれば、お二方がここより解放されるは契約する者が現れた時のみ。
長くに渡りそれが為されておらぬは──と、失言でしたかな。
もし気分を害したなら申し訳ない。
[謝罪と共に頭を垂れた後、持ち上げた顔には奥底の考えを見せぬ笑みが再度浮かんだ]
錬金術師と偽って、得することも無いと思うがね。
肩書きなぞ、ここでは無意味だろう。
[群青の女の問いに、くつりとした笑みを混ぜながら答える]
レヴィーカ殿か。
薬売り、ね…。
ここを出た後も機会があれば、薬の商談に応じてもらいたいものだな。
[そんな言葉を連ねながら、銀の魔神の所作を見やる。使い魔に食まれる希少な本。その内容を謳い始める鸚鵡の使い魔。ついつい、自分もその内容に耳を傾けた]
さて、たおやかなるエルハーム。其方の問いだが。
[変わらぬ瞳で言葉を繋ぐ]
我は薬師ではない故に、霊薬は作らぬ。だがどのような病も怪我も、我が魔力によって治癒させることは可能。
不老不死も叶えぬではない。だがその願いは一度のみ、そしてそれ以外の願いは聞かぬ。
死者を蘇らせるには代償が要る。自らの命を差し出す贄一人。無理矢理奪うのではなく、あくまでも己の意志で差し出すが肝要。
[そこまでを語って、銀の魔神は、ふい、と口を噤んだ。まるでその先を語るを厭うように]
ふむ、銀の君には冗談が通じぬと見える。
片や金の君なれば……その反対だろうか。
どうやら、私はこの場にそぐわぬやも知れぬな。
そもそも、彼らには「魔道士」に良き思い出はあるまい。
随分難しいこと話す鸚鵡だな。
[それが、書物の内容であると、学の無い男には分からぬから、それにかき消されそうな回りの会話に耳を澄ませた。]
んー……
[ 口を閉ざした同属の代わりに、黄金の魔神が後を引き取る。]
恋を成就させたいなら、目当ての相手をそちらに惚れさせるような手立てを与えてやることはできる。
ただ、相手に蛇蝎の如く忌み嫌われてるような場合はちと難しくなる。
人間の心の有様を丸ごと変える訳だから、それなりの手順てものが必要になる。
記憶を空白にして、感情を丸ごと消す……みたいな。
最後に地位と名声。
つきたい地位に昇り詰めるまでどんどん邪魔者を消していけばいい。簡単簡単。
お気に召せば幸いですわ。
[手土産の本が餌と呼ばれ啄ばまれるのも眉一つ動かさず。
レヴィーカの漏らした笑いは届かぬものの、気配だけ感じとる。
もったいないと嘆く道案内にはヴェールの奥で唇を引いた。
鸚鵡が玲瓏な詩を詠う。
それも白銀の魔神が口を開けば、背景音に過ぎなくなる。]
[他に名乗る者があれば軽い会釈を返しつつ。
ヒジャービルの言葉を耳にすれば]
ま、この場で偽る意味はないだろうけどね。
あたしゃ錬金術師を目にしたのは初めてでね――疑うというよりは、びっくりしちまった訳さ。
商談は望む所だよ。
あたしは薬に関しちゃほぼ独学でね、錬金の業というのにも興味がある。
[答える口調は、この先の駆け引きとは無関係という風で]
[魔神たちが貴婦人の問いに答えていく。
自身の願いの行く末に関しても、手掛かりがあるかもしれぬ。
二柱に送るのは神妙な視線]
で、緑の奥方は、自分が叶えたい訳でもない願いの成就を聞いて、どうするんですか?
自分が叶えて欲しい願いを確認するなら分かるんですが。
[金銀二人の答えが一段落したら、傍らの緑に問いかける。]
―広間―
[使い魔の少年は、他の者と同じような仕草で、広間の壁際で片膝をつき控えている。時々、鸚鵡の声にクスリと笑いそうになりながら。
先ほどまでと違うのは、主人ふたりが居る場所であるが故に、外套を脱いだということぐらいだろうか。
もし主人――特に、銀月を思わせる魔神の方――がその場に居なければ、彼の側に居る使い魔と同じように鸚鵡になり、本を読んで飛び回るだろう。そんな衝動に駆られ踊るミシェルの心は、目の前のできごとが「百年ぶり」でありながらも、常と全く同じなのだ。]
[帝王が妻の視線が向いたのを、緋は知るや否や。
目深に被られたフードの下、目だけを上げる。
変わらず控える使用人共―彼の少年を含むかは兎も角―の生み出す均衡を崩さぬ程度の、微かな動き。
魔神の言葉に耳を傾ける人々の姿を、硝子玉の如き青が映した。]
[変わらぬ氷の青い瞳で語られる言葉を、女は黙して耳傾ける。
黄金の瞳の主が言葉を引き継げば、そちらにも。]
契約をなし共にあれば怪我や病の心配はない。
不老不死は叶えれど、再びの死は叶えず。
命の対価は自ら捧げられし命。
恋よりも地位と名声が簡単とは、不思議なものだわ。
[たおやかな、と形容されたそのままに口元に添えた指を下ろし、]
回答感謝しますわ。
[まだ一度も下げていない頭を傾け、感謝の一礼を。]
[帝王が妻の視線が向いたのを、緋は知るや否や。
目深に被られたフードの下、目だけを上げる。
変わらず控える使用人共の生み出す均衡を崩さぬ程度の、微かな動き。
魔神の言葉に耳を傾ける人々の姿を、硝子玉の如き青が映した。]
ああ、全く、恋などというものほど、面倒なものはない。
[エルハームの言葉に同調するように、うんざりとした呟き。声無き声は、傍らの同族にだけは聞こえるだろう]
[鸚鵡の詩の前に聞こえた案内人の名は記憶に留めるのみにし。聞き入っていた鸚鵡の詩が掠れるが如く耳に入る魔神達の声]
霊薬も不老不死も私の目指すところではあるが……叶えてもらうものでも無い。
魔神殿に叶えて貰うは本末転倒だな。
[それは独り言に近いが、近くに居る者には聞こえる声量。
己が職に驚いたと言う群青の女には]
なるほど、そう言うことか。
胡散臭い肩書だとはよく言われるがね。
では機会があればよろしく頼むよ。
しかし今は──己がすべきことをするとしようか。
[崩れぬ笑みを湛えたまま、商談についてはさて置くとの言]
[姿勢を戻し、傍らの男の問いに女は微かにヴェールを揺らした。
声なき笑いの漣に目じりに微かに皺が浮かぶ。]
そこの者が言っていたでしょう。
願いをすぐに言うは「面白く」はないと。
[翠を帯びた黒い瞳が、白に隠れた鳩羽色の前髪を流し見る。
そして自然と男の傍に一歩分寄り添うように身を揺らし、囁く。]
――それに、魔神に叶えられぬ願い持つ者なら。
叶えられぬと聞けば懐柔もできるかもしれないわ。
地位や名声ならば、魔神でなくとも…ね。
[ 帝王の妻女の礼にも心を動かした様子はなく、相変わらず楽しげにうっすら笑んでいる。
その笑んだ顔のまま、]
さて。もう良いだろう。
そろそろ門を閉めるとしようか。
[ さらりと誰に告げるともなく声に出す。]
[ この同属の呟きも、この宮殿に幽閉されていた数百年の間、数え切れぬほど聞かされてきたもの。
下手に何か言って薮蛇になっては堪らぬと、微笑をうかべたまますっとぼけた。]
[案内人の男だけへの囁きは、それまで。
次の言葉は他に聞かせるように、円やかに言う。]
伝説に縋る程であろう願いと、魔神の叶える限界。
それを知ればわたくしの願いが叶うか否かも量れるわ。
[建前と本音、見せる札と隠す切り札。
ない混ぜて女はヴェールの下で笑みを掃く。]
お前の願いは叶いそうかしら、ユーグ?
面白くない、か。
どうなんだろうなぁ。願いを叶えてもらうことになって、いざ口にしたら願いが叶わなかった、と言うのも中々悲しいもんだと思んですが。
[ふわり、思いのほか近くで嗅ぐ茉莉花の香に意外そうな顔で目を細める。
その仕草は声から察する年齢には似つかわしくない程の色香に満ちていた。
深く吸い込むと喉を鳴らして囁き返す。]
地位や名声なら、あんたが叶えてくれるんですかい?
奥方様。
あんたが叶えてくれる願いはなんでしょうね?
残念ながら、俺の願いが適うかどうかは今の答えでは計れませんでしたよ。
いや、計れたのかな。
俺の願いが、どのように叶えられるのか自分でも分からない。
[息を吐き出し、茉莉花から身を放す。
その瞳が迷うように宙に泳いだ。]
[ヒジャービルに同意を示すよう、頷いて]
ええ。
……ああ、でももしも望みが叶ったら、商談など不要になるのかしらね――
[続く呟きは抑揚のないもので。
彼女自身がどう思っているのかは読み取らせぬように]
[地位や名声なら――という貴婦人の言葉に一瞥を送る。
確かに、女のごとき平民の願いであれば、あの貴婦人には造作なく叶えられるのかもしれないが――
左目が形作るのは、気に入らぬ、という表情]
[黄金の魔神が門を閉め、他者が増えぬことに否は無い。
返事は求められていないだろうと、優美な顎だけを引いた。
瞳は案内人に向けたまま、翠色のヴェールだけが動きに震える。]
……悲しい、そうね。
けれど、まずは契約を得る方が難しそう。
[男――ユーグの言葉に女は再び指先を持ち上げる。
離れ行く男の腕に、戯れに深紅の爪が掠めるように。]
国一つは無理だわ。
けれど、遊んで暮らせるに足る地位ならば。
金銀宝石や、美しい女も。
……この宮殿と主の前では霞んでしまうかしら。
[門を閉める。そう言葉を紡ぐ金に刹那、視線が向いた]
これ以上は増えぬ、と言うことか。
辛うじて間に合ったようだな、私は。
[小さく、安堵するかのよに息を吐いた。続き聞こえる気品ある女の円やかな言は、耳に届いても視線は向けない。まるで興味が無いかの如くに]
さて、それは私のことか、それとも貴殿のことか。
その時はその時の話だ。
[紡いだ言葉は群青の女へ。今考えても詮無きことと男は言う]
失礼、しばし休ませて頂いてもよろしいか。
少々長旅が過ぎたようだ。
[訊ぬは金銀の魔神へ。承諾を得られたなら、広間を辞し、休める場所へと*向かう*]
[互いの願いを探るのか、或はそれ以上の駆け引きをすでに始めているのか、交わされる会話を氷の青は静かに見つめる。門を閉ざそうというアウルムの声には、僅かに頷きを返したのみ]
[ヴェールに隠された笑みは変わらず、薬売りの左目を捉え、]
気に入らないようね。
商売人はもうやめるから、隠す必要はないのかしら。
[錬金術師と名乗った男との遣り取りの一片を耳にし、告げる。
上下する睫の影から射抜く視線には敵意よりも試す色。]
[女は案内人に懐柔を持ちかけながら、薬売りを試す。
魔神の力を量るのも、他者の契約を探るのも、全ては――
天空神の命に従い、魂の堕落を阻むがため。
”本物”のエルハームは帝王の後宮の奥深く、眠る。
彼女が目覚めるのは宮殿の門が閉じる頃。]
[視界を霞める赤い線。離れて行く女の爪は荒れ仕事とは縁のない美しさだ。]
この宮殿と主に比べれば……ね。
それだけのものを簡単に口に出せる奥方も俺にとっちゃ十分に凄いですが。
地位と金を貴方は交渉の材料としてお持ちだ。
貴方に叶えられない願いとはなんでしょうね?
もしかしたら、錬金術師殿なら叶えてくれるかもしれない。
[広間を退出しようとする男に視線を向けた。]
さて、俺も砂漠を渡って疲れた。
休みたいところですが……普通に休んでいいんですかね?
[ ヒエムスの頷きを認めるや、間髪入れず魔宮を囲む領域は閉ざされた。
低く、金属の軋む音立てて、黄金の門が閉まる。
その音も気配も、遠く離れたこの広間では、常人にはそれと悟ることさえできぬ筈だが、勘の良い者――或いは魔術の素養を持つ者であれば、宮殿内の空気が先程までと変わったことを感じ取れたかも知れない。]
ああ、そうね……今から話しても、仕方のない事だわね。
[言って、広間を辞する男を視線で見送る。
――と、思いがけず、貴婦人から返る言葉があった]
…………っ
[体が固くなってしまうのは、凡人の悲しき性か。
しかし口調は怯みを覆い隠すような強気で]
はん。
あなたはあたしの"お客さん"じゃあなさそうだしね。
好きでやってる仕事じゃないわよ。
でも、お金がありゃあそれでいいって訳でもないの。
少なくとも、あたしの願いはそれじゃあない。
[貴婦人の申し出は撥ね付けた。
矜持、というよりは意地で言っているような声音であり、相手には一笑に付されるだけかもしれないが]
客人がたは好きなように休むと良いよ。
運が良ければこれから数日間ここに滞在することになるんだからね。
世話は適当にそこら辺に居る使い魔たちに命じれば何でもしてくれる。
あ、帰るのは追い出されるか、自分で指輪をはずして契約者になることを放棄するかしないと出来ないからね。
[錬金術師なら、と答える案内人に女は瞬き一つを返す。
被り布とヴェールから覗く目元、上下する睫は黒く濃い。]
魔神と比べれば叶えられる願いの方が少ないわ。
けれど「ケチな願い」と蹴られる程度なら…ね。
[わたくしと取引した方が得、と睫が秋波めいて扇ぐ。
去り行く男の蒼を見送り、
それを追うかの休みを求める声に女は控える使い間を見た。]
[傍らの貴婦人に向けられた啖呵に、思わず小さく笑みをこぼした。
自分に向けられたものではないから、言葉は返さぬまま。
金の魔人の言葉にふむと、手のひらを天に翳した。]
指輪を外せば帰れるんですか。
では、他者が指輪を奪った場合は?
[開いた指越しに、指輪と同じ色の瞳をした魔人を見つめる。]
――…なら、何を願うのかしらね。
それは本当に、魔神でなくては叶わぬ願い?
[問うよりも量る眼差しを投げて、女は再び笑みを掃いた。
答えが返る前に背を向け、深紅の弧がヴェールから覗く。]
ありがとうございますわ。
わたくしも一度下がらせていただきます。
旅の砂も落とせておりませんから。
[旅装の者達よりは数段身奇麗な姿であっても、十分ではない。
女は言外に告げて場を*後にする*]
もうこれ以上、魂の堕落を願う者は現れぬ。
[閉じられた空間に、女――否、天使は笑みを掃く。]
さて、いかにして救うべきか――…
魔神も封じされし檻に飽きた様子。
矜持よりも自由を願われれば、魂の堕落を防ぐは難しい…
[指輪を奪えばと問う案内人の言葉を聞くと目を細める。アウルムの答えに、男が安堵するのか失望するのか、それを見極めようとするように、その表情を追った]
[金の魔人から帰って来た答えは、予想とそう変わらないものであったから、頷いて指輪に視線を移す。]
頭を使って追い出す、って言うのがこの指輪の力になる訳か。
さて、俺は頭より体を使う方が得意なんだが。
[仕草だけは残念そうに、掲げた手のひらを落とした。]
それでは、人を追い落とす算段でもしながら寝ることにしますよ。
人ならざる方々が夢を見るのかは分かりませんが、良い夢を。
[広間に残った人々に手を振って、茉莉花の香りを追うように広間を出る。
入り口の門が閉ざされたことはまだ知らぬまま。]
さあ、ね――
あたしはそう思ってる、けれど。
[こちらに背を向けさっていくエルハームを、細めた眼で見遣り]
――あなたにはわからないわ。きっと。
[低く呟く声は、相手に届いただろうか。
耳に入れる気もないのかもしれない]
[広間を出ると、すっかり更けた空を見上げる。
満天の星空を遮るのは金と銀の二つの塔。
あの高い塔からは、自分が定宿としている街も見えるのだろうか。
塔に向かい一歩踏み出し、中庭へと下りた。
柔らかな草を踏む感触に、足は慣れない。]
金銀繻子の寝床も良いが、今日はこっちの方が贅沢だろうな。
[呟いて草の上に寝転がると空を見上げた。]
[客人の姿が、一人、また一人と広間から消えると、魔神は静かに頭を巡らせ、白く冷たい手を差し伸べた。未だ人の記した叡智を謳い続けていた白い鸚鵡が、その腕に止まると、そっとその喉を撫でる]
宴に相応しき歌を。
[鸚鵡の姿はすんなりとした夜鳴鶯の姿に変わり、星の煌めきを思わせる声で歌い始める。けれどその歌は、未だ餌とされた書の言葉の連なりを保っていた]
[案内人が口にする、
女ですよ――との言葉には
緩く目を細めた。]
―――あれらの内情(こと)なぞ知らねぇ。
[厭う響きを込めて低く呟いた。
新たに現れた男には、
前髪の奥の眸が鈍く光った*]
[魔神達から休息の許可をもらう少し前、宮殿の門扉が閉ざされた頃]
───……。
[ふと、扉の方を見やる。けれど感じているのはその先。宮殿内の空気が変わるのを感じ、ふむ、と小さく漏らした]
……隔絶、か?
先程までと雰囲気が異なる。
この様子では砂漠からは宮殿が消えていると考えられるかね。
星辰の整う夜にだけ現れる宮殿。
つまりはそう言うことか。
一度外へ出てしまえば戻ることは叶わぬ。
次に宮殿が現れるのは百年後。
契約の機会は人生一度きり、と言うわけだな…。
[他とは異なる方向へと視線を向けている間、自分の話題となって居てもそちらに意識は向けず。
案内人の男が魔神に問うた指輪についての話を少し聞いてから広間を後にする]
さて、いつまで居られることかね。
少なくとも今すぐに、と言うのは無いだろう。
[ならば居られるうちに、と独りごちながら、使い魔の案内により休息のための部屋へと向かい。砂を落としてからしばしの休息を*取るのだった*]
[魔神とそれに向かう人々の言の葉を耳にし、
鳩羽色の内側隠し、目をぎょろりとさせていた。
ひとしきり話に結を迎え広間から人の減るに、
敬礼を残して部屋を出る。
廊下で声を掛けたのは、金絹糸のような髪の召使]
すまぬ、私の駱駝はどこだろうか?
[案内の後ろをついてゆく白のはためきは、船の帆めいて]
[案内されたのは、町では十分人の宿となりそうな美しい小屋。
柔らかい藁に満足しているのか、駱駝は酷く上機嫌に見えた。
白が傍に歩み寄り手を伸ばすと、駱駝は首を折り長い睫毛を瞬かせた。]
…ー。
[白い手袋を取れば、いささか彩度の低い骨張った手が現れる。
手に握り締めた侭であった指輪。
何故かあつらえたかのようにぴたりと嵌まるそれを、そっと指へと、通す。]
[ぎらりと、薄い光を反射するかのようなのは、手の甲に現れて居る―良く見ねば分からぬかもしれぬが―、硬い固い鱗。
それは魚というよりは、爬虫類の、それ。]
― 駱駝小屋 ―
[太陽の匂いのする藁の上、別の駱駝がゆったりと膝を折る。
外され脇に置かれた鞍には、貴石で出来た装飾が施され
たわりとかけられた白い布は天蓋の縁、細かい金属が垂れ下がり
さてかの帝王の妻の物かそれともまた別かは判らなかったが、
白が少しばかり目を奪われたのは、事実。]
―富には困らん、という事らしいな。
[指に嵌った指輪は、月と太陽が反転しているように、見えた。
彩度の低い指に嵌めた其れをじっと見詰め]
もっと美しい「手」に嵌められたいと思うならば、
ひとつ、謝ろう。
[口を隠す布越しに、口付けた。]
[それから暫くして、美しい召使の案内でひとつの部屋へと通された。
白の人物は、きちんとカギが閉まるかどうかを確認し
施錠した上で―尤も、魔神にそれが効果あるか等判りはしないけれど―、体の沈むベッドで眠りに落ちたのだった。]
[鳩羽色の前髪は巻かれたターバンの下から目を隠し
耳から垂らす布は口元も鼻をも隠し
白の人物が宛がわれた部屋から出た時には鈍色の明の中。
夜の帳も晴れ、薄明かりに白亜が色づく。
白いマントを翻し、廊下をゆっくりと歩むのは
探索かそれとも影を探してか**]
― 中庭 ―
[砂漠に落ちた一粒の砂金より貴い緑の園。
その一角にある涼しい影を供する休息所に、女はいた。
雪花石膏の柱に絡む蔦は瑞々しい朝露に光り、渡る風を冷やす。
召使が捧げ持つ、蕩ける黄金色の果実と椰子の乳の飲み物。]
太陽は見えないのに朝は来るのね。
魔神の宮殿ゆえの神秘?
[コブレットに伸ばす手は年を感じさせぬほど。
湯に磨かれ、美しい少年の使い魔に香油を塗らせた肌。
荒れ仕事と縁のない長く整えた爪は深紅に染められている。
作られた美しさは、帝王の財産としてありつづけた年月の証。]
─宮殿周囲─
[休息後、目を覚ますと部屋の外は明るさに包まれていた。太陽は昇らねど、自分がここへ辿り着いた時と異なり、朝もしくは昼と称するに相応しい明るさにある。
それを見、感嘆の息を漏らすと身嗜みを整え。ミトラフにアガールと言う姿で宮殿の外へと出た]
………。
[歩き回るのは宮殿の周囲、そしてそれを挟むかのように聳え立つ対たる二つの塔の周囲。中に入ろうと言う素振りは見せず─とは言え入ることは叶わぬだろうが─、ただその壁に触れ、材質などを確かめるようにしながら見て回った]
これを建つるは魔神の力、だったか?
もし魔神がここより解き放たれた後は、この宮殿はどうなってしまうのだろうな。
[消えてしまうのは惜しいとでも言う口振りで小さく呟いた]
[砂を防いでいた白いローブは既に整えられて部屋の中。
同じ白の天蓋持つ鞍を下ろした駱駝を見に行くこともない。
縁を綴り垂れる細い金属が鳴らす涼音も、ここには遠い。]
わたくし以外の客人。
知らねば駆け引きのしようもない。
人となりとまで言わないわ、名と肩書きを。
[召使が答えるのは名乗られただけの名と肩書き。
女は物憂げな仕草で杯を傾けながらそれを聞いた。]
― 回想・大広間 ―
[白銀の魔神が名乗る両魔神の名は周囲の空気を震わすことなく内に留め、交わされる問いと答えを聞く間を指に表れた指輪の形を確かめるように触れながら聴くに勤しむ。
ただ厳しい顔も笑みも見せず空気のように佇み、新たに訪れた錬金術師の名乗りに顔を其方へ向け、また魔神の声へと向き直る。
容易に叶えられる願い、難しい願い。
過ぎたるは対価を要す。
佇んでいるだけでも記憶にはちゃんと留めている。
やがて――門戸が閉ざされる音を聴く。]
[その音は聴こえたのか感じたのか定かならねど、男の場合は閉ざされたままの眸が他の感覚を研いでいるだけやもしれず。]
敵、味方――……今は何れも瑣末なこと。
仮に自分以外の全てを追い出すことに成功しようとも
望みが叶うか否かは――己次第。
[話が尽きる頃に、誰に語るでもなく落す感想は其れ。]
但し、
魔神のお眼鏡に適いそう人間が居ると知れたなら
其れを初めて敵呼ぶのやもしれません、ね。
[柔らかな声音で柔らかな表情で。
柔らかではない言葉を呟くと、与えられるままに休息をとりに。]
― 回想・了 ―
薬売りはレヴィーカというの。
気の強い娘だわ。
何をもって私には分からないというのかしら。
[片側外したヴェール、隠さぬ深紅の弧は深い。]
自らが持つ財産を知らぬは哀れね。
若さも健康も、ある時にはわからないものかしら。
わたくしには若さも…そうね、武力もないわ。
でも、血を流すものは白鴉には相応しからず。
指輪を奪うことは出来ぬ。
相対する条件としては決して不利ではない。
― 宮殿内 ―
[目覚めはほのりと明るい光かはたまた小鳥の囀りか。
想い廻らせるは人間のことか魔神のことか。
外套は身に着けず、いっそ無防備なローブ姿で部屋を出た。]
望みは叶えてもらうものか――叶えさせるものか。
案外と難しい。
[小さく呟き、廊下をゆるりと歩く。
手にしたものは小さなハープ――それも随分と型の古そうなもの――だけで、いっそ無防備なのかもしれない。]
―回想―
[鸚鵡が古い本を啄ばむのを見て、
男はほんの少しだけ肩眉を上げた。]
……――悪食か。
[されどそれが喋りだすのを見ればその言葉も止まる。
それよりも。――死者を蘇らせるには>>7
白銀の魔神が語るに、黙して耳を傾けた。
前髪の奥の眸はただ真摯だ。
門が閉まる。
それに反応するように、僅かだけザファルは顔を上げた。
見えないものを見るように。時は来た。]
[錬金術師と名乗った男を見る眼は
「不滅隊」のスィフリアを見るときとは
また違った険を僅か帯びていた。
言葉少なに語らねど。
客室へ向かう折、見上げる歯鮮やかな玻璃の空。
剣を握るものの手に嵌められた
似つかわしくない繊細な細工の指輪に視線を落すと
緩く握り締めた――]
――回想・了
― 廊下 ―
[広い宮殿内では自分の知る場所の方が少ない。
ましては初めての場所――日常を生きる者が踏み込めぬ場所。]
花の香りも水の音も。
この地にはどれも遠い。
[そして向かう先はそのものがあった中庭の方角。]
――回想――
[女に与えられた一室。
大広間にはさすがに劣るものの、調度は女の知るどの宿とも比べ物にならぬ豪奢さ。
寝台を身体の重みで窪ませることすら躊躇うほどであった]
[窓の向こうから、夜鳴鶯の囀りが聞こえる。
歌に合わせて、指先がリズムを取るように揺れる。
しかし鳥の使い魔が遠くへ去った時、女は我に返ったように動きを止め、髪に隠された半面を、静かに手で押さえていた]
――回想・了――
―少し前・客室―
―― ッ … …!
[は、と短く息を吐いて飛び起きる。
嫌な寝汗をかいていた。
前髪をかきあげるように額を押さえる。
髪が幾筋か張り付いた其処の左側
年を経ても消えない傷痕がある。]
……く、
[首を横に振った。
ゆっくりと起き上がると汗を拭い、
花の香りがする空気と水のもと
この場にまるで似つかわしくない黒い外套を羽織りなおし廊下へとでた。前髪が下りてしまえばもう傷痕は見えない。]
― 廊下 ―
[ザファルという男が廊下へ出たのは其の前か後か。
何れにしても廊下に自分以外の気配があればゆるりと笑うだろう。]
おはよう御座います。
良いお目覚めでしたか?
[などとは日常交わされる挨拶の延長に過ぎない。
男にはそれ以上の意味もない。]
――廊下――
さて、どうしたものか……。
[窓から差し込む光に目を覚ました女は、再び全身を群青で包む]
あたしの願い"そのもの"じゃあ、魔神にとってはきっと、詰まらないものなんだわ。
だからやっぱり、皆に蹴落とされぬだけの策略が必要な訳で――
……失敗しちゃったかしらねぇ。
[大袈裟な溜息をつきながら、扉に手を掛ける。
表情は悔やんでいるという風ではなく、どこかしら"駄目で元々"という思い切りの混じるものであった]
あら、御機嫌よう。
[廊下に歩み出れば、幾人かの姿が認められた。挨拶を交わす声はあくまで愛想良く]
−中庭−
[朝露に頬を叩かれ目を覚ました。
湿った体を渇かそうと、ゆっくり起き上がり天に熱を探す。
良く晴れた空のどこを探しても、太陽は見えぬまま。]
なんだ、こりゃあ。
― 廊下 ―
[薄茶の外套を纏った男に声を掛けられ、立ち止まる。
一定の距離をとるのは常のこと。]
――… 関係ねぇだろ。
[不機嫌な返事は、寝覚めの悪さを肯定するもの。
後ほど聞こえた愛想のいい挨拶とは対照的だった。>>62]
魔神に挨拶にでも行くのか。
太陽の無い空か。
現実じゃないみてぇだな。
……もっとも、この宮殿自体が夢のようなもんか。
[ひとりごちで大きく伸びをすると、朝食を求め中庭を彷徨う。
つやつやとした緑の葉をかき分けると、鮮やかな黄色の果実が顔を出す。
砂漠では高値が付くだろうそれを捥いで、甘い汁をすすりながら緑の園を彷徨った。
緑の休息所に遠く女の影を見つければ、声はかけず覗き見て、その姿を楽しむ。]
[扉の開く音。
薬売りの声。
愛想の良いその声に返す声もまた柔和なもので。]
どうも。
伝承の宮殿で一夜過ごすというのも不思議なものです。
[黒い外套の男の不機嫌な声には落胆も驚きもない声で]
――そうでしたね。
他者の内面に踏み入るつもりはなかったのですが、
[其処まで言って、一度言葉を消す。]
[宙ぶらりんの言葉はそのまま。
魔神への挨拶、と聞こえればレヴィーカとザファルの方を一度ずつ見て]
私は、単にこの邸内を散策に。
何がどこにあるのか、直ぐには判りませんから。
期限は多かれ少なかれ
元より急くのは性分ではありませんし。
[其れに、コレもありますから――と指輪を示す。]
[貴婦人の顔がこちらに向くのを認めれば、こちらを認識してるのか分からないが手を振った。
覗き見したことを悪びれることは無い。]
さて、と。
取りあえず、何をすれば良いのかね?
このお綺麗な宮殿を見て回るってのも楽しそうだが……。
まずは隠れちまった太陽を拝みたいもんだ。
[言って、振り仰ぐのは金の塔。
軽やかな足取りでそちらへ向かい歩き出す。]
……あらま。
[寝覚めの悪そうな黒衣の男に目を瞬かせる。
他人の会話に割って入る気はないようで、異国風の男の方へと向き直り]
本当ね。
あたしからすれば、ここにいる事自体夢のようだわ……。
― 廊下 ―
――……、…
[胡乱げに、静かな声で返事を返す男を見た。
眉を寄せると首もとの外套を引き下げた。]
踏み込まれたなんぞ思ってねぇ。
散策 か。
[煌く指輪を見て、呟く。
悪くはない。とそう続いたのが聞こえたかどうか。]
お前、異国人か。
スーフィニア辺りの出かと思ったんだが。
[つと、そんなことを尋ねた。]
─宮殿周囲─
[宮殿と双塔の周囲を一通り巡ると、少し離れた位置から宮殿と双塔を見上げ眺めた]
……これだけのものを一晩で。
人には為し得ぬ力、魔神の力…か。
[気品ある女が魔神に問うた言葉を思い出す。難易度に差はあれ、魔神は全て為すことが出来ると言う]
私の望みは下らぬと一蹴されてしまうのだろうかね。
少なくとも、人の一生を賭けては為し得ぬ望みではあるつもりだが。
[双塔を見上げる瞳はアガールの布の影から。口元に笑みは張り付いたままだが、布の下では眉根が寄った]
― 廊下 ―
[レヴィーカの言葉に頷いて]
けれどその伝承に立ち会える。
百年に一度――その一生を費やしても立ち会えぬ者が
多くいるだろうこの場所に居ることは大きな喜び。
[それは詩人として謳うような――それでいて静かな声。]
[ザファルの動作は音で知れようか、それも頓着はせず]
それなら良かった。
――気が向かれるようであれば共にまわってみますか。
[それは二人へと向けた声。
男の呟きを拾ったかどうかは定かではない。]
そうですね、此処よりは少し遠い――場所です。
故郷はもう、存在いたしませんが。
[悲しむ素振りを見せるでもない。ただ事実を告げるだけ。]
― 中庭 ―
[杯を空にし、口元を拭った矢先。
涼やかな葉擦れ音に女は視線を巡らせた。
人ではない召使たちは物音や衣擦れの音一つなく立ち回る。]
……。
[手を振る案内人の姿に片側落としていたヴェールを直す。
上げた顎と揺れる翠の薄布が挨拶代わり。
姿が消えるのを見送ってから唇を開く。]
先に中庭に居たのはあの者。
無礼者と詰れはしないわ。
[緑の庭を抜けて、双塔の前へ。
木々が無くなり急に拓けた視界の先に、錬金術師の姿が見えた。
こちらに背を向け塔を見上げる男の背に、足音を忍ばせ近づく。
錬金術師の男はどこ迄近寄らせてくれるのか、試してみたかった。]
――廊下――
そうね。如何なる願いがあろうと、ここに辿り着けぬ者もいる――
[詩を紡ぐかのような男の声。
女は一度、遠い視線で瞬いて]
ああ、それならお供させてもらおうかしら。
まだろくに建物も見ていないしね――
[コーネリアスの誘いに頷いた。
ザファルはどうであろうかと、一度視線を投げ掛ける]
……故郷が。
[続いた言葉にはぽつりと。
淡々と告げる様子を見れば、それ以上掛ける言葉もなく]
― 廊下 ―
[ちらと口を差し挟むではない薬売りの女にも眼を向ける。
それもすぐ異国風の男へと戻り]
……。 … そうだな。
気になることも、ある。
[肯定を返した。相変わらずの仏頂面だったが。]
――…。
――少しばかり お前に似た佇まいの
顔見知りがいたのでな
[悲しむ素振りもなく、故郷は最早ないと語る詩人へ
漆黒の眸が浮かべた色は些か複雑なもの]
そうか。
[そっけない言葉と、僅か伏せた眼]
─宮殿周辺─
[どれだけ双塔を眺め上げていただろうか。背後からの気配に気付いたのはいつだったか]
……指輪でも奪いに来たのかね?
[双塔から視線を外し、前を向いたまま言葉を紡いだのは、案内人の男が手を伸ばせば己に届くと言うところまで近付いた頃。指輪に関して口にしたのは、広間を去り際に案内人の男の問いが耳に届いていたため]
足音を忍ばせて来るとは、穏やかでは無いな。
[そこまで口にして、ゆっくりと案内人の男へと振り返った。表情は柔和な笑みが浮かんだまま]
――― 死者が蘇るなら
あの日 おれを庇って死した
かの人を蘇らせることができるなら
命など要らない
要らないのに――
― 廊下 ―
[二人からの肯定を受け取れば、では、と共に歩こう。
されど複数行動ならば先頭を歩むことは恐らくなく]
お二人はこの国の方なのでしょうか。
いえ、詮索をするつもりではなく単なる興味です。
[故郷の話にぽつりと呟くレヴィーカには柔和な笑みを。
ザファルの言葉にはつられるようについ問いを。]
気になること、ですか?
[相手が語らぬならばそれ以上追求をすることはない。]
私に似た佇まいの――それは手を焼きそうですね。
じっとしていませんから。
[軽い冗談を添えながら、二人に行きたい先があるのならそれに従う所存で、なければ宛てなく歩き始める。]
[背を向けたままかけられた声に足を止める。
相手がこちらを見ること無く自分が誰かを認識していることに気づいたのはその少しあと。
こちらを振り返った男に感嘆の息を吐いた。]
………錬金術師殿は、背中に目でも付いてるんですかね?
残念ながら、奪ったところで持ち主のところに帰って来ちまうそうですよ。
自分で放棄させなきゃ意味は無いらしい。
だから、忍び足は単なる趣味です。
あんたに危害を加えたところで、何の益にもならない。
[ひらひらと指輪を見せつけるように手を振って、その傍らに立った。]
人の気配くらいは察せるのでね。
流石に目を追加しては居ないよ。
[答えるも、誰かまで判別出来ることについては疑問に持たれてしまうだろうか。
指輪についての話を聞くと、ほぅ、と声を漏らす]
力では追い出せぬ、そう言うことか。
ありがたいと言えばありがたいな、力づくは好まぬ。
[指輪を見せながら傍らに立つ様子を眺め]
寝首をかかれる心配がないと言うのは安心した。
自慢の忍び足で私を驚かせる心算だったのかね。
[くく、と喉の奥で小さく笑った]
― 廊下 ―
[さて、ザファルは相手に歩幅を合わせるような真似は
しないたちであるらしい。歩を進めては時折立ち止まり
追うては黒い外套を揺らす]
――……。 この国の、
…少数民族の出だ。
[黒い黒い髪はその証だろうが、
別段其処まで語るわけでもない。]
太陽の行方。
[問いかけには玻璃の空を見上げながら一言。]
……そう、見た目によらねぇ奴だった。
[冗談に冗談を返したのか本当の思い出なのか
向かう先、廊下の続く先、花開く庭園。]
人を驚かせるのと覗き見が趣味なんで。
[微かな笑い声に余裕を感じ、少しだけ悔し気に瞼を伏せる。
一瞬の後上げた視線には、拗ねた色は残さない。]
そうそう、寝首をかくのも禁止だそうですよ。
殺し合いは禁止。
あくまで知的にってのが御二方の望みのようで。
錬金術師の得意分野ですね。
― 青と白銀の塔 ―
[白い指先が銀の駒を並べる、駒の数は七つ。先に弄んでいた精緻な幻獣の駒ではなく、つるりとした表面の人の象徴(シンボル)を模したものが大理石の盤の上に、一列に並ぶ]
始まりは同じ。
[つと、冷たい指が駒の上を撫ぜる]
しかし、終わりはそれぞれに。
常の癖が出てしまったな。
寝首をかかれる心配は無いとは言え…結界を切るのは不安が残る。
私より魔力ある者には効かぬものなのだが、ね。
[廊下を出て、暫く行くと階段。
白の人物が其れを上がり、ゆっくりと周りを見ると、どうやら中庭に面したベランダ、――というには少々豪華過ぎるもののようで。
階下には噴水や翠樹の気配が揺れる。
白亜の、指紋を着けるも躊躇いが生まれる手摺に、白の手袋をした手指を這わせ、帆のごときマントはゆらり。]
[背にクロスボウは既に背負われてはおらず。
腰に曲がった剣は携えられた儘だが、
それは深く装飾と国の文様を描いた鞘に収まって居る。
白の人物は、階下に中庭を見おろし乍
手摺を指で摩りつつ、テラスのようなベランダのような場を、歩く。
見えるのは、きっと美しい召使と
――後は、かの帝王の妻、だろうか。]
結構な趣味をお持ちだな。
[布に隠れた眉根に険が寄った。それでも布に隠れぬ口元には笑みを湛えたまま。声には僅か厭う色が乗るか]
魔神殿達は血腥い事はお嫌いか。
さて、私に利があるかと言われればどうだろうな。
皆譲れぬ望みがあってこの場に集まっている。
此度の契約と言うものは商談のように机上で取り纏めるようなものでは無い。
私が有利にあるなどとは、一切思っては居ないよ。
そうですか。
[少数民族の、と聞けばただ頷く。
その黒い髪とやらも見えねば問いを生むこともない。
歩いては停止を繰り返す男に焦りは見せなくとも、レヴィーかとのバランスを見て中間の速度――で歩くつもりがひょっとしたら一番遅いのかもしれない。]
太陽の――……、
ああ、ここ数年は考えることもなかった。
[ならば今は太陽はないのだとどこか納得もしていて。]
なら、其の方とお友達になれそうですね。
いや……同族嫌悪で逆に衝突でもするでしょうか。
――そういう相手でも、居れば楽しいものですけど。
[過去形で語られた顔見知りの存在にはそう返す。
目が開いていればどこか遠くを見るようであったかもしれないが、今閉ざされた目では若干の宙空に顔を向けるのみで。
たどり着く先は、緑の風と花の香――水の音がする場所。]
[不意に。
白は、テラスの手摺に片手を付いた侭、ひらりと。
ただ布の衣摺れる音のみだけをさせて、飛び越した。
風を受けるのは、ほんの数秒。
白の武人は噴水の直ぐ脇へと、
膝を深く曲げた形で、着地した。
分厚く大きなマントが、遅れてその身体を包む。]
へえへえ。ほうほう。
それでは錬金術師殿の望みと言うのは何なのかな?
[ 案内人の背後、その肩越しにひょいと顔を出す黄金の髪。]
―宮殿付近―
悪趣味な。
[その言葉は口にはしなかった]
覗き見などと。
暗号化して居るとは言え、研究内容を覗かれ暴かれてしまうのは錬金術師としては我慢ならぬもの。
彼にそのつもりは無いにせよ……その行動は好かぬ。
[厭う感情は消し切れず、表に僅か漏れてしまう。案内人の男に対する印象はやや落ちたことだろう]
[声をかけられ、初めて魔神が近くまで来て居たことに気付く。先程案内人の男に気付いた時とは違い、やや驚きの表情が浮かんだ]
お出でだったか、アウルム殿。
私の望みは──。
[言いかけて、言葉を止める。少しの間考える素振り]
──……貴殿よりは、ヒエムス殿の方が話の合う望みやもしれぬな。
[口元に笑みこそ浮かばなかったが、魔神に対して挑発するかの様な口振り]
そうですかね?
[相手の声に宿る僅かな感情は介せず、代わりに異を口にした。]
結局は商談と対して変わらないような気がしますが。
お互いの利を計り合い、自分と利害の一致する相手を味方につける。
説明、聞きました?
多くの人間から邪魔だと判断された人間が排除される。
そう言う決まりらしいですよ。
御二方の意に添わない人間も排除されるそうですから、この辺りはちょっと違うかもしれませんね。
[魔人の意志はどこにあるのか、計るように二つの塔を見比べた。]
――廊下――
[男二人に合わせるように、女の歩調は自然、普段より早くなる。
しかし急いている様子は見せず、あくまで軽やかな足取り。
故郷について問われれば、特に隠しだてするでもなく]
あたしは、故郷については良く知らないのよね。
両親共に、砂漠を渡り歩く生活で――その中で生まれたものだから。
"異国"という程、ここと違う国の出でない事は確かだわ。
[最後に付け加えた一文は、詩人の装いを見ての事か]
[ザファルとコーネリアスの会話も、聞くともなしに聞きながら。
気付けば水の音が、すぐ傍に聞こえていた]
[鳥肌のたった首筋をかいて、振り返る。
見えない太陽を浴びて光る金の髪が目に入ると、ああと、納得した態で肩を落とした。]
やめて下さいよ、金の御方。
俺は背後をとられるのには慣れていないんで。
説明は一通り聞いている。
味方につけたところで、後に敵となる。
孤立していれば確かに排除されやすいだろうが……その前に契約を果たしてしまえば。
そうは思わないか?
尤も、魔神殿達は早計ではないだろうがね。
[案内人の男の異に己が考えを述べる。本心なのかはその表情からは読み取れない。
直後、こちらへと飛び寄る様子には、くつ、と笑いが漏れた]
― 廊下 ―
[言葉少なに廊下を行く。磨かれた雪花石膏の柱は
鮮やかに風景を切り取っていた。
歩調を気にする様子は矢張りない。]
…――盲(めしい)か?
[尋ねる口調は平淡で別段蔑んだりする様子もない。]
どうだろうな。
会ってみねぇと分からんだろ。
……どうも衝突とか想像できねぇな
[1人ごちる。それは一見おっとりとした
吟遊詩人の所作ゆえだろう。
水の流れる音に眼を細め、木々を見上げる]
月下香……咲いているか。
これは魔神の趣向なのだろうかな。
あ、そ。
あれは偏屈だから精々気張ると良い。
[ 錬金術師の答えに特に残念な素振りも見せず、くるりと黄金の瞳を回して見せる。
それよりも慌てて飛び退いた案内人の様が面白かったらしく、肩を揺すって忍び笑う。
その仕草のいずれもが何処か芝居がかっている。]
[噴水の水に手を伸ばすと、白の手袋の先が薄茶になる。
人の気配を感じて鳩羽で隠れた貌を向ける。]
おはよう、…――だろうか?
それとも声すら交わさぬ程、敵意を剥きだすべきだろうか?
[影の落ちぬ中庭、首を小さく傾げた。]
[笑う二人に顔をしかめ、首筋に当てた手をこめかみへ。]
そうやって笑いますがね。
あんただっていきなり背後から息をかけられたら驚くと思いますよ。
特に、あんたがたの背後をとれる存在なんてそうは居ないでしょうから。
[言ってから少し考えるように黙り込む。
ややあってしみじみと口にした。]
それを願いにしたら気持ち良いかもしれませんね。
貴殿に出来ぬとは申さぬが、ここで述べてしまっては、ね。
[視線は刹那、案内人の男にも向かう。けれど直ぐに金の魔神へと視線を戻し]
ヒエムス殿が偏屈なれば、貴殿は何と称されるのだろうな。
やること為すことが常に楽しそうだ。
[芝居がかる仕草を見やりながら、そんな言葉を紡ぐ]
[レヴィーカの故郷についてはこれもまた、頷いて。]
流浪の民、と言ったところでしょうか。
私も今は土地を離れ帰るべくもなき身。
仮に子でも持てば教える故郷は何処になるでしょうね。
[鮮明になる香りと音に耳を澄まし、口許を緩める。]
異国の容姿を持って此処を故郷と教えても
年頃になれば反発でもするでしょうし――……。
ならば子と共に流れるも一興かもしれません。
[どこまで本気かわからぬ口調で肩を竦める。]
背後を取られるのは慣れていない、か。
じゃあ、そういう「小父さん」はどうしてここに来たのかな?んん?
そういう願いでいいの?
[ 悪戯っぽく目を細め、人差し指を突付くように突き出す。
キラキラと瞳の黄金が輝く。]
―宮殿屋根―
[緋の姿は屋根の上。
其々の思惑ありてか動く人間たちを眺め、時折言葉を紡ぐのは専ら女の方の声。]
――あらあら。
[此処からでは主の姿も客人も遠く、跪く事はしない。
黄金の魔神の所業に―どちらかと言えば近い性質に見える―女は笑い混じりの声を洩らす。
男はフードの下、その表情のままに何を言うでも無い。
見る者がいれば、些か奇妙な光景ではあった。]
…どうにも、難しいものだな。
[口元を覆う布が小さく、揺れる。
噴水の脇に座り水面が光を反射させるは
此処が砂漠の中であるという事を忘れさせる。
手袋の内、嵌めた指輪に違和感があるかのように
白の武人はきゅ、と、手を握ってから、
濡れは気にせず、ぴちゃり、水で遊ぶ。]
[噴水の横、鳩羽の人物を目にすれば軽く一礼を。
彼の者が口にした言葉には、よくわからないという顔をしたが]
[コーネリアスに、流浪の民と言われれば頷いて]
そうね。旅が故郷、果てもなき砂漠が故郷と――
少なくともあたしは、そう思ってきたしね。
[呟く女の前に広がるは、故郷の只中にありながら故郷とは全く異なる風景。
このような地に済めば、水や果実に飢えることなく生きて行けるのだろうか]
――けれど旅の行く末を見失った時、帰るべき場所がないというのも寂しいものね。
[ぽつりと続けたのは、独白めいた呟き。
故郷をなくした男の耳に、それは届いたか]
[男の問いには少し考えるような間もあり]
完全に見えぬわけではありませんが――
故郷を失った日にほとんど見えなくなってしまった。
そして……使わなくなってからは、久しい。
なので、完全に"そう"なっている可能性もあるでしょう。
[開けぬではなく、開かぬ目。語る表情は穏やかなもの。]
そうですね……それに、似たようでも同じ人は居ません。
同じでないならどう転ぶかもわかりませんね。
……あ、私これでも怒る時は怒るんですよ。
[と、慌てて付け加える様は余計に温和に見えたかもしれないが。]
月下香……魔神の趣向ならば良い趣向だと思いますよ。
何か思い出でもおありですか?
[友人との雑談のようなトーンの其れ。声音は柔らかいもの。]
退屈だと死にそうになるからね。
人生は愉しんだもの勝ちって言うでしょ。
[ さらりと軽薄な微笑。]
気が向いたら指輪に呼び掛けるんだね。暇だったら話を聞こうじゃないの。
[ ひらひらと二人に手を振る。その声音はあくまで軽い。]
[引っ切りなしに動く金の瞳に目が眩みそうで、一歩距離をとり日陰に入る。]
そりゃあもちろん金と銀の御二人に見えたかったからですよ。
酒の席での与太話や、もっと小さい頃の寝物語に聞いていましたからね。銀砂の魔宮と願いを叶える魔神のことは。
願いについては……どうでしょうね?
[ひらひらと振られた手に肩を竦め、白銀の塔を見上げた。]
愉しんだもの勝ちには同意しますが、
白銀の君は別の考えをお持ちのような気がしますね。
指輪に呼びかけたら、答えてくれるんですか?
貴方も、もう一方も。
おはよう御座います。
敵意は――もたれるのは構いませんが私からは。
[スフィリアにそう答え、レヴィーカには]
果て無き砂漠が――
怒られそうではありますが、とても幻想的ですね。
持たぬ者、失った者、捨てた者、奪われた者。
故郷を持たぬ者には様々な生い立ちがありますが……
[続く呟きには一拍置いて]
自分に故郷を作るのは難しいかもしれませんが
子孫に故郷を作ってやることは出来ますよ。
生涯この大地が故郷だと胸を張るのもまた道ですかね。
……ああ、よく存じ上げないのに軽はずみですね、すみません。
人生は愉しんだもの勝ち、か…。
否定はせぬな。
[己がどうかは別として。
金の魔神の軽薄な微笑みに、同意するように笑みが深まった]
呼びかけに関してはそうさせてもらうとしよう。
……ああ、一つだけ聞いてもよろしいか。
[その場で金の魔神へと問いかける]
──貴殿らは「魔道士」に関して如何様な感情をお持ちか?
単なる興味故、聞き流すならそれでも構わぬ。
[そうつけ足し、金の魔神を見つめた]
―月下香咲く庭園―
――流れるというのも 一つの道か。
[肩を竦める詩人の言葉、
吐息交じりでひとことだけ。
――帰るべき場所がないと、という薬売りの声には
また僅か眼を伏せただけ。
スィフリアの姿を見止めると、歩みを止めて距離を置く]
好きにしたらいいだろう。
どうせ、此処に居ては手は出せねぇ。
[厭う響きは「不滅隊」である者へ向けて。]
[ ユーグの視線の先を辿るように自分も白銀の塔を見上げる。
何拍か置いてから、複雑な顔で向き直る。]
……答えるんじゃないかな。気が向いたら。多分。
[ 声にあまり説得力がない。]
[レヴィーカとコーネリアスの姿。
自分を厭う目で見る黒も一緒に見えるだろうか。
鳩羽色を前以外白のターバンに隠した人物は
片方の手袋の先を水に着けた侭、
もう片方を胸の前へ持って行き小さく敬礼をした。]
――ふむ、
[二人の反応に小さくまた、首を傾ける。
ふたりの話に口は挟まないといった態で、
水面へとまた貌を向け――黒が居たなら、そちらを見るやもしれなが。]
[暫くそうして楽しむ態を見せていた緋は、不意に左腕を持ち上げる。
袖の隙間から絡む金蛇が覗く。
ばさりと羽音をたてて止まるは白き鳥。
次いで右腕を上げれば、その手には丸みを帯びた形の弦楽器。]
さて、仕事をしましょうか。
[淡々とした男の声。
腕から肩へと器用に移動した鳥は、夜通し歌っても未だ足りぬと言う様に歌い出す。
緋はその声と戯れるように弦を爪弾いた。
自ら歌うことは今はせず、青い目は相変わらず人間を見下ろしている。]
[黒の厭う響きに、
水面へ向けた顔を上げ、動きを止める。
前髪に隠れて見えぬ目が、じっと、黒を見詰めて居る風な様子。]
我が隊は、
必要の在る時にしか手を出したりはせぬよ。
[それは詰まり、逆に思えば彼の逆鱗に触れるかもしれないが、それを、気にする風は無い。]
[鳩羽色から距離をとったまま
眼を閉じたままの男へ視線を流す]
――… そいつは、 災難というべきか。
[見えないのか、片手を上げて翳してみる。]
想像つかねぇ。
[温和にしか見えない詩人の物言い、
顔を逸らして手を伸ばした先は月下香。]
ちぃとな。
―― … …趣向なら、そうだな。
いい、 趣味だ。
[想いを浮かぶ、幾分か 柔らかい。]
――庭園――
幻想……ねぇ。
異国の人からはそう見えるのかしら。
[コーネリアスの言葉に、怒りはしないものの怪訝そうな顔。
女からすれば、見飽きたという言葉ですら不十分な程に当たり前の光景であるが]
……子孫。
考えた事もなかったけど――
もし子が出来たら、あたしはどんな道を歩ませるべきなのかしらね。
[大地を故郷と言い張るだけの拠り所を与えられるのか――
女の視線は遠いものになった]
― 中庭 ―
[手の平でご転がる金銀は、太陽がなくても光り輝く。
陽の光、月の光を手にしたように。]
奪われても失くしても、戻る指輪。
…試すまでもないわね。
[ヴェールを揺らさぬ声で、女は緩やかに振り返る。
テラスらしき高台にいたのは白い姿。
細める目は眩しさの為ではなく。
翼のように翻る布、緑の向こうに舞い降りるを黙して見た。]
[月下香を撫ぜていた手をぐ、と握りこみ
黒髪の奥の黒が鳩羽色を睨みつけた。]
―― それはそっちの都合だろうがよ…!
おれたちは、
[一歩進み出でて詰め寄るが、
遠く弦を爪弾く音に我を取り戻したか
きつく眉を寄せたものの立ち止まる。
前髪の奥に眸が隠れがちなふたり。
有様は対照的。]
やはり、と言うところだろうか。
[金の魔神の表情の変化に思うことは一つ]
魔道士を厭うなれば、どちらにせよ早々に追い出されていただろうか。
まぁ良い、ここに来れただけでも良い収穫だ。
[ それも瞬時に消え、落ち着きのない黄金はくるくると回る。]
人間は大体面白いからね。見てて飽きない。
魔道士だってそれは変わらない。全く同じだよ。
契約だって、愉しそうだからするんだしね。
[ 端整な唇浮かぶ笑みが何となく薄い。
と、ひらひらと手を振って、]
じゃあ、行くから。
ふたりはゆっくりしていって。
[ 来た時と同じように唐突に、何の物音も気配もさせず、姿が掻き消えた。]
我が都合は我が都合。
貴殿の都合もまた、貴殿の都合だろう。
[睨む黒の奥の黒にも、白はぴくりとも動かず
噴水の縁に座り見上げた形の侭なれば形も対照的。
楽音に立ち止まる様子に、少し遅れて気づいた風。]
美しいな。
[ぴちゃり
指先を弾くと水が、音を立てた。]
[スィフリアとザファルの関係などわかるはずもなく、其処に流れる空気が温和とて不穏とて気づかぬ素振りをするだけ。]
災難、でしょうね。
けれど後に目を開かなくなったのは自らの選択。
……――陳腐な願掛けですよ。
[苦笑と共に紡がれる想い。
手を翳されたなら、明暗に反応して前を見つめる。]
光はわかるので、まだ見えるかもしれません。
[目は閉じたままに――想像つかねぇ、という言葉にかくす、と笑って、柔らかな気配を感じればおや、と呟き]
その思い出が良きものであるのなら。
――この花の香りは私も好きですから、良かった。
[特に思い出とかあるわけじゃないですけど、と添える。]
不滅隊のスィフリア。
聖皇の側近が魔神に何の用?
[召使から聞いた肩書きと名を深紅が紡ぐ。
緑の向こうには噴水、流れる音に女の声は聞こえはしない。
しばしの思案の後、立ち上がり休息所を後にする。
夜が明けても鳴く鳥と楽の音が、緑の上を流れ行く。]
おや、逃げられた。
[視線は、先ほど迄魔神が閉めていた空間に据えたまま。]
魔導士ってのは、あの御二方を封じたって言うあれですか。
俺は、錬金術師と魔術師の違いがどうもよく分からないんですが……。
……そうか。
[返される金の魔神の言葉にはただそれだけが口をつく。男の表情に笑みは無く、真剣味を帯びていた。
薄いように見える笑みを見つめたまま、金の魔神が消え行くのを見やる]
……それが本心なれば──。
[ぽつりと漏らされた言葉は途中で途切れた。布に隠れた眉根が険しい]
[ アウルムは未だにどうして契約者が死に際に自分とヒエムスをこの宮殿に封じようとしたのか、理解していない。]
人間は本当に分からない。
ま、分からないから面白いんだけどさ。
本心なれば、良いのだが。
[けれど直前の表情からは望みは薄く感じられる]
確かに、人それぞれ故に全ての魔道士が同じとは言えぬ。
しかし一度体験したことを、払拭出来る程の何かを為さねば印象と言うものは変わらぬ。
何とも、茨の道に迷いこんだものだ。
[レヴィーカへと困ったように笑い、]
砂漠とそう遠いわけではありませんが、
その地に留まり日々を平穏に包まれ営んでいましたから。
外に憧れたことも、冒険をしたいと想うこともありました。
――けれど、いざ出る頃には世界に光を持たなかった。
尽きることなき砂の海が如何ほどのものかをまだ識らない。
だからまだ、砂の中に在っても興味を寄せていられるのでしょう。
[子の話――少し思案して]
これも、わが子に会ってみねばわからぬことかもしれません。
子は存外強いものですから、意志を宿し成長することも。
[――と、明らかに怒気の孕むザファルの声音に顔を向け、続く楽の音に耳を澄まし暫し聴き]
― 噴水 ―
[水音に何があったか、言葉は聞こえてはいない。
けれど、スィフリアとザファルの険は一目で見て取れた。]
ご機嫌はいかが。
[声をかける頃には、白と緋の音に激情は去っていようか。]
[金の魔神が居た場所から、視線を案内人の男へと移す]
それもあるが。
魔道士はそれ以外にも居るのでな。
彼の魔神殿達がこれまでどれだけの魔道士に会うて来たかは知らぬが、それらに対してどのような想いがあるのか気になった。
私も、錬金術師であると同時に魔道士でもある故。
[僅かに案内人の男から視線を外し、左手で布に隠れがちな顔の左半分の紋様に触れた]
願掛け な。
陳腐もなにもねぇ。其処に何掛けるかが肝要だろ。
[前を見つめてくる詩人に緩く眼を細める。
どうやら明暗は分かるらしい。]
折角の庭園だ。
見とくのも悪かないと思うがな。
[花が好きだと。
そう答えを聞けば物思う間もあり。]
詩人なんだな
[言葉は遠くより流れる音色と同じくらいの大きさ。]
[鳩羽色の答えに、ち、と舌打ちをする。]
――… 気にいらねぇ
[対照的だった。色も、感情の表し方も。
息を詰めて踏み出した足を引いた。
新たに現れたのは 甘い香りを纏う帝王が妻。
ちらと流し見]
――最悪だ。
[仏頂面で機嫌を告げた。]
―中庭―
[ ふわり。
純白の石畳をかろがろと、赤い絹の靴先が踏む。
涼しい木陰を作る糸杉の木下、降り立った黄金の魔神は腕を組み、うーむと一声唸った。
暫し思案の後、組んでいた腕を解いて宙へと差し伸べれば、鶺鴒が一羽、飛び来たりて指にとまる。]
[スィフリアの敬礼を受け、顎を引いて返す。
緩やかに波を作る翠のヴェールも、緑の庭園には霞むだろう。
ザファルの返答に、目尻に微かな皺が寄る。]
ならば、これ以上悪くなりようがないわね。
[流し見る仏頂面に円やかな声を返し、その原因らしき白を見る。]
不滅隊の者と聞きました。
……聖皇はご息災かしら?
[忠実なる側近が、主の傍を離れてこの地にある。
その理由を探る言葉は何気ない挨拶の中。]
魔導士なら、やっぱりあの御二人を使役したいとか思ったりするんですか?
この宮殿を造ったのはその人でしょう。
こんなに豪勢な宮殿を造り、名を残す魔神を使役したって言うのに当人の名前は伝わっていないって言うのも不思議なもんだ。
[対峙した男の手が動くのに合わせて視線も動く。
布がめくれて昨夜見た紋様が見えた。
遠い昔に生きた魔導士も、同じように顔に紋様を刻んでいたのだろうか。]
その紋様は、入れ墨ですか?
それとも化粧?
[何やら因縁のあるらしい二人が争い掛けるも、楽の音に諌められたかのようで。
表情に安心が浮かぶのは、流血沙汰を好まぬせいだろうか]
[草を踏む微かな音に振り向けば、そこには貴婦人の姿が。
反発はひとまず隠して一礼を。
そしてコーネリアスへと向き直り]
ああ――そうか。
幾らこの光景に包まれていようとも、それを見る眼がなければ――
[彼は己の意志で眼を閉ざしたと言ったか]
――この宮殿の美しさも、その瞳に映す事は願わないのかしら。
[ぽつり。呟く声は、訊いて良いものか迷うかのように控え目で]
[1]
[2]
[3]
[メモ(自己紹介)記入/メモ履歴/自己紹介] / 発言欄へ
情報 プロローグ 1日目 2日目 3日目 4日目 5日目 エピローグ 終了 / 最新