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–––––チカチカ、チカチカ、チカ、チ、カ
点滅はゆっくりといつもの周期へ戻ります。
目を閉じて数秒置いて、開いて。
「そういえば、喉が渇いたわ」
先ほどの会話なんてなかったかのように、一言漏らします。
>>149 みくる
みくる……どうしたんだ?
元気……ない?
[いつもより、少し遠慮気味にみくるに声をかける]
か、ぞくが、いないって、どうして?
生まれ変わって……会うんだって、言ってたじゃないか
そりゃ……これからどうなるかわかんねえけど、でも、心の中には、いるだろ、お姉さん、とかさ
好きなんだよね?お姉さん……
みくるの……みくるの好きな家族の話、聞かせてよ
「そう、喉が渇いたの』
「おかしいな、そんなはずはない」
『でも、渇いたわ』
「何を言っているんだ。ぼくらに食べものは必要ない」
「どうして?」
「神様が言ってた」
『そんなの。神様なんて信じられるの?』
「何を言っているんだ?」
『神様、神様って、ふふふ。アナタ何を言ってるのぉ?
神様を信じるなんて。神様がアナタをしあわせにしてくれるって本当に信じていたのぉ?
アナタに絶対惚れるアタシを創って、夢見るアタシを造って、絶対に叶う努力をするアタシを愛して。
それがアナタのしあわせなの?』
>>マサト
「だから、マサトくんとみくるはにてないよ。みくるは家族なんかすきじゃなかった。すきじゃなかったから、ころしちゃったの。この手で。マサトくんと握手した手で」
自分の手を見つめて急ににこにこし始めたかと思うと、次の瞬間泣きそうな顔で奥歯を食いしばる。
「……うそつき」
[私へ笑いかける瞳は深く淀んでいた
しばらくその瞳を眺めると、クスリと微笑む]
…ライアン、何か勘違いしてるわ
貴方の話している【幼馴染のコレットは私よ】
貴方が5歳の時引っ越して来た女の子も、毎年家族ぐるみで海へ行っていたのも、毎日一緒に登下校したり寄り道していたのも、全部私よ
隣の子はとても私に似ているけれど、違う子だわ
ね?お願い、目を覚まして
[手を繋ぐそれを剥がそうとライアンへ縋り付く]
>>153 みくる
[お姉ちゃんはぬいぐるみ──あまりにも突然の言葉に、マサトの思考は追いつかなかった。急に、どうして、そんなこと]
……お姉さんは、ぬいぐるみ、だったのか
そ、そう
[一人っ子で、寂しくて、小さい頃からぬいぐるみを姉に見立てていたとか、そういうことだろうと勝手に解釈する]
──ぬいぐるみでも。
ずっと一緒にいたんだろ?
なら、家族だよ。
[ゆっくりみくるに近づく]
……座って話さない?みくる
[ライアンがその言葉を言った瞬間、ズクリと下腹部に激痛が走る]
…ぅ、あ"っ…あ"あ"…っ
[立っていられず腹を抱えて蹲る
生理が重い時のような、いや、それよりも酷い、脈に合わせてズクリズクリとした痛みと共に"何か"が流れてくるような感覚がした
痛みと嫌な予感に脂汗が止まらないまま下を向くと、ドロリと太腿に血が伝っていく
全身の血が流れ出たのかと思うくらい血の気が引いた
痛みも忘れぼう然と股を凝視する
痛みが治まってきた頃、"何か"の存在が自分の中から消えた感覚があった
無意識に顔を上げた
そして同じ顔のそれを見る
カチッと目が合うと、それは気持ち悪い笑みを深めて優しく自分の下腹部を撫でた
ーーー奪われた
腹が出ているわけじゃない
けれども何故か確信があった
今この瞬間、全部、全部、目の前のそれに奪われた、と]
「そうさ、決まってるじゃないか。しあわせだからここに来た。神様との約束どおりに。
キミだってしあわせだったろう。
オレは見たよ。キミの記憶でキミはしあわせに溢れていた。」
『アナタが創ったアタシが、アナタの創った世界で、アナタの創った未来へ、アナタが決めた感情で。
ふふふ、それがしあわせ?
ーーそのしあわせってアタシは必要かしら?」
狼狽えた顔、不思議そうな顔、コロコロと変わる表情が止まったのは、薄く笑みを浮かべた顔でした。
その顔は確かに笑みを浮かべていましたが、どこかもの悲しいものでした。
「キミがいなければ、」
『アタシがいなくても、』
「しあわせは成り立たない」
『しあわせは成り立つでしょう』
───
「ねえ、ルーシー、ぼくたちどこかであったことない?」
そんな風に彼は言う。戦時中の軍人時代─わたしがスパイで敵国に潜り込んでいた時、こんな風にどきりとする一言を投げかけてくる。
「何度も言ってるけれど、あの会議で顔を合わせたのが初めてよ」
「やっぱり、他人の空似かなぁ…」
黒いパンをミルクに付けて頬張る。今頃、家族は白いパンを食べてるかな。みんなの為なら、なんだって。そう、なんだって。
「最初はね、えらい美人さんがこんなところにって思ったりもしたさ。でも、秀でてるものは使って当たり前か」
コンコン、と自分の頭を人差し指で叩き、彼は笑う。そう、わたしは家族のためなら、なんだって。使えるものは差し出す。
「…ねぇ、その“他人の空似さん”はどんな人なのよ」
ドキドキしながら彼に尋ねる。覚えていても、覚えていなくても、どうにも複雑な気持ちにはなるだろう。それでも、わたしは尋ねずにはいられなかった。
「なに、嫉妬?」
「うるさいわね」
軽口を叩く彼。ケラケラと笑いあえる時間は少しの癒し。こんな時に、と軽蔑した視線を貰うことがあっても、胸のバッチを見て目を逸らされることが多い。
『ふふふ、最期の最後まで。
これで一つになっただなんてねぇ。
もぅ、わかったでしょ。一つになった?それがしあわせ?
一つになれてないわ。それでもアナタはしあわせだった。
そうよ、アタシはいらないわ。
じゃあ、さようなら』
見る見るうちに姿が変わっていきます。
背が伸びて、髪は白く、肌は浅黒く。
そうして残った子ども面影は、
アースライト トルニー が見物しにやってきました。
>>157 マサト
「や゙め゙でっ!!」
両手で耳を塞いで、みくるは一歩後ずさった。
「家族じゃない! 座らないっ!! ずっとおかしいって思ってた……ものごころついたときからあのぬいぐるみはいた、あたりまえみたいに……みくるはちがうって、あのふたりはあれはぬいぐるみなのに、パパはみくるをぶつんだ。やだ、いや、嫌、みくるのお姉ちゃんは」
ぶつぶつと、目の前のマサトを無視するようにつぶやいたあと、やっと顔をあげる。
その顔は心の底から悲しそうに、憎ましげに、マサトを見つめた。
「“きっと大丈夫”なんてうそだった。マサトくんのうそつき。……マサトくんも、みくるにつらいおもいしてもらいたかったんでしょ。みくるにやさしくしたのだって、じぶんよりよわいひとをそばにおいて、じぶんがあんしんしたいだけだったんだ」
「みくるをばかにして、みくだしてるんだ。ほんとうにみくるをたいせつにしてくれてたわけじゃない。だから、あのひとみたいに、ぬいぐるみでもかぞくなんていうんだ」
「何を言ってるんだ?一つになったんだ、別れられるわけがない。
キミがなんと言おうと、さようならなんて、そんな。
一つになったんだよ。
ほら、オレらはライトになったんだ。
オレとキミで…
……オレ?」
男は気がつきました。気がついてしまいました。
一つになった、一つになったと思ってからは、ボクでした。
ライトはボクですから。一つになっていたのですから。オレではありませんでした。キミもいませんでした。
「なんで、オレ、いや違う。
一つになった、なってしあわせになったはずさ。
何か間違ってる、そうだ歪みだ、アレの所為さ。
そうだよ、そうだ、神様のところに行けば修復して貰える。
あぁ、ほら、神様のところへ行かなくちゃ。
また一つにならないと」
「そうだ、一つになればいいんだ。
一つになったらしあわせになったんだ。
ライトになれば、そう、ライトになれば。
ライトにならなきゃ。ライトのとき、ライトで思ったのは、そうだ、そうだ」
「ボク、喉が渇いたなぁ」
男は思い出します。ライトであったときのこと、ライトの口調。きちんと思い出して、きちんと真似をします。
「なんでだろう?食事も必要ないって言ってたのに!
そうだ!神様は能力を授けてたよね!それの所為かな?
うぅん、それなら何を飲めばいいのかなぁ。飲みもの…何かあったっけ…
そうだ!誰かに聞いてみようっと!」
キョロキョロと、子どもであれば可愛らしい仕草で辺りを見回します。
見目に合わぬ、子どもの口調、子どもの仕草でペラペラと話す男は、それはそれは歪んで見えることでしょう。
俺達の子どもだ
どっちに似るかな?
どっちに似ても、絶対可愛いか
やべぇ、俺今世界一幸せだ
[優しく、でも離さないように、彼女の腰を引き寄せる]
「……はは、は
あっはははははは!なんだよこれ!絶望だな!!なんでみんな狂ってんだよ!?」
「どいつものいつもしんどそうでかなわねえなぁ!!なんだ?これが俺たちに与えられた罰なのかよ!?おもしれえ……俺には何が待ってんのかなぁ!!」
その場であぐらをかいて、まわりの不幸せな末路を眺めながら次に自分に降り懸かる災難が如何に凄まじいものかを恐怖しながら待つ。恐怖に対する好奇心を持ちながら。
だが、何も来なかった。
何も無かったのだ。ほかのだれがくるわけでもなにをされふわけでもなく。何も無かった。
「………?おかしいなぁ。俺にゃあねえのかよ?」
それが8時間ほど前の話。
「………おい、待てよ。ほんとに来ねえのかよ?いやいやいやおかしいだろっだって俺だって幸せになったからここに来たんだぜ!?俺にだって苦痛も、苦悩も与えられるもんなんだろ!?……おい!なんとか言えよ!!!」
その場に立ちあがった。この声を誰が聞いている訳でもない、ただただ叫んだ声は何も無い空間に消えていくようだった。
「…ふざけんなよ……俺は?俺はこいつらに負けねえくらい辛い目にだってあってやるって言ってんだぜ?【この空間で最も不幸な男、天下一の不幸人になるんだ、俺ぁ…】………俺をなかったことになって、そんな……俺はいつも1番なんだろ………?なかったことになんてすんなよ…
はははは
あ、は…ははは
あっはははははははははははははは!!!!」
>>ナツキ
よっ、しばらくぶりだな!
今ってよ、神様の言う「小悪魔」と「吸血鬼」が生き延びた状況だと思うんだがな。
「吸血鬼」になったお前さん……ナツキは、幸せか?
>>162 みくる
[みくるの絶叫に足が止まった。彼女のこんな声は聞いたことがない]
みくる?
なに、言って……
[みくるの口から出てくる家族の様子は、マサトの思い描いていたこととは違って、なにか背景にどす黒いものを感じた。しかし、マサトには彼女の家庭環境を、察するに足るだけの想像力はなかった。ただ、呆然とみくるを見つめていると、彼女は今までに見た事ない目でマサトを見つめた。悲しそうに、恨めしげに。先程までのマコトの顔がダブる]
───っ!
や、めて。みくる。そんな目で、俺を見ないで。
俺は、俺は、みくるを見下してなんてない。みくるは、みくるの、笑顔が見たくて、それで。
無責任だったことは……認めるけど……でも!
みくるのことは、本当に大事だよ!
妹みたいで、後輩みたいで、かわいくて……話してると、楽しいから
>>175ナツキ
だよな、そんな顔には見えねぇよ。
……あ? なんでだよ!
どこに俺がお前さんを責める道理があんだ。
ナツキは神様との約束破ってまで幸せになりたかったんだろ? ならそうすりゃ良いんだ。手段が善か悪かなんて結果論だしな!!
やりたいことやるだけやって、だから今幸せか? ってよ。
違うんだろ? 幸せじゃねぇんだろ?
あの悪魔に騙されて良いようにされてよ!
ナツキはココで諦めるか? 俺ぁ諦めねぇよ!!
何度だって何度だって何度だって何度だって何度だって何度だって何度だって何度だってよ!!!!!! あの馬鹿悪魔をぶん殴ってやる!!!!!
俺ぁ小鉄なんだ!! 小鉄だからよ!
どんなにちっぽけでもぜっっったいに折れちゃいけねぇんだ!!!
どんだけ馬鹿で救われなくても!!!! 折れちゃいけねぇんだ!!!!!!
メシが美味くて幸せだ!!!! 厳しいが優しいかーさんがいて幸せだ!!!! 黙って俺を見ててくれるとーちゃんがいて幸せだ!!!!!! 全部、全部幸せだった!!!
ソレが幻でもよ、俺が俺な限りこの心臓の中にかーさんもとーちゃんもいるし喰ったメシは確かにこの血として流れてんだよ!!!!
俺は!!!!!! 絶対に!!! 折れねぇ!!!!!!
んー、みんなでカミサマのところに行くために頑張ったのに、みんなバラバラだなー?どーしてだろ?もっともっとひとつにならきゃ!
まざらないと、まぜないと!あたしの幸せをあげる!不幸をあげる!
ほらっ!みんなで手を繋がないと!仲間外れがいたら可愛そうだ!
>>144 ジーノ
(ジーノの首筋を唇でなぞり、その匂いに包まれたような心地で、しかし声色は冷たく話しかける。)
「なぁ、ジーノ。わかったヨ。
オマエ、何か後悔してること、あったんだネ。
神サマが叶えてくれるなら、やり直したいことあったんだネ。
それを俺でやったらサ、とりあえずオマエは救われるんだよネ。
……でもサ、俺はそれにはキョーミ持てネーヨ?
俺は?俺の救いはドコにあるのヨ。
俺はマチャ。ナルバディンだけどオマエだけのマチャ。でもマリアじゃネーヨ。
……俺かマリアか、どっちか殺せヨ。
教師 クロエ が見物しにやってきました。
そうだね、サヤカ。あたしの言うとおりにしてりゃ、あんたは幸せになれるよ。
皆で仲良く、自分を殺してでもね。そうしてりゃ、なーんにも辛いことはないんだからさ。
ほら、あんたならちゃんとできるだろ?ずっと、そうしてきたんだからさ。
せんせいっ!
ねっ、みてみて!せんせい!あたし、今度は先生の言うとおりにみんなで仲良しになれたよ!
幸せも不幸せも分け合って!あはっ!
いい子だね。サヤカ。
でも、まだだ。まだ足りないよ。
こんな時に友達ならどうすりゃいいか知ってるだろ?
友達なら、友達のこと喜ばせてやらねぇとさ。
>>178 コテツ
「………………なに、それ」
ナツキはコテツの独白を呆然と聞いていました。そうして思い出すのは、あの白い空間に投げ出された直後、その自分のこと。
生贄を受け入れるふりをしながら、先輩を諦める気などひとつもなかった自分のこと。
「……コテツさん、は、しあわせ、に、なれなかったんだ、今も。……それで、も、あきらめないん、だ、ね」
心做しか穏やかに、以前のように話すことが出来ました。
目が眩みます。暗い暗いこの世界にいつしか慣れてしまったナツキにとって、彼は強すぎて、眩すぎて。
ナツキはコテツを改めて見て、仄かに笑いました。
あたしがちゃんと眠らないから、みんなは幸せじゃないんだねっ!そうだね、そうだよねっ!トモダチだったみんなは、あたしがいなくなったら喜んでいたもん!
あははっ!なーんだ、なんで忘れちゃったんだろ?もっとちゃんと勉強しておけばよかったなー
そしたら、みくるちゃんとももっと早くに仲良しになれたのにー。
「ボクは、諦め、ちゃった」
ふふ、と声が漏れます。
コテツを見て、ようやく気づきました。ナツキは、幸せになれませんでした。そう、自分で気づきました。その時点で、ナツキは元の世界も、先輩も、心のうちで幻であると認めたようなものでした。
「……魂の、あなた、に、血は、ない、よ? 魂の、欠片。ボクも、あなた、も。あなた、の、記憶、は、家族、は、あなたが、ボクが、つくりだした、想像の、産物」
楽しそうな笑みが次第に大きくなります。唇が歪に釣り上がります。
「悪魔、を、殴っても、それも、妄想、かもよ? この、不幸せ、も、神様、が、いたって、記憶も、全部。
……あなた、は、何と、たたかってる、の?」
振りほどかれた手を、もう一度。手を伸ばす。私が少しでもここに来て好きだと思った相手。
虚しく、手は空を切る。
視線で2人を追うことしか出来ない。
どうしてこうなってしまったのか。
シャイターンが現れたから?そもそも私達が生贄だったから?魂が分裂してしまったから?悪魔の力を貰った"私"を排除出来なかったから?誰の所為?スズハさんはきちんと本物だと証明してみせた。ナルバディンさんとリッカルドさんはきちんと悪魔の力を持った人を追い出してくれた。
では誰?役立たずだったのは....
そうか...私だ。
のうのうと村人なのに追い出された...わたしの所為か。
>>180 マチャ
"彼女"が近づいてくる事に対し、特に反応はしなかったが、その後に"マチャ"から紡がれる言葉に驚愕し、思わず目を見開く。
「後悔は……君の手を、離してしまった事で……もし、やり直せるなら、君、と…………ナルバディン……?何、を言ってるんだい?"マリア"?」
はは、と乾いた笑いを浮かべ、ぐいと肩を押し、"彼女"の顔を見る。
顔を見た瞬間、頭ぬザザッと霧のようなノイズが走り、"何か"が見えそうになる。
それと同時に俺か、マリア、どちらか殺せという"彼女"の言葉が頭の中で反復される。
自分が"何か大切な事"を忘れているような、そんな背筋が凍り、サーっと頭の血が引くような感覚に、恐怖と戸惑いを覚え、そのまま"彼女"を突き飛ばす。
「君は……君は確かに"マリア"のはずで……!なんで、なんで否定するんだい?"マリア"
ああ、私を困らせようとしているのかい?ははは、やだな……そんな意地悪をしないでおくれよ…………君が"マリア"じゃないなら……君は……一体"誰だ?"」
ここまで言った所で、再び頭にノイズが走り、ずきり、という頭痛がする。
思わず片手で頭を支え、恐怖に染まった目で"彼女"を睨み付ける。
俺が俺の信じたいものを信じて何が悪い!!!!!!!!!! 俺が俺の信じたいものを信じてやらなくてどうする!!!!!!!!!!!!!!!
>>182サヤカ
「センセイ?先生がいるのぉ?
わぁい、ラッキー!ボク、聞きたいことがあるんだ!
今ね、ボク、とっても喉が渇いたんだぁ。どうしたらいいと思う?
お水も何にもないじゃない?」
俺は!!!!!! いつか!!!!!!!!!!!! 全員救ってやる!!!!!!!
俺の為に全員救ってやる!!!!!!!!! 何万年かかっても!!!!!!!!!!!!!!!!!!
そんなふうに思えれば、ナツキもまだ戦えたでしょうか。
気に食わないのか、羨ましいのか、助けて欲しいのか。ナツキ自身にもわからない気持ちを持って、コテツの慟哭を聞きました。
「みものだね。……あと何回で、あなた、も、ボクと一緒に、なるのかな?」
「いつか、あなたに、も、わかる日が、来るよ。ボクと、一緒に、なる日が」
「歪んで、勝った、とき? 歪みを、取り除いて、それでも、救われなかった、とき?」
「ああ…………たのしみだな」
>>190 ジーノ
(じりじりとゆっくり近づいて話しかける)
「ジーノはサ、欲張りなんだよネ。
俺だけで満足できないなんてサ、世界一の欲張りだよネ。
"マチャ"をずっとひとりジメしてきたくせに、サ。
……ジーノ、俺が怖い?」
(面白くてたまらない、という様子でうっすらと残酷な笑みを浮かべる。手に持っていたマフラーをゆるく自分の首に巻き、残り香を愉しむように恍惚とした表情でうろ覚えのジーノの曲を口ずさむ。
「ジーノはサ、ほんとイー匂いだネ……食べてやろうか。」
>>188 キヌサン
(顔だけ振り返って、声のした方へ向く)
「キヌサン。ソンナ顔もできるんだネ。
……美人がサ、苦しむ顔ってサイコーにソソるよネ。
なぁ?ナニしてあげたらもっとイイ顔する?
スズしいキヌサンの顔がサ、恐怖とか怒りとか苦しみとかでサ、歪むとこもっと見たいよネ。
今ジーノがこんなんだからサ、ちょっとつまんないよネ。コタツチャンは俺が見えてるか怪しいし、サヤカサンもアタマトんでるからサ。
……キヌサンが俺と遊んでくれるの?」
(そう言いながらまた、マフラーに顔を埋めてジーノの方に向き直る)
>>198 マチャ
"彼女"のような何かが、近づいてくるのが怖くて、後ろに後ずさるが、足が上手く動かない。
目線を逸らしたら、"彼女"のような何かに引きずり込まれる気がして、目を逸らせぬまま、話を聞く。
「ッ……!
"マリア"は、そんな事を言わない……君は……"マリア"ではない!」
"彼女"は残酷な笑みなど浮かべた事はなかった、食べるだなんて、恐ろしい事を言わない、なら、目の前にいる"こいつ"は誰だ?
また、頭にノイズが走り、ずきり、ずきりと抉るような痛みが走る。
"彼女"だった何かが口ずさむ歌が頭に響き、何か、何かが引きずり出されそうになる。
「その、曲、は……」
ぎっ、と睨み付ける視線が自然と強くなる。
そして、頭の中で見知らぬ男に自分が曲を歌ってあげる所が、幽体離脱をしたかのように第三者視点で見える。
曲を終えた時、その記憶らしきものは霧散し、目の前の"彼女"らしきものと、記憶の男が被る。
>>マチャ
その瞬間、再び頭痛が走り、バーッっと記憶が頭に流れ出し、思わずその場に蹲る。
記憶が、今この瞬間まできた時、視界が開けたような、そんな感覚に襲われ、口からは思わず言葉が溢れる。
「……………私、は……!
マチャ…………?」
ふらりと彷徨う視線をマチャへと向ける。
>>174 マサト
「ちがうよ、マサトくん。マサトくんは……みくるが大事なんじゃなくて、自分が大切なだけ……。マサトくんは、そうやって向こうの世界でも、何度も何度もだれかをきずつけてきたんでしょ。しらなかった、きがつかなかったって。学校にいってないみくるだって、それがいけないことだってわかるのに。……何度も何度も何度も何度も。何度も! なんでもないみたいに!」
皮膚の下の厚い層がこわばり始めたような、冷たくよそよそしい顔で、マサトを突き放す。
自分の気持ちに反比例するように、胸にはとめどない不快感が込みあげてくる。憎しみが再現なく湧く。苦々しい感情が強烈に迫ってくる。
「みくるはぜんぜんたのしくなかったよ。マサトくんとはなしてても、ぜんぜんたのしくなんてなかった」
みくるは頬を緩める。
「くるしいだけだったよ。あんな気休めで、みくるがほんとに笑顔になるわけないのに、マサトくんはひとりだけにこにこしちゃって」
>>197サヤカ
「えぇえ?そう?変わらないよぉ!
あ!でも、サヤカおねぇさんが言うならそうなのかなぁ?
メイヤーズにどれぐらいで大きくなるって聞くの忘れてた!
おねぇさんの世界でも先生ってすごいんだね!そう!飲めるもの!先生に聞いたらわかんないかなぁ?」
>>204 みくる
みくる……
[伸ばしかけた左手は何も掴めず、そのまま力無く垂れた。心の拠り所にしていた、《かわいい》みくるは、どこに行ってしまったのか。いや、みくるは元々こういう子で、自分が勝手に理想の女の子にしてしまっただけなのか。本当は歪んでいた家族を、理想の家族だと思っていたように]
ちがう、ちがう!!
俺は、俺は、そんなはずは……!
本当に、本当にみくるを、マコを、チームのみんなを、思って……!!
[頭を抱えてうずくまる。それでもみくるの顔が見たくて、うずくまったまま彼女を見上げると──みくるは穏やかにも思える笑顔でマサトを見ていた]
……楽しく、なかった?
みくる、苦しかったの?
俺、だけ、にこにこ……して……
[目から光が消え、胸が苦しくなる。頭が考えることを拒否しようとした時、後ろからくすくすという笑い声が聞こえた]
>>203 ジーノ
「おかえり。ジーノ。
……なぁ、楽しかった?夢見てる間、サ。」
(蹲り顔だけ上げるジーノの背中に回り、軽く抱きしめる。そしてそこが定位置だと言いたげに首筋にまた唇を寄せる。)
「……ジーノ。やっぱりジーノは俺を愉しませてくれるよネ。
何でダローネ。こんなに愉しませてくれるのに全然渇きが治まらないなんてサ。
近付けば近付くほど、喉が渇くヨ。」
>>サヤカ
ここにはあんたの身体しかないんだ。他にはなぁんにも無い。
したら、決まってるだろ?
涙、血液、唾液…ま、他にも色々あるだろうけどよ。あんたの体液さ。
皆の幸せのためなら、それぐらい簡単だよな?
>>206 マサト
[マコトはくすくす笑いながらマサトの前に回り込む。瞳には、本当に愉快だという色をたたえていた]
「ああ、面白い!!マサトくん、女の子を見る目はあったんだねえ。あの子、全部わかってるじゃない。マサトくんの悪いところ」
「みくるちゃん、可哀想。ボクみたいに我慢していたんだね。マサトくんの『善意』って、ことわれないもんねえ。それで、本当に……マサトくんって、ひとりで都合のいい解釈をしちゃって、ひとりでにこにこしてるんだもの。ああ、痛々しいなあ、ボクの兄さんは」
「空回り。独りよがり。偽善者。マサトくんって、色んな言葉が当てはまるねえ」
「知ってた?バッテリーの哲也さんも、主将の貢さんも、マサトはウザいって言ってたよ。マサトは人の気持ちを考えないって。無意識に抉ってるんだよなー」
「サヤカちゃんに言ったことも思い出してご覧よ。死にたいとまで思い詰めていた人に、マサトくんの勝手な価値観を押し付けたんだよ。残酷だねえ」
[くすくす、くすくす、と顔をゆがめて笑いながら、マサトの周りをぐるぐる回っている]
ナルバディンに言われてやっと気付く。
自分は今、どんな顔をしていたんだろう。全く想像がつかなかった。
だけど、気付いたところでこの自己嫌悪から解放されることはない。
ははは...もうこれ以上。追い込まないで。じゃないとコワれちゃう。
涙を頬に伝わせ、消え入りそうな笑顔でナルバディンに答える。
あれ?血、出ないんだ。ふーん?やっぱ、魂だけだからなのかなー?これじゃ、ライトを満たしてあげられないな、幸せにできないな。
どうしよう、どうすればいいのかな?ねぇ、せんせい、あたしきらわれたくないよ、やっとみんなとひとつになれたのに、みんなのなかにいれてもらえるのに。
どうしよう、どうしよう、いやだ、やだよ!
頑張っても必要とされなかったのに、何も出来ないなら何のためにここにいるの?ああ、やっぱり、死ねばいいのかな?そしたら、あたしを見て幸せになれる?あたしも何も見なくて済むから幸せになれる。
あはっ、あはははっ!
>>206 マサト
「……ねえ、マサトくん」
弟のまぼろしをすり抜けて、うずくまるマサトの目の前に自分もぺたんと腰をおろす。
「ねえ、こっちみてよ。ぜんぶうけとめてよ。みくるがくるしかった気持ちぜんぶ、みないふりしないでよ。マサトくんはみくるのお姉ちゃんとちがって、ぬいぐるみじゃない、ほんとの“お兄ちゃん”なんでしょ」
その場に両手をついて、顔を覗き込む。
さらり、と桃色の髪が肩からこぼれた。
「そうだよ。たのしくなかった。くるしかった。……みくるがほんとに、あんな絵でよろこんだとおもう? マサトくんは、“みくるといるのがたのしい”んじゃなくて、“自分より下の人間といると安心できるのがたのしい”んだよ。男のひとって、ほんとにばかな女の子がすきなんだね。
……男のひとって、下品だよね。ナルバディンさんとか、みくるのパパもそうだけど。もしかしてマサトくんも、みくるが女の子だからやさしくしたの。あの“握手”も、うそ?」
返事も待たず、軽蔑した表情で吐き捨てる。
「さいてい」
[ここから先は誰も知らない物語]
一生、幸せにする
"コレット"もこの子も、俺の全てをかけて
世界一幸せにし続けると誓う
[コツンと額を合わせて幸せと覚悟を噛みしめるように囁いた]
>>209クロエ
「わぁ!確かに!それなら飲めるね!
先生ってすごいや!ほんとうに何でも教えてくれるんだぁ」
ライトなら肯定するだろう、ライトなら明るく応えるだろう。
ライトの言葉を反芻するばかりを気にかける男は、言葉の意味など深く考えません。
>>214サヤカ
「あれ?サヤカおねぇさん、血がでないの?
血が出ないなら他でもいいよぉ。
汗でも、涙でも、唾液でも、鼻水でも、胃液でも、尿でも、なんでも。
ねぇ、喉が渇いたんだ。
ほら、まだまだあるだろう?サヤカおねぇさんがくれないとボク困っちゃうよ。
喉が渇いたんだ。はやくぅ!」
>>213 キヌサン
(蹲って動けないジーノからゆらりと離れて近づいて来る。
……ああ、エモノはここにも。)
「壊れちゃえばイーヨ。
みんなと同じようなコトするのがマトモならサ、壊れてマトモになっちゃえばイーヨ。
キヌサンも俺を愉しませてくれるんだ?
俺はジーノに言ったよネ。乾季と雨季で違うコと遊ぶってサ。
ココでもそれやってイーんだネ。
サスガ全員俺、ってヤツだヨ。俺に必要なモノはまた別の俺がちゃんと持ってきてる。
……なぁ?遊ぼうぜ?
オマエも俺を潤してみろヨ。」
(そう言って顔を寄せると、キヌの頬を流れる涙をゆっくり舐め上げた。)
>>216 みくる
[畳み掛けるような弟の罵倒にうずくまったまま震えていたら、目の前にみくるが来てしゃがんだ気配がした。「お兄ちゃん」と呼ばれて、微かに嬉しいと思ったが、それを望まない自分もいた。みくるに求めていたのは、妹、ではなくて──後ろめたさに、顔を上げられないでいると、みくるはマサトの顔を覗き込む]
あっ……みくる……
[自分を見つめる大きな目は、それでもやっぱり、可愛い、と思った。独りよがりでも、傷つけても、やっぱり、今まで会ったどの女の子より可愛かった]
[そう思った瞬間のこと。魂だから、涙なんて出ないはずなのに。きっと今、自分はぽろぽろと泣いているんだろうと思った。ただただ悲しくて涙を流すこと自体が、もうつらかった]
──ごめん、握手、ウソなんだ。
本当は、本当はね、ただ、
ただ、みくると手を繋いでみたかっただけなんだ。
ううん、違う、違うよ。これが幸せなんだ。
苦しいのも、悲しいのも、ぜんぶぜんぶ幸せなんだ。じゃないとおかしいもん、みんながいるのに幸せじゃないわけないもん、そうだ、そうだね。あはっ。
[目の前の絶望にどす黒い感情が芽生え始める]
………いいえ、いいえ
そんなの許さないわ…
[ゆらり、ゆらりと立ち上がり
下腹部の痛みを無視して2人へ歩み寄る
さっきまで何も持っていなかった手には
何故か鉈が握られていた]
ああ、これはあの時ね
そうよ、そうだわ、私が主人公だもの
私がヒロインだもの
この世界は私のものだもの
[ぶつぶつと呟いて一人納得すると、"あの時"を忠実に再現するように動き始めた]
[かつての記憶
ライアンを手に入れるための計画のメインディッシュ]
ライアンは私もので、私はライアンのものよ
それを邪魔する奴は
殺さなくちゃ
安心してね
私が貴女になってあげる
私がライアンを幸せにしてあげる
今日から私がコレットよ
[両手で鉈をしっかり握ると、大きく振りかぶり遠心力のまま振り下ろす
同じ顔を持つ女の頭へ振り下ろされたそれは
容易く彼女の頭をかち割った]
お前がいる限りライアンは私を見ない
ああ、なんて邪魔なの
でもこれで終わり
コレットという存在は私になる
お前はこの世界になかった存在
お前を知る人間はもうどこにもいなくなる
[もう聞こえていないのも気にせず一人で話しながら鉈を振り下ろし続ける]
私が、コレットよ
そう、そうよ
私は、コレット
[元の顔はわからない程に赤く染まり
骨は砕かれ
手足がどこかへ飛び
血肉が飛び散り
内臓が潰れるまで
何度も何度もその手を振り下ろした]
コレットは、私、私が、コレット、私だけが、コレット、コレッ、コレット、コレットよ、コレット、私が、私は、コレット、コレット、コレットコレットコレットコレットコレットあはははははははははは、ははははははあははははははあははははははははははあはははははは、はははははははははは、あははははははははははははははははあははははははあははははははははははあははははははははははははははあははあはははははは、ははははあはははははは
[そうして私は
コレットになった]
パンを食べながら、彼は話す。表情は変わらず、思い出というより記録を辿るような、そんな風に話す。
「名前は思い出せないんだけどね。ガキだったし。えー?どんな人?そう言われたら自信ないけど、稲穂みたいな三つ編みと、そばかすがチャームポイントで、前歯が抜けてたなぁ。あとは、あいつの家の畑の林檎盗んでバレて怒られてた」
心音が上がる。幼少期のわたし。彼が覚えている、記憶の中のわたしはどんな風に映っていたんだろう。ただの好奇心だったのに、ルーシーでいるわたしが、ウェンディに戻りたがっている。故郷が恋しい気持ちから来ていることはわかっていた。
家族と会えないわたしに、ウェンディを覚えている人に、わたしの話が聞きたかった。
「まあ、言われてみれば似てないかも。お前はダークブランドだし、ソバカスもない。何で似てるなんて思ったんだろうな?悪かったな。もう聞かない、嫉妬しないでくれよ」
嗚呼、間違っていないのに。この髪は染め上げてソバカスも化粧をしているだけ。ウェンディはわたしだと、遠い日の記憶はわたしだと、言えたらどれだけ、どれだけ。
バレないよう、唇を噛み締める。口を開きかけるも、愛する家族が脳裏に浮かぶ。わたしが今、正体を明かすと、姉妹は、両親は──
「戦争が終わったら、会いに行ってみたら?勝てば会えるでしょ。わたしも会いたいし。その“か他人の空似さん”にさ」
なんて、思ってもないことを口にした。
戦争の勝敗に関わらず、わたしは終われば祖国へ帰る。デタラメな出生も、名前も、身分も消える。彼との約束さえ果たせない。
そんなわたしの、唯一の足掻き。ねえ、終わったら会いに来て。あの林檎畑で待ってるから。
─
ライアンが私以外のものになるなんて、絶対許さない
…そうだわ、そうよ、奪われるくらいなら
絶対奪われないようにしてしまえばいいのよ
[いいことを閃いたように楽しそうに笑うと
どこからか壊れた人形のように動かなくなったライアンへも
"コレット"にしたように鉈を振り下ろす]
…あら?
そういえば、こんな記憶あったかしら?
こんな展開の世界、私の世界じゃないわ
ううん?まぁいいか
愛しているわ、ライアン
私だけのライアン
絶対、絶対に、離さないわ
[倒れたライアンの頭を両手で支え、その唇に噛み付いた]
これで、もう、私以外へキスできないわ、ふふ
[肩へ鉈を振り下ろし、腕を切断する
それを宝物のように抱き締めて、指を噛みちぎる]
貴方が抱き締めるのも、抱き締められるのも、私だけよ
[何度か鉈を振り下ろし、足を切断する]
誰の元にも行かせないわ
ずっと、ずぅっと、側にいてね
[力の限り鉈を振り下ろし、頭を切断する]
ふふ、もう、よそ見なんて、しちゃダメよ
ああ、目も、取っておきましよ
[瞼へ指を押し込みブツッという音と共に眼球を取り出す]
赤ちゃん、奪われちゃって、残念だわ
でも、また、作ればいいわよね
[性器を切断し、先ほど流れてしまった場所へ挿入する]
あと、私以外に、ドキドキしちゃ、ダメよ
[胸に鉈を振り下ろし、傷口へ手を突っ込んで割り開く
肺に隠れた心臓を取り出す
グチャグチャと音を立てて咀嚼し、喉を鳴らした]
んふ、あはははっ
ぜんぶ、ぜぇんぶ、私のものよ
ねぇ?ライアン
愛してるわ
消えた彼女を呆然と見つめていると、マチャは話を続けているようだ。
喉が渇く、という彼の言葉にぞくり、と悪寒が走り、嫌な予感がした。
もしや、とその嫌な予感について語り出す。
「…………マチャ、私達側ではない陣営に、血人……吸血鬼がいたね
君は……その、血が飲みたいのか?」
違う、という返事が聞きたくて、そんな事を尋ねる。
緊張と恐怖で心臓が早鐘のように鳴る。
>>233 キヌサン
「ダンラン、ダンランネ!!!
俺は家族だけは多いけどサ、全員揃うことはショーガイ1度もなかったネ!親父いっぱいいたしネ!!
……独りの時間があればサ。ぞくぞくするほど誰かと一緒に過ごす時間がキワ立つと思わない?
この独りはいつ終わるんだろう?いつ終わるんだろう??ってキョーフに消えそうになった時に誰かが現れたらサ、サイコーじゃない?
で、一緒にいる間は今度いついなくなるんだろうって思ったらサ、もう1秒1秒が愛おしくてタマラないだろ。
……そんな時間をアゲるよキヌサン。
毎秒イイ顔してヨ。
フシギだネ。今ほんの少し渇きが治まった気がしたヨ。
もっと、もっと潤してヨ。
いくらでも遊んであげるヨ。
……俺が遊びたいときにな。
>>225 マサト
「……なんで……」
みるみる怒りが眉の辺りに漂い、瞼の外へ出そうになるほど目を瞠った。そして、上瞼がひくりと引き攣った瞬間、みくるはその眸をきっと細めた。
「泣かないでよ……。なんで、ナツキくんもマサトくんも、そうやって泣くの。男のくせに、泣かないでよ!」
マサトが泣く姿は、他の誰が泣く姿よりも不快だった。
涙は彼の瞼を焼いて、目の縁から際限なく染み出てくる。はらはらとこぼれる水の粒は、こぼれ切る前に赤黒い空間に紛れて消えていってしまう。
「そっか。やっぱり、うそだったんだ。……きもちわるい。ほんとにきもちわるい」
マサトの言葉を拒むように、みくるはいつか彼の手を握った利き手を反対の手で掻き毟る。爪をたてて、がりがりと。
そして、戦争は終わりわたしはウェンディに戻った。ただ、髪色だけは戻さなかった。なんとなく、ルーシーは終わったけれど、彼が見つけてくれるといいな、なんて未練があったかもしれない。化粧なんてしない、ソバカスだらけの顔は安心感がある。
ただの田舎娘へと戻った。愛する家族とともに、質素な生活、素朴な暮らし。
そんな日々の中、目を閉じれば思い出す。焼け爛れた戦場、鼻腔に残る硝煙の匂い。下衆な酒場、秩序も何もない世界。もう終わったのに、彼の人の笑顔もこびりついて離れない。
いつか彼がわたしの言葉を覚えていて、またこの林檎畑で会えるなら。わたしは顔を合わせてこう言うのよ。「どちら様ですか」って。しばらく会っていない事を─今度は、ウェンディを演じるの。
本当は何でも知ってるのに。好きな食べ物、嫌いなこと、得意な事、眠る時間から息遣い、ホクロの数。それらを全て、全て忘れさって。初めてかのように振る舞うの。
そうしてやっと、わたしは幸せになれる。人並みの幸せを、演じて手に入れる。
>>241
「ジーノ、おかしなコト言うんだネ。
血?血が飲みたいなんてソーゾーもしなかったヨ。
ただ喉が渇いたなぁって思っただけなのにサ。
……でもちょっとイイ考えだって思ったヨ。
飲めそうなもの、ここにナイんだよネ。
ジーノの首筋がサ、ずーっと、さっきから、イイ匂いがするんだヨ。
(頸動脈をするっと指で撫でる)
……手首。手首も貸してヨ。
(ジーノの手を取ると、手首を甘噛みして見せる)
……ココもサ、イイ匂いするヨ。
ああでも、首がいい。
ジーノの首は本当にイイ匂いがするヨ。
余計に喉が渇くのに、近付きたくてタマラないヨ……
イイ匂いがしなくなったらイヤだから傷つけたりしないヨ。ずっとずっと、ジーノは俺と一緒だヨ?
だって、キョーメイし続けるんだよ。俺達は。
俺がお前の見たいもの、欲しいものなんだよ。
幻に夢なんて見るな。
俺を独占して見せろ。これまでみたいに。
あはっ、独りじゃないんだよね。居てくれるんだよね。ずっと。一緒に。あはははっ
嬉しい?愛おしい?愉しい?
ううん、好き。
頬を緩ませ、にっこりと笑みを浮かべているが、目の奥は底が知れない程の黒。うっとりとナルバディンの背中を眺めている。その瞳に何がどう映っているのかは神...いや、悪魔しかわからない。
>>マサト
「……。やっぱり、マサトくんは自分のことばっかりだね。もう、いいよ。……どっかいって。……どうせもう少ししたら全部なくなっちゃうんだから、それまでみくるのまえに顔をださないでよ。これ以上、みくるをいやなきもちにさせないで」
>>243 みくる
[ああ、だめだ。このままじゃ、みくるが悪者みたいになる。そんなふうにしてはダメだ──そう思って涙をこぶしで拭うけれど、やっぱり際限なく零れてきてしまって、もうどうしようもなかった]
ごめん……ごめんな、みくる……
止めらんなくて、ごめん……ごめん
[どうしようも出来ず謝るしかできないマサトの耳に、『きもちわるい』という言葉が突き刺さる。胸の奥を吐き出すように告げた本音は、相手にとってはただの下心に過ぎない。それを改めて突き付けられて、涙を拭う手が止まった]
──ごめん、純粋なみくるを、裏切ったよね
ああ、そんな風に、みくるの手を傷つけないで……お願いだから、みくるは自分の手を大事にして。
みくるはきっと気持ち悪いって思うだろうけど。けど、みくるの手はすごく、安心したよ
俺が、悪いんだ。俺が、そうなるべきなんだ。
こんな、何も守れない、左手────
>>245 マチャ
彼が言う事を全部、黙って聞いていた。
否、彼が話している間は口が動かなかった。
先程、自分から離れた際に、キヌに何かを言っていたのも、しっかりと見てしまった。
そのせいで、キヌが壊れていくのも、だ。
(>>247)
彼女の愛らしい表情は見る影もなく、ただただマチャの背中をを見つめるその姿に嫌悪感すら覚え、目を逸らす。
もう、自分と話してくれていたあの頃には戻れないと思うと、何かがこみ上げてきそうで、ぎり、と奥歯で歯ぎしりをしてしまう。
マチャが腕をとろうが、首にすりついてこようがもうどうでもいい。
彼に身を任せていれば、きっとこれ以上悪い事にはならない、と諦めに近い感情がじわじわと心を蝕む。
絶望と恐怖、怠惰でぐちゃぐちゃになった心と、それを映し出すかのような目で、そっと振り返り、彼を見つめる。
>>マチャ
「…………うん、そうだね
私と君は共鳴者だ
はは、血人や吸血鬼だなんて……バカバカしい
疑ってごめんよ、マチャ
ああ、迷惑を掛けたね……マリアの事はもういいんだ
あれは過去の産物、今は目の前にいる君が大切だ
そうだ、君に歌った曲があるだろう
あの曲を君に捧げると言おうと思っていたのだけど……どうかな?」
マリアの事を思うと、ずきり、ずきりと心が痛み、心做しか話す速度が口に出す事を拒むように遅くなる。
だが、壊れきってしまったリッカルドは、最後までナルバディンの都合の良い事ばかり話し、その表情はいつもの様に穏やかに微笑んでいる。
────濁った目を除いては、だが。
>>250 マサト
[左手を見つめるマサトに、マコトは笑顔で近寄り、耳元にささやく]
要らないね、要らないよ。
甲子園優勝しても、その手で何人の、何十人の、野球少年たちの夢を奪ってきたんだろう!
ああ、ボクの兄さんの左手は、残酷だね。
あはっ、でもマサトくんはそんなことはどーでもいいもんね。
好きな子に気持ち悪いって言われちゃったからだもんね。
ほーんと、下心しかなくて、気持ち悪いね。
要らないなら、消す方法教えてあげる。
ここは魂の世界だから。消えたところを強くイメージすればいいんだよ。要らないって願えばいいんだよ。
ふふ、ふふふふ、手伝ってあげる。
兄さんは、想像力が足りないからね。難しいよね。
[そう言って、マコトはマサトの左の肩をグッと押さえる]
ほら、ボクが『取って』あげるから。
─
茜色の空 こうべを垂れる稲穂
黄金の海のような畑の中、林檎畑を背に収穫をする老婆の姿。
齢100はありそうな老婆がひとり、細々と生活している。腰は曲がり、手は豆でゴツゴツしているものの、年輪のようにシワは深く、刻まれている。
ここで1人、誰に何を言われようと、この場所から住居を移さない彼女は、まるで誰かを待っているようだった。
彼と生活し、子を儲け林檎畑で生計を立て、静かに暮らしていた。子宝に恵まれ、孫娘の顔を見れて、ルーシーで会ったことは、彼が死ぬまで明かさずに。老婆が死ぬ間際、愛する娘孫に看取られ人生の旅を終える。
そんな記憶さえも、思い出さえ、粉々に。
>>250 マコト
[マコトはマサトの左肩に手をかける。普段ならば、絶対誰にも触らせない大切な大切な肩。マサトの野球の全て。それでも今は、弟が触ってくれるだけで嬉しいと思った]
ああ……マコ、手伝ってくれるの
うん……こんな気持ち悪い手、要らないんだ。
今から、俺の左手は、マコに取られるんだね。痛いかな
マサトが一人でぶつぶつと喋っています。
たくさん喋って、叫んだせいで、何をする気にもなれません。
ぼんやりと虚ろな目で、みくるは彼を眺めています。
─
100年。
決して短くはない年月。
その年月を彼女は幸せもなく、必要最低限の暮らしを営んでいた。
何もない事が幸せ。そんなことが、世界一の幸せだったのかもしれない。誰かと生を分かち合い、歩んだ記憶は、夢の物語のようで。そんな人生はあり得ないと、今のウェンディはため息をつく。
一体、彼女は何が幸せだったのだろう。
>>258 マコト
[マコトの言った通り、痛くはなかった。気づいた時には、もう左腕があったところに、なんの感覚も無くなっていた。マサトの左肩から下は消えている。魂が拒否したから、きっと他のみんなの目にも、マサトの左手はもう見えないだろう]
──痛くなかった。
ありがとう、マコ。
[それだけ言って、力尽きたように、仰向けに倒れた。ずっと苦労を共にしてきた左腕は、もうない。片腕では野球もできない。ずっと捧げてきたものを、自分の意思で手放した]
……これで、いいんだ。
もう……
要らないね、俺も
>>252
「……そう。そう。
あの曲は俺のだヨ。世界が欲しがったジーノの曲、俺だけのにしてくれるんだネ。
嬉しいヨ、ジーノ。
帰ってきてくれてありがとう、だヨ。
これからまた"リアル"を作っていけばイーヨ。
俺タチは楽しくやっていけるヨ。
(濁るジーノの目を見て気にもせずに言い放つ。)
そうそう、俺、最初に言ったジャン。
「俺とオマエがいればダイジョーブ!」ってサ。
…みくるちゃんや。
婆さ、絵のお礼を言ってなかったねぇ。
ありがとう。大事にするよて。
孫がいたら、みくるちゃんみたいな、真っ直ぐな目をした子だったんだろうねぇ。
>>264 マチャ
「ふふ、喜んでもらえたのなら良かったよ
私も、あの曲は君だけのものだと思っていたよ
だから……魂を修復されていた時も、口に出したりはしなかったさ
うん、ただいま、マチャ
……!
そうだ……そうだったね、うん
……ああ、そういえば君の喉の乾きの事だけど……こうすればいいんじゃないかな」
ナルバディンの首元の服をぐい、と引き、口づけをする。
彼が抵抗するよりも早く舌をねじ込み、自分の唾液を飲み込ませるように舌を動かした。
ごくん、とナルバディンが嚥下したのを確認すると、名残惜しそうに口を離す。
「……血液は流石に抵抗があるだろうし、君は私が傷つくのが嫌だろうから……こうすれば、効率も良いし、水分に近い様なものだから、いいんじゃないかな」
ドロドロとした感情が流れてきます。感じたことのない恐怖。足がすくみ、誰かに助けを求めたくも求められない。目の前にいる彼から、目を離せません。
“助けて”
そう目で訴えるも、彼は笑顔で微笑むだけ。ニコニコと、感情のない笑みを向けています。
これも彼の言うさせたいことだったの?なんてラビットは考えますが、催眠のかかったように、徐々に、徐々に。その笑顔さえ、愛くるしく思えてくるでしょう。
「──っ!」
だめ。
そう言おうとした時には、既になにもかもが手遅れでした。
みくるの大きな瞳には、変わらず彼の背中が映っています。そう、彼の左半身を除いては。さきほどまでそこにあったはずの左肩から下は、みくるが瞬きをしたのと同時になにもなくなっていました。彼の命ともいえるその場所は、消えてなくなっていました。
「あ………あ………」
周囲のざわめきが、ボリュームのつまみを回すようにして、ふたたび戻ってきます。
この空間にいた誰もが、希望を求め、神様の言う事を守り、皆を救ったのに。救ったはずなのに、どうして。
そんな風な思考さえ、露のように消えていく。
ラビットはもう、何が自分の考えていることなのかもわからなくなってしまいましたが、たったひとつ、たったひとつだけわかることがありました。
これからまた、ラビットは消え、再び戻り、また殺される。メビウスの輪のように、自分が弄ばれることは、ハッキリと理解してしまったのです。
それでも、ラビットは。
「なぜ、人を好きになると……こんなにも、苦しいのでしょう…」
この目の前の化け物が彼だと言い聞かせた訳でもないし、そう思おうと努力したわけでもない。
彼を愛していた記憶は嘘ではなかった。
彼に対する罪を、ラビットは受け入れることを選びました。これが恋だと、愛だと、胸に刻めるだけ刻み、罰を受けようと、思いました。
[目を閉じていた。自分のせいで歪む顔を見たくなかった。片手では耳は塞ぎ切れなかったので、全ての音を聞き流すことにした。これ以上否定されたくなかった]
[目を閉じて浮かぶ懐かしい顔は、全て苦しげに、恨めしげに歪む顔に書き換えられた]
[目を閉じたところで、マサトに安寧はなかった]
[仕方ないので、目をゆっくり開いた。視界の端に、桃色の長い髪が見えた気がした。しかし眼球をそちらの方へ向けることはせず、ただ目の前の空間をぼうっと見つめ続けていた]
──好きになって、ごめん。
好きだった。
[ぽつりとそれだけ呟いて、体の力を抜いた]
「なん……」
みくるは、徐々に、ゆっくりと。
少しずつ、少しずつ、自分がしてしまったことを理解しました。
「ちが……いや、みくる……そんなこと、思って」
ゆるゆるとかぶりを振り、一歩、また一歩後退りながら、みくるはそれを拒もうとします。
しかしこれも悪魔の仕業か、否定しようとすればするほど、みくるは彼への仕打ちをとても明瞭に意識させられるのです。
絶望に包まれ理性を失っていた心から、黒く深い霧がさっとひいていきました。自分を守っていた薄くて脆い膜は、簡単に破れてしまいます。
自分のことばかりだったのは、みくるのほうではありませんか。
自分がこれ以上傷つきたくなくて、こうなってしまった責任から逃れたくて仕方なくて、その場の感情に任せて大好きな人を傷つけた。
他人より自分がいちばん大事だったのは、他の誰でもない──みくるでした。
身体中の水分という水分が、じりじりと干上がっていくような感覚が押し寄せてきました。焦りと絶望感が、肌の下を広がってきます。
「………っ」
脳裏に、今までの思い出が明滅します。
みくるがつくった世界ではなく、ここへきてからの記憶です。
“きっと大丈夫なんて嘘だった”──でも、あの言葉に救われたのは本当だった。
“自分より弱い人間の傍で安心したいだけ”──ううん、マサトくんはそんなこと思ったりしないって分かってる。
“あんな絵で”──あのやりとりがなかったら、きっとみくるはもっと頑張れなかった。
“気持ち悪い”──本当は、すごくどきどきした。
すべてが手遅れ、なにもかもが手遅れです。
みくるの目からぽろぽろと大きな雨粒が降ってきました。汲んでも尽きない井戸のように、涙がはらはらと崩れて、光の糸を曳きながら流れます。
いつだって独りで全部解決した。
敷かれたレールを、作られた台車で、決められたスピードで進んでいた。
母を殺され、王の血筋を隠され、普通の生活を奪われた。全て父の、王の都合のいいように管理されていたペット。それが僕だ。
そして、その全てを壊して王になった。
だけどその先には何も無かった。
残ったのは狂った民だけだった。
しかし、支配機構として君臨する、という人生のゴールにたどり着いた僕はそこに幸せを感じてしまった。
なにを失ったかも振り返らずに。
管理されていた僕を救った、と思ってる親友もいた。
僕に知識と常識を与えた、という老婆もいた。
僕に愛と恋の違いを教えた、という娼婦もいた。
あなたのためなら死んでもいいといった、恋人もいた。
君と一緒なら幸せな国が作れるといった、婚約者もいた。
お父さん大好き、といった息子もいた。
そして僕の国にはその誰も残らなかった。
もう誰も失いたくない。
ここで声を交わした人達とは僅かな繋がりだ。しかし、何も残らなかった僕には大切な繋がりだ。
誰も傷つけない。血管の浮きでる腕を押さえ、長く伸びた牙で決意を噛み締める。
ただ壊れゆく皆を血走った目で追っている。
泣き、怒り、嘆き、崩れ、壊れ、
**ああ、楽しそうだ。
帰らないと、帰らないと。
血の誘惑を振り払い、覚束無い足で立ち上がる。
気づいている。意識が朦朧としていることにも、何かにそれを奪われそうなことも。
気を抜いたら、諦めたら。
その時、視界の端で何かが弾けた。
迸る血の匂いに恍惚を覚え、触れる血に温もりも感じ、舐めた血に命を感じる。
ブレーキをかける。心の奥の何かを塞き止める。頼む、出てくるな、と。
だが無常にもそれは慈悲や枷を一つ一つ踏み潰しながら確実に僕の「表」に迫ってくる。
このままだと僕はここらの餌を一人残らず「食べてしまうだろう」
血が、血が、血が。
垂れる血に、溢れる血に、吹き出す血に、欲が焚き付けれる。
吸いたい。ダメだ。吸いたい。ダメだ。吸いたい。吸いたい。ダメだ。吸いたい。吸いたい。吸いたい。吸いたい。スイタイ、スイタイ、スイタイスイタイスイタイ。
いや、
仲間だった人たちだ。格闘家は襲ってしまったが同じ過ちは繰り返せない。
いや、
まだ、仲間か。
また独りよがりで周りに迷惑をかける所だった。
だったら、
少しぐらい分けてくれてもいいよね?
ふらりふらり、と僕は誰かへ向かって向かっていく。そして立ち止まった。
顔は分からない、紅く塗りつぶされている。
少女か青年か美人か老婆か。関係ない。
「久しぶりだね、元気かい?」
自分の声に驚いた。砂漠の風のように掠れた声は喉の乾きを酷く訴えていた。
相手の表情はもちろんわからない。なにか返事をしてくれているのだろうか?聞こえない。きっと恋してる時より強いだろう心臓の音だけが耳に、脳に響く。
倒れている彼?彼女?に歩み寄って腰を屈める。目線は首筋に釘付けにされて離すことができない。
「今から君を救ってあげる。これ以上、辛い思いをしなくていいように」
伸ばした手は頬に触れ、顎をつたい、首をさすり、肩に置かれる。
少しだけだから、痛くしないからね。
甘い匂いが鼻腔をくすぐる。恐がらせないようにゆっくり顔を近づけた。そしてそっと口を開き、透き通るような肌に牙を。
突き立てた。
気がつくと僕は自分の細い腕に血を求めていた。
先程まで見ていたのは渇望するあまりに見えていた幻影なのだろうか。心に残った残滓が何かを守るために働いた体の防衛反応なのか。
そんなことはどうでもよかった。
おいしい。
ドクドク、ドクドクと、身体に血が流れてくる。喉は潤い、快感に溺れる。牙が離れない。
なんて愚かな永久機関だろう。
身体の血が沸騰していくのを感じる、脳が揺れる。皮膚が溶けて、左手の腕の肉の先から見え隠れするか細い骨はどうやってこの身体を支えていたのだろうか。臓器が腸が気力もなくだらりと現れる、ここに来てから食事も何もしていないため体液のみを撒き散らす。しかし、不老不死とか自己再生と便利な身体だ。
巡り巡る血は吸血欲を加速度的に増やしていく。快感が痛覚を遮り、追い越す。
誰も傷つけない済んだ。最期に考えたのそんな事だっただろうか。思考をやめる。
快感を得るために、決して収まることのない渇きを潤すために、ただ血を吸い、血を吸う。
破壊と再生を繰り返す身体で何度も何度も絶頂を迎える。
ああ、幸せだ。
[ガクンッと、何かの支えを失ったかのようにシグレは目を覚ました。ぼんやりとする頭のまま、何となく周りを見れば、見知った面々がそこにいる。その中には、仲間として皆を救おうとした彼女達の姿もあった。
──あぁ、なんだ、終わってしまったのか。]
結局、皆を元の世界に戻すことはできなかったのね……
[甘い囁き、甘い誘惑、甘い夢。
そのどれもが、結局は神様の力には勝てなかったのだと知る。力なく、へなへなとその場に座り込めば、生贄として役目を終える前に、最期に、彼と過ごした日々を思い出したくて、目を閉じた。]
[ここに来るきっかけになったのは、彼の言葉。
"僕、今、世界で一番幸せだよ。"
そう、私だって、ねぇ、░▓▒█▓░]
………あれ?
[まるでモヤが掛かったかのように、何も思い出せない。ポッカリと記憶に穴が空いたような感覚。私は確かにそこに居て、私は確かに存在していたはずなのに。
そんなことはないと、モヤを取っ払う用にぶんぶんと頭を左右に振った。それでも、晴れない。記憶が覚束無い。]
暗澹とした世界を、どこまでも無の空間を、ナツキは歩きます。
家族に囲まれているみくるとマサトがいました。おじいさんと手を繋ぐウェンディが見えました。ライトの電球が、チカチカと白い頬に青い影を落とすのを見ました。花嫁すがたの人も、妊娠して居るような人も。––––そうして、みんながみんな自身の望む幸せを手に入れたように、ナツキには見えます。
けれど、その一方でナツキの彼らは、絶望に嘆いていました。何が不満なのか、ナツキには分かりません。ただ、みんな、みんな、ナツキと同じです。きっと、諦めてしまったのです。何もかも。
そう、ナツキは思いました。
[そんな時、声が聞こえた。
聞き覚えのある声だった。
私達を虜にした声、私達に甘い夢を魅せていた声、私達を誘惑した甘い囁き──]
………なにを、言っているの……?
[あまりのことに、頭の理解が追いつかない。
ここでずっと一緒?生贄のまま?この世界にずっと?どういうこと?神様はどこに行ったの?
グルグルと、思考が回る。悪魔の言葉を上手く飲み込めない。]
どういうこと……神様は…あの人は……
[悪魔の声が、嫌でも頭の中に響いてくる。
神様はもういない、悪魔のおもちゃ、ここにいられてしあわせ、みんなといられてしあわせ、生贄として食べられなくて
しあわせ…………?]
ちがう、ちがうちがうちがう!!
こんなの、幸せなんかじゃない!!!
私は……私は……!!!!
[私は…………?]
ちがうちがうちがうちがうちがうちがうちがうちがう
ちがうちがうちがうちがうちがう彼ち
がうちがうちがうちがうちがうちとが
うちがうちがうちがうちがうちがはう
前 私 は …誰?
る と 何 ?
来 ど 彼 を
ちがにうちがうちこがはちがうちがうし
ここはどこ? に ? て
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け 何 け
結婚ってなに? ?になてっせ幸
わたしはどこにいたんだっけわたしはここにくるまえはなにをしていたんだっけわたしはしあわせだったはずなのになにもわからないのはなぜだっけどうしてここにいるんだっけかみさまってなんだっけしあわせってなんだっけうたってなんだっけここってどこだっけあくまってなんだっけわたしは
私は………誰?
?何………は私
ちがうちがうちがうちがうちがうちがうちがうちがうちがうちがうちがうちがうちがうちがうちがうちがうちがうちがう
[ドサッと、その場に倒れ込む。
ぼんやりと見える空は、何度も何度も色を変える。渦巻く空、歪な空間、血の匂い、どこか遠くで女の悲鳴が聞こえた。
でも今は、そんなこと、全てどうでもいい。]
……はは………あはは………あはははははは
はははははははははははははははははは
[狂ったように笑い出す。何も可笑しくはないのに、苦しいはずなのに、狂ったように、止められない。止まらない。
私と彼を結んだものは、一体なんだったのだろうか。そもそも彼とは誰の事なのか。とても大切な人だった気がするだけで、その正体が何なのか、今はもう、わからない。
悪魔の言う"しあわせ"がこれの事なのだとすれば、きっと、今まで感じていたモノは全て瞞しなのだろう。
だって、全ては、神様のいうとおり。
神様の指し示す方向は、間違ってなどいない。
貴方だって、小さい頃に覚えたでしょう?
天の神様のいうとおり。って。]
かみさま……かみさま…シャイターンさま…
これが、しあわせ………なのね。
[ずっと求めていたしあわせは、ここにあったのだ。
ふにゃり、柔らかい笑みを浮かべると、自ら輪廻の中に入っていく。終わらない時間、しあわせな時間。
そうだ、ここにいれば、ベータとデルタとずっと一緒に居られる。
ねぇ、しあわせでしょう?私達、姉妹みたいだって言ってたものね。同じ世界に居られればいいって、そうでしょう?
狂ってしまった空間に、虚しく響く言葉を投げかける。彼女達に届いたかどうかは定かではないけれど、少しだけ、救われた気がした。だから、もういい。もういいんだよ。]
……私達、ずっと一緒だね。
[赤い眼から、涙が一筋こぼれ落ちた。]*
[ここは、しあわせの空間。
みながしあわせになれる場所。
神様の世界。
大丈夫よ、ここにいれば。
不幸せになんて、ならないんだから。]
[しあわせって、なんだろう。
しあわせのカタチって、どれがセイカイなんだろうね。
わからない。
でも、わからないなりに、ワタシはワタシなりのコタエをもっているはずなんだ。
だから、きっと、ワタシはしあわせ。
このシュンカン、そうオモエタコトは、
きっとマチガイじゃないとオモウんだ。]**
「……ふふ」
次から次へと、透明の雫がこぼれました。どうしてでしょうか。
ナツキには分かりません。
ただ、先輩にもう会えないのだと諦めて、古木の匂いも遠のいて、ようやくある意味での安寧を、暗闇の底のお終いを見つけようとしていました。
だからきっと、この雫は、ナツキの妄想だった先輩への、最後の手向けなのだと、気づきます。ああ、それでも、なんでもいいから最後に先輩を感じたかった。そう、ナツキは思って。
✖✖✖ 那月 が見物しにやってきました。
「またそんな話し方して。無駄だよ。だって君は一度破ったじゃない。本当は自分だってわかっているくせに」
声音はごく冷たく、目の前のその人物を責める意思を隠す様子もありません。
黙りこくったソレをみて、彼はあざけるように笑いました。
「ねえ、『ナツキ』は先輩を諦めたりなんてしないよ。そうだろ―――ボク」
恐ろしい声から自分を守るように、耳を押えます。それなのに、声は全く大きさを変えずに、××の脳に響きます。
××は、彼をよく知っていました。男性にしては高い―――けれど女性ではないその声。醜くて、ちぐはぐで、先輩にも愛されない××自身大嫌いな―――。
「じゃあ、お前は誰だよ。その格好で。よりによってそのドレスで、男みたいな乱暴な言葉使って。ボクが一番大事にしていた想い出もボロボロにして、先輩のこともあきらめて―――」
「お前なんて、ナツキじゃない」
「先輩が現れないのは、悪魔のせいじゃない。いったよね。わかってるんだろ。お前がきちんとナツキじゃないから、先輩は来てくれないんだよ。
お前が先輩を幻だって、認めたからじゃない。先輩を幻にしたのは、お前だろ」
腹の底からの恨みを吐き出すようにどろどろと。目の前の自分に向かって少年は告げます。
「だからボクが来た。お前に思い知らせるために。お前がにげないように。お前が苦しむように」
ナツキは最後に願いました。
――――なんでもいいから、先輩を感じたい、と。
「……違う。だって、先輩は、あきらめる前から来てくれなかった。なかった! お前、誰だよ、偽物が気持ち悪いこというなよ!!」
目の前の少年をなりふり構わず怒鳴りつける××は、誰なのでしょうか。いつしか耳をふさぐ事もわすれてしまいました。
気付けばドレスはぼろぼろで、メイクもほとんど取れかかっています。少年の言う通り、本当は心のどこかが理解していました。――――ボクは、もう、ナツキじゃない。
『彼』にとってナツキはあこがれの具現化で、砂糖でできた花細工のような、もろくて繊細で大切ななにかでした。
先輩だって、愛してくれたのはナツキだけでした。いいえ、それに不満はありませんでした。彼も美しいものが好きでしたし、ナツキとして先輩に好かれたいと思っていたのですから。
けれどもう、彼は永遠にナツキをうしないました。無残にちらばる砂糖の粒を、かき集めてももう花には戻りません。
「……先輩が、妄想なら、お前が心の底から望んでこの空間に呼び出せない訳、ないでしょ。だってお前がつくったんだから」
彼をみつめた少年、那月自身は呟きます。
「ねえ、きっと先輩は偽物じゃないよ。本当にいるよ。でもお前は先輩に愛されない。だってお前はかわいいナツキじゃなくて、醜い那月だから」
「違う!!!!!!!!!!」
それは、彼の恐れの現れでした。
「先輩は幻なんだ、幻、幻幻幻幻幻幻幻幻幻幻幻幻幻―――――」
自分に言い聞かせるよう何度も何度も幻だとつぶやき続けます。幻であることが、恐怖であったはずなのに。
那月は自分の心を守るために一番大事な人の記憶を、自らの手で殺していきます。
望んだ人は誰もいない赤と黒の世界で、その恐怖から解放されるまで、ずっと。
"俺たちのバンドで、いつかこの世で最高のライブをやろう!お客さんと俺たちでつくる、最高のライブ!"
"ああ、オレのベースとお前のドラム、カワカミのギターに、スナノの声が一緒にサウンドを奏でれば、きっとできるさ"
"オレのギターはみんながいて活きるんだ。このメンバーが集まれたのは奇跡だよ。一緒に最高のライブ目指そうぜ"
"Ah、やろうぜdo itできるさthe best live!"
……4人でそんな話をしたのは、いつのことだったか。狭いアパートの一室で、最高のライブがしたい!なんてバカみたいな話を、本気で語り合ったあの夜。何の根拠もなかったけど、絶対にできると信じて疑わなかったあの夜。
その夜があったから、俺たちは活動を続けられた。誰にも振り向かれない路上ライブもあった。宣伝ビラをその場で破られたことも、レーベルに出したCDが開封されずに帰ってきたこともあった。それでも、4人でいれば、最高のサウンドが奏でられると信じていたから。4人で各々の想いを語り合ったあの夜があったから。折れずに、努力を続けられた。
……あいつらは、今頃何をしているだろう。
ライブ中に抜け出すなんて!と怒っているだろうか。そりゃそうだよな。帰ったら謝んなきゃな。
なあ、カミサマ。もういないのか?
俺を帰してくれよ。あの熱い熱いステージの上にさ。メンバー4人と、スタッフと、お客さんと、みんなみんなで作り上げた、あの最高の瞬間に戻してくれよ。
シャイターン、それが叶わないなら、せめて、せめてどうか俺から何も奪わないでくれよ。俺たちの大切な思い出を抱いたままでいさせてくれよ。
語り合ったあの夜のことも、初めての路上ライブも、4人で過ごした日常も、あのステージの熱量も、何もかもを抱えさせてくれよ。今この瞬間、あの人生を惜しむ気持ちすらも、俺には大切なんだよ。
それさえ叶うなら、俺はお前と遊んでやるよ。もとより俺は歪んじまってるんだろ?お前の手のひらで踊りながら、新しい曲でも作ってやる。もしまたあいつらとライブができるようになったとき、手土産の一つもないと文句言われるからさ。
Hey you, 聞こえてるかい?
それでいいだろ?
/*
憎らしいほど可愛いあの子も、震える肩を抱いたその子も、幸せな夢を語った仲間も。
それぞれの地獄へと落ちていた。
*/
/*
それを目の当たりにしながら、脳裏に浮かぶ相手。
正確無比に、私に幸せを寄越した。
その人だけが私の不幸を知っている。
そうして泳いだ視線の先に、地獄はいた。
*/
デザイナー シーナ が見物しにやってきました。
/*
恐怖で涙が出る。
この涙も流れ落ちる前に消えるのだろうか。
なぜ私はまだ正気なのだろうか。
*/
/*
地面に膝をつき、舌を突き出した。
いつか誰かに見せつけた、銀色に光るピアスが光る。
*/
/*
苦痛に顔を歪めながら必死に舌を出す。
痛みで生理的な涙が流れるのを感じるが、抵抗はできない。
この時間が延びるだけだ。
自分の肉の焼ける匂いがした。
*/
はぁいお疲れさま!
……僕ずっと見てたけど、ミモザちゃんずいぶんとまあ偉そうだったね?
まあいいけどね。
次からは本当の姿で遊んでもらいなよ。
あ、うーん。
君は、それよりも気が狂えない方がいいかな?
そうしよう!
君が考えるのをやめそうになったりしたら、僕が正気に引き戻してあげるよ。
嬉しいよね?
世間は馬鹿と醜女には冷たいんだって、床に頭を擦りつけて僕に本をねだったものね?
仲の良いお友達もできたんでしょう?
良かったねえ!
でも僕との約束、忘れちゃダメだよ?
口の中がピアスでいっぱいにならない内に、あの悪魔が飽きてくれるといいね。
ふふっ。
心配いらないよ。
その後はうちのマネキンにしてやるから。
>>224サヤカ
「そっかぁ、サヤカおねぇさんじゃダメなんだぁ。
うぅん、サヤカおねぇさんは悪くないよ。
だって、おねぇさんがいなかったら、先生ともお話できなかったし、飲みモノも見つけられなかったんだからさ。
みんなで一つなら、できないことはみんなでやればいいんだよ。
あぁ、それより喉が渇いたなぁ」
辺りでは、ふわりといい臭いがたくさん漂っています。
ナルバディンが涙を舐めて取るところも、唾液を与えられるのも視認できるでしょう。
「サヤカおねぇさん以外は、大丈夫なのかなぁ。
あ!いいなぁ、ナルバディンお兄さん。キヌおねぇさんとリッカルドお兄さんからもらって。
ははっ、ナツキおねぇさんも、マサトお兄さんも涙、涙が流れてる。
いいなぁ、ほしいなぁ、喉が渇いたの。
誰からがいいかなぁ。シトラスお兄さんでも大丈夫なのかな。自分で吸ってるから大丈夫なのかなぁ。テンカお兄さんはどうだろう大きいしいっぱいありそうだよね。ラビットおねぇさんは?スズハおねぇさんは?おばあちゃんはちょっとこわいかなぁ。コテツお兄さんは元気だからちょっと飲んでも大丈夫だよね。みくるおねぇさんはどうかなぁ。
そうだ、歪んでた人はダメ?」
クスクス、クスクスと笑い声が聞こえる事でしょう。耳障りな悪魔の声。しかし、聞くたびにこの声こそが神様の声だと錯覚します。
クスクス、クスクス。
神様は笑い、貴方達に尋ねるでしょう。
「いちばんの 死合わせ どう?」と。
その言葉を皮切りに、歪な空間にゆっくりと魂溶け込み始め、次第に1つになります。すると、初めて来た時のような、真っ白な空間が出来上がりました。
クスクス、クスクス。
神様は呪文を唱えます。始まりの合図だと言わんばかりに、高らかに。
しばらくして、純白のドレスに身を包む彼女がやってくることでしょう。それから1人、2人。次第に役者が集まり、舞台が整うと再び神様は言うのです。
「ここかな、ここかな
魂の集まる場所はここかな
神様が集めた魂は、ここかな」
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