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きみは自らの正体を知った。さあ、村人なら敵である人狼を退治しよう。人狼なら……狡猾に振る舞って人間たちを確実に仕留めていくのだ。
どうやらこの中には、村人が2名、人狼が2名、占い師が1名、霊能者が1名、狩人が1名、狂信者が1名いるようだ。
あー、諸君、聞いてくれ。もう噂になっているようだが、まずいことになった。
この間の旅人が殺された件、やはり人狼の仕業のようだ。
当日、現場に出入りできたのは今ここにいる者で全部だ。
とにかく十分に注意してくれ。
自警団長 アーヴァインが「時間を進める」を選択しました。
―一階:人形展示室―
[まるで、隠れているかのように存在する階段を見つけたシャーロットは、胸騒ぎを覚えずにはいられなかった。扉をつけてまで隠したい何かが、地下にはあるように思えてならなかったから――。]
(この屋敷、地下もあるの…?)
[地下へと続く階段には、扉があり、その扉は既に開かれていた。
扉が開いているという事は、先客がいるのだろうか。]
逃亡者 カミーラは、人形遣い ナサニエル を能力(占う)の対象に選びました。
[シャーロットが地下室に入ってくる少し前のこと。既に扉を開けていた俺はその地下へと降りて行った]
…なんだ、ここは。
[上の展示室と大差ない質のいい絨毯やうっすらとした明かり。
上とは比較にならないくらい広いその部屋は…ガラスがびっしりと貼られた大きな展示室となっていて]
…げ……。
[同じく、上とは比較にならない程の気味悪さを感じてもいた]
―地下―
[シャーロットは、何かに誘われるように地下へと下りていった。
そこで、待ち受けるものは、何だろうか――。
地下へと下りたシャーロットが目にしたものは、フロア全体が人形展示室のようになっており、ガラスケースの中にいる人形は、全て等身大で、その作りは今まで見てきた人形よりも、本物のように見受けられた。
ガラスに写る自分の姿は、まるであの人形のようにも思え、シャーロットは再び畏怖を感じ始める。
そして――。
ガラスに映る、もう一つの姿。]
だ、誰……?
[2F自室からメイド人形が掃除をはじめたために追い出され、退屈しのぎに2F展示室を見学中]
本当に人形が好きなんだねぇ。ここのご主人。
ま、生きた人間を人形のように仕込もうってんじゃない分ましかしらねぇ。
金目の物を失敬してずらかろうかと思ったけれど、待遇いいのよねえ。一宿一飯の恩義ってのを踏みにじってもあれだし、もう少し様子を見るとしますか。
[小さな声が聞こえる。女らしい少し高い声。
確かめなくてもすぐにわかった。あぁ、上の扉を開けっぱなしで来てしまっていたか]
…お嬢さんか?
[気配を消すように静かに声をかける。
明かりがうっすら見られるあの部屋。きっとあそこに「主人」がいるのだろう]
ギルバートさん…?
[ガラスに映る、もう一つの姿はギルバートだった。
思い出される、ギルバートとの会話。
シャーロットは、少し強めの口調で口を開く。]
こんなところで、何してるのかしら。
[そんな問いをしたシャーロットであったが、すぐさま後悔した。
同じ問いをされたら、何て答えればいいのだろう。]
[口調が強かろうが所詮小娘。何もびくつく必要もない]
俺が何してようが勝手だろう。
お嬢さんこそ、自分が聞かれて困るような事は聞かない方がいいぜ?
[へらりと笑い]
それとも何か、夜添い寝してくれるお人形でも探しにきたか?
(ほんと、この男と話してると腹立つわね。)
[薄暗い地下室で、一人でない事に胸を撫で下ろした事を後悔する。]
聞かれて困るような事、ないわよ。
扉が開いてたから、入ってきただけよ。
私が添い寝してくれる人形を探しにきたですって…?
そんな人形、私には必要ないわ。
[更に口調を強めて、シャーロットはそう言う。]
じゃぁ何しに来た訳だい?
わざわざ俺にいちゃもんつけに来たわけか?
地下にまで降りて来て御苦労なこった。
怖いならさっさと戻った方がいいんじゃねぇか?
[俺は頼まれても添い寝してやれないし?と下品にも笑って見せ]
俺の前で強がっても何も出ないしなぁ。
あんまり騒がない方がいいぜ?
[後ろの明かりのついた部屋を顎で指しながら]
だから、扉が開いてたから入ってきただけよ。
あなたが居るなんて、思いもしなかったわ。
[あなたがいるなら、ここには来なかった、と言いた気な表情をしながら、ギルバートに言葉を続ける。]
こ、怖くなんかないわ。
本物に見えても、所詮人形は人形よ。
何も話さないし、動きもしないわ。
[二人のやりとりを、フルートを吹く、赤茶色の長い髪を結わえた女の人形が見つめている。]
誰が、あなたなんかに添い寝をお願いするもんですか。
自惚れないでよ。
[声を荒げに、そう言うシャーロットであったが、ギルバートがある部屋を顎で指すのを見ると、視線を移し、口を閉ざした。]
な、何よ、あの部屋…
誰か、いるの…?
ふん。誰がいても入ってくるってのが不用心っていうんだよ。
人形は動かない…ね。そうでもなさそうな雰囲気だよなぁ?ここ。
[風もないのにかすかに聞こえるカタカタ、という音。
ここでも聞こえる。笑い声のように。
それは奥の作業室から聞こえる音なのか、それとも本当に人形たちの笑い声なのか。
ガラスケースに映る人形の影は恨めしそうにも羨ましそうにも見えた]
俺だってごめんだ。小娘は趣味じゃねぇよ。あのハーヴェイとかいう奴に頼めばいいだろうさ。
[鼻であしらう風にからかうと扉を見る]
…あそこに誰かいるとしたら…噂の主人だろうさ。
地下に隠れるように、か。よっぽど見られたくないんだろうなぁ、作ってる所。
案外この人形の材料ってのは人間かもしれねぇぜ?
[オートマタのリアルさ。半分これは冗談じゃない。
俺は作業室の前に積まれていた白い何か、はまだ見ていない。だからこそ言える冗談]
/*
村人きぼーだったのですが、霊を引いてしまいました…orz
全く設定を考えておりませぬ。
あははっ。
人形遣いか…うにゅ。。。。
[ギルバートとシャーロット。二人が話す声…よく聞こえる]
[どこに?][人形たちに]
[そしてその父親に]
[カタカタ] [カラカラ] [ガチャリ…ガチャ…]
[笑うようなあざけるような]
[否定するものへの…笑い声]
[羨むような 妬むような]
[動くヒトへの…ねだる声]
[ギィ] [聞こえぬほど薄く] [扉開ける音]
[そこから見る目は…] [すでに尋常なものではなく]
[ミツケタ と] [ニィ と] [笑う顔はまるで何かに憑かれたもの]
ちょ、ちょっと…
脅かさないでよ。
[まるで、人形が動くと言いたげなギルバートの言葉に、シャーロットは小さく震えた。]
動かないわよ。
人形に、意思があるわけないわ。
[そう――。
''あれ''だって、二階のあの部屋から動いたわけじゃない。
初めから、この屋敷に存在しなかったのだ。]
ハーヴェイさんに添い寝を頼む…?
なんで、私がハーヴェイさんに頼むのよ。
[怯えてるように思わせたシャーロットの言葉は、再び荒くなる。
しかし、それはほんの一瞬であった。
ギルバートの「材料が人間かも」という言葉に、シャーロットはひどく怯え始めた。]
そ、そんな事…あるわけないわ。
そんなの、人殺しじゃない。
私を怖がらせて、楽しんでるの…?
― 1F:ロビー→2F ―
[老執事の案内で歩き出す。どうやら客室は2階にあるらしい]
…ねぇ、きみ、重くない?
[そんな言葉を、荷物を運ぶメイド人形へかけながら、階段を上っていった。]
別に?あのお兄さんと仲良さそうだったから?
案外やってくれそうだよな、あの人。
[たらしには見えないが。顔はそんなに悪くなさそうだったし]
ちっこい頃は人形が動いたら、と思った事もあったろうになぁ。
今その人形が動くとお化け扱いか。
[くっくっ、と喉を鳴らすが、次のシャーロットの言葉に]
…噂、だけどな。ここが化け物屋敷といわれる噂。
聞いたらお嬢さん夜眠れなくなるぜ?聞きたいなら教えてやるが。
[壁にかけられている人形]
[床に立つ大きな人形]
[飾られた道化の面]
[足音響く度][儚く空を見ていたその視線]
[動くその人を][確かに見据え]
[メイドとともに歩くナサニエル]
[ガラスの目が ギョロリと動く]
[天使の人形 小さな口が] [ニヤリと笑う]
[みぃつけた] [カラカラカラリと] [あざ笑う]
もしかして…
私とハーヴェイさんが仲良さそうに話してるのが面白くないのかしら。
[怯えながらも、それを隠すかのように言う。
ギルバートの前では、弱い部分を見せたくなかった…のだろうか。]
私は、人形が動いたら…なんて思った事、一度もないわ。
寧ろ、動かないで欲しい…
私の前から消えて欲しい…
そう思った事なら、あるけどね。
[何故、このような事を、ギルバートに話したのだろうか。
シャーロットは、まるで自分の周りにいる人形に聞こえるようにそう言った。]
お化け屋敷…?
私も、少しだけ聞いた事あるわ。
詳しくは分からないけど……
あなたが、責任とって添い寝してくれるって言うのなら…
聞いてあげてもいいけど…?
[怖いから聞きたくない――。
そうは言えなかった。
冗談っぽく笑いながら、シャーロットはギルバートが話すかどうかを待っている。]
― 1F:ロビー→2F ―
[食堂やバスなどの設備について一通りモーガン氏の説明を聞きながらも、やはり気になるのはメイド人形のようで、時々横目で見ながら歩いていく]
…そうですか。2階にも人形の展示室が。
東洋の人形もございますか?文楽人形でしたか、大変興味深い人形もお持ちとか。
なに、人形遣いの端くれとして気になるのですよ。
技術的なからくりも…特に、女性が鬼になったりする仕掛けなど、面白いと思いましてね。
自分の人形芝居にも上手く使えたらと。
[そんな話をしているうちに、客室へと辿り着いて]
まさか。俺はお二人さんに興味はないね。
[万一俺が興味を持つとしたら「今の」シャーロットじゃないが。
そんなこと言う必要もない]
それはそれは可愛そうなお人形さんだ。持ち主に大事にしてもらえないとはね。ここにいたら恨まれるんじゃないのか?
やめた方がいいかもなぁ、そういう話は。
じゃないと…本当に君が化け物になりかねないぜ?
[化け物屋敷。それはここの主人。狂人の噂]
俺は添い寝する気はないからその話はお預けだな。
[軽く肩を竦める。半分面倒臭いともいう]
[噂…それは人殺しのこと。
ここの主人は、人の皮を剥いでそれを人形にするそうだ。
人形の肌がリアルなのは当然。本物なのだから。
髪も爪もすべて本物、えぐり取られた目玉だけが虚ろなガラス。
生きている人間が訪れると妬ましがって…最後は取り殺してしまうのだそうな。そしてそれはまた主人の手で人形に。
増える増える、人形という名の死体の数が]
[噂…それは人殺しのこと。
ここの主人は、人の皮を剥いでそれを人形にするそうだ。
人形の肌がリアルなのは当然。本物なのだから。
髪も爪もすべて本物、えぐり取られた目玉だけが虚ろなガラス。
生きている人間が訪れると妬ましがって…最後は取り殺してしまうのだそうな。そしてそれはまた主人の手で人形に。
増える増える、人形という名の死体の数が]
[予想通りの反応に、シャーロットは安堵の表情を浮かべる。]
そうね、これ以上人形に恨まれるのはごめんだわ。
[これ以上――。
既に、恨まれているというのか。]
私だって、大事にしたかったわよ。
でも……
[突然、小さく、ぽつりと呟く。
しかし、それ以上の言葉を、シャーロットはぐっと飲み込んだのだった。]
……話しすぎたわ。
私は、部屋に戻るわね。
[まだこの場に残りそうなギルバートにそう言うと、シャーロットは一階への階段の方へと向かった。]
― 2F:客室 ―
[カタカタとぎこちない動きで人形が荷物を置いている]
……。
[その表情は、と、彼女をみつめていたけれど、人形の瞳はただ目の前の荷物にだけ注がれているように見えた]
どうもありがとう。助かったよ。
…まったく健気なものだね。文句ひとつ言わずによく働くことだ。
[そうねぎらいの言葉をかけても、彼女は何も感じることのないように、冷めた表情でそのまま部屋を出ていこうとする]
[その途中、あの視線を感じる――。
憎しみ、妬み、そして、ある感情をのせた視線――。
シャーロットは、地下に潜む''存在''に、まだ完全に気づいてはなかったのだった。*]
― 2F:客室 ―
…お待ちなさい。
[そう言って、部屋を出ていこうとするゼンマイ人形の前に立つと、まるで人形がこちらを真っ直ぐ見上げてるように思えた]
[そのまま虹彩のあるような無いような、不思議な瞳をみつめ返し、視線を下げていく]
きみは…話せないのか…
[物言いたげな口元は軽く開いて、隙間から小さな歯が覗いている。もしかしたら動くのではないか、と期待しながら見つめていたけれども、彼女が言葉を紡ぐ事はなかった。]
あぁ、お休み。
[戻るというシャーロットに、自分はまだここにいるからと先に生かせる。一人になった方が都合がいい。
視線には先ほど気づいた。殺気というか、狂気というか。
今まで「仕事」でそれなりのモノには出会ってきたが流石にこの気配は普通じゃない。
ぶるり、と寒気に身震いをするとまた目的のものを探しだす。
小さな音でも妙に響くその部屋。何をしても反響する。そして]
……?こいつ…は…?
[じっとそれを見る。そこにあるのは一体の人形。赤い髪のフルートを吹く人形の隣にあった、透通るような儚い、花を抱く青い乙女]
― 2F:客室 ―
……。なんでもない、いいんだ。
いいよ、行って。荷物をどうもありがとう。
[そう人形に話しかけながら、ちょうど人間にするように軽く彼女の髪に口付けすると、そのまま廊下への道を開けて人形を促す]
[カタカタカタ…]
…行ってしまったか。
[一人部屋に残されて、ごろりとベットに横たわった彼は、帽子をベットサイドに置くと、そのまま少し眠ってしまったらしい。
起きたら、荷物の整理をしなければ――と、そう考えながらも、
あとは夢うつつ―――**]
[青い人形。紅い人形。対照的な、不思議な二体。
うっすらと開かれている目の前の4つの視線。
目が離せない。綺麗で、不気味で、恐ろしくて。
ただのガラス玉なのに。本当の死体の目よりも恐ろしい何か。
目的も忘れ、暫くその人形を魅入られるように見つめていた。
自分がその後、どうなったかも気づかずに──*]
[人形を見つめる青年。
人形はささやく。
[私に恋をしてくれる?] [貴方は私を愛してくれる?]
ならば私の願いを叶えてくれる?私は貴方の願いを叶えてあげる──
人形の囁き。脳の中に響くそれ。
次の瞬間に、俺の視界が暗転するまでそれはとても綺麗に響いていた──]
[2F廊下。例によって掃除のメイド人形に追い出されたらしく退屈そうにあちこちを覗き回っている]
でもねえ。ここの屋敷はどうも嫌な臭いがするよ。
お人形さん達やあの爺さんが頑張って掃除しているみたいだけど、カビ臭さに紛れて多分大抵の奴らは気付かないだろうけど。
あたしがいた、あの孤児院と同じ臭いだ……
それに、誰もいないはずなのに何だか見張られているような気がする。あの人形達や屋敷のあちこちに監視カメラでも仕掛けられているのかね?
逃亡者 カミーラは、修道女 ステラ を能力(占う)の対象に選びました。
[適当に飲み物でも飲むか、と再び食堂の方へ向かおうとする。階段を下りたところで遠くに見える少女の姿]
ん?結局男共はお嬢ちゃんのエスコートはしない気なのかね?いかんねえ、たるんどるよ。不安がってる若い娘なんてちょっと押せば簡単に落とせそうなのに。
[何を思いだしたのか、一人でくすくす笑っている]
しょうがないなあ。お姉さんがここは一つご機嫌伺いをするとしますかね。
[そっとシャーロットの後をつけて、彼女の部屋の前でいきなり背後から声をかけた]
昨日はありがとう。今から食堂でお茶にしようと思うんだけど、あなたもいかが?
逃亡者 カミーラは、村長の娘 シャーロット を能力(占う)の対象に選びました。
逃亡者 カミーラは、書生 ハーヴェイ を能力(占う)の対象に選びました。
―回想―
[地下室から自室へと戻ったシャーロットは、眠ろうとベッドに身を横たえるも、なかなか眠れずにいた。
外は、風が強いのか、開かない窓をカタカタと揺らす。
その音は、まるで、さきほど地下で聞いた''あの音''のように思えたのだ。
屋敷に来てから、まだほとんど日は経っていない。
しかし、シャーロットはもう何日もの間、ここに居るような気がしてならなかった。
大きく、一つ、ため息を漏らす。]
化け物屋敷、ね……
[ギルバートが発した言葉。
ここが本当に化け物屋敷であるのなら、自分にとっての化け物とはあの人形であろう――。
しかし、明日になれば、この屋敷を出られるという思いが、やがてシャーロットを夢の世界へと導くのであった。]
―回想終了―
―一階:自室―
んー……
[シャーロットは、ゆっくりと瞳を開く。
目に映るものは、自室の天井。]
今、何時…?
[部屋の中を見回すも、シャーロットの部屋に時計はなかった。
しかし、空腹感を覚えたシャーロットは、眠ってからある程度の時間が経った事に気がついた。
ゆっくりと、身を起こす。
乱れた髪を手ぐしで整えようとするが、髪はしっとりとしており、シャーロットはその手を止めた。]
シャワー、浴びたいなぁ。
こんな姿で帰るわけにはいかないしね。
[くすっと、小さく笑う。
シャーロットはメイド人形にバスタオルを持ってこさせると、一階のシャワー室(トイレと共用)に向かった。]
―一階:シャワー室―
[トイレと共用だからか、シャワー室は人一人入れる程狭いものだった。
しかし、そんな事はあまり気にならず、シャーロットは身についた汚れを清めていった。]
ふぅ……
気持ちよかったわ。
[白く細い身体を、バスタオルで包み、目の前の鏡にその姿を映す。
シャーロットの目は、鏡に映る、身体のある部分で止まっている。
そこには、一つの小さな痣――。
シャーロットは、手でそっと撫でると、先ほど脱いだ服を再び身に纏った。]
―一階:シャワー室→自室―
[シャワーを浴び終えた後、シャーロットはバスタオルを置きに、自室へと向かっていた。
自室のドアを開けようとした時、背後から自分の名を呼ぶ、女の声が聞こえた。]
えーっと……
カミーラさん、でしたね。
いえいえ、お礼を言われる程の事はしてませんよ…?
お茶、ですか。
そういえば、私もお腹空いたなぁ、なんて思っていたんです。
[いいですよ、と笑みを浮かべる。
シャーロットは自室に入りバスタオルと置くと、カミーラと共に食堂へと向かった。]
―一階:食堂―
[カミーラとここへ来るのは、二度目だった。
最初に出逢った時は、とにかく水が欲しいといった様子で、無言で水を飲み続けていた。]
そういえば、カミーラさん。
昨日、焦るというか…かなり、急いでここに来たようでしたが…
何か、あったんですか…?
[メイドが運んできた紅茶とパンを手にしながら、シャーロットはカミーラにそう言った。]
[シャーロットの後にくっついてだらだら歩きながら]
ううん。あんたが連れてきてくれなければ、いつまで玄関でぼんやりたたずむことになっていたやら。誰の返事もなかったら、幾ら図々しいあたしでも勝手に上がっていけやしない。
お腹、すいたよねぇ。お人形さんは部屋は掃除してくれるけど食べ物は持ってきてくんないしさ。
台所に何か食べ物があったかな?
[食堂に着いた後、同じく紅茶を飲んでいたが、思わずぶっと吹き出しそうになり]
え、いや、あの、その。
借金取りに追われて……ってそんなちんけな嘘つくこともないか。
あたしの恋人が…同郷人なんだけどね、そいつがあたしのこと売りやがったんだ。おかしな新興宗教の奴らに。あたしには身よりはないからね。姿を消したって誰もあたしのことは捜さないから好都合ってことらしくて。
何か人の生き血を啜れば永遠の若さと命が得られる、とかいう頭のイカれたやつらでさ。
どうせならあたしみたいな年増じゃなくてもっと若い子を選べばいいのにさぁ。
[自分を図々しいというカミーラを、シャーロットは面白い人だなぁ、と思っていた。
そのカミーラが語る、自分の身の上話。
カミーラの瞳は、どこか淋しげに思え、シャーロットは小さく呟いた。]
カミーラさん、身寄りがないんですか。
私も、ないと同じ…みたいなもんですが。
[シャーロットは、自分の両親について語り始めた。
母親が父を捨て、家を出た事――。
その父は、酒に溺れ、廃人と化している事を――。]
何だか、しんみりしちゃいましたね。
永遠の若さと、命…かぁ。
私はそんなもの、欲しいとは思わないなぁ。
本当、イカれた人達ですね。
[客人は全部で6人。急な来客、食糧庫の中身はどれほどもつか。
買い足す必要はあるまい。ここから出すなと命受けていれば。
家事に勤しむ老人に、一つドアのチャイムが鳴り響く]
…はい、どちら様か?
[急ぎ扉まで迎えでればそこに佇むのは警察。何事かと聞けば先日行方不明となった人物のこと。あぁ、とっくに「材料」となった青年のことか。
しがなきこと。どうせこの森で迷えば誰でも死ぬだけよ]
[問われたこと、空とぼけるように返答を]
はて、そのようなお方は存じ上げませぬ。
森に入られたこと、必ずしも我が屋敷で知り得ることではありますまい。
お疲れ様でございます。
何かことでもありましたらいつでもお越し遊ばされよ。
[有無を言わさぬ物言いで。重ねて警察は尋ねるか。
「ここに今、来客はあるか」と。
老人、しばし沈黙を。そして答えるのは]
…いいや?ここにはこの老人と主人だけが在るばかり。
人形屋敷に人が居ってはならぬのじゃよ
[客人を知られてはならぬ。なぜなら大事な「材料」なのだから]
どうぞお引き取りを。
[シャーロットに打ち明けるともなく身の上話を]
あたしの国では、政府が無茶苦茶でね。
育てきれない子供は孤児院が面倒見てたんだが、そこもろくに飯は与えてくれない上におきまりの虐待もありだったのさ。
そんで、そのへんが明らかになった後、有り難いこの国の小金持ちが可哀想な子供達を養子にってんで引き取っていただいたんだが…
なじめなくてね。けっきょくおん出てきちまった。
可哀想で素直で従順な……そう、あの人達が求めていたのはまさに生き人形みたいな子供だったんだろうね。
あたしじゃちょっとねぇ。
そうかい。親がいるのにこちらを見てくれないってのは、ある意味いないより辛いことかもね。
最初ッからいなければ、余計な期待など、しなくてすむもの。
[さりげなく、シャーロットの頭を撫でるように、その髪に触れる]
[取りつくしまなく、仕方なく踵返す警察を、目を細めて送り出す。
そして後ろに従える人形は、普段のメイドのそれでなく]
面倒じゃのう。……殺せ。
[隣に在るのは数体の犬のからくり。最近主人がたわむれに作ったもの。背中のゼンマイ捲いてやる。唸り声の代わりにキリキリきしむ。
飛び出すように走る犬、狙いは警察。
歯が刃であるのも戯れか。毒の爪もただの洒落。
犬はじゃれる。警察へ。みるみる飛び散る赤い飛沫。
悲鳴は中まで聞こえない。聞こえたとしても構うまい。
ただの肉塊、転がるも。からくり犬は食べもせぬ]
虐待、ですか。
酷い……
罪なき子供を、力で説き伏せるなんて……
[罪なき人形を、棄てた自分はどうなのか――。]
えー、出てきちゃったんですか。
新しいご両親、心配してるんじゃないですか…?
[馴染めないから出てきた――。
カミーラは、言葉とは裏腹に、どこか淋しげな表情を浮かべたように思った。
気のせいだろか。]
生き人形…
そんな、感情もない人を、求める人なんて、いるんですかね。
辛い…のかな。
分からない……
早く、立ち直ってくれるといいんですけどね。
[自分の髪を撫でるカミーラの手は、どこか懐かしいように思えた。
シャーロットは、優しい笑みを浮かべながら、カミーラをみつめている。]
― ゲストルーム ―
[ ……目を覚ます。
ゆっくりと身を起こし、窓の向こうを見やる。薄暗い空からは今の時刻を推し量る事もできなかった。
寝覚めは決して良いとは言えなかった。それは、この空模様のせいか、それともこの屋敷に漂う何かのせいか。
頭を振り、意識を覚まそうと試みる。
(いえ、明日の朝…約束ですよ。)]
傍らのテーブルに置いた腕時計を掴み、覗き込む。まだ、十分に朝と言える刻限だろう。
ハーヴェイは、身支度を整えると部屋を出て一階へと階段を下りて行った。]
[シャーロットの言葉にくすりと笑い]
心配はしていないと思うよ。あたしのあとで来た中国の女の子は、うまくあの人達の期待通りに振る舞ってて、その子が来てからあたしのことは全然構わなくなったから。
[シャーロットの父を想う言葉を聞いて]
そうだね。時が解決してくれるといいね。
さてはて。
お客人をもてなす準備もおわらせねばの。
[ギギギ、と鈍い音を立てる屋敷。続いてガシャン、と重い音が響く。庭先の門にも重い鍵。そこに遊ぶからくり犬]
…まぁ一人二人先死にしても構うまいて。出れぬと知らしめる為にもの。材料にするなら生きたままが一番よいのじゃがの。
ほっほっほ、主人は喜ばれるかのう?
[シャーロットは、カミーラと言葉を交わす中で、カミーラが引き取り手に戻る意思がない事を感じ取っていた。]
カミーラさんは、これからどうするつもりですか…?
[シャーロットは、カミーラをみつめながらそう言う。]
私は、お父さんが心配だし、ここにいる理由もないし…
もう少ししたら、家に帰ります。
ハーヴェイさんが、送ってくれるって言ってたし…
[そう言った時――。]
「……何か変な声がしなかったかい?
悲鳴みたいな。」
え…っ?
何も、聞こえなかったけど……
[シャーロットは、不思議そうな表情で、カミーラをみつめた。]
[かみ殺させた警察の死体。ずるりと引きずり地下へと運ぶ。
主人の部屋で伺い立てて]
…ご主人様、少々傷つきましたが…かようなものでもお使いになられますかの?
[ドアの隙間から延びる腕、人というには化け物じみた毛むくじゃら。原型とどめぬその死体、ドアの中へと引きずり込む。
ぐちゃりぐちゃり、ぽきん。
隠すことなく聞こえる「食事」の音]
…おやおや、お食事がたりのうございましたかの。すぐご用意いたしますゆえ…*
[顔色も変えない老執事。さて、主人の為次に施すのはそも何か……*]
[一瞬鋭い目つきになるが、シャーロットには気取られまいと、笑顔を作る]
……ん。気のせいか。だったらいいけど。
あたしは……ほとぼりが冷めたら別の国に行くかな。
メキシコとか。
ブラジルとか。
うん…
気のせい、だと思うけど……
[カミーラの瞳の変化に、シャーロットは気づいていない。]
ブラジル、かぁ…
私も行ってみたいなぁ。
リオのカーニバル、見てみたいんです。
[シャーロットは、笑顔でそう言う。
目の前にいるカミーラは、カーニバルで踊っている美女を思わせるほど、美しい人に思えていたのだった。]
[シャーロットの笑顔に心和ませるかのよう。望んでここへ来たらしい他の面々とは違い、同じく巻き込まれた口だな、とシャーロットに対しては仲間意識もあるらしい]
暖かい国に憧れるんだよね。あたしの国は寒かった。
ん、帰るのかい。気をつけてね。
(あの坊やが送り狼にならなきゃいいけど)
ブラジル、暖かい国ですもんねぇ。
暖かいというよりも、暑いと言うべきなのかな。
[くすっと笑みを零す。
この屋敷に来てから、あまり笑っていなかったシャーロットであったが、カミーラとの一時は、シャーロットの心に小さな灯火をもたらしたのだった。]
…ありがとうございます。
カミーラさんも、気をつけて行ってきて下さいね。
[そう言うと、シャーロットは手にしていたカップをテーブルへと置き、食堂を後にした。]
─ 回 想 ─
[あの展示室で見つめた人形。
「愛してあげる。だから私を愛して」
あの呟きは何だったのだろう。とても美しいあの囁き。ぼんやり、魅入られたように見つめた後……
鈍い音が俺の頭を襲った。
「…… 見 た な ?」
人か獣か区別のつかないその気配。
俺も「仕事」している上で人とのやりあいはなれている。しかしその時は違った。
殴られ、火花の散った視力で捉えたのは屋敷の主人。
立て続けに殴られる。なのに俺は動けない。人形の呪いにとらわれたように。
そして……どうしただろうか。意識はそこで途切れている]
[ 階段を下りて行く。
つい先ほど、行われていた出来事などは知る事もなく。
この屋敷のどこか湿ったような空気の中に、微かに血の匂いが漂っている事にも気付く事はなく。
一階へ降りると、食堂の方から話し声が聞こえてくる。大きな声でなくとも、女性の高い声は静かなこの屋敷の中では良く通るものだななどと思いつつ、そちらに足を向けた。]
やあ、おはよう、シャーロット。よく眠れたかい?
[ 丁度、食堂から出てきたシャーロットに、微笑み、声を掛ける。]
約束通り家まで送って行くよ。
何か仕度はあるかい? あるなら、その間待っているけど。
─ 回 想 ─
[それはモーガンが警察の死体を引きずり来る少し前のことだろうか]
………?
[目が覚めたのは地下室のまま。
冷えた絨毯に伏せるように倒れていた。紅と蒼の人形を見つめていた筈なのに、なぜか目覚めたときは材料遺棄場の前。
ずきり、と痛む頭。手で押えると倒れた時に打ちつけたのか頭に血が滲む]
…何、してた…んだっけ……?
[思い出せない。昨日、この人形達の視線のど真ん中にいたからか?何かに中てられたのだろうか]
―一階:食堂の外―
ハーヴェイさん。
おはようございます。
昨夜は…少しだけど、眠れましたよ。
[そう、ほんの少しだけ――。]
持ってきた荷物はないし、支度は必要ありません。
それじゃぁ、行きましょうか。
[待ってたとばかりに、ハーヴェイに笑みを浮かべる。]
[ 少しだけ眠れたと言うシャーロット。見れば、顔色は良いとは言えない。ハーヴェイは気遣わしげな表情を見せながら頷く。]
そう。よし、それなら、出発しようか。
今の内に出れば、ゆっくり歩いてもそれほど遅くはならないはずだ。
一応、モーガンさんにその旨を伝えて来るよ。少し食堂で待っててくれないか?
[ 笑みを返してそう言うと、シャーロットは頷いた。
食堂の中を覗いてカミーラと挨拶を交わすと、ハーヴェイはモーガンを探して屋敷を一回りした。
しかし、老執事の姿は見当たらない。仕方なく、そのまま食堂に戻る。 ]
― 食堂 ――
困ったな。モーガンさんの姿が見えない。
[ ハーヴェイは思案顔を見せる。]
カミーラ、モーガンさんへ伝言をお願いしてもいいかな?
僕はシャーロットを家まで送ってくる。天気が崩れなければ今日中には戻ってくるつもりだと伝えておいてくれるかな。
―食堂―
[ハーヴェイがモーガンを探しにいっている間、シャーロットは再び食堂へと入り、カミーラと言葉を交わしていた。
その内容は、他愛もない話で――。]
じゃぁね、カミーラさん。
一緒にお茶できて、楽しかったです。
[そうカミーラに告げると、ハーヴェイへと振り向き、早く行こうよ、と言いたげな表情を浮かべた。]
[ふるり。頭を振って何とか気力を取り戻そうとする。
こんな冷えた部屋にずっと寝ていたのだろうか?このままでは時間の経過すらわかったものじゃない。
とりあえず、上にでも言ってみればいいか。
風邪を引いたのか、妙に冷える体を持ち上げて、一階へとあがっていく]
→一階食堂へ
[去っていく二人に笑って手を振ったカミーラだったがその姿が視界から消えるとその表情が引き締まる]
さて。あの子達がここから無事に出られるかどうか。
どうも妙なんだよね。この屋敷。
[一階の食堂、ハーヴェイたちが出て行ったのと別の入り口からすれ違わずに中へと入る。中にいたカミーラに軽く手をあげて挨拶]
おやおねーさん。どーもこんちわ。
[入ってきた瞬間、ギルバートの様子にわずかに何かの違和感を感じたが、口を開けば昨日通りの彼]
ふん、遅いお目覚めだね。あのお嬢ちゃんはたった今出ていったよ。もう一人の坊やと一緒にね。
朝飯はお人形さんが運んでくれるようだよ。
更新時間が24時間延長されました。
じゃあ、行って来るよ。
[ カミーラにそう言って、振り向いたシャーロットに頷くと、彼女を誘い玄関へと向かう。
閉じられた大扉。この屋敷に入った時の事を思い出す。]
君の親父さんは、ここの話を聞かせたらどう思うんだろうね。
[ 何となく、そんな事を訪ねてみる。]
出て行った?ふーん。
いいんじゃね?随分怖がってたみたいだしな。
俺には関係ねぇ。
[どっか、と椅子に乱暴に腰掛けながら、動く人形また指示のディスクを突っ込んで]
…おねーさんは暫くここにいるわけかい?
一緒に帰らなくてもいいの?
[彼女のほうがよほど人形というものにそぐわないな、と内心思いつつ。昨日ハーヴェイに「人形を愛でるように見えない」といわれたのに少し思い出し笑いしながら]
あたし?あたしはまだもう少しここにいさせてもらうよ。
(早く出た方がいい気もするんだが…)
[服のポケットから煙草を取り出し]
あ、煙草いいかい?
―一階:食堂の外→屋敷の玄関―
どう思うんだろう…
屋敷の様子が気になっているのは確かみたいだし。
びっくりするのか、それとも予想通りと思うのか…
今のお父さんが、何を考えているのか、私には分からないわ。
[ハーヴェイからの問いに対し、シャーロットはそう答えた。]
― 2階:客室 ―
[目覚めた彼が最初にした行動を、自分の荷物を確認することだった]
…あるか。
[旅の中では、目覚めると自分の荷物が忽然と消えているというような事もよくあった。けれども、この屋敷ではそんな心配はいらないようで…]
ふふん、とはいえ、他の者からすれば何の値打ちもないものだろうがな…
[そう呟くと、
つと、荷物の中から大人の拳ほどの丸い木片を取り上げる]
― 2階:客室 ―
[目覚めた彼が、一番最初にした行動は、自分の荷物を確認することだった]
…あるか。
[旅の中では、目覚めると自分の荷物が忽然と消えているというような事もよくあった。けれども、この屋敷ではそんな心配はいらないようで…]
ふふん、とはいえ、他の者からすれば何の値打ちもないものだろうがな…
[そう呟きながら起き上がる。昨日の様子を思い出しながら
つと、荷物の中から大人の拳ほどの丸い木片を取り上げた]
あぁ?別にいいぜ。俺も吸うしな。
火使うならあるぜ?
[ウェストポーチから取り出すのはマルボロと少し古い銀無垢のジッポー。それで煙草に火をつけながら]
…おねーさんも物好きだね。
こんなところに滞在しようなんてさ。大方一つくすねるつもりかい?
ここのは随分いい金になるらしいからな。
[屋敷のエントランスに向かう、二つの足音。
人形達は、無言のままそれを聞いているようだった。
シャーロットは、一度だけ、後ろを振り返る。
そこには、何も…誰もいない――。]
……ハーヴェイさん。
ハーヴェイさんは、何か確かめるものがあると言っていたけど、何を確かめるんですか?
[今度は、シャーロットが問う。
ハーヴェイが答える頃には、二人は外界へと導く扉の前に着いているであろう。]
[ギルバートに向かって肩をすくめてみせる]
孤児院で育ったし、年喰ってからはスラムにもいたからね。
辛気くさいとこには慣れっこなのさ。
くすねる?何のことだい?
[空とぼけながらもギルバートに感じる【同類】の匂い。本気でごまかせるとは思っていない]
[ふん。鼻をならして興味なさそうに笑ってみせるが]
そういう生い立ちの奴がどうやって生計立てるんだか。
多分、俺と同じなんだと思うんだがね?
まぁ俺はそこまでせっぱつまってなかったけどな
あんた、「同業者」だろ?本気でここに泊まるだけでいるたぁ思えないんだがね?
別に俺はあんたに危害を加えようってんじゃないさ。
お目当てが同じものだとちょいと困ってね。
[煙が一筋立ち昇る]
― 2階:客室 ―
[昨日、この屋敷で出会った老執事の顔を思い浮かべて]
…うん。あの皺をこの木片に彫りこむのは難しそうだ。
木の材質は…もっとくすんだ色の…桐がいいだろうか…
それとも…
[くるくると手に持った木片を弄びながら、空をみつめていると、まだ見ぬ新しい人形劇の登場人物がぼんやりと浮かんでは消えていく]
ふぅ…なんというか――最近の俺は煮詰まっているな。
一頃は、アイデアなど泉のように溢れるばかりで、悩むことなどなかったのだが…
[ひとつ長い溜息を漏らすと、木片を机の上に置いた]
…さて。
気分転換に、こちらのお屋敷の人形を拝見するとしますかね…
何か得るものがあればいいが…
[そう言って立ち上がると、部屋を出た]
ふうん。じゃあ聞こう。
あんたの狙いは何だい?それがわからなきゃあたしとて答えようがないね。
ギルバートってのは本名かい…なぁんて野暮は聞かないがね。
後もう一つ聞いておこう。あんた、ミルチャの奴が差し向けた追っ手じゃなかろうね?
[カミーラの細められた目が、ギルバートを探るように見る。煙草を挟んだ左手はそのままだが、右手は衣服の中に突っ込まれている―おそらくは何らかの凶器を隠し持っているのだろう]
― 一階:玄関前 ―
……そうか。
[ シャーロットの父親は村長であるとの事だったが、何か人が変ってしまうような出来事があったのだろうか。
そう思ったが、それ聞くのは不躾なようにも思えた。]
妹がね…ここを訪れているはずなんだ。
半年前に、そう書いた手紙を寄越したきり、何の連絡もない。
[ そんな会話をしている間に、二人は扉の前に立っていた。
ハーヴェイは扉に手を掛ける。だが……引けども押せども、扉は微動だにしなかった。]
――開かない? 鍵でも掛かってるのか?
[ 扉を見回す。だが、通常の扉のような内鍵はない。変りに、鍵穴が覗いていた。]
これは……中からでも鍵がないと開かないのか?
[聞き覚えのない名前。鳴れない響きの名からしてあまり利害関係の話は必要なさそうか]
…ミルチャ?知らないな。名前が本名かどうかは推して知れ。
あんただってそんなもんだろうが。…どうやらお互い狙いは違うようだ。
[同業者に名乗るほどバカじゃない。もう一度煙草に口を寄せて]
俺は…あるものを探している。人から頼まれてな。
詳しくは言えないもんだが。
[彼女の右手に視線を送りながらも自分はそういった物に手を伸ばしはしない。女に武器を向けないのは既に腐った良心の片鱗]
― 2階:人形展示室 ―
[ゆっくりと一体一体の人形を眺めていく。
人形の表情だけではなく、服の縫い目や、
服から伸びた腕や手の細かな作り、また、睫や髪の毛の材質に至るまで、実に興味深げに]
[やがて、いくつか思うところがあるような仕草で、腕を組むと、さらに下の階へと向った]
―一階:玄関前―
妹さんが、ここへ…?
その後、連絡が途絶えた…?
[この屋敷を訪れた頃、ハーヴェイに妹がいる話は聞いていた。
確か、両親が離婚し、離れ離れになったという――。]
(確かめるって…
この屋敷に、妹さんがいるって事…?)
[生まれる疑問。
しかし、その疑問はすぐさま忘れ、シャーロットはハーヴェイの発した言葉に、焦り始める。]
え…っ?
開かない、の…?
(これは……中からでも鍵がないと開かないのか?)
待って。
昨日、私がここを出た時は、鍵なんてかかってなかったわ。
それに、その後、カミーラさんが来た時だって、メイドが扉を開けたけど、鍵なんて持ってなかったわよ。
[そう言って、シャーロットはハーヴェイに力添えする。
しかし、やはり扉は開かず、中から鍵がかけられていたのだった。]
[老人が覗くのはどこからか。
しかし両の目は確かに二人を捕らえている]
…逃がしませぬよ、お二方。このわしが叱られてしまいますでのう。
[老人の呟き、二人に聞こえることは無いだろう]
[名前を出したときの反応でギルバートが追っ手とは無関係と判断]
あるもの、ねえ。それじゃ何だかさっぱりわからんね。それは人形なのかい?そこだけでもはっきりしてもらわんと困るね。
あと……この家の至るところで視線を感じるんだが……あんたは気付かなかったか。
依頼内容をそうべらべら喋れるか。
ただ…お察しの通り人形だ。ここのからくり人形…いや、自動人形。
盗むんじゃないがね。不思議な依頼さ。
…視線?……あぁ、俺の気のせいかと思ってたな…。
あんたも感じるか。
この屋敷、聞いたところでは人間は10人もいないらしい。
なのに感じる視線の数は異常だな。まるで人形に見られてるとしか思えない。
[シャーロットは、精一杯の力をこめて、扉に手を掛ける。
やはり、扉はびくともしない。
シャーロットは、焦る瞳でハーヴェイへと視線を移そうとした。
その時――。]
こ、これ……
血……?
[シャーロットの視線の先にある、赤い''もの''。
扉の裾のつくそれは、辿っていくと、屋敷の中へと続いているのであった。
まるで、何かを引き摺ったように――。]
な、なにこれ……
やだぁぁぁああ!
[シャーロットは、ハーヴェイにしがみ付き、その胸で目を覆った。]
ほう。やっぱり。
後もう一つ。カビ臭さに紛れちゃいるが臭うぜ。
あたしのいた孤児院では栄養失調の子供が死んだら無造作に敷地に埋めてたんだ。その孤児院と同じ匂いがここには立ち篭めてやがる。
人形ってことだが、ここの屋敷で死体の処理を請け負っているってことはないか。人形に仕立て上げてしまえばそこに死体があっても誰も気付かない……
[当たらずともいえど遠からずな線を突いていたが、哀しいかな、彼女は彼女の世界の常識でしかものごとを考えられない]
人が腐った匂い、か。
…ふぅん。まぁいい。あんたには話しても取り乱すことはなさそうだ。あの小娘は夜におねしょでもしそうだったなぁ。
この屋敷には噂がある。高名な人形師。彼が作ったものは生きた人形としてとても評価されていた。…が、評判には黒い噂が付きまとうもんでね。お察しの通り、人を殺して材料にするなんて噂が立っていた。多分この森での行方不明者があまりにも多くてそうなったんだと思うが。
……だが、あながち冗談でもないらしい。
― 2階→1階 ―
[腕を組みながら階段を下りていく]
(なんだろう…さきほどの…)
[ちらりと天井に目をやりながら、しばし考えこんではみたものの、皆目わからず]
まあ、いいさ。
[ゆっくりと組んだ腕を解き、1階へ降りてゆけば玄関の方から人の声が聞こえて]
?…なんだ、あの声は
[怪訝そうに眉を寄せると、声の聞こえる方へと足をむけた]
[カミーラは目を細めてギルバートの話を聞いている]
ふむ。その話が本当ならあたしは目的と手段を逆に考えてたってことになるな。
本当だとしたら……リアリティの追求ってやつかね?
それとも生きた人間の意志を奪い、物言えぬ人形に仕立てることを無上の喜びと感じるド変態か。
別に驚きゃしないさ。
[そこでシャーロットの悲鳴を聞き、弾かれたように立ち上がる]
何だ?
[悲鳴が聞こえる。扉の付近] [あの少女]
[血を見られたか] [次は誰の血だろうか]
[老人は玄関へと赴く]
[手には一つの操り人形]
[後ろに控えるからくりの犬]
そこにいらっしゃるのは…シャーロット様…ですかな?
[ 扉は、二人がかりで押しても引いてもびくともしない。]
だめだな、開かない。
カミーラが来た時は開いていた? その時がたまたま閉め忘れたか、今回がたまたま鍵を掛けたのか……
[ だが、あの隙のない仕事振りの老執事に、そのような「たまたま」があるのだろうか?]
「こ、これ…… 血……?」
[ 扉に掛けた力を緩め、ひとつ息を吐いて視線を落としたシャーロットの言葉が耳に飛び込む。その視線を追う。分かりづらいが、黒い床にてらりと光るものがある。]
「 な、なにこれ…… やだぁぁぁああ!」
[ しがみつくシャーロットの視界をを塞ぐようにその頭を抱える。
血の跡を目で追う。階段の向こうへと続いている。その先は?
眉をしかめる……一体何があった?]
さあね。ここの主人が何を考えてそんな道に走ったかはしらねーよ。
俺には興味のない世界だ。殺したい奴は殺しとけってか。
ガキの死体に麻薬詰めて運ぶ奴とかとそう変わらないと思うしな、俺は。
[ふ、と煙を吐き出すと響き渡るシャーロットの悲鳴。同時にカミーラがふと立ち上がる]
…あん?何だ?
― 1階:玄関前 ―
[人の声に駆け寄ってみれば、玄関扉の前で長い髪の女性が青年に抱きついていて]
…お邪魔してしまったでしょうか。
…なんて、そんな悠長なことを言ってるような事態ではなさそうですね。これは血…?
[目の前にいるのはこの屋敷で初めて会う客。
こんなときではあるが、手早く自己紹介をしながら相手の様子をうかがう]
あ、わたしは、ナサニエル・ラメド。
旅の人形遣いでして…昨夜からこちらへ泊まっているのですが…さて…どうしたものか…
[訪れた屋敷で警察沙汰にでもなるのは得策ではない、と、そう思いながら]
【図書室】
……?
[どこかから聞こえてきた女性の悲鳴のような声。
ぱらぱらと手元で興味なさげに眺めていただけの本を、ぱたんと閉じる。]
……。
[しばらくそのまま、耳をすませて注意深く辺りの音を拾おうとする。
数人の乱れた足音、騒ぎ声。
それが段々と、玄関の辺りに集結していくようだ。
特に慌てる様子も無く、本を元の棚にしまうと図書室をゆっくりと出る。]
[シャーロットは、大きく身を震わし、ハーヴェイにしがみついている。
瞳は強く閉じられているが、今も尚、視界が赤いままだった。
暫し、シャーロットはハーヴェイに身を任せていた。
その時、一人の男の声を耳にする――。
その男は、自分の名を名乗りながらも、事の状況が分からないでいるようだった。
そして。]
「そこにいらっしゃるのは…シャーロット様…ですかな?」
[聞き覚えのある声。
ここに来てから、何度も耳にした声だった。
シャーロットは、ハーヴェイの胸から顔を少し離す。
そこには、一体の人形を手にしたモーガンの姿があった。]
モーガン、さん……
[そう一言、小さく呟く。
おそらく、ナサニエルと名乗る男は、モーガンが発した名から、シャーロットの名を知るであろう。]
[音も無く玄関に近づく老人。
目の前にあるのは泣き崩れるシャーロット。それを宥めるハーヴェイ。そしてナサニエル]
……おやおや。どうされましたかの。
何か怖いものでもご覧に?
あまり大きな声を出されると困りますな、シャーロット様。
[老人の声音、幾分咎めも含まれる。それを抱きとめるハーヴェイへも同じような視線を送り]
…お外に出られるおつもりだったのかの?
[コツコツと、靴音を小さく鳴らしながら玄関の方向に歩いていくと、そこには見知らぬ顔がまた増えていた。]
(……七人…目。)
[心の中で小さく溜息を吐きながら、ナサニエルと名乗った青年を観察するように遠目から見た。]
おい、どこに…
[行く先は勿論シャーロットの元だろう。
めんどくさいと思いながらも重い腰を上げて付き合うように玄関へ。
そしてその光景を見て僅かに目を見開いた。
勿論抱きついているシャーロットではなく、床にある血の跡に]
― 1階:玄関前 ―
[ゆっくりと顔をあげた女性はシャーロットというらしい。長い髪の美しい女性と認めたが、今はただ事態が把握できずに、自分はその場を見守るのみで]
…。こちらのご主人には人を驚かす趣味がおありなのでしょうか。
オートマタの動きだけで、人を感嘆させるに充分ではありますがね。
[血の道へ視線を投げながら]
…ここまでする必要はないと思いますが…。
[そう呟いていると、わらわらと他の客が集まってきた。一体なにがあったというのだろうか。]
[続々と見知った顔が玄関先に揃って来た事に気付き、いつもの修道女の顔に戻る。]
……これは…。
一体どういう事ですか…。
[目の前の血溜まりに心底驚いたように、「おお、神よ…」と言いながら、胸の前で十字を切った。]
か、帰ろうとした、の…
ハーヴェイさんが、送ってくれるって……
そしたら、鍵が…掛かってて……
[嗚咽交じりの声で、シャーロットは言葉を紡ぎ出す。
血を見た事は、言葉にならず、モーガンには届いていないかもしれない。]
か、カミーラ、さん……
[カミーラの姿を見た途端、シャーロットの泣き声は更に大きくなる。
続々と集まる人の中で、シャーロットは暫し泣き続けていた。]
主人の趣味?
ほっほ。そんな、戯れでございませぬよ。
主人がこのようなことをなさるわけございますまいて。
床が汚れでもしておりましたかな?後で掃除しておきましょう。
ささ、外は霧がひどうございます。お早くお戻り下され。
[老人の言葉は本気か嘘か。それでも目に宿る光は─]
血…ですかな?
きっと…あまりに皆様がお元気でおられますからな。
人形が悪戯したのでしょう。
だから人形の前ではお静かに、と申しましたのにのぅ…。
驚かせたお詫びに仕置きをせねばなりますまいかの?
…爺さん、何なんだこの血は。
まさか…人間の血じゃないよな?
[人が殺されたのならそれは誰だ?今ここに全員そろっているじゃないか。外から誰か…来たのだろうか?]
「これは血…?」
[ お邪魔してしまったでしょうか、という軽口に答える余裕もなく、ハーヴェイはその言葉だけに頷き。ナサニエルと名乗ったその男に視線を送る。]
僕は、ハーヴェイ・ウォルターズ。
ここには取材で来たんだけれど……そう、確かに剃れど頃ではないね。
[ そう言った時、そこに声を掛けるものがあった。
抑揚の無い口調。慇懃なる老執事。
操り人形を手に、普段連れ歩くメイド人形の姿は無く、変りにからくりの犬を連れ。
そして、更に言葉を続ける。
その言葉に答えるシャーロットの声はモーガンに届いているか。確かめるようにモーガンに視線を送りながら、庇うようにシャーロットの背に腕を回す。
次々と、人が集まる中、モーガンの言葉が続く。]
[なんでもない、といった様子の老執事の様子に]
…はぁ、そうですか。
床のこれは…
[(血ではないのか?)と思いながらも]
まあ、その。狩りがご趣味なのでしたら、獲物は裏口から入れていただきたいものですね。
若いお嬢さんもシスターもいらっしゃることですし。
[そう言って、自分も視線を床から外す。
嫌な考えが頭から去るようにと]
元気だと人形が悪戯、ね。
[ギルバートに向かって]
これは明らかに血糊ではなく、少なくとも生きものの血でしょう。匂いはごまかせませんよ。
[モーガンに]
ところで、この扉開けてくださらない?お嬢さんが帰れないで困っていらっしゃいますわよ?
霧?そんなもの、何とでもなるでしょう。いたくない人間を無理矢理引き留める理由は何なのかしら?
[ナサニエルの言葉に眉をしかめ、老人に向き直る。]
…趣味?悪戯?
それにしてはあまりにも悪趣味過ぎます…。
客人をこんな目に合わせるのが、この家の礼儀だというわけではないでしょうに…。
[言いながら、頭の片隅では違う思考を巡らせていた。]
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