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村の設定が「役職希望無視」のため、全ての役職希望が無視されます。
クスクス、笑い声が響き渡る。
その中で、一つ。聞き取れる声があったことだろう。
『―――――――』
誰の呪いか。
誰の願いか。
君たちは、「人ならざる力」を手に入れてしまったことを理解するだろう。
その力を使うか、使わないか。どのように使うか。
それは、君たちの自由だ。
どうやらこの中には、村人が1名、占い師が1名、霊能者が2名、狩人が2名、ハムスター人間が1名、C国狂人が1名、狂信者が1名、智狼が2名、公証人が1名、憑狼が1名、求婚者が1名、闇狩人が2名いるようだ。
/*
屋敷の主人が取り出した小瓶を見てから、しばらくまともな記憶がない。
自分が何を口走ったのか。
彼が小瓶を取り出してから、いくらの時間が経ったのか。
あぁ、分かりはしないが。
アレが−−世に聞く、願いの。
*/
「ご主人……じゃなかった。ご友人?
本当に貴方の言うところの友人、という関係で私たちが間違いないのでしたら……"取引"というのは、いかがでしょうか?
およそ、友人同士で行われるやりとりを指す言葉では、ないと思うのですけれども」
/*
じっ、と一点を−−小瓶を見つめながら、エーリカは彼の提案の是非を問う。
*/
「……アン?」
ポカポカとマクラを殴っていたアンが、ピタリと動きを止める。ヤバい、マズい。そんな予感。
アンはスッとマクラから離れ、ジッとドアを向いた
「デスヨネー」
ベットを抜け出し、アンの導くまま、ドアの前まで着く。次にドアをポカポカと叩き始める。
「はいはい、ちょっとまってねー」
鍵を開けて部屋を出る。ふと部屋のプレートを見ると、やはり医務室だった。何故何もないのか。既に誰かが部屋に入り全て回収したか、初めから何もなかったのか。
アンの視線は横を向く。オバケ屋敷だと聞こえた方向。やはり、そうなのか、そうだったのかと意を決して歩み始めた
「……何、今の声は……?」
辺りを見渡しても声の持ち主はいないようだった。
不気味さを覚えながらも、目の前の男───レヴィンの様子を伺った。
「やあやあみなさんコンバンハ〜」
ひらひらと手を振りながら愛想を振りまく。その間もアンは真っ直ぐと視線を変えることはない。
それに従い、トッドも歩き続け、止まった。
ピタリと止まった先は、あの異質な、顔色の悪い人物の目の前。……なにやら小瓶を持っているようだ。
>>レヴィン
「えーと、それ、貰えませんかね?」
アンの手は両手で受け取る準備をしていた
『ーー、ーー、ーー』
誰かの声を聞いた。
耳元で囁くようなほんの幽かな声。それでもその声は真っ直ぐに彼女の芯を打った。
「……」
すとん、と胸の奥で音がする。
頭では何も理解出来ないほどの圧倒的なものが、アウローラの心臓を握り潰さん勢いで揺さぶった。
「……ああ」
「あなたは」
>>トッド
「あーーいえ、お気になさらず。……ええと、確か初めましてですよね。私はアイザックといいます。あとでゆっくりお話しましょうね。」
反射的に穏やかな笑みを向けて、ぺこりと会釈をする。
みんなあの小瓶が欲しくて仕方がないのだろう。僕だって譲る気はないが、チャンスというのは平等に与えられるべきだ。
わずかばかりに緊張した面持ちで、レヴィンに向き直る。
>>8 レヴィン
「……まず、僕の身の上話には、欠かせない登場人物がいます。その人物について、この屋敷の当主たる貴方に伺いたいのですがーー貴方はエズレル・ツァデックという男をご存知でしょうか?」
百年も昔に存在していた男のことを、覚えていないと言われればそれまでだ。
けれどまずは、僕の話をする前に、その男のことを確かめなければならなかった。
「楽しませたら、ねえ」
友人とは、利害の一致で成り立つもの──。
なるほど、この男と俺はきっと『友人』になれたとて親しくはならないだろうと思った。もちろん、双方がそう思ってるのなら、それは幸せなことなのだろうが。
取り敢えずは様子見だ。俺は話を始めた人の良さそうな男の顔を眺めた。
「…………願いには相応の対価がいる」
へぇ、それが願いを叶えるヤツなんだ。
[小瓶、そしてこの人数。
勝ち取らなければいけないのは明白だった。
しかし、どうやって?
レヴィンの言う通り、
いちばん楽しませれば良いのだろうか?
語り出すアイクをぼんやり見つめながら、
考えている]
…話し合い?言葉の力?
そんな生ぬるいはず、ないでしょ。
[クスクスと、小さな声で。
どこからともなく聞こえた声も、
きっとそれを示していた]
>>0:129 レヴィン
瞬く間というのはまさにこのことなんだろう。
そんなことを思いながら頭は状況を飲み込めないでいた。
先ほどまでホラーじみた鬱蒼とした洋館は、瞬きをして目を開くと色を宿していた。
そして更に一つ顔ぶれが増えていた。
そいつは自分達を友人と言う。
「ここ数年で友人になったやつ…ではないよな。
俺は願いを叶えたくてここに来た。
レヴィン、でいいのか?
俺はライと呼んでくれ。よろしく。」
誰かにそう名乗っていたように聞こえたことを確認しながらそれに挨拶をした。
>>0:179 レイコ
「運命で片付けるには厄介そうな臭いがするけどな。
レイコ…レイコな。
ああ、よろしく。」
名前を呟きながらレイコの名前と特徴をメモに書くと顔を上げて微笑んだ。
昨日は慣れない森を歩いて疲れていたのかいつのまにか目を閉じていたらしい。
ーー
一つ欠伸をしながら起き上がり周りを眺めると知らない場所にいた。
「………どこだここ。」
それなりに位の高い貴族が住んでそうな洋館だ。
自分にそんな知り合いはいないはずだが。
そして周りには10人以上の知らない人間がいた。
そこまで考えて胸ポケットにメモ帳が入っていることに気付く。
律儀にメモを取る習慣もないはずなのになぜ持っているのかわからなかったがとりあえずそれを開いた。
そこには自分の字で今に至るまでの経緯が細かく書かれていた。
集中して読もうとするが頭痛がしてきたので休み休み現状を理解する。
「あー…そういうこと。」
…………?
/*
ざわり、と部屋の空気が動いた。
視線を集める何かが場に現れた。
どくり、と瞬きの間心臓が止まった。
血管の中に何かが潜り込んだ。
*/
>>レヴィン
「エズレル・ツァデックは僕の高祖父です。ですから貴方にとって、僕ーーアイザック・ツァデックは親友の子孫ということになります。」
親しい友の子孫が百年後に尋ねてくる。それは一体、どんな感覚なのだろう。単に懐かしさを覚えるのだろうか。それとも、もっと他の感情が肺を満たすのだろうか。
見るからに変わり者の彼は、もしかしたら後者かも知れないと僕は思った。
「高祖父の手記には、貴方のことがしきりに書かれていました。“森の奥の屋敷に面白い男が住んでいる”、“引きこもってばかりいる変人だが退屈しない”、“女の趣味だけはいい”ーー。」
僕はまず、彼の興味を引くために高祖父の話から始めた。
ツァデック家はもともと市井の人間であったが、高祖父の代に莫大な財を築き上げたことも話した。
金とそれに付随する権力を手に入れた高祖父が、名声を得るために爵位を買い、とある街の領主となったこと。美しい女と結婚をして息子にも恵まれたこと。
友人である彼なら、既に知っている話かも知れないが。
「高祖父は名声のためなら努力を惜しまない人間だったそうです。男爵となってからは、貴族社会に慣れるために積極的に社交界に足を運んでいたとか。……けれど、貴族たちの態度は冷ややかなものでした。」
「“金で爵位を買った卑しい家”ーーそう影では囁かれていたようです。」
友人……友人かぁ。
ぜんっぜん心当たりないや……困ったなぁ〜。
楽しませるって何なんだろ。
はぁ……よくわかんない状況になっちゃったなぁ。
高祖父のもとから逃げ出して、ようやく妻と息子は新たな人生を掴める筈だった。
けれどその結果は、駆け落ちをした相手に金を騙し取られ、二度に及ぶ夫の裏切りに絶望した妻の自死。
息子はそれでも一人で必死に生きた。
もしそのまま彼がツァデック家に戻らずに生きていたら、ひょっとしたら彼だけでも、それなりに悪くない日々を送ることができたかも知れない。そうして、僕やレティシアが生まれることもなかった。
けれど彼は、六年後に父の死の報せを受けて、屋敷に舞い戻った。父に虐げられた恨みを忘れたわけではなかったが、財産は守らなければならないと感じたのだろう。
「詳しいことまで分かりませんが、その高祖父の死はこの屋敷で起きたものだと、調べて知りました。」
そう挟んでから、彼にとっては親友の息子ーー僕にとっては曽祖父にあたるローマン・ツァデックの話を再開する。
ふふふ。語るもの知らぬ方々よ、どうぞあがきなさい、求めなさい。
私が見物人ですって?
あなた方こそ、私とレヴィンの物語を見物する側だというのに。
ああレヴィン、千の言葉を求めますか?
万の誓いを求めますか?
ただひとつの私を求めることを、いくつの夜私は願い続けたでしょうか。
「ツァデック家に戻った彼は、立派に当主としての責務を果たしていたそうです。妻や息子、娘にも恵まれて、父のようにだけはならんと言い聞かせながら、家族を大事にして暮らしていました。」
ーーしかし、血は繰り返す。
「意識すればするほど、嫌悪すればするほど、人はその対象に知らず知らずのうちに近づいてしまうものです。それが、血であるならば尚更。」
僕は曽祖父の人生の結末を話す。
なんてことはないーーあれだけ厭っていた父のように彼はなり、金でなんでも解決し、溜まった鬱憤は暴力で晴らした。
よくある話。家庭内暴力を受けていた子もまた、自分の子に同じことをしてしまう。
そうして娘と息子に恨まれた彼は、ヒ素によりあっさりと殺された。
>>26 レヴィン
/*
突如現れた存在だというところも含め、エーリカはあぁ、と嘆息する。
人の腹の中から出てきた人でもなければ、ならば言語の出典も違う。根本から、彼の言葉と、少なくともエーリカの言葉では、引用する辞書が違うのだ。
レヴィンはエーリカを含めこの場のものを『友人』と称したが、彼女はレヴィンを指してこういうだろう。
『邪悪』だと。
*/
「名を知られるのは出自を知られる、でしたかね。
相手の過去を−−弱みを喋らせて優位に立つ。
とても明快で分かりやすい趣味です。
それでしたら……私は力不足かもしれません。
何一つ面白いものなく、この場に呼ばれたんですから」
「そうして僕の家は廻りました。
曽祖父を殺した兄妹は、その境遇から互いを愛し合うようになり、僕の父を産んだがーー丁度その頃、領土の不作が続いて……だから彼らは父を産むだけ産んで、屋敷に置いて出て行ってしまったんです。」
ここからは、僕に大きく関わってくる話だ。
レヴィン・メルゼブルクが話半分に聞いているのは分かっていたけど、それでも僕は語り続けた。
「残されたのは借金だらけの屋敷。父は苦悩していました。実の両親が兄妹同士で関係を持っていたことにも、名状しがたい思いを抱いて……それでも、妻をもらって僕と妹をもうけて、幸せな家庭を築こうとしていた。」
そう、最初のうちは。
ーーツァデック家は呪われている。
屋敷を手放さなければならなくなった父は、酒に溺れて僕たちに暴力を振るいながらそう言った。
/*
隣では、まぁしばらくは退屈しないであろうとある一家の話が修道生の朗読によりまるで懺悔のように謳われているが、聞くところ彼の家も、またレヴィンという人物の家も相応に翳った歴史があるらしい。
−−あぁ、なるほど。
だから私は、この屋敷に呼ばれたんだろう。
頭に響く誰とも知らない声に、私の願いはここにある、とそう呼ばれた。
ある程度の納得を得られた。
ゆくゆく全容も知れると踏んで、残る疑問は二つ三つ。
私の今のこの格好。
そして時々失われる意識と−−今朝に聞こえたまた別の声。
*/
「それでも暴力は耐えられました。僕が何より恐れていたのは、優しかった父が、僕たちに暴力を振るうことではない。……僕もこの血に呪われて、いつか愛した誰かに同じことをしてしまうかも知れない。僕が恐れていた相手はーー未来の自分でした。」
やがて、ツァデックは没落した。
その折に、父が何年も妹に性関係を強要していたことを知り、僕は妹の手を引いてあの男の元から逃げ出した。
そして、拾われたのが今の修道院。
僕は修道院での暮らしについて、レヴィン・メルゼブルクに話した。
自給自足で、自分たちで作った木靴を履いて、農耕や牧畜を営む。沈黙と祈りと労働に象徴される生活は、厳しさもあったが、ともに安らぎも与えてくれた。
「けれど、妹のレティシアの心は救われなかった。」
「ある日レティは、庭にある草花を摘んで毒薬を調合し、自らの命を断とうとしました。」
あの日の光景を、僕は何年経っても忘れないだろう。
本当は定められた時以外、修道士同士の接触は禁じられていたけれど、その日は妙に胸騒ぎがしたのだ。
半身を喪うような焦燥感ーー実際あの時、僕はレティを失いかけたのだが、ともかく床に倒れる妹を見て、僕は思ったのだ。
ーー強く強く願ったのだ。
そこまで話して、一度言葉を切る。
>>レヴィン
「神に仕える者は生きたいように生きるのではなく、神が命ずるように生きなければならない。つまり、一切の願望を持つことがご法度です。
ミスター・メルゼブルク。そんな僕が駆られた願望とは何か、分かりますか?」
/*
「それ」が欲しければ取引として楽しませろと言う。
己とお前たちは友人であり、友人とはそういうものだ、と。
異様だ。異様だし、惨めだ。
異様なものは悍ましいし、惨めなことは許しがたい。
それでも、そのために真実かどうかも分からぬ噂話を辿って遥々来た。
発ってすぐに替えた靴底は擦り切れはじめている。
*/
/*
すでに口火を切った者がいて、それは焦りとともに利き足を踏み出させるには十分だった。
けれどそれは一歩で止まった。呼び止める別の声があったからだ。
*/
…………チッ。
「……。僕の願いはこうです。」
口の中に溜まった唾液を飲み込んで、僕はゆっくりと口を開く。
レヴィン・メルゼブルクがこうして現れるまでは、隠し続けようと思った願い。
長ったらしい身の上話をするのは気が重たかったし、妹の病気ということにした方が同情を引けると思ったから、ノエルさんには嘘をついたがーー。
「“過去から現在、それから未来まで、ツァデックの血が流れる者の人生を全てなかったことにしたい”」
「このお屋敷に来てからこんな事ばかり!」
理解を超える出来事続きで頭を抱えた。しばらくそのまま考えた後、顔を上げ状況をみる。
あの小瓶の持ち主はこんなに大勢の話を聞いていくつもりなのか、自分が話せる番は回ってくるのか。心配。
しかし、 その時までは話に耳を傾け待つ事にした。
「楽しいお話を考えておかなくちゃね。」
>>ミト
…ふふ、ひみつ。
[唇に人差し指を当てて。]
そうよね、あたしも。
小瓶を手に入れたかっただけで、
奪い取りたかったわけじゃないのよね。
>>レヴィン
「……主は、自死することを何よりの大罪としています。自ら命を絶った者は、罰として永遠の呪いを受け、天国への門は閉ざされてしまう。別にそれはいいのですーー今更僕たちが楽園へ行けるなどと思ってはいません。」
僕は倒れる妹を見た時、直感した。
どんなにあの家から離れようと、僕たちが本当の意味で悪しき血の呪いから解き放たれることはないと。
それこそ、自殺したとしても、汚名は残り続ける。そんなのは、耐えられなかった。
「存在そのものを世界から消したいという願望は、きっと自殺よりも罪深いものです。けれど、僕たちにとっての希望は、もはやそれしかない。」
そして僕は、穏やかな表情を浮かべる。
こうして神様以外の誰かに懺悔するのは初めてのことで、それが僕の姓を知る者だったから尚更、僕は少しすっきりした。
「……“どんな願いも叶う魔法”があれば、僕たちの人生を最初からなかったことにできる。こうして出会った人たちからも、僕たちの存在はなくなる。
僕の父も、祖父も曽祖父もみなーー貴方の友であるエズレル・ツァデックという存在でさえ初めからなかったものとして扱われ、この血を知る者は未来永劫現れない。」
それが僕とレティシアの願いだ。
こんな願いを叶えられるのは、魔法しかない。
「以上が、私の話です。……少し話しすぎましたね。聞いてくださり、ありがとうございました。」
>>レヴィン
「キッチンがあったので、お借りしました
事後報告ですけど、友人という割に私達にお茶を出してくれるメイドや執事もいませんし、いいですよね?
後、話の事ですが自分の話でなくてもいいですか?
私、アイザックさんみたく壮絶な人生を送ってないし、家柄もふっつーの家なので……自分の話となるとすぐ終わっちゃうんですけど」
ずるいなあと思う。
そんな「面白い」話をトップバッターにされてしまったら、僕の話なんてきっと面白くないだろうな、とも。
──そうは言っても、作家でもなし。
「まあ、話してみるしかないかなあ」
>>ノエル
「紅茶、美味しいです。ありがとうございます。」
と改めて礼を言ったあと、逡巡したのちに苦笑しながら口を開いた。
「不治の病を患った妹がーーなんて、嘘を言ってすみませんでした。」
楽しませるって言ったって、
そんな長い話じゃないのよね…
楽しくないし。
あたしも紅茶飲みたいな。
カップケーキとかあるかな?
[キッチンに向かうことはなく、
側にあった高級そうな椅子に脚を組み座る。]
>>56 アイザック
「ならよかったです
立派な屋敷ですし、きっとよい茶葉だったんでしょうね」
勝手に拝借した手前、聖職者にそう言うのはと思ったが、いずればれるので隠さず言った。
どこか気まずそうな彼に、力の抜けた笑い方をし、明るい雰囲気を身に纏うようにした。
「あははっ、いいんですよー!気にしなくて!
私、最初に言ったじゃないですか、初対面の人に不信感はないんですか?って!
私の言った事、守ってくれたんですよね?」
こういう時は無神経な女を演じた方が彼の気も楽だろうと、鞄の中からまだ余っているクッキーを一枚取り出し、紅茶と共に食べ始めた。
「さて、誰も話さないようなら私が次鋒を担っても良いかな?何しろ、こうやって皆の前で話すのは久しぶりでね、せっかくの機会だ、逃したくないものなのだよ」
そう言い放ち、辺りを睥睨する。誰も異議を申し立てる者が居ないのなら話し始める事としよう。
猫ちゃん!!
ちょっと待っててね、
ぬるめのミルクにしてくるから。
[ずっと飼ってみたいと思っていた、
白くてふわふわの猫。
何故か喋るが、
要求がわかり易いのは飼いやすそうだ。]
「そう、私は漁師だった。またある時は王だった。戦に追われる難民だったこともある」
「……もちろん人間の漁師さ。それとも猫の漁師というものを見た事があるなら話は別だが。私がそうかもしれないが如何せんこの手では自慢の竿捌きを見せる事は難しくてね。だが信じて欲しい。あの頃の私は村一番の釣り名人だったんだ」
「少し話が脱線したねぇ。何の話をしていたのだったか」
ミルクを一舐めして話を続ける。
「事の発端はある夜の事だった。まだ人語を解さず、こうやって話すこともできない名もない猫だった頃の私は、ある屋敷のそばで丸まって眠る事にしたんだ」
「その日の夜、私は夢を見た。海ばかり見える国で、人間として産まれる夢を。私はヒューズと名付けられ、釣りを教わり、釣りをして生計を立て、番いを娶り、子をもうけ、死んだ。おおよそ50年くらいだろうか。私はヒューズとして暮らしていたんだよ」
「ヒューズが死んだ後、私はある聖職者の娘として産まれた。リズという名を授かった。私は一生を聖堂の中で暮し、孤児院の子に囲まれ死んだ。
リズが死んだ後、私はとある王子として生を受けた。名前は……名前は何だったか。とかく王としての生は贅に塗れ、酷く愉快なものだったことは覚えている」
「新しい人間として生を受け、生きて、死ぬ。死ぬとまた新しい人間として生まれ変わるそして死ぬ。何度繰り返したかはようとして覚えていない」
「だが気が付くと……私は猫の姿で草むらに臥せって寝ていた」
「全て夢だったんだよ。ただの夢だった」
「変わっていたのはこうやって今話しているように人語を解すことのみ」
「夢の中とはいえ、何年何十年も人として生きてきたからだろうか。3年に満たないこの猫の身体にどうにも違和感を覚えて仕方がないのだよ」
「だから……噂を聞いた時は飛び上がるほど歓喜したものだ。その噂が本当なら人間になれるかもしれないとな」
「私の願いは"人間になる事"だ。あの五本指の感触をもう一度味わいたい。肉球は不便でならん」
「僕は、森の中を歩いていたら、ふらふらと立ち寄ってしまいた、と言いましたね。嘘ではないのですが、言わなかったことがあります。
実は、夢で何度も何度も、同じ道を通って此処に来ていたのです。いつ頃からかは、はっきりとは覚えていません。毎日見るわけでもありません。
しかし、気がついたら、来たことも無い場所のはずなのに、この屋敷までの道順はすべて頭に入っていました。
獣道をかき分け、特徴的な特徴的な枝の木の脇を通り、蛇のようなツタをくぐり、人の顔のような模様を持つ花を踏みつけ、しばらく歩くとこの屋敷が見えるのです。
そして声が聞こえる。『ここに来れば手に入る』と」
思い思いに語り出す人たちを見て、考え事を続けていた。
自分の「願い」とは何か。自分は何に導かれて此処に来たのか。きっと理由があるはずだから。
語りを終えた猫が与えられたミルクへと口を付けるのを見て、無意識に近くへとしゃがみ込み首を撫でる。
>>ヒューズ
「こんにちは、夢見る猫さん」
話を聞きながら、アンと遊んでいる。
楽しませる話…というので何か特別、頬の上がる話をするものだと思ったが、そうでもないらしいなぁと思う。
「まあ、他の人の話も聞いてみたいよねぇ」
と、いうことでトッドはアンと手遊びをやめない。
とりあえずここにいる人がどんな会話で『楽しませようとするのか』気になっていた
「実際に訪れたのは、今日が初めてです。なぜ来たかといえば……好奇心もありますが。『手に入れたいもの』がありましてね」
ふう、と息を吐く。
「この屋敷に来るのよりも多い頻度で、僕はあるひとの夢を見ます。つらいとき、苦しいとき、楽しいとき、さみしいとき、あのひとはいつも逢いに来てくれる。
それなのに、顔も、声も、思い出せないんです。目が覚めたら──ええ、あのひとは、夢でしか逢えないもので」
「不思議なことに。逢うたびに、ちゃんと覚えているんですよ。あのひとが、あのひとだということに。
そして、ひどく安心するんです。あのひとのやわらかい笑顔に、声に、ぬくもりに。
最初は、夢で逢えるだけで充分でした。それでも、幾度も逢ううち、物足りなくなってきた。
どうしても、直接会いたい。目が覚めてすぐ忘れてしまうなんて、耐えられない。
……夢の中にしか居ない人を引っ張り出すなんて、まさに夢物語だ。それなら僕の持つ、もうひとつの不思議な夢に託してみよう。そう思って、この屋敷を訪ねてみたということです」
「僕からの話は以上。
呪いの系譜を持つ修道士だとか、しゃべる猫だとかに比べればインパクトは薄れますけど。何か、ご興味を持っていただけることがあれば幸いですね」
そう言って一礼すると、すっと下がり他の者の様子を見守ることにした。
/*
昼になった。
まばらに語り始める人と猫との時間を経て、屋敷の中に差し込む日差しも高い。
彼ら彼女らは皆、この屋敷に何か目的を持ってやってきたらしい。
願い、とか。
エーリカは一人、彼らの独白を、懺悔を、夢を聞きながら、
首を傾げていた。
何故ならば、エーリカはおそらく今の所ただ一人、この場に来た者ではなかったからだ。
既に、この場に、いつのまにかいたのだ。
*/
=====
静かに、皆の話を聞いていた。
皆それぞれの想いを持ってここに来たのだと、今更ながら再確認する。
僕の願いがそれと比べてどうか……などと、無意味な思案を巡らせる。
元より願いに大小などないし、僕の願いだって、僕にとっては大切な願いだし。
……でも、こんなところでみんなに聞こえるように言うのはちょっとなぁ〜。
=====
>>72 アイザック
またもや謝罪する彼に、きょとんとした表情を浮かべる。
競争社会の今のご時世に、同情心を引こうとしたりするのは日常茶飯事のようなものだ。
やっぱり、この人は純真なよい人間だと笑みを深めながら思った。
「いやー!うっかり信じちゃうところでしたよー!
アイザックさんもお人が悪い!」
猫ちゃんやギルバートさんが各々話をするのをアイザックさんの隣で聞いていたが、彼から問われて、顔だけそちらに向ける。
「……命を賭ける、ですか
幸運な事に、今まで命を賭けた事なく生きてきたので分かりませんが……幼い頃から、今まで未練たらたらで諦めきれない夢ならありますよ」
にっ、と幼子のように無邪気に笑うと、ティーカップを近くのテーブルに置き、軽やかな足取りで前へと歩み出す。
誰も異議はないようなので更に一歩踏み出し、レヴィンの前へと立ち、お辞儀をする。
面白い話を今まで考えていたが、要は自分の願望を話せ、という意図を感じ、やはり身の上話をしようと顔を上げる頃には決意していた。
失礼がないように薄く笑い、はきはきと話し出す。
「諦めきれない夢、か」
レヴィン・メルゼブルクの元へ歩み出したノエルさんが、一体どんな話をするかは分からない。
けれども僕と違って、きっと彼女の口から出てくるのは、健全で美しい夢なのだろうと思った。
幼い頃からずっと修道院にいた僕は、二十八になる今でも携帯の一つも持っていない。
ーーレティシアもそうだ。
レティがもし健全な人生を歩めていたなら、そう考えたら少しだけ泣きたくなった。
「まずは私の自己紹介から
初めまして、私はノエル・リー
ここから少し離れた国で記者をしてます
父は運送会社の一社員、母は製糸工場で働いていた、何処にでもありそうな家で生まれ育ちました
私の幼い頃からの夢は冒険家になる事で、図書館にある冒険小説を読み漁ったり、父に頼み込んで遠くの国へ連れて行ってもらったりと、子供心ながらに強い意思と希望を抱いていたのです」
「しかし、成長するにつれ、世の中の残酷な一面が垣間見えます
学校では非現実的だ、現実を見ろと謗られ、家では危険だから女がなるものではないと、父も母も猛反対してきました
たった一つの夢をここまで批判されるのかと、私は毎日枕を濡らしていました
周りにとっては馬鹿馬鹿しい夢物語でも、私にとっては希望と未来溢れるものだった
家族にとって、一人娘を純粋な気持ちで案じたつもりだったとしても、唯一の味方だと信じていた父と母が女だから、というどうしようもない事を挙げて糾弾してくるなんて、思ってもいませんでしたから」
「悲しみに暮れるある日、私は昔、親戚の家で読んだ手記とそれに挟まっていた手紙の存在を思い出したのです
幼い頃に読んだので、内容はうっすらとしか覚えていませんでしたが、要約するとある屋敷でとある人間の願いが叶ったというものでした
私は、藁にもすがる思いでその事を調べ始めました
表向きは、冒険家になるという夢は諦めた素振りをし、昔から文字を書くのが得意だったので記者になりました
同じく文字を書く職業の作家にならなかったのは、自由に飛び回れる記者の方が都合がよかったからです」
>>94 ギルバート
「……?」
微笑んだまま首を傾ける。
彼の笑顔に少し含みを感じたけれど、結局僕はそれ以上触れないことにした。
ここにいる者たちは皆、言ってしまえば僕にとって願望成就を阻害する存在だ。けれど、だからといって必要以上にぴりぴりすることもない。
願望成就は絶対にしてみせる。
そのためならば、命を懸けることだって厭わない。
でも、誰かを蹴落としたり、憎むようなことはしたくなかった。たとえ願いが叶わなかったとしても、それは自分に流れる血を認めてしまうことになるから。
「ギルバートさん……でしたっけ。君もどうですか、紅茶。とても美味しいですよ。」
「大学を卒業してから、数年という年月が掛かりました
記者という職を大いに利用し、記者をやっていく上で繋がりのできた不動産関連の知り合いや近代の歴史に詳しい大学教授、果てはオカルト編集部にいる同僚にまで聞き込みました
そうして、ようやくこの屋敷にたどり着いたのです
屋敷の連絡先については調べきれなかったので、所在地は分かっていましたから現地へと行き、自分で調べてみる事にしました
幸い、この屋敷は今住んでる場所から何とか行ける距離でしたから、旅行という名目で休みをとりました」
>>97ヒューズ
「うーん、悪魔の使いよりも喋る猫さんの方が可愛くて良いと思いますよ?」
彼の言葉の意味を捉え損ね、ややズレた返答をする。
「貴方は今も、人になる事を夢見る猫さんです。そしてその夢を現実にしようとしている」
「先程も話した通り、私の家柄は何処にでもあるような家
裕福でもなく、どちらかと言えば貧民層に入るでしょう
両親共働きで、一人娘をようやく養える程度の家ですから
私も当然、留年は許されず、国の援助がある学校へ行くように言い聞かされて育ちました
だからこそ両親は、冒険家などという非現実的な夢を認める訳にはいかなかったんでしょうね
表向きは女がなるものではない、危険だと言ってましたが……金が無いから無理とは懇願しない、いい家でした」
そういえばと、彼の話に似た外国の話を思い返す。
確かーー胡蝶の夢、と言ったか。
夢に飲まれ自らが人間なのか蝶なのか、境目を見失う。というような内容であった。
彼が次に人間の手指を得た時、それが現実であるのか夢であるのかを判断する術はあるのだろうか。
そこまでを思い、口にはしなかった。
「私も、分かってはいるのです
このまま黙々と働いて、時期がきたらそれなりの人と結婚して、よい家庭を築くのが両親への恩返しなのだと
でも、どうしても、幼い頃からの夢を諦められなかった
幼い頃に見た話を思い出してしまったばっかりに……両親と上手く折り合いを付け、冒険家になれるかもしれない魔法の小瓶の存在を諦めきれませんでした
だから、私はこの屋敷へと来たのです
……話してて思いましたが、面白い話ではないですね、あはは……お望みなら、記者になってから知り得た面白い事件の話とかは出来ますので、そこも踏まえて私に譲ってくださる話を考えてもらいたいです
他の人達もお待ちでしょうし、ひとまず退きますね
ご清聴、ありがとうございました」
ふふ、外の世界は随分と不自由なことばかりみたいだね。
だからこそ、欲が出るのかな。
ああ、そういえば彼もそうだったね。そういうところが好ましいと思っていたけれど。
「………あれ?」
正座のまま、形を消していた幽霊は姿を現しました。
「祓われて、ない。
ヨカッタァ、みーんな見えるみたいだから覚悟したのに、こっこはやさしい人ばかりだ。
いやなんか、イロイロ重たいモン背負ってる人も多いみたいだけど。
オレの切羽詰まり度も負けないからな!
それは頂くぜー。」
レヴィンが持つ小瓶に目を光らせます。
明るく小狡い幽霊はその能力をちゃっかり使って、レヴィンが示す条件>>0:185もこっそりと聞き届けることでしょう。
「フ、フーン。なるほどナルホド……」
>>1レヴィン
「ヤァヤァ、友人よ。
オレの話は気にならないかい?
見ての通り幽霊だ。他のヤツらとはチョイと違った話をきかせてやれるからさあ、その小瓶を先にね!」
「さて、果たして食材があるのか半信半疑だったけど…やっぱあるんだな」
キッチンへ入るとまずは目当ての食材を揃えてこれからやることのメモを取る。
「俺も食うし…他の奴らも食うよな?
何人いたかちゃんと数えてねえなあ」
そこまで考えて面倒になったので量は適当に作ることにした。
まずは食材を一通り切っていく。
ーー
「…どこだここ。
俺願い事叶えに来たんだけど。
うわ、なんだこの量…ってあぶね!」
なぜか見知らぬ屋敷のキッチンに立っている自分に疑問をいだきながら手元を見ると明らかに10人前以上の切った具材が並んでいた。
そして今正に肉を切っていた。
あやうく自分の指を調理するところだったことに冷や汗をかきながら胸ポケットにメモ帳が入っていることに気付く。
律儀にメモを取る習慣もないはずなのになぜ持っているのかわからなかったがとりあえずそれを開いた。
そこには自分の字で今に至るまでの経緯が細かく書かれていた。
集中して読もうとするが頭痛がしてきたので休み休み現状を理解する。
「あー…そういうこと。」
そうして調理を再開した。
>>アウローラ
「アウローラさんも良かったら、ご一緒しませんか?」
彼女が持ってきくれたミルクを淹れたての紅茶にたっぷりと注ぐと、カップの中で乳白色の美しい層が出来上がった。
僕はそれを砂糖と一緒に軽くかき混ぜて、ゆっくりと口につける。
どこか気取った感じの味わいが、まろやかに変わった。
「……うん。美味しい」
>>118 ギルバート
「あははっ、確かに見えるかもしれませんね。これで屋敷にかぼちゃが飾ってあったら完璧だったのになあ。」
ハロウィンパーティーと聞いて、思わずくすくすと笑う。
「ギルバートさんは、催しものは好きですか?……仕事柄、参加する機会は多そうですが。」
アウローラに撫でられながら辺りを見回す。どうやら私たちが身の上話をしたのを切欠に皆何かと語り始めているようだ。しかし、あの主人は本当に小瓶を渡す気があるのだろうか?私は話せること自体が稀有なためつい一席ぶってしまったのだが。
すくなくともこの流れが続くのなら、すぐさま乱暴狼藉をはたらくものは出てこないだろう。そこだけは主人に感謝しておかねばなるまい。格闘技を齧ったことはあるが、この姿でできるかどうかは怪しいと言わざるを得ない。
そして撫でられるのが嫌いとは珍しい子供もいるものだ。子供の方が撫で方に遠慮がなく、無作法なものであるのに。
[ベガの方を不思議そうな目で見つめている]
誰も話さないなら、僕が次は話してもいいかな。
[1歩踏み出し、館の主の前に出る。自分の話が面白いと思われるかは分からないが、このまま何もしないで帰るなんて出来ない。]
>>121ヒューズ
ふふ、と笑みが零れる。
「本当に素敵な夢だったんですね。
貴方が人間になったら一体どんな方なんでしょう。素敵なおじ様かしら。それとも可憐な少女かしら」
この毛並みの美しい小さな身体にはたくさんの希望が詰まっている。そのことを漠然と羨ましく感じた。
>>122アイザック
「あら、お誘いありがとうございます。
では私も頂いてしまいましょうか」
彼の使っていたポットを手に取り、お茶の用意を始めた。
何から話そうか。
僕の名前は、リオ。…今はこんな姿だけれど、元はちゃんとした人間だったんだ。
とある国の第二王子でね。そりゃ、正妻の息子だから王位継承権は高いけれど、たった一人邪魔な人間がいたんだ。それが実の兄って訳。
でも、僕は兄よりも優秀だったんだ。僕が王になればいいのに、なんて声もちらほら聞こえるぐらいにはさ。
それもそうさ、僕の実の兄、第一王子ロイは部屋にこもってばかりだったから。
それからなんだっけな。
ああ、そうそう、僕には許嫁がいたんだけどね。ちょっと気が強くて聡明な女性だよ。彼女が甘えた声で言うんだ「私は王の妻になりたいわ」なんてさ。
僕も、兄が王になるよりも僕がなった方が国民のためになると思ったんだ。だから、僕は兄に相談しに行ったよ、「僕に王位を譲ってはくれませんか」ってね。
そうしたら、なんて言ったと思う?「お前に、王は向いてない」だってよ!ははっ、笑わせるよね。
……だから、僕は王位を譲ってもらうことは諦めた。奪うことにしたのさ。
知識も、武術も、人望も。王に必要なものは全て持っていたからね。
計画を練りに練って、兄の殺害計画を立てた。味方も沢山つけてね。
ああ、もちろん彼らには地位を約束したよ。人間を動かすには感情よりも確実だからさ。
…計画は成功した。僕は問題になることなく、兄を殺害出来たんだ。
だけど、一つ予想外のことがあったんだ。兄が自室でおこなっていたことだよ。あいつ、黒魔術なんて研究していたんだ。…バカバカしいよね、少なくとも一国の王となる人間がやることじゃない。
けど、効果は現れた。その結果がこれだよ。僕は兄殺しこそバレなかったけれど、化け物さ。自室から一歩も外に出ることを許されなかった。
僕を慕う人も、許嫁も、皆、僕を見捨てやがった。
僕に残ったのは、兄だけ。ああ、とは言っても僕がそう思っていただけで、本当は僕の先生。彼は賢くて、いつだって僕の味方だった。兄の殺害を提案してくれたのも彼だった。
その人が教えてくれたんだ。ここに来れば、願いが叶う、呪いが解けるかも、ってさ。
冗談だと思ったけれど、あの人が真剣な顔で言うからさ、来てみたんだ。
まさか、他にこんなに人がいるとは思わなかったけどね。
僕はその小瓶を手に入れて、呪いを解いて王にならなくちゃならないんだ。
…これで僕の話は終わり。ちょっと熱くなっちゃった。僕に小瓶を譲って貰えると嬉しいです。
/*
隣でココアを飲んでいたアデリーナが話すようである。
静かに、聞いていよう。
ぱっと見は、望みなんて願えば全部誰かが叶えてくれそうな……そんな見た目でさえある彼女が、この噂にかこつけてやってくるほど叶えたいものとは。少しばかりエーリカの身でも気になるのだった。
*/
親はしらない。気づいた時には裏の世界にいて、しばらくしたら気づいたわ、『あたしは生きたまま売り物になれる』って。
それに気づいたのは、同じように拾われた、同じくらいの年の子が、みーんな居なくなったとき。
あたしを拾ったやつらは人身売買をやっていて、見目が悪くて頭も悪い、しかも不器用な子供はバラバラにして売られてた。
それよりちょっとまともな子は、オークションにかけられてた。
…そして、こういう見目のいい女は、囲われて大事にされながら媚を売る。
>>133ヒューズ
「あら、そうなんです?
こんなお洋服を着てみたいとか、どんなスポーツをするかとか、考えるのも楽しそうじゃありませんか」
「ヒューズさんに言うのはあれですが、私は猫になるのも悪くないと思うんですけどね。自由気ままで……確かに種別までは考えませんが」
淹れた紅茶をこくりと一口飲み下す。
「希望なんて無くても生きていくんですもの」
カップから唇を離し、揺れる水面を見つめた。
最後の1人になって、子どもから娘になった日。あたしは綺麗で絨毯が引かれててソファーがあって、暖かい部屋を貰ったわ。
訪れるオジサンたちはみんな優しかった。
あたしを買った人はみんな気づいてたでしょうね。この子はやつらの所有物、傷物にしたら殺される、ってこと。
[スカートをたくしあげると、脚の付け根から太腿にかけて、紫のツタが絡まるように描かれている。付け根には小さく、紫の薔薇が咲いていた]
ま、これは結構気に入ってるけど。
夢を見ていた。
桃色の髪をした少女に首筋撫でられる夢、温かいミルク、眩しい陽だまり。
あぁ、あの幸せだった頃をもう一度ーーーーーーー
「う〜〜にゃあぁ〜〜〜」
ゴロゴロと喉を鳴らし、思い切り背を伸ばす。
随分と沢山のヒトが増えた。
その中で、1つ気になる影を見つける。
>>126 アウローラ
「もちろんですとも。さきほどはミルクと砂糖、ありがとうございました。私、甘いものが好きなんです。」
アウローラさんがカップに紅茶を注ぐ姿を眺めながら、僕はにこりと笑った。
彼女とは屋敷に入る時に言葉を交わしたきりで、こうしてゆっくりと話すのは初めてだった。
「アウローラさんはーーーーおや、白猫くん。」
>>ヒューズ
アウローラの傍らには、あの白い毛並みの美しい猫がいた。
「こんにちは。ミンスパイはもうありませんが……クッキーはいかがですか?」
笑顔でそう声をかけて、まだ荷物の中にあった包みを取り出し、彼の前に広げる。
[恥ずかしげもなく晒した脚に目を向けて、スカートから手を離せばヒラリと元に戻る。そのまま地面を見つめて]
あるとき常連のオジサンに聞かれたの、『欲しいものはあるかい?』って。
ちょうど眠くて、つい考えていたことを答えたわ…お父さんとお母さんが欲しかった。弟か妹か、お姉ちゃんかお兄ちゃんが欲しかった。ふわふわの大きな犬を、子供の頃から飼いたかった。
暫く黙り込んだオジサンは、パパと呼びなさいって言った。そのあとから、しょっちゅう来ては楽しくお話をして帰って行ったわ。
そして、あたしの誕生日…いいえ、"オジサンたちに誕生日を聞かれたときに答えてた日"にプレゼントとして貰ったのが、ここの噂。
裏社会?あたしを育ててくれたわ。
人身売買?必要なことよ。
あたしは正義のために生きてるわけじゃない。
ただ、お父さんとお母さんがほしかった。暖かい家族がほしかった。コンクリートの上で次は自分かと怯えるんじゃなくて、暖炉の前で遊びたかったの。
>>112 ベガ
「うおっ!? そりゃあ、すまんかった!」
予想以上に跳ねっ返りな少女に苦笑いを返した。
「なるほどなあ。嬢ちゃ、いや、アンタ頭いいな!
だが……」
そうして、今度はわざと強い力で彼女の腕を掴んだ。
「力が弱いのは本当のことだ。
アンタは、弱い。だから大人は子供を保護する」
腕を離す。こういうことは、やはり得意ではない。
「俺もかつてはそうされてきた。だから、まあ、危ないところに子供がいたら気にかけちまうし、心配もする。それを疎ましく感じるのも子供の特権ってやつかね」
「……でも、異国の人に俺の常識で声をかけたのは悪かったよ。アンタが望むなら、なるべく……。……ううん、いやでもやっぱり体が小さい人間ってのはこう……見てて危険がないか不安になるんだよな。まあでも、アンタの行動に文句をつけないさ。気にはかけるけどな! それは性なんだ。わりぃな!」
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