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>>342 リリアーヌ
少女の家へと向かう途中。
「………起きたか。」
リリアーヌが起きた気配を感じて、足を止める。程なくして、彼女の慌てた声が聞こえてきた。
そっと、抱き上げていた身体を下ろし、目線を彼女に合わさるようにしゃがみ込む。彼女の両手を取って優しく包み込めば、瞳を真っ直ぐに見つめて口を開いた。
「………リリアーヌ、よく聞いてくれ。
あれはな、幸せの小瓶でも何でもない。中に入ってた毒は、あの医者………エルス先生に渡して捨ててもらった。
俺が、先生にお願いしてな。」
ひどく優しい声音でそう言って。
「………先生は責めないでやってくれな。全部、俺がしたことだから。」
彼女の為に、嘘はつきたくなかった。非難を受ける覚悟は出来ていた。どの様な感情でも、全てを受け止めるつもりで。少女の反応を伺った。
>>344 ヘンリエッタ
/☼腰に手を当てて見上げる彼女に眉を下げて、笑ってみせる。以前と変わらぬ口調が心に刺さった気がした。☼/
そうだな?昔から俺はお嬢様を探すのが上手かった。その逆は見つからなくて叱られてばかりだったな。
……見つけてくれてありがとう、ヘンリエッタ。
/☼泣きそうな顔を堪えて、くしゃりと彼女の髪をひと撫でした。純粋に、ありがとうの意を込めての行動だ。☼/
…………ああ、そんな事が分からなくなるくらい、瞳を曇らせていたんだ。……手遅れかもしれないが、すまなかった。
/☼彼女の純真な抗議と心配は、完成した心には届く。ずっと、隠れんぼを共にした彼女が巻き込まれた事を悔やんでいたが……サラや皆と共に解決した彼女に、逞しく成長した友へ少しだけ、縋り付いてしまう。☼/
>>363 ブレイク
「………………しょうのないかた。」
ため息をひとつ。
大人で大きいのに、もっと広く見て欲しいなと感じた。
「屈んでくださいな。
私がちゃんと見えていて?おじさま。」
「……一つ、謝っておくことがある。
うちの眷属に一人、賢しいのがいた者でな」
*/
オズワルドを眼前に、一人打ち明ける時の魔女。
/*
「そいつはな。私にこう願ったんだ。
『この国を、時計の支配から解放したい』と。
とんだ下僕もいたものだ。主君の、過去の大業そのものを否定しにきたのだからな。
その者の願いを、負けながらに叶えることを許せよ。
皆が、望んだことなのだからな」
>>354 セレナ
[ぽん、ぽん。優しく。ゆっくり。背中を撫で続ける。
気持ちを吐き出す彼女をなだめるように。彼女が吐き出すことで、少しでも楽になれば、と思いながら。]
……はい、
ごめんなさい、でも、好きですよ。
大切ですよ……セレナさんの、こと。
私には、セレナさんが必要です。
[ゆっくり、ゆっくり。
大切の種類は、きっと星の数ほどもあって。それが一致する相手なんて、なかなか見つけられない。
でも、それでも、ルクレースがセレナを大切だと思う気持ちは真実だから。それが伝わればいいと、想いながら。
ルクレースはセレナを抱きしめ続けた。]
*/
淡く光る、時計の文字盤。
王城ホールの端から端まで広がらんとする広大な魔法陣で、シルヴィはこの国に降りかかった時の歪みを取り除かんとする。
短い髪が魔力に揺れ、全身に迸る痺れに震え、踊る首飾りを感じながら、この地を1000年以上に渡って縛り付けていた、時の呪縛を。
文字盤から浮かび上がる光の粒子が、浮かび、溢れ、王城を満たして……
*/
それでも、この男は口を開かない。
過去に起こした、この事件の根源とさえ言って差し支えない裏切りに、彼は言い逃れも言い訳も、正当化も開き直りも、何も……言ってはくれない。
時の魔女は悟った。
否、既にもう彼女だけでも分かりきっていたことなのかもしれない。それを自認するのを、先延ばしにして、真実を突きつけられるのが怖くて、答えを乞うことをしなかった失態を、また繰り返している。
こんなことをしても、この国の民全てを救っても、私に答えは永遠来ないのだ。
/*
*/
ぱつり
>>369 ブレイク
近付いてきたその顔に企み顔で手を伸ばす。
両手でその頬をむぎゅう……と引っ張ると、
「……もう忘れないでね。
女の子が大きくなるのは早いの。当分かくれんぼの鬼はしたくないけど……おじさまがいつまでも来ないなら、私あっという間にかくれんぼが恥ずかしくなるお年頃になってしまうんだから。」
強めに引っ張って頬を離すとそのまま頭を抱きしめる。
「……おじさま運が良かったのね。
私まだ、子どもよ?
だからこんな大冒険ができてしまうの。」
小さな胸に抱き寄せると、優しく頭を撫でた。
「おじさまのいたいの、飛んでいけ」
*/
時空を区切られ、別の次元にいた生者も死者も、きっとその光景は見えたことだろう。
薄ぼやけに光る王城が、突如闇に舞い戻ったのを。
/*
「……っ」
*/
浅ましい。
卑しい。
過去の自分の醜態がまざまざと思い出される。
1000年も経った今もなお、それは自分の目前に立ちはだかり、自分の惨めさを。妬ましい心を、卑しい自分を如実に映し出している。
当然。
かけた呪いと種を異にすれば解けるものも解けるはずがない。いくら魔法陣が広かろうが、この身をもって最大の魔力を注ぎ込もうが、当てが外れて効くはずはないのだ。
シルヴィが呪ったのは、国ではなく。
国王ただ一人なのだから。
/*
>>375 ヘンリエッタ
…………いひゃい、な。これ。
/☼率直な言葉だった。抓られた頬をそのままに話し出す。
殴られる代わりがこれならば文句はない。ないが、意外だった。
続く言葉に困りきった顔で頭を掻く。☼/
……そうだな。直に立派なレディになって、恋に落ちて、結婚式で泣く。……あ、結婚式には呼んでくれ。
/☼言われなくても呼んでくれると思いながらも、気恥しさから言葉を零せば、ふわりと抱き締められる。柔らかな香りが身を包み、瞳はこれ以上開けないほど大きく開かれる。☼/
…………これは、とんだ大冒険、だな。…………っく……。
/☼右目に一筋の涙が伝う。広場には人がいないからもあるからだろうか。
小さな嗚咽を零して、静かに涙を流した。
誰かに抱き締められ、慰められる事なんて今までずっとなかったから。☼/
>>372 ルーツ
ルーツが目線を合わせてくれたことに、リリアーヌはほっとしました。最後までサラの敵だったリリアーヌの話も、聞いてくれるようです。
「うん。あのね……?」
リリアーヌは、あたまをさげました。
「わたしが眠っちゃうこと、サラ様にごめんなさいって言って欲しいの」
直接彼女に会いにいくつもりはありませんでした。それでも。
「もしかしたら、気にしちゃうかもしれないから……そしたら、おねえさん、サラ様を励ましてあげてね」
それでも、最後の日、サラに靴を投げられなかった。
──それがリリアーヌの答えなのでした。
「さよなら、ごめんなさい、ありがとうって伝えてください」
リリアーヌはそういうと、ルーツからくるりと背を向けて駆け出そうとします。
>>378 リリアーヌ
[ぎゅっと、どこか不安げに手を握るリリアーヌを見て、少女も少し鼻がツンとする。]
「リリーちゃん」
[それから、ふわりとリリアーヌを抱きしめた。自分の時間も定かでない身だから、やさしく、いつでも抜けられるように]
「リリーちゃん.......あのね.......トッティも.......
リリーちゃんだけにいうけどね。
ほんとは、リリーちゃんと一緒に、時間を進めたいな。だって、全然足りないんだもん。やりたいことが多すぎて、話したいことが多すぎて。
もしも、もしもの話ね。トッティの時間が止まらなかったらね。
リリーちゃん.......トッティにくつ、なげてもいいよ。
くつがなくなっちゃって、リリーちゃんが怖い夢を見るんなら、トッティが毎朝会いに行くよ。夜に起きちゃったら、《みんなのおうち》をこっそり抜け出して会いに行くよ。」
「リリーちゃん、トッティも、ほんとはね、ずっといっしょにいたいよ」
>>360 ダズリー
ぐしゃぐしゃと、彼の手で髪を乱暴に撫でられる。弾かれたように止まる泪に、見詰めた先の彼は覆っていたマスクをずらして確かに笑ってくれた。
初めて見た、素顔の彼の笑った顔に
その表情に、言葉に、リーンは何度も頷いてみせる。
「…うん、うん、うん…っ…!待ってる、待っているから……っ!」
きっとまた会えるよね、
触れられた髪に手を当てながら、次第に遠くなっていく背中を決して目を逸らすことなく見送った。
*/
『この者が治める国の、時が全て止まればいい』
果たして心の底からの呪怨は正しく世界に受理されて、オズワルド・キングはその身に呪いを受けた。
戴冠式のその場で、冠を頂いたその瞬間に。
一つの蛮族の小国が、時計の国としての歴史を歩み出した瞬間に。
全ての時が眠りについた。
彼が王としていずれの地に君臨しようとも。
国民全ては眠りにつく。
国としてさえ、村さえ成せないその呪いを受けようものなら……彼は、自分の元へ来ることを期待して、そんな呪いをかけたのだ。
真実を聞きたかった。
彼と共に歩みたかった。
離れゆく彼を繋ぎ止めたかった。
/*
*/
弾かれた彼女は、分かりきっていたことの結末に、高く高く−−苦笑する。
/*
「っはははははははは!
そうさ、そうさそうさ全部その通りだ!
惚れていた!
落ちていたのだ!
貴様のその無垢な心に!
勇敢無謀なその姿に!
優しく、争いを好まなかった、その優しさに」
*/
やればやるほど、言えば言うほど、深まる自身の羞恥、罪悪、卑劣、妄執。
これを、乗り越え、気概で応えよと−−
/*
「そう、言うのだろう!」
*/
こんな、恥ずかしくて、みっともなくて、上も向けなくて、誰にも言えない、時の魔女たる者が誰に言えよう心の傷と。
これほど、声高に、あからさまで、直視するのも恥じられる、それでなお言外の叫びに目覚めぬ愚鈍な王を。
目覚めさせる方法など。
幼子でさえも知っている。
/*
>>383 ブレイク
「……うん。
…………うん。」
頷きながら聞いていた。
かつてこの人はヘンリエッタの中で大人の象徴で。
何をしても自分の世界を守ってくれる人だった。
大人も傷ついたり泣いたりすることを、当たり前のことをやっと知った。
この人も例外ではなかったのだと。
そして人一倍強い体には人一倍繊細な心が隠されていたのだと。
「おじさま。大丈夫よ。
今おじさまがどんな顔をしているか隠せるくらいには大きくなったんだから。ほんとに運のいいかた。」
黙ってブレイクの頭を撫で続けながら落ち着くのを待ち、しばらくしてから声をかける。
「………………だっこ、してくれても……いいのよ?」
*/
誰もいないのは明白であるのに、なお憚られる一歩を。
誰に見られているわけでもないのに、どうして周りが気になってしまう、自分の手取りに。
魔力を放出している時以上に、浮き上がっている己の髪も火照る頬も全て前に、押し込んで、
開かない瞼に、自身の瞬きを重ねて、
何も開けない唇に、これほどまでに赤裸々な口を、それでもと魔女らしく、高貴に、艶やかに。
−−こう告げるのだ。
/*
>>368 リリアーヌ
彼女の言葉を受け止める。感情を受け止める。真っ直ぐに、瞳を見つめながら、逸らすことはしなかった。
そして、意を決したように、話し始める。レーヴの想いを全て包み隠さず伝える為に。
「……どうしたって、リリアーヌに生きて欲しいと思ったからだ。これが、俺のエゴだとしても。リリアーヌには、本当の幸せを知って欲しいんだよ。
全部、見たんだ。あの家の中の光景も。リリアーヌが毒を塗っていたのも。全部。
辛くて、悲しくて、寂しくて。
だから、リリアーヌは眠りたいって思ったんだろう?せめて、夢の中で幸せになりたいって思ったんだろう?
……その気持ちを、否定したい訳じゃない。
リリアーヌが死にたいと願うことを、俺は止めたい訳じゃない。
だがな、現実世界での幸せを知る前に、夢の中での幸せを求めることを、俺は許したくないんだ。
世界はもっと広くて、大きくて。色々な人がいて、色々な出来事があって、悲しいことも辛いことも勿論たくさんあるけど、それでも、かけがえのない幸せも確かにあるんだ。
それを、リリアーヌが理解する前に、狭い世界の中で息を引き取ろうとすることを、俺は許したくないんだよ………」
視界が歪む。唇を噛み締めて、それでも溢れそうになる感情を抑え込む。
包み込んだ手を強く握って、震える声で。
「…………………味方だって言ってたのに、ごめんな。」
眉を下げて、微笑んで。
けれど、これは全てレーヴのエゴだから。彼女の望みを押し切ってまで、レーヴがしたいことじゃない。だから。
「…………………だが、全部。全部、俺の我儘だ。
リリアーヌが、本当に眠りたいと願うなら。全てを投げ出して、幸せな夢の中に行きたいと願うなら。俺が、リリアーヌの命の時計を砕く。
………あの小瓶じゃない。俺の手で。」
誰かに壊されるくらいなら。そう思って。
>>サラ
セレナはもう一度、サラの元へ赴く。
預けた時計を返してもらわなくてはいけない。
いっそ時計だけでも持っていてもらったほうが、とも思ったが、何の解決にもならないのでやめた。
……ルクレースに啖呵を切ったが、あれは本心だ。
今さら伝えることなんてないのだ。
でもセレナは自分自身が怖かった。
彼女に相対して、私は何を話すのだろうか、と。
溢れて抑えの効かなくなった私の想いが、彼女をまた縛りつけはしないかと。
さっき声をかけられなかった後ろ姿に、思い切って声をかける。
「……サラ。ご機嫌よう。
眷属たちとの戦いには勝ったみたいね。」
>>392 ヘンリエッタ
/☼頷きながら、静かに聞いてくれる”友”を前に頬には雫が零れていく。
かつてあった左目。今は機能していない空洞に熱を覚えた。
こんなにも昂る気持ちを抱えた事はなかった。何があっても溶かされぬ心が溶けていくような錯覚に陥る。
いつまでも止まらぬそれに無骨な腕で擦れば、無理に止めて笑う。
ヘンリエッタと俺の邂逅は、こうでなくとは。
明るい笑みを浮かべて、よいしょの掛け声と共に立ち上がる。☼/
……おっし!任せろ!おじ様のたかいたかーいスペシャルをしてやろう!
/☼そう言えば、脇に手を入れれば軽々と持ち上げる。そして、ぐるぐると回れば橙の瞳を見つめた。☼/
……お嬢様は軽いな!羽根のようだ!
/☼成長してもいつまでもお嬢様はお嬢様だと言わんばかりに、目が回る程に彼女をたかいたかーいしただろう。
落ち着いた頃に片手で抱き抱えれば、少し休むように背を軽く叩く。☼/
ん、王城でなんかあったみたいだな。
……お嬢様はこれからどっか行くのか?送り届けるまでは行かずとも、背を見送らせてくれると嬉しいんだが。
「当然でしょう?
一時の委託。必ず返却される約束の貸与。
受け取りに来なければ、貴方の砂をここに詰めて、砂時計に改造してあげるわ。
だって次は。ブレイクを私は、完膚なきまでに倒すのだから。
……傷は言い訳にはしないわ?
クロノスティス家の長子たる者。決闘であれば、優雅たる完全勝利をもぎ取るものだから。
そして。足りないのであれば、またブレイクから貪欲に時間を求めるわ。
ふふ。勝った時には。どんなお願いをしてあげようかしら」
そこにあるのは、未来への輝きだ。
ブレイクの瞳に、それが宿っているのが分かる。
サラが約束したブレイクとの時間は。
埋められる事によって、更なる未来を描いたのだ
>>ジュラム
[結局一度も話さないままだった、少し怪しげな薬屋の近くにおそるおそる近づいた。]
「めがねのおにーさん。はじめまして。トッティです。
あのね、トッティ.......最初、めがねのおにーさんの真似っ子して、サラおねーさんに指差したんだぁ。」
[悪魔と契約した者たちが砂になったことを知らない少女は、単純に自分たちと同じなのだろうと考えていた。]
「だから、めがねのおにーさん、ずっと味方なのかと思ってたの。んと、トッティ、他の人の真似っ子してる時も、めがねのおにーさんとは1回もお話してなくて.......最後に、お話したかったの。」
>>サラ
リーンは新聞を小脇に挟み、いつものように城下町を駆けていく。腰にはもう、彼女の時計は付いていない。ちゃらちゃらとチャームだけが揺らして、地面を蹴って、ただただ駆けていく。
強く気高き、確かに全ての少女の憧れだった、あの人の姿を探して。
視界の端に優然とたなびく彼女の髪を認めれば、大きく深呼吸をして、その名前を呼んだ。
「サラお姉さん………!」
彼女が自分を捉えれば、駆け寄って。
彼女の瞳を真っ直ぐ見詰める。
これだけは、決して逸らしてはならないと。
何度も衝突をした、私の言葉がそうさせた。
彼女の正義を真っ向から批判した。その人物と対峙した。
>>リリアーヌ
何も言わずに腕を握る。
力が入りすぎた、少し少女には痛かったかもしれない。
「それはダメ。」
さよならも、
ごめんなさいも、
ありがとうも、
あなたの色に声に、意味がある。
それから逃げるのは私も、誰よりもスクルが許さない。
最後の日、彼女が悪夢にうなされなかったのは、私も彼女も知っている。
それがあなたの答えなんでしょ?
「行くよ。」
何も言わずに、私はリリアーヌを誘拐した。
──どうして。
どうして、みんな。リリアーヌに生きてほしいというのでしょう。サラも、レーヴも。
「分かんないよ! なんで、ダメなの。なんで……。わかんないよ……。この先にどんな幸せがあっても私はいらない!だって知らなくても幸せになれる……!夢の中はこわいもの、なんにもないのに」
のどから悲鳴のような声が漏れました。優しい残酷さが、リリアーヌを襲います。
生きるって、そんなに。
この苦しみを乗り越えるほどの、価値があるのでしょうか。
「わかんないよ……」
リリアーヌは、首を振ってレーヴから離れます。
生きたくないのに、けれど。それでもリリアーヌに生きろと、二人の人が言いました。
「……あのね、レーヴさんには、殺させないよ」
なにも、眠る方法は薬だけじゃありません。出来れば、薬がよかったのは、痛くなさそうだったからです。
「………………トッティのこと探してくるね」
そう言って、リリアーヌはレーヴにくるりと背を向けます。
そっと、眠りについた国王にキスをほどこす。
何十年、何百年。
手繰りきれないような長い年月をすれ違い続けた二人の時が、ようやく重なり合う。
──辺りの音をすべて持ち去られたように静寂が響く。
もうこれ以上自分に出来ることはないと、シルヴェールは白い顔をそっと離した。
無防備に、シルヴェールに寝顔を晒すオズワルド。
止まることのなかった針は。未だに時を刻む気配を見せることはないかと思えた。
>>406 ブレイク
「きゃーっ!!」と嬉しい気持ちを隠せない歓声を上げては抱え上げられてくるくると回る。
めまいがするほど回されても、嬉しくて幸せで、自分の知るブレイクでしかない姿に心底安心する。
「おじさまと私の友情はこれからも続くの。
おやすみなさいとごきげんようの前は必ず笑うの。
また遊びましょうおじさま。
……私ね、探したいかたがいるの。
とっても大事なかた。
お城の中は見に行きたいけど、そのかたが今どこにいらっしゃるのかは知りたくて。
また後でね。ごきげんよう、おじさま。」
スカートをつまんでお辞儀をする。
かくれんぼの友達は、笑顔で見送ってくれただろう。
>>345 セレナ
「!」
「セレナお姉さん…!」
それはいつもの日常のように。
彼女は今日も自分に声を掛けてくれる。
「うん!どうぞ!」
今日はちゃんと持ってるよ!そう言って出来上がったばかりの新聞を1部彼女に手渡すした。
>>404 トッティ
かつて、幸福な暮らしをしていた頃の娘はこれぐらいだったか。もっとも、こんな風に抱きつかれることはなかったが。
多分、私は人間としては、父親としては、優れているとはいえないだろう。それでも、トッティの言葉は嬉しかった。
「私もお嬢さんと過ごす時間は楽しかったよ。色々なことをお嬢さんは私に教えてくれた。
私もお嬢さんのような娘がいたら、楽しかっただろうね」
自分のような父親がいたら良かった、という言葉には肯定も否定も出来なかった。が、否定しなかった、この現状を受け入れるぐらいには、グレゴリオはトッティを好ましい存在であると、認めていた。
>>408 サラ
/☼受け取られた鞘に表情を緩める。
が、続く物騒な言葉に顔を青ざめさせた。☼/
……サラ、いつからそんな物騒になったんだ?
いや、逞しくていいと思うんだがな?淑女でも家を守る力は必要だからな。
おう!しっかり休めよ。
時計が無事でも、体が無事じゃないんだからな。
ふ、マーキュリー家の長子として敗北は死と同等。決闘でも、全力で御相手しよう。
勿論、何度でも、だ。
…………願いは御手柔らかに頼むぜ?
/☼はは、と眉を下げて困り顔しながらも、彼女と手を振って別れる。きっと、再度があるのだとそう信じながらそれぞれの道へと足を進めた。☼/
>>ブレイク
「暇そうだな。今生への別れの挨拶は済んだのかい」
一人でいるということは、やるべきことはやったのだろうかと思い声をかける。
>>331 ルーツ
受け入れてもらえたことが嬉しくて。
間違いなく私たちはベストフレンド。
くすぐったい気持ちで胸がいっぱい。
「あら、私にも得意分野はあるんだから。アライアンスのポテンシャルを信じてね!それを感じさせないまま契約を済ませてしまったなんて……絶対後悔なんてさせないんだから!
……またあなたとこんなお話ができるの、とても嬉しい。
幸せだわ……次の約束がまたできるの。
ありがとう、ルーツ。
あなたとの時間これからも大切にしていくね。」
泣き笑いの顔でベストフレンドと向かい合った。
お互いの襟元のしるしが柔らかく光を返していた。
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大通りから四つ、五つ離れた通りをずっと突き当たりまで歩いてゆけば、少々陰気で多少オンボロの、変哲もない薬屋がある。
《スミスの薬屋》。どこにでもありそうなその店は静寂に包まれている。ギィと鳴る木の扉を押せば、草の苦い匂いが鼻を刺す。積み上げられた葉やら虫やら、色んなものが積み上がっていて、どことなく埃っぽく感じるだろうか。
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閉ざしていた視界に、強い光が差し込む。くらんだ目の網膜には、閃光と点滅する星が飛び交う。
青い瞳が。
懐かしい輪郭を映した。
人の心を掻き乱すような、透き通った美しい少女が。
オズワルドがかつて、手放したかえがえのないものが。
両の目に、光が宿る。
シルヴェールのオズワルドへの想いは、長い期間をかけて“真実”へと育ち、彼女が彼へしたキスは。
呪いを解く真実の愛のキスとなったのだ。
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店主の定位置であったはずの、木の机をそっと開けるだろう。そこには紙が旧くなったノートと、使いかけのノートがある。
何が書いてあるかといえば、予想通り調合を記録してある。2冊ともどこか似たような几帳面な筆体で、手順は挿絵を交えて丁寧に記されていた。
また、机の上には―――時計の残骸がある。時計の下に白い紙が敷いてある。それは処方箋であると、すぐにわかるだろう。
『来てしまいましたカ。 では仕方ありませんネ、なんでも好きに取って構いませんヨ。アナタのこと、嫌いではありませんでしタ。どうか、お元気デ』
━━━━━━━━━━━━━━━
>>385 トッティ
それは、レーヴのものとはまた違う抱擁でした。ふわりと、優しく。壊れそうなものを扱うような。
それでも、トッティも言うのです。
時を進めてほしいと。
そして、リリアーヌも。ようやく、はじめて、思いました。
「トッティ……あのね、…………あのね」
生きていることは暗闇でした。
でも。
リリアーヌを抱きしめてくれるレーヴがいて。
リリアーヌを正してくれるサラがいて。
リリアーヌと共に歩いてくれるトッティがいます。
きらりと、腕時計が、首からかけた懐中時計が光ります。
「わたしも、……ほんとは、トッティとずっと一緒に、時を進めていきたいよ」
言ってしまって凍えるように寒くなりました。寒くて、怖くて、ぎゅっとトッティを抱きしめます。
[城下町の一角に、一際ヘンテコな建物を見つける。一目見た途端に直感した。此処があの技師のーー。
昔患者の1人が、面白い技師がいると話していたのを覚えていて良かった。記憶を辿り何とか辿り着いた工房に足を踏み入れる]
[人間が1人、眠っていた。その隣には大きな機械が1つ、2つ、それ以上にもっと。圧倒されるようなその光景は、彼が紛れもなく心根からの技師であることを感じさせた]
……これ、だ。
[いつの間にかテルミットの手に渡っていたメモ用紙。そこに書いていた通り……通りよりかはだいぶと知らないボタンや装甲がついている機械がそこにあった。
鞄の中から紙幣の束を置いて、メモ書きを添える]
>>432 リリアーヌ
[リリアーヌも、少女をぎゅっと抱きしめてくる。少しだけ震えているようで。今日少女が、ダズリーにしがみついた時を思い出した。ダズリーが少女にしてくれたように、リリアーヌの頭を優しくポンポンと撫でてみる。]
「うん.......うん.......大丈夫。大丈夫だよ、リリーちゃん。リリーちゃんも、ほんとのきもち、言ってくれてありがとう。
トッティ、もしもが起こったら.......リリーちゃんとたくさん遊ぶんだ。たくさん楽しいことして、その先も遊びの予約して.......リリーちゃんが怖い夢を見る暇もないくらい、一緒に居たいな。
.......きっと、レーヴさんも、楽しいところに連れてってくれるよ。」
[リリアーヌの手に光るレーヴの腕時計が見えたから、少女は3人の未来を想像してみた。想像することも、願うことも、罪ではないと聞いたから。少女は安心してリリアーヌにそう言うことが出来た。]
(もしもが、ほんとうになったらな)
>>355>>356テルミット
手への口づけが熱い
全身が沸き立っていきそうだ。
胸の奥底から高揚が回ってきて。直ぐにでも彼と、昂る熱を発散出来たらどんなに素敵なことでしょう。
「ーーーえぇ。喜んで。
これにて騎士の。そしてテルミット=ヴィブラート=クロノスティスの宣誓は受け取りました。
貴方の時間は私のものに。私の時間も貴方の為に。
二人の時間を、未来の為に。
テルミットと共にあることを誓いましょう
ーーー決して離さないから覚悟をしていてね。
私程貴方に未来を求める者はいないから」
これにて騎士と淑女の未来は誓われる
二人が拓く未来は。必ず素晴らしき時間を人々に見せるだろう
[何故、目の前に彼女がいるのか。盗まれた──否、取り返されかけた《マザー・クロック》の行方は。いつかの再現のように、眠り落とされた国民たちは。
幾つも疑問は浮かんでは消える。しかしそれらは時の魔女の。彼女の顔を見て、吹き飛んだ]
──……。
……、……シルヴィ。
[喉から搾り出すように、掠れた声で。オズワルドは、憑き物が落ちたように。その名を口にした]
>>393 ルーツ
互いにやるべきことを果たそうと、微笑む彼女の瞳は真っ直ぐ未来を見据えており。
強く頷きながら、少しだけ、出会った頃を懐かしむように笑みを零す。
絡み合った目線を合図に二人は共に立ち上がる。
未だ不安定な願いさえ、貴方に預けるならばきっと掴めると。そう信じて。
私は今を伝えるために。
貴方は未来を紡ぐために。
別れた道は再び出会うための分岐点。
「またね。…ルーツ。」
一緒に夜明けを迎えようじゃないか。
──それは、街中でのこと。
>>アイリーン
フラフラと、何処へ行くでもなく足を進める。屋根へ登る元気はなく、ただ足を動かしていた。
時が止まってしまった城下町の中を、確かめるように歩いていけば、ふと駆け回る少女の姿が見えた。
「アイリーン!」
思わず、呼び止めて。彼女がこちらを向いたなら、へらりと笑う。
「……よう、一部、貰えるか?」
そう尋ねれば、必要ならばお金をと。
腰のポーチに手を伸ばした。*
>>435 ジュラム
[思いのほか、親しく話してくれたので、少女は無邪気に喜んだ。]
「めがねのおにーさん、お薬屋さんなんだよね!トッティ、苦いお薬は嫌いなんだけど、おいしいお薬ってあるのかなぁ?」
[そんなたわいもない会話をしてから、ジュラムが遠くに行くと聞き、少しほっとした気持ちになった。]
「ふふっ!頼もしーと思ったのに、味方じゃなくってちょっぴり残念だったの。でも、めがねのおにーさんも、優しいね!トッティと仲良くお話してくれた!
そうなんだね。めがねのおにーさん、変わったお話の仕方だから、遠くの人なのかなって思ってたの。
せっかくお話できたのに、さびしくなっちゃうけど.......めがねのおにーさん、色んなところに行けるの、よかった。トッティのことも、ちょっぴりでいいから、覚えててね。」
[そう言って、ジュラムに小さく手を振るだろう。]
>>424 セレナ
「え!わ、本当?!うれしい!」
セレナの言葉に、リーンは目を輝かせる。
新聞を楽しみにしていることはもちろんだが、彼女のようないい匂いを身に纏える。いつかの話しが現実になるの?いいの?なんて。
なんだかとっても嬉して。
「お貴族さまのお屋敷に招待されるなんて初めて…!目一杯着飾って行くね!」
>>レーヴ
[リリアーヌに会う少し前のこと。少女は、ちょうど一人でいたレーヴの姿を見つけて、近くに駆け寄った]
「レーヴさん!」
「.......あの、あの、レーヴさん。トッティの時計の表、綺麗に直してくれて、ありがとー!
えっと、でも.............トッティ、眷属だったから.............ごめんなさい!」
[時計を直してくれた、本物の時計職人。リリアーヌのお友達.......本当はもっとお話していれば、と思ったから、勇気をだして、話そうと思った。]
「.......ほんとに、ありがとう。あの時計、トッティの宝物だったの。今は、リリーちゃんに持っててもらってるけど.......レーヴさんに直してもらえて、よかった。」
正しく時を刻むための選定に。数々の思惑が重なり合ったが故に起きた、今回の出来事に。
一国の運命を揺るがすこととなった“時”に選ばれた17人の人間は。
闇に舞い戻った王城が、再び薄く輝いたことに気付いただろう。
そしてそれは王城を中心に輪になって広がっていき、あなたたちの視界を奪い、鼓膜を震わせる。
いつか誰かが心より願った願いが──呪いが。吹き抜けるように、その光に溶かされていく。
そして。
一人、ひとりと。眠りについていた国民たちが、目を覚ましていくだろう。事情を知らぬ人々の疑問が雲のように湧き起こる。
静寂が嘘のように、国中の命が蘇る。様々な声や響きが、遠く近くで交差する。
あなたたちは気付く。
時計の国を蝕んでいた呪縛から、解き放たれたことに。呪いに縛られていた自分たちが、“命の時計”などなくとも今、この時を、刻んでいることに。
>>462 エルス先生
頭をゆるく振って答える。
「……いいえ。先生を困らせてしまって、ごめんなさい。
きっと……もう大丈夫なはず。
先生のお話は、私たちで本当のことにできました。」
そこまで話して城が光り出す。
思わず城を見上げて、きっと何かが起こったのだと不思議とわかる。
「それよりもっとすごいことが……きっと今起こったの、かも…………
私たち、花束になれたのかもしれません。
お城の中に、入ってみませんか?」
もっと違うことを答えたい。
でもこの人の心にいきなり立ち入ることはどうしてもできなかった。
そして、悪魔に心臓を売り払った人間たちは。全てが終わっても。時の魔女によって与えられた猶予を終えても、その体が砂と化すことはなかった。
これは、魔女の温情だろうか。呪いが解かれたことによる副産物だろうか。
>>454 ブレイク
渡されたそれはぼんやりしていてよくは見えないが、指で形をなぞれば細かい装飾が施されていることが分かる。
更に形を確かめるように触れていれば、短針や長針を見つけ…それが時計であることを理解する。
この国に生きているなら、他人に時計を渡すというのがどういうことか分かっているだろうに。いや…知らないのか?
「そこまでしてもらう必要は無い」
現状に満足しているわけでは無いが、他人の下で自分の生活を管理されるような生き方などまっぴらごめんだ。それが許せるならとっくの昔にそうしている。
そう思いながら、時計を押し返す。
「とはいえ、困るのも事実ではあるが。だが、お兄さんのやったことを家のものに尻拭いさせるのもおかしな話だろう」
*/
自分が一番分かっている。
彼の身にかかっていた呪縛が、鼓膜を震わせて解けていくのを誰よりも早く肌で感じた。
この男を呪った張本人であるからこそ、確信さえ持てる。
/*
「……オズ」
*/
なんと、声をかけよう。
先ほどまで自分を認識していなかった男に対し、かける言葉が見つからない。
だから、行動が先に出た。
彼の背に向けてそっと腕を回す。
/*
[きっと、少女が話したい人達との話が全部終わった頃。
少女は、昨日と同じソファに座って、膝の上に新しいお友達をみんなのせていた。隣にリリアーヌはいるだろうか。]
「むう.......トッティ、また眠くなって来ちゃった。こどもだなぁ.......」
ゼウス「こどもは.......はやくねないと.......いけないんじゃぞ」
ヘスティア「そうよぅ。はやくねないと.......おはだに.......わるいの、よ.......」
「うん.......ふたり、とも.......」
[少女と瞼はうとうとと、幾度も閉じそうになる。]
「あ.......じかん.......ないのに.......な。もっと.......テルミット先生と.......はつめい.......話して、オブゼビオ先生に.......お勉強.......きいて.......から」
[少女の目は閉じられる。その拍子に、右の目からは涙がひとすじ。ずっと止まっていた少女の時は、この数日で一気に進められた。たくさんのことを知って、たくさんのやりたいことができた。
.......少女はまだ知らない。少女と戦った人達が、少女を許した人達が、呪縛からみなを解き放ったのを。]
「おやすみ、な.......さ」
>>459 トッティ
「………トッティ。」
振り返れば、小さな赤髪の女の子が駆け寄ってくる。その姿を捉えれば、目線を合わせるように屈んで、少女を出迎えた。
一生懸命話す彼女の言葉を聞いて、柔く瞳を細めれば。
「……ん、ちゃんと謝れるならそれでいい。」
優しく、赤髪を撫でた。
本当は、咎めるべきなのかもしれない。本当は、許すべきではないのかもしれない。けれど、いけないことをしたのだと、幼い子どもが理解をしたなら、それ以上の言葉はでなかった。
「キシシ、そう言って貰えると、時計職人冥利に尽きるってもんだ!
……それに、こちらこそ。トッティの時計を直させてくれてありがとうな。久しぶりに時計に触れられて、嬉しかったよ。」
少女にお礼を述べられれば、擽ったそうに笑って。こちらも感謝の気持ちを言葉にした。
>>449 レーヴ
「…!レーヴお兄さん!」
優しい声に名前を呼ばれ、リーンは声の主に向かって笑う。
「うん、もちろん!1コインだよ」
新聞を1部手渡しながら、片手を頬に持っていきまるを作って見せる。
「レーヴお兄さんは…お仕事は?」
彼に言伝を頼んだことを思い出し、…と言ってももう彼女とは思いがけずも話しが出来てはいるものの、配達人の彼に首を傾げて訊ねて見せる。
その顔は、きっと。
ダズリーと、ルーツに。二人に未来を託したことで、真っ直ぐ笑っているように見えるだろう。
・‥…━…‥・‥…━…‥・‥…━…‥・‥…━…‥・‥…
「己の国に、自らの父に、思うところがあるのであれば」
「私と共に来い」
「偉大なる母−−《マザー・クロック》は、我らの行くべき道を静かに時を刻み示してくれよう」
「私とお前とで国を作ろう。
穏やかで、自然豊かで、誰も争うことのない、平和な国をな。
私と、お前ならできるさ。オズ」
・‥…━…‥・‥…━…‥・‥…━…‥・‥…━…‥・‥…
「……迎えに来たぞ。
遅かったじゃないか」
>>オズワルド国王
……………怒られるかな。まあ、いいか。俺らのおかげで国を救えたんだし、大目に見てもらお。
(執務室らしき部屋を勝手に借りて、万年筆に白い羊皮紙を用意する。口下手な自分では何をどう伝えるのが適切かがわからないし自信が無い。それらしい文章を書いて、それを読んでもらえることを祈るばかりだ。
書き終えるとその紙をまるめ、紐でくくる。国王が眠る寝室はいまだ静まり返っており、ちゃんと目覚めるのだろうかと不安になりつつその手紙を枕元に、そっと置いて部屋をあとにした)
>>リリアーヌ
どこかの時間。
どこかかにいた、リリアーヌを見つける。
「リリアーヌ」
サラは。しっかりとした焦点と。
埋まった記憶を持って、リリアーヌへと対峙する
「……忘れていて、ごめんなさい。
けど。全部を思い出したから。貴女との時間を。貴女と楽しみにしていた時間を」
サラは。リリアーヌの頬を触る
「……リリアーヌ
『貴女が素敵なレディになる時間を、取り戻させて』」
そして。いつかに見せた。決意と慈しみの微笑みを見せるのだ
オズワルド国王へ
貴方のコサージュを作った職人です。また気になった際はいつでも私、ダズリーターナーをお呼びいただければいつ何時でも馳せ参じます。
さて、この度このように文を認めるにあたって、どうかお願いしたいことがございます。私から伝えるべき内容ではないことは、重々承知の上です。
恐れ多くも、この国の成り立ちやあなたと魔女との関係を覗かせて頂きました。正直、貴方たち2人の事などどうでも良いし、怨むつもりも、そもそも怨み方もよくわかりません。ただ1つお願いしたいことは、1週間前まで生きていた私や私達人間の全ての時を、元に戻して頂きたいという1点のみ。
その為には恐らく、あなた達二人の関係の修繕作業が必要になるかと想像します。どうかゆっくりと二人で話すことが出来ればと思っています。
最後に名刺を添えさせて頂きます。出しゃばった態度をどうかその寛大なお心でお許しくださればと願っています。
「Turner´s Metal」ダズリー・ターナー
(手紙には名刺と、コサージュを作った職人である証がわりに金のバラをピアスサイズにしたものを添えておいてある。)
>>469 アイリーン
アイリーンにコインを渡し、新聞を受け取ると、続く言葉にバツの悪そうな顔をする。
「んっ?…………あー、仕事は……」
自分の事で手一杯。今だって、少しばかり傷心しているものだから、すっかり忘れていた。今までそんな事はなかったはずなのに。
詫びを入れようとそちらを見れば、しかし、もう既にその言伝は必要が無いことがわかる笑顔があって。
思わずつられてレーヴも笑えば、小首を傾げて笑う彼女の鼻を軽くつまんだ。
「キシシ、まぁ、あれだ。今はちょいと臨時休業しててな。
詫びに、もう一部買うから許してくれや。」
そう言うと、コインをもう1枚彼女の手のひらに落として、苦笑した。
>>470 エルス先生
ホールへと向かう長い廊下を、人ひとり分ほどの微妙な間を開けて並んで歩いていく。
魔女のこと、国王のこと、命の時計からの解放を、これからどうなろうとしているかを話し、赦されたのだ、ということも。
ヘンリエッタはエルスに対してひとつ、ズルをしている。
そしてそれをうまく隠して会話を進められるほどの世知も度胸もまだ備わっていない。うまく顔を見られないながら、エルスに正直に話した。
「エルス先生………私、マザー・クロックに触りました。
たくさんの、たくさんの隠されていた歴史が詰まっていました。
お気を悪くされるかもしれないのだけど……先生の歴史も。
私、先生のお心を覗きました。ごめんなさい。」
>>465 シルヴィ
[何を言うよりも前に、彼女は私の背に腕を回した。こんなにも近く彼女を感じるのは、一体いつぶりか。1000年以上前に。とうに行き場などなくなっていた手を。震えてうまく動かすことのできない手を。私はそっと、彼女の肩へと滑らせた。
辿々しい手つきで、シルヴィを抱きしめる。その全てが、彼女の声が、懐かしく愛おしく。私はもう、駄目だった。]
──……シルヴィ…っ。
[もう一度、名を呼ぶ。空白だった時間を埋めるように。]
シルヴィ……俺は、俺は。
[彼女を忘れたことなどなかった。母なる時計に心を黒く塗りつぶされても。数えきれないほどの時に脳内を蹂躙され尽くしても、私は彼女のことだけは忘れなかった。
ただ、想いだけには蓋をして。再びそれが溢れ出すことを、王となった自分は決して赦さなかった。残されたのは、この国を背負った責務。
やってしまったことは取り消せない。だからせめて、私は冷徹な王を演じ切ろうとした。
いつのまにかそれが心を蝕んで、本当に私を、愛する女を裏切ってまで国王の座を得ようとした、冷徹な王にした]
自身が必要とされない世界が。必要とされなくなっていくこの国が。
ただそれだけだった。それだけで、この国の全てにこれ程大きな嘘と傷を付けた。
>> 片針
私たちは魔女と王の結末を見届けた。
ここに蒸気満ちる宴は本当の終幕を迎える。
そんなエンディングの端っこで肩を並べる2人の姿。
何の変哲もない街角が、私たちのスタートでゴール。
ベンチに腰をかけ、私は愛しい肩に頭を預ける。
私の隣に彼女がいるこの時間、彼女は私のモノになる。
「結局、なんでヴェルとスクルなの?って聞かなかったね。時の女神とはわかってたと思うけど、どうして自分がスクルドで私がヴェルダンディだか気にならなかった?」
2人だけの風景を切り取って、少しずつエンドロールは流れ出す。何気ない話題は尽きない。
「結局、あの二人もラブラブだったね。」
すれ違いの物語、蒸気の物語、愛の物語、時計の物語。
「テルミットに夢を見せつけられちゃったみたいね、あの時のスクル、誰よりも乙女だった。誰もお祭りの日に男たちをのしたマーシャル貴族なんて覚えてないよ。」
そんな物語が少しずつ終わっていく。
「私、スクルに出会えて本当に良かった。」
だから、まるで最後みたいなことを言ってしまう。
━━━━━━━━━━━━━━━
世界のどこか、四つ、五つ大通りから外れた路地裏をずっと突き当たりまで歩いてゆけば、少々陰気で新しい看板の、変哲もない薬屋がある。
《スミスの薬屋》。木の扉を音もなく押せば、草の苦い匂いが鼻を刺す。整然と並べられた瓶と、材料の数々。カウンターの奥には男が座っている。
「こんにちは、ようこそ。何かお困りですか?」
男の話す言葉は流暢で、客も同じ言語でその不調を訴えることだろう。
メガネの奥で光る目は優しげで、客に相槌を打ちながらカルテに書きつけるその字はずいぶん几帳面だった。
━━━━━━━━━━━━━━━
>>475 ブレイク
何故、ここまでしてくれるのだろうか。むしろ、不気味で仕方がない。それとも、ジュラムが言っていた悪魔との相性うんぬんとやらで、こちらが元々の性格なのだろうか。
だとしても、だ。下層階級を一人、痛ぶっていたことが公になったとして何の問題もないはずだ。殺しても、大抵は罪に問われない程なのに。
「余っ程の暇人なんだな。まあ、私は元からそのつもりだよ。お兄さんには償ってもらうつもりだし、お兄さんの家族にまでは世話になるつもりは無い。
……当然では?あんなことをまたするつもりなら、それは人間性を疑うな。話し相手は別に求めていないが」
>>460 サラ
「こんにちは、サラお姉さん。」
今日も彼女は優美に微笑む。
あんなことがあったのに、自分に向けて微笑んでくれる。
「これ、今日の。受け取ってくれる?」
そうして手に持っていた新聞を1部彼女へと手渡す。
そこには、彼女が最後まで貫いた正義こそが正しくあるということが、他の誰でもないリーンの手によって書かれていた。
「私の正義は、サラお姉さんの正義には勝てなかった。何故なら私の正義は決して、自分の大切な人たちを守れなかったから。サラお姉さんは正しく時計の国の貴族たるクロノスティス家のサラお姉さんだった。ごめんね……ありがとう。」
それは確かに伝えたいと、伝えなければならないと思った、彼女への感謝の言葉。
自分なら救うことが出来なかった大切な人々を救ってくれた彼女に向けての確かな御礼の言葉だった。
>>シルヴィ
シルヴィ、俺は。俺は……お前に謝らないといけない。
謝って済むようなことではないが。俺はお前のことをたくさん、傷つけた。
俺に、抗う勇気がなかったばかりに。お前の純粋な心を踏みにじり、あの美しい国を朽ちさせた。
……それでもお前は、俺を待っていたんだな。俺のことを待って。
あの約束を果たそうと。そのためだけに、永い時を生き続けたのか。
[ぴし]
……こんな情けない男のことを、待ち続けてくれていたんだな。
[ぴしり]
>>481 エルス先生
「先生。私この1週間ほんとうに痛感したの。
……体だけが元気でも生きていけないって。
リリアーヌのことはもう、お話ししなくてもいいでしょう。
マザー・クロックが正しく働いていてもあの子ははかれないほど苦しんでいたのでしょう。」
医療は体に対してのみあるんじゃないと話しかけて、やめた。
「…………ちがうの。
私、先生がもしお医者さまじゃなくても……先生がいなかったら寂しいの。
それから、先生がそんな思いをしていたことも。」
もっと話したい。
隠し事のなくなった今、また秘密にしておきたくないことがたくさんあった。
>>エルス
「先生。お見せしたいものがあります。
私も、先生も、見たことがないものを見に行きませんか?」
1人登るのに慣れた塔への階段を促す。
[幾つもの物語が紡がれた。
そんな今日。彼女にとっての物語も、一つの分岐を迎えた。
臆病で引っ込み思案な少女は、
強く優しい女性に変わった。
きっと今後も彼女は物語を紡ぐ。
そしてその隣には、大切な人々が笑っていることだろう。]
(ありがとう──皆さんのこと、大好きです。)
[国の変貌と共に。
ルクレースは、大好きな人々の物語を見守るのだった。]
>>476 レーヴ
彼の大きな手が自分の顔へと近づいてきたかと思えば、つままれる鼻に手をばたばたとさせて抗議する。
「んむっ!むーーーっ!」
「もう、お兄さん、私だって一応もう16歳の女の子なんだからね!」
全くもう!なんていって頬を思いっきり膨らます。この頬だってむぎゅーってされたこと、覚えているんだからね!
「臨時休業。そっか、うん。お兄さんにも休みは必要だね。」
彼を取り巻く環境を知らないリーンは彼の前で笑うことしか出来ないけれど。
「本当?あっ誰かに渡してくれるの?いいよありがとう!」
そうやってさらにもう一部手渡して。
苦笑いした背の高い彼の脇腹をつんと小突いた。
[亀裂が入る。
私は、抱き締めていた彼女の体を。丸みを帯びた肩を押して。首にかかっていたストールをしゅるりと取った。
首を覆い隠す襟を指で引っ張れば、露わになったのは不健康そうな白い肌。
その体は半分以上が、鈍く白に輝く金属に覆われていた。
滑らかな曲線を描き、皮膚を蝕む金属には金色の歯車が幾重にも組み込まれ。精巧なパーツはまるで生きているように、蠢いている。
それは。永きに渡り、人の身に余る《マザー・クロック》に依存し続けた者の。千年以上も自身の時を無理やり動かし続けた者の成れの果てだった。
ぴしり。ぴしり、と。
皮膚を侵食するそれは、彼が呼吸をする度に小さく罅割れていく]
誰にも何にも期待していなかったし、信じていなかった。期待しなければ、信じなければ裏切られることも無く、生きていくことが出来たから。心の傷は身体の傷と同等に膿んで致命傷になってしまう。致命傷を負えば、あの場所では死んでいくしかない。
だが、それは違ったのだと思う。
誰かを何かを信じることは、そこから心を通わせることは心地よかった。最初から、全てを捨ててしまって、必要なものまで捨てていることに気付けなかった。
あのお嬢さんが、恐らくはきっかけをくれたのだろう。
少し、変わってみようかとぼやけた世界を眺めながら思った。
>>485 グレゴリオ
/☼皆と語らい、ぎこちなくとも以前のように笑えるようになったブレイクは素直じゃないと口の端を上げる。
色々言っているが、結局は肯定に近い返事に満足した。☼/
……わかった、わかった!概ね俺と意見が合致してよかったよ。
ははっ、だよなあ。俺もそう思うよ。
んー?じゃあ、必要になったら言ってくれ。
……ま、ここからはずっとあんたの目でいてやるからさ。たまに1人にして悪かったな。
/☼また悪態をつかれるだろうか?そう思いながらもグレゴリオと言葉を交え、その時を待つ。
夜明けになっても、砂にならぬ体に大いに喜び、また彼に悪態を付かれるかもしれない。
後に、クロノスティス家に赴き、預けた剣を返してもらう事も。ヘンリエッタと隠れんぼの後にお茶会をする事も。ルクレースに、手紙で無事と感謝を伝える事も。
ーーー後日談は、また別の時に。☼/
塔を登っていく。
少し前までは登るほどに気持ちが落ち着いてあったはずなのに、今は逆に高鳴る。
「殿方をデートにお誘いするのは初めてなの。
無作法は許してくださいな。」
初めてのエスコートを得た時にも話したようなことを口走ってしまう。
無作法なんて別にもういいはずなのに。
高鳴る胸を隠しながら階段を上り切る。
すると─────
夜風は優しく、頭の上には今にも降るようなの星空が広がっていた。
「…………こんなにも。
先生。私たち、この国で1番星に近づいたのよ。
こんなに素敵なものが雲の向こうにあったのね……」
……綺麗、だな。
[そんな陳腐な表現しか出てこない。
それに反してこれまでの人生で興味を持ったことすら無かったものに、酷く焦がれ惹かれる感覚を覚えた]
[空の端からは遠く、陽の光がさし始めていた。眩しさも気に留めずマスクを外し見詰めた]
(家に帰る道中、混乱しつつも日常に戻る人々の姿があった。色んな人が声をかけてきた。何が起きたのかと、うわさ話も絶えなかった。
でも自分は知っている。なんでこんなことが起きたのか。何故起きなければならなかったのか。それを解決したのが自分たちだということも。
家に着くと、父と祖母が心配で駆け寄ってきてくれた。驚きながらも、俺は大丈夫だと答えてやる。だって、本当に大丈夫だからだ。祖母のボレロで、鮮やかなガーネットが光る。)
ゾフィー「2人していつの間にか眠っちまってねえ、起きて驚いてたらあんたの姿が見えないもんだから何かあったかって不安で不安で」
ジス「祭りにいってたんだよな?もうしばらく寝ていたような気がして今がいつなのか分からないが……楽しんでこれたか?」
(少し考えて、顔を綻ばせる。)
「……………ん。楽しかったよ。仲間とか友達とか…、出来たから。」
(2人がきょとんとした後に驚いて質問責めを食らったのは、また別のお話。)
†-
ようやく長い眠りから覚める
固まった肩を回すとゴキゴキと鈍った音を聞き溜息を一つ
-†
「とんだ巻き込み事故だったな。
どう報告するか…」
†-
3日間の祭りが終われば母国へ帰る予定だったところ1週間も眠っていたのだ
さすがに何もなかったは通用しないだろう
考えを一巡させ、余計なことは言わず不意を突かれた魔法に1週間眠らされ、どうやらマザー・クロックを巡る事件に巻き込まれたらしいとだけ報告することにした
精神体の時に見聞きしたことは無関係の人間が首を突っ込んでいいものではない
-†
「寝覚の悪い夢を見たな」
†-
ぼそりと小さく呟くと、また鈍い音を鳴らしながら腰を上げる
帰ろう
俺を引き上げてくれた最愛の人の元へ
-†
>>498 サラ
「あっ、そうだった!」
にこにこと、リリアーヌは笑って、サラの周りをクルクル回りました。その笑顔は、まるで最初にサラに出会った時のようです。
「じゃあ、同じだ! 同じお願い事だね!」
リリアーヌははしゃいだように声を上げました。
リリアーヌがしたことは消えません。国の大事に自分の願いを優先したこと、両親を殺してしまったこと──。
その沙汰はいずれ下されるでしょう。そうしたら、どんなにか辛い人生をあゆむことになるのか、リリアーヌには想像もつきません。
「そうね、サラ様!どうか、あしたもおはようっていわせて! その次の日も!」
それでも、リリアーヌはそういって、サラに手を振りました。
サラ達は風景をずっと共にしていた。
なら最後までこの二人は同じ風景にいる
「そうね。私達程じゃないけれど。
魔女の恋の成就。とっても素敵なエンディング」
でも、本当に欲しいのはスクルとヴェルのエンディング
「だって、テルミットったら。あんなに私の胸をドキドキさせるんだもの。私も乙女なの。淑女たるもの、武にも恋にも生きなければね」
この二人のエンディングは、きっと他愛もない話が相応しい
「私も。スクルと出会えて幸せよ」
この物語の二人の時間は確かに、終わるのだろう
マスクを取ってもらえてホッとする。
不機嫌そうで、なのに優しいアンバランスな表情が楽しかったから。
「……先生。そのマスクに私とても助けられたけど……
マスクを外した先生もやっぱり素敵よ?」
この人はまだ孤独なのだろうか。
国中救われてなお、罪も赦されてなお、孤独なのだろうか。
「先生。覚えていますか。
……先生は"もっと早くに出会いたかった"という言葉をくださいました。
1度は間に合わなかったのかもしれないけれど……でも、もう会えたんです。
私は何か、変えられたでしょうか?
いろんなことがあったから、間に合ったら……いいな。」
そして、リリアーヌは走り出します。まだ、リリアーヌの決心を伝えていない、先程酷いことをしてしまった彼の元へ。
「──レーヴさん!!!」
お友達の、笑顔が見たくて。
>>488 ダズリー
新聞片手に街にいたところで。
確かに待ち望んでいた姿を見つけてリーンは彼の元へと駆け寄る。
「うん、、うん!ありがとう、ダズリーお兄さん。」
確かに戻ってきてくれた彼に、リーンは目尻を下げて笑う。
「待っていたよ。きっと大丈夫。助けてくれるんでしょう?」
真っ直ぐに、彼の目を見つめながら。
「あっそうだ!あのね、私、これ…」
そうして鞄の中から、丁寧に包まれた彼の命の時計を取り出す。それは確かに砕けてしまってはいたものの。彼の元へと返すことができ、リーンはほっと胸を撫で下ろす。
そんな、時だろうか。
街の人々の、目覚める音がする。
互いにもう、命の時計がなくとも、生きていけるのだと。今を、未来を、正しく刻んでいけると、そう確信して。
「…やった…んだよね…?やった…やったよ…!」
きっと嬉しさからか、思わず目の前の彼へと抱きつきながら、喜びの言葉を口にする。
「ダズリーお兄さんは、私のヒーローだ。」
ふふ、と笑って。そうして彼からもらった小さな髪飾りを撫でる。
「ところでお兄さん。女の子にアクセサリーを贈るってことは、…期待してもいいってことなのかな?」
最初の髪飾りは、もしかすれば偶々だったのかもしれない。でもきっと、作ってくれると約束した2つ目の髪飾りは、間違えなく自分のことを思って作られるものだから。
「ね、私。きっとこれからもっといい女になるよ?」
片目をパチンとさせてウインク贈り、そうして悪戯に笑って見せた。
涙もほとほと枯れ果てた後。医者から託された小瓶を持って、もう一度、少女の家へと入る。
しばらく進むと、大きな居間にたどり着いて、そこで眠る大人達を見下げた。
「………アンタ達の事情は知らねぇ。でもな、だからと言って、許すこともしたくはない。」
もうひとつの液体の入った小瓶を開ければ、少女がした時と同じように、横たわる大人達の口元へと塗っていく。
「………小さな子どもに、重いもん背負わせんじゃねぇよ。」
そう言って、眠る子どもに目を向けた。
きっと、もうそこにリリアーヌが入る隙間などないのだろう。この行いも、リリアーヌが知れば嫌われることなのかもしれない。けれど、見てしまった以上は、見て見ぬふりなど出来なかったから。
「……ま、アンタのとこの家がどうなるかは、今後ウチの会社のトップが決めるだろうよ。安らかに眠れると思うなよ、ばーか。」
上流階級の中でもトップの内にはいる代表の鶴の一声は凄まじいものだと、レーヴはよく知っている。あまり他力本願は好きではないけれど、この時ばかりは使うしかないだろう。
そして、最後の言葉は、リリアーヌに酷いことをしたお返しだと付け足して。そっと家を後にした。**
……シルヴィ。
俺は、随分とあれに頼りすぎたみたいだ。
[私は困ったように笑ってから、おもむろに手袋を外す。その指先すらも、時計の侵食を受けている。もうこの手は、機械じかけとなったこの手は、彼女のぬくもりを正しく伝えてくれることはない。
人の器に収まりきらない神器に、依存し続けた仇だろう。]
願わくは、これから先も共に時を刻んで。そしてお前と、二人で国を作りたかった。
穏やかで、自然豊かで、誰も争うことのない、平和な国を。
[ぴしり]
俺は恐らく、もう止まるんだろう。もともと止まるはずだった歯車に無理やり油を挿して。そうして針を回し続けていたのだから、仕方がない。
[ぴしり、と。罅割れていく体に視線を落としてから、再び彼女に顔を向ける。目尻に薄っすらと光の粒を滲ませて、冷たい手でシルヴィの頬に触れた]
>>オズ
*/
ずっと、聞きたかった。
元の、オズの声だ。
1400年もかけて、ずっとずっともう一度と求めていた、彼の声である。
それだけで、シルヴィには十分だった。
/*
「オズ。いい。もういい……全部分かった。
人の身に、その命は……その時は重かろう。
今……救い出してやるからな」
[恐る恐る、向日葵色の髪をふわりと撫ぜる。擽ったそうに微笑む彼女に、胸が締め付けられる思いがした]
…………っ!
[力の限り抱き締める。痛いかもしれない。苦しいかもしれない。そんなことも考えられない程に腕にきつく力を込めた]
[しばらく、この目に焼き付けた。愛おしくて仕方がなかった、かけがえのない存在を。頬に触れた手で顎をとらえて、もう一度かんばせを近づける。
控え目に、優しく触れた口づけ。]
ありがとう。
愛してるよ、シルヴィ。
>>リリアーヌ
†-
母国への帰路に足を向けようとしたが、一つだけ、この国で唯一話しかけられたマシンガン少女のことが気掛かりで
躊躇ったがすれ違いざまにぽん、と一つその頭を撫でた
黒狼がリリアーヌの足元へもふっと擦り寄る
-†
「…俺はアルヴィンだ。
旅人が気になるならチビも一度旅をしてみろ。
もしアルセリナに来たら王宮騎士団の詰所で俺を訪ねればそいつと一緒に観光案内くらいはしてやる。
じゃあな…リリアーヌ」
†-
少女の願いには踏み込まない
けれどももしも未来を願うのであれば
少しでも希望を見出せるのであれば
過去の俺を重ねた少女の一助になるのであれば、と
その小さな死にたがりの名前を口に出すと共に胸に刻み背を向け、時計の国を後にした
-†
「あっ……!」
予想だにしていなかった抱擁に思わず体を固くする。
両親に抱きしめられたことはもちろんある。
日常的にかわすそれとは、全くちがうエルスの腕に混乱していた。
大人しくされるがままになっていたが、恐る恐る手を伸ばしてエルスの背中に手を回す。
心音と命の時計の秒針の刻む音がリンクせずに聞こえる。
時計からの解放を瞬間感じ取ったら、後はもうエルスの心音しか聞こえなかった。
震えた声で続ける。
「先生。私、先生の花束になりたいの。」
>>511 片針
ゆっくりゆっくり、エンドロールは流れていく。
川の流れより遅く、雲の流れより早く。
この時間がずっと続けばいいのに、それが最近の口癖。
この時間がずっと続くのが幸せだ、これが未来の口癖。
短針と長針のように追いかけ合い、それでも絶対に離れない。確かな未来を私は確信していた。
現在の神、ヴェルダンディ、未来の神、スクルド。
私たちは今と未来の架け橋。
これからもずっと、2人で時を紡ぎ、編んでいく。
エンドロールは流れ切って、カーテンの幕が閉じる。
fin.とだけ映されるのが、この物語の最後。
最後は彼女のこんな言葉で締めくくれた。
「スクル、愛してる。」
物語の先でも、時計だけは止まらない。
2人だけは終わらない。
二人の片針は両針として
離れる事なく時を刻む。
命の時計は最早ない。
されど。いいやされどこそ。
二人の命は共に刻みあって響き合う。
響き合う時は、必ず綺麗な未来へ共鳴する。
この物語の時間は終わり。
二人の新たな物語を進み続ける。
煙と錆と。鉄の匂い。この国が好きだ。そして、もう1つ。
「スクル。愛してる」
あぁ。とうとう言ってしまったけれど。
良いの。だって。新しい物語には、始めての言葉が相応しいのだから
最後と始まりの時は。
二人の愛してるで
*/
触れた、唇が、最後で。
肩から後ろにすり抜けていく、オズの一つ一つの歯車を。
彼がずっと生きてきた永き時を、見送って。
この国は、その呪縛から放たれる。
魔女の積年の妄執も、同じく砂のように消えていくのを、彼女自身が感じる。
オズと共にすり抜けていくこれまでの正史は、
時計の国に最も陽の差した、日のことだったという。
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切り抜いた時空を元に戻して、月光の差し込む城のホールで、たった一人残された時の魔女。
時計の針が重なっては離れゆくのと同じように。
ほんの一瞬の、逢瀬であった。
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「アベル」
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呼び慣れた、名前を一つ。
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最後の最後で噛んだじぶん。
顔を真っ赤に染めて。なんて恥ずかしい。
けど、新しい顔を見せるのも良いでしょう?
「ヴェル!愛してる!」
サラはもう一度。片針への愛を響かせるのだ
はいはい、呼んだ?
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待ち侘びたように、金の竜が降り立った。
この物語を間近で見守り続けた使い魔。これからも彼は、主人のそばに在り続けるだろう。
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>>ルーツ
リーンは、騒めく人々の波を掻き分けて、唯一無二の親友の姿を探す。
互いの道を進む前に、確かに交わした約束を胸に抱きしめて。
彼女の姿をその目に捉えれば、きっとその胸に駆け寄って。
お互いに目を合わせれば続く未来に笑い合い。
ねぇルーちゃん。色んなことをしよう。
お昼休みにはお弁当を分け合って。
たまには授業をサボって息抜きも大切ね?
休みの日は2人でいろんな場所に出掛けよう。
冒険だよ!って手を繋いで、色んな世界を見て回るの
お料理だって一緒にしたい。
パジャマパーティーだってきっと楽しいよ。
でも、まずはやっぱり、ここからだよね。
「「 ねぇ、星を見に行こう。 」」
「……終わった。
全て終わったよ」
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月の光に照らされた、彼女の眩いほどの銀色の髪が、
ずっとずっと、そう言いながら……名残惜しそうに、オズのかけらを追うように、吹き抜ける風に靡いていた。
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どこからか、光が漏れる。
鼓膜が震え、温かいモノが身体を包み込む。
「……………………あ。」
心臓が、確かに動いている。
影が、確かにそこにある。
温もりが、確かにそこにある。
瞬間、理解した。全てが、本当に全てが終わり、始まったのだと。
戦いは終わり、命の時計がなくとも、生きているのだと。確かに、今。
「──リリアーヌ!」
名を呼ばれ、振り向けば。駆けてくる小さな姿が見える。
もう、会えないと思ってた姿を、確かにその目で捉えて、瞬間走り出す。
近くに駆け寄り、確かに強く抱きしめた。
そこで、きっと聞くだろう。少女の決断を。
生きる事を選んだ、少女の決意を。
止まりかけていたその時が、もう一度動くことを感じて。リリアーヌの瞳を見つめて。
レーヴは笑った。きっと、涙で濡れた顔をしていたかもしれないけれど。
……それでも、あぁ、それでも。
「………大丈夫だ。傍にいる。俺は、ずっとリリアーヌの味方だ。
友達だから、当たり前だろう?
俺は、友達との約束は破らない主義なんだ。」
「先生、この針を。短針を差し上げます。
長針は変わらず私の髪に。
今はまだ先生のお力になれなくても、うんと走って近づきます。長針のように。」
テルミット=ヴィブラート=クロノスティスは《クロノス》に上り一週間を過ごした広場を眺める。
辺りには目を覚ました人々が集まり始めていた。
「ふむ。…色々なことがあったが、概ね良かったと言って差し支えないだろうな!所謂大団円である。」
うんうんと頷く。
「さてと。」
座席に座り直し、新しくなった操作盤をひと撫でする。ポーチから取り出した銀色の歯車をセットして、親指で弾く。
小さな歯車から大きな歯車へ力が伝わり、《クロノス》が起動する。
「まずは寝坊助の我が弟子を叩き起してやらんとな。
……パトロンを捕まえろとは言われたが、まさか輿入れすることになるとはなあ。なんと説明したもの……かっ…!」
手元のレバーを思い切り引く。
極限まで圧縮された蒸気が噴出し大地を揺らす。
かくして、《クロノス》の巨体は宙を舞い、煙の晴れた青い空へと吸い込まれて行っただろう。
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『トラスト時計店』。そこにある3つの工房の内、『rêve』と書かれた工房に、男がひとり入っていく。
大きなテーブルに小さな懐中時計を乗せれば、小瓶の中から宝石を取り出した。
拡大鏡を付け、息を吐き出す。
気合いを入れて、真剣な表情をすれば、道具をつかってそれらを順に蓋へと付けていく。
ひとつずつ、丁寧に。傷をつけないよう。
その隣に、少女の姿があったかもしれない。
真面目な顔をして作業を見る小さな姿に苦笑して。道具をカチャリとテーブルへ置いた。
「………できたよ、リリアーヌ。」
遂に砕かれることがなかった懐中時計には、あの日見た偽物ではない。確かに、本物の宝石がついている。光の反射でキラキラ輝くそれを見て、男は小さく微笑んだ。
その目元には、クマはなく。ただ、少女を見守る優しい笑顔がそこにはあった。**
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