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>>ダズリー
無視はよくないと思うんだ!
話しかけなかった僕も僕だけど。
[アベルは許可も得ずに隣に腰をかけて、バナナを食べる青年に話しかけた。]
ねえねえ、僕にも果物を一つ分けてくれないかい?
実はここ最近、すっかりこの国の果物にハマってしまってね。
お礼と言ってはなんだけど、かわりに僕の鱗を一枚あげるからさ!
>>全員
「もう何度目かの時だから、分かるわよね?
【私に票を委任することを忘れないように】
お忘れだった方は、私の『ヴェルウォーク』で高速起動走り回り乗り物酔いの刑に処します。
因みに、一緒にドライビングに行って下さる方を募集中よ」
>>サラ
レーヴは頭を抱えて唸りながら、再度、蓄音機の前に立つ。そして、ゆっくりと声を吹き込みはじめた。
「……決定が出ちまったが、とりあえず、お嬢さんの質問について話してくな。
まず、時計職人を騙ってた2人は魔女の眷属だった。
結果として、狂人は騙りに出てないことがわかった訳なんだが……じゃぁ、何処に居るのかって話になるわけだ。
賢者として出てきた人数を加味すると、狂人の内、一人は身を潜めてるって考えていいだろう。本物の賢者が隠し事せず出てきてくれていると信じた場合、と前提条件は付けておくが。
果たして、今出てるどちらが狂人なのか。つっても出てるのは、なんの能力も持たないただの狂信者ではないと思う。辻占い、だろうな。」
「今日の結果から見てみると、まず、物書きのお嬢さんが襲われてる。もし本物なら、昨日の視る先に呪力の力を持った眷属がいた可能性がある。
眷属目線、もう2人の時計が砕かれちまってるんだ。その上ここでもう1人も見つかったら、その時点で詰みだ。そうならない為にも、ルクレースを襲った。もう片方が小悪魔か蜘蛛じゃない限り、犠牲者は出てこねぇはずだからな。
もしくは、これ以上潜伏先を狭めない為にも、名乗りを上げた者の中から選んで襲った……か。
……とにかく、そういうことから考えると、ルクレースは狂人ではない可能性が高い。
それに、ブレイクに関してもそうだ。短時間で物怖じせずに視た先を告げられたってのはなかなか大きいんじゃないかとは思う。
……あくまで可能性の話だがな。」
「ヘンリエッタに関しては、まだ判断できる結果が何も出されてないのが痛いところだな。
俺は昨日、初日の行動でサラを占ったと言ったことに関して狂人目を下げていたが……狂人があり得るとするなら、嬢ちゃんの方だろうか。
だが、ここまで来てまだ一人も眷属だと主張していないってのもなかなか……いや、時計職人に3人も出てきちまったから怖気付いて出せなかったのか。
まぁ、本物なら出なくて当たり前と言えば当たり前なんだが………難しいラインだな。
以上を踏まえた上で、狂人寄りに見てるのはヘンリエッタ。次いでルクレース。」
「だが、サラが言ってたまさかの可能性もある。少なくとも、なんの能力も持たない狂信者は鳴りを潜めてるだろうぜ。
あと、考えられるのは、時計職人を騙ろうとしてた可能性か。初日に2人、次の日の朝に俺が出てきたもんだから、出るに出られなくなってしまった。……って可能性もある。
奇を衒う、とか怠けてる、とかじゃなくて、ただ運が無かったと言った方がいいかな。
まぁ、こんなところか。
つっても、俺の考えた事だ。おかしな所とか、気になるところがあったら聞いてくれ。」
そう言うと、蓄音機を切った。
>>129 ルーツ
「おはゼウス!……もう夜だけど。
とってもサンドイッチおいしかったの。
マーマレードもくださるのね?紅茶に入れて飲んでみるのなんてどうかしら?
ああでも……その前に。」
瓶にスプーンを差し入れ、ひと口。
「とってもおいしい……!
これは重労働の始まりの予感だわ!」
いつまでこんな冗談を言い合えるのか。
それでもこの時間が愛しかった。
4日目となると少しずつみんなの行動パターンがわかってくる。
その中でもわかりやすい男が1人。かの大食漢である。
彼はだいたい同じ時間に調理場に来て、食べ物を漁って颯爽と去る。
そして今日もまたそろそろ来るだろう。
私はメモを残してその場を去る。
>>ダズリー
「人嫌いさんへ
貰ったオレンジでマーマレードを作りました。
別に友達だから、とかじゃなくて、
これはパンのお礼です。
これ、パンのにつけて食べてみてください。
お口に合うことを祈ってます。
喋るのが苦手なルーツより」
>>オビゼビオ
「言ってしまったものは仕方無いわ。
【指示があるまで、誰を護衛していたかは言わなくていい】
決定時間を延長させます。」
リーンはサラの決定を静かに聞いていた。
まわりでは白熱したやりとりが行われていたが、どうにもリーンには居心地が悪かった。
……こんな時に興味を持てないなんて、新聞屋として失格かな…。
オブゼビオさんが今日、その刻を止められる。
>>164 サラ
「サラお姉さん、今日もありがとう。決定聞いたよ。委任のことも。
サラお姉さん、………ピリピリしている。勝手に言ってしまったオブゼビオさんが良くなかったのかもしれないけれど、命を終わらせてしまう人に対してその言い方は、もう少し考えるべきだと思う。」
『あれぇ、本当の騎士さんなのかなぁ?うーん、小悪魔さんなのかなぁ?うーん。
トッティ、目が時計のおにーさんの真似っ子はできないから、いかないね!』
「おや、すみません。加護を無駄にする訳にはいきませんので。
もちろん何処に肩入れしていたかは申し上げるつもりはありませんよ。」
──時は少し戻って。朝。
>>51 オブゼビオ
「委細、か?……そう言えば言ってなかったか。」
確かに、どこにどうあったのか、詳しい説明はしていなかったなと思い返す。そして、ひとつ頷くと、彼に向き直る。
「時計を分解して、パーツの一つ一つを確認していくんだ。傷つけたり、失くしたりしないよう、丁寧にな。
……で、アーネストは地板に。グレゴリオは香箱の裏に、その線があった。
時計ってのは精密な機械だ。小さな傷や少しの磁気で簡単に狂っちまう。命の時計なら、特にな。
それなのに、そんな線があったらおかしいと思うだろ?ましてや、紋章のようなものを描いてたならさ。
まぁ、時計の"一部"を持ち帰って分解してるから、それがどんな模様かまでは分からねぇ。すまねぇな。」
こんなもんでいいか?と付け加えれば、説明を終えた。
>>175サラさん
「全く気にしていませんよ。
私にもやるべき事があるように、貴女も貴女のやるべき事がある。
茶事ですよ。」
『【2→3日目】
ヘンリエッタさんを護衛
【3→4日目】
ヘンリエッタさんを護衛』
「昨日はルクレースさんとかなり迷いました。
しかし、私の話でも分かるようにヘンリエッタさんを本物の賢者として於けば、ルクレースさんーブレイクさんという糸を握るよりは痛手は防げます。」
[パタンと本を閉じてため息をつく。]
「有益な情報がなくて申し訳ありません。
私が【騎士の真似事】をしている可能性もあるのでそれはお忘れなきよう。」
>>78 アイリーン
「おう!どーいたしまして。」
アイリーンが前を向けば、手を止める。彼女の今の胸の内は知ることができない。けれど、少しでも気持ちが伝わっていたらいいと、そう思う。
そうして、うんと伸びをすれば盛大に息を吐き出した。
「……んじゃ、まぁ、俺はコイツに意見も吹き込み終わったし、ひと休みしてくるわ。
キシシ、久しぶりにバカ真面目に考えたんで頭が痛てーんだ。ちょっと向こうで休んでくるな。」
蓄音機を見ながらそう言うと、自身の頭を指さしながら苦笑する。
彼女が何か止めることがなければ、手を振ってその場を後にしたことだ。
>>95 アイリーン
聞いた割に頭に何も入ってこない。申し訳なく思う。
今はただ彼女の声を聞きたかったのかもしれない。
ゼウス「ありがとうじゃ、とても参考になった。」
幸い?彼女の思考は私のそれと似通っていた。
リンクして考えを整理することができる。
理解者「レーヴさんが嘘をついているようには私も見えない。
彼が本物なら、それは、とてもいい事なのだけれど。」
何となく歯切れが悪くなってしまう。だって伝えたいことは違うことなのだから。
私は彼女に伝えたいことがある。
理解者「夜、塔の上に来てくれる?」
それだけ言うと私は背を向けて、その場を去る。
そして果たすべきことを全て果たさなければその時は来ない。
「考え中につきお待ち遊ばせ
チックタックと時計の音を聞きながらね。
【待てそうに無い人もそうでない人も、私に投票を委任しておいて】」
>>151 アベル
………………あー、うるっさ。
(バナナを齧っている時に、周りをちょろちょろしてるやつがいると思ったら。敢えて見ないようにしていたのにコレだ。あの日、王宮で姿を変えたコイツのことは忘れもしない。目を合わせないように手に持ったバナナに集中する。)
…………わざわざ人が食ってる物に寄らなくていいだろ。俺は俺の空腹を満たすので忙しんだよ。
対価は要らないから…………、ほら。これでどっか行け。
(ぽい、とバナナを一本ちぎって竜もどきに投げた。胃の底から怒りがフツフツと沸いてくる。これ以上関わるとろくなことにならなそうだ。)
『ドラゴンさんだ!』
[少女はアベルを見ないように努めていた。アベルを見たら、ワクワクしているのが外に出てしまいそうだから。]
『トッティ、今度ね、ドラゴンさんに背中に乗せてもらいたいの!
だから、あんまりお話すると、トッティがドラゴンさんとお話したいのわかっちゃうかも。
ドラゴンさん、バナナ喜んでくれるといいな!』
「お待たせしたわね
本決定をお知らせするわ。
視る対象は変わらず
時を砕くのは。……。
【セレナ】
【セレナは何者であるかを名乗らなくて良い】
騎士には護衛の指示をします
【オブゼビオは私の護衛を
潜んでいる騎士は、ヘンリエッタの護衛をするように】
……セレナは、命の時計の最後を託したい相手がいるのなら、申し出て構わないわ」
>>176 サラ
「ううん。誰かの命の行方を握っているサラお姉さんが一番大変なのは、わかっているつもり、だから、私もごめんね。
………落ち着いてくれてよかった。」
サラの体の痛々しさは相変わらずだった。
……だいぶ、凡人にはこなしきれないリハビリをしているようだから、案外心配しすぎな気もしないでもないが。
恐がらせてしまったか、その問いには答えに詰まって、小さく首を横に振るった。
こわくないわけでは、ない。
だって、誰かの命を砕くこの行為は、紛れもなく魔女の眷属としていることは同じだから…。
それでも自分が見たことないような、彼女のしょんぼりした姿を見たならば、リーンは少しだけ笑って昨日は迷った彼女の手を取り優しく撫でた。
『明日は誰のところに行こうかなぁ。』
[彫金道具を取りに行きながら、少女は考えていた。]
『セレナおねーさんになって、いい匂いのやつ、つけてみたかったなぁ。うーん。どうしよー。
トッティがなりたいのは、テルミットおにーさん。
あとは、リリーちゃんとレーヴさん。
……うーん。迷うなぁ。』
「【委細承知しました。】」
「私は聞いておいて良いと思いますよ。
抑止力については同調しますが、私のように騎士として出たという後々に効く抑止力もあります。
終盤に差し掛かって、騎士を名乗る輩が現れて信じられるのか、というのにも疑問が残ります。」
『ルーツおねーさんは、お人形さんたちをお話させるの、大変そうなの。うーん……あ!そうだ!それより、トッティの時計やらなきゃ!』
「反論というのは特にはないネ。能力を聞かないというのモ、オブゼビオの時からそのつもりだったのでしょウ。それなら、ワタシは従いますヨ」
「セレナお姉さんを…?」
初めて彼女の名前を口にする。
名前は知っていたが、彼女から聞いたわけではなかった為、まだ呼んだことはなかった。
彼女が選ばれたことはもちろん、その決断をしたのがサラだということにも、リーンは驚きを隠せないでいた。
「騎士かどうかを聞くのは一長一短だから、どうとも言えない。元々サラお姉さんの方針が抑止力に頼りたい考えだと思っていたから、そこはお任せするよ。」
「このあとのために……みんなに告げておくわ。
【私は絶対にこの国に反旗を翻す陣営ではないわ。】
それは、今日の考察を聞き返してくれればわかるはずよ。
反陣営だとしたら、今日の考察内容をつらつら話すことは絶対にできないわ。
あとは……
いいえ、もう、いいわ」
>>セレナ
「時を響かせ合った結果、思考を纏めたわ。ごめんなさい。
セレナは
【手応えがあった騎士であるなら名乗り出ても構わない】
騎士では無い、と言う必要はありません」
「……なるべく読まれないように、私は占いを考えるだけ。希望した方がひとり入っているのね。ならばよく考えないと。
明日からは、明日があるなら。
3人、または4人希望を出すわ。
そして、【私は自分でセレナに投票をしています】。
占う相手も決めました。」
>>111 ルーツ
彼女の心はどこにあるのだろうか。
話しながら、おもう。
なんだか今日のルーちゃんは、いつもと違った。
余所余所しい…?ううん、こんな状況なんだから当たり前。答えの出ない問答が次から次へと出ては消える。
「塔の上、うん。わかったよ。ふふ、塔の上に登るなんて、初めてだよ。」
そう言って、場の空気を和らげようと少し笑って見せるも、彼女の表情はどうだったのだろうか。
立ち去っていく彼女の背中を見送れば。
リーンの手に残ったのは、甘くてほんのり苦いマーマレードジャム。
『トッティね、果物とっても好き!』
『一番好きなの、本当はりんご!りんごあるかなぁ。りんご飴も大好き!ふふっ』
『よーし、寝る前に、トッティの時計なーおそ!』
[サラがセレナと共に消えていくのを見えて、考えをメモに書き、重石を載せて置き去る。]
>>2サラさん
「
U)賢者の結果を見て考える事
軸となるのは、ルクレースさんが本物か否かという事でしょうね。
先程、ルクレースさんとブレイクさんが本物同士である事はほぼほぼない>>52とメモに書いたのですが、
@ブレイクさんが呪いの賢者を視た
Aルクレースさんがブレイクさんを視た
のであれば、成立する事は蓄音機の中で拝聴しました。
なのでここに関しては考察を巡らせているダズリーさんは私の中で信用のおける位置にいます。
私もここの事でずっと頭を抱えていますから。
U-@)
ルクレースさんとブレイクさんが本物の賢者
ヘンリエッタさんに視られたリリアーヌさんとダズリーさんは、盤面上、魔女の主犯格である可能性が上がりますね。ここから犠牲になる事があれば、疑わざるを得ません。
U-A)ルクレースさんとヘンリエッタさんが本物の賢者
ブレイクさんは悪魔側の陣営。
トッティさんはルクレースさんを乗っ取った可能性があります。占われて結果を出されるよりは、ルクレースさんに憑依した方がその場を凌げます。
トッティさんが襲われたと言うのであれば、今日のヘンリエッタさんの結果を合わせると、何故そこなのだろう、という疑問は解消できません。
トッティさんが溶けたというのであれば、それはそれです。
U-B)ブレイクさんとヘンリエッタさんが本物の賢者
ブレイクさんは呪の主犯格を視てしまった。
それを隠蔽するようにルクレースさんが賢者を騙る。
騙ったのが憑の主犯格ならば、U-A)に思考は合流する。』
「以上からヘンリエッタさんを守れば損はないと判断しました。結果が奮わず落胆させたのは申し訳ありません。賭け事はしない性質なので。」
「今日は...喋りすぎました。」
[ふらふらと歩くとそこには噴水。
全てはここから始まったと言っても過言では無い。]
✑──────────
[観測者でいるはずなのに、どうしてマザー・クロックはこんな使命を与えたのだろう。
歴史に介入する事は許されない。それは観測者の掟。
恩恵に目がくらみ、親和させ過ぎた、一族への仕返しなのか。
これで私は家に帰れなくなった。]
──────────✑
「只の、物書きだ。」
>>216 アベル
「マスクといえば2人いますが、どちらのことかは想像がつきましタ。勿体ない方デスねぇ。
因みに、2,3枚売っていただけないでしょうカ?足の1本や2本は差し上げますのデ 」
あの医者なら、小言を言いながらも話を聞くだろう。…どうせ脚は生やせるのだからと、ちょっとした交渉をする。高価と言うには命でも捧げないといけないのだろうか。
「持ち物や見た目は、ただの人間でも偽装できますからねェ。―――という調子でただのドラゴンと言うのはおかしくありませんカ?お願いですかラその姿のままでいてくださイ。ドラゴンが住めるようには出来ていませンからね、この街は」
衝撃の事実をさらっと告げられて、正直に言えば引いた。この辺りではとかそういう問題ではなく、普通に暮らしてドラゴンに出くわすことなどあってたまるか。
>>エルス先生
「もしよろしければ絆創膏を1枚くださいな。
昨日の晩だけど少しだけ、指を切ってしまったの。」
傷はもう痛くないが、何となくそうしたくなったのでエルスの所に話しかけに行った。
「どなたかとお話しされたいと聞いています。
お邪魔はしないから指の切り傷を診てくださいな」
*/
霧が晴れて雲も退き、覗く隙間からまた黒い景色。
夜闇がこの国の空を縫うようにして覗くのが、シルヴィにとっては少しの楽しみでもある。
人工的に黒く染まった空に比べれば、なんと澄んで鮮やかなことだろう。
冷たい夜風に身体を煽られながら、彼女は誰も寄り付かない時計台の屋根で短い髪をたなびかせていた。
一つ。
この国の景色を、塗り替えたようで。
それが持つべき感情かはさておき−−少々嬉しいと感じている。
/*
>>224 サラ
「……そう。貴女は、そうよね。
私は…………
貴女にだけは、信じていて欲しかった!
他の誰が私を疑ったって構わない、
周りにいる全員が、私を指差して偽物だって罵ったって構わない、
貴女にだけは!信じていて、ほしかった、のに
…………ねぇ……どうして…………
どうして……どうしてよぉ…………!
ぁぁ……ぁ…ぁぁぁ…!!」
そうしてセレナはその場に頽れる。
そこにはいつもの強気なセレナはいなかった。
一番信じてほしかった人に信じてもらえなかった悲しみを抑えることができずに、ただただ目の前のサラに甘えて泣き叫ぶ、凡庸な少女でしかなかった。
>>リーン
こつん、こつんと靴の音を響かせ、リーンは人のいない螺旋階段を上がっていく。
友人との約束は、とても嬉しいもの。きっといつもの私なら、城下町を駆け回るように、この階段も駆け上がっていっただろう。
ゆっくりと、一歩一歩上がっていけば、やがて扉の前へと辿り着く。
大きく息を一つ吐き、リーンはその扉を開けた。
夜風が頬を撫でる。
その風は昼間よりほんの少し冷たかったが、刺すようなそれではなく。逆に気持ちのいいものだった。
「ルーちゃん、こんばんは。」
夜空を眺める、目的の人物を見つければ駆け寄って。
リーンも同じように、いつもよりも近く晴れた、その夜空を見上げた。
『トッティ、リリーちゃんとアイリーンおねーさんで迷ってるの。えっと、新聞書いてみたい!
セレナおねーさんと、目が時計のおにーさんが共鳴者じゃないなら、アイリーンおねーさんが共鳴者なのかなってなんとなく思ったの。うーん。あんまり自信はないんだけどね。アイリーンおねーさん、占いの決定にも、入ってなかったでしょ。
メガネのおにーさんは、味方だから時計壊しちゃだめだし、ほんとは、リリーちゃんが一番いいような気がするの。うーん。うーん。
でもね、ほんとはトッティ、リリーちゃんになりたくないの。だからね、迷っちゃうな。
機械のおにーさん、明日いなくなっちゃうかもしれないよねぇ。うーんうーん。トッティがなりたい人になっていいかなぁ。』
〜城の塔へと登る前〜
>>227 オブゼビオ
「オブゼビオさん!」
辺りをきょろきょろとしているオブゼビオを見つけて駆け寄る。
今日、彼の命が砕けてしまうかもしれないと知り、リーンは未だ果たせていなかった約束を思い出していた。
鞄の中から取り出したのは、今朝書き上げたばかりの新聞。
両手に持てばどうぞと言って彼に渡す。
「よかった、居てくれて……」
その言葉は紛れもなく本心だ。
代わりにセレナの刻が止まることには目を瞑りながら。
[奇妙な所から時計が砕けるのならば、私に憑依されている可能性が高い。
それも忘れぬように。もしそうなったら明日砕かれるのは私だが、私ではない。良くはない·····が。他人に乗っ取られるよりはマシだ]
『……あな』
[ダズリーの目を通して自分の命の時計を見て、少女は衝撃を受けた。
あの穴は、何かを嵌めるものだと思ったあの穴は。
誰かがそこにあった何かを、奪った痕跡だったのだ。少女の時計からは、装飾があったと思われる場所から、それらのものは全て無くなっていた。]
『ひどいなぁ』
[観察するふりをして、暫く動けなかった。ともすれば涙も出てきそうになるのを、唇を噛んで我慢した。誰が?園長さん?通りがかりのひと?それとも、パパかママ?]
『知らなかった』
>>226 ジュラム
え? ああ……うん、ここにいる間はそのつもりでいるよ。
だから安心してくれ。人間が棲む街では、あの姿は色々と不便だからね。
[いつか別の誰かにもしたような言葉を返しながら、アベルは彼の交渉に唇をあげる]
ははっ、いいよ。別に減るものじゃないし。……いや、だからって削ぎ落とされるのは困るけど。抜けてもまた生えてくるからね。
すごいね……足の一本や二本って。でも、いいや。
僕、肉は好きだけど、人間はあまり好まないんだ。食べるところがあまりないだろう?
そうだな。じゃあ、全てが終わるまでにキミの時が止まっていなければ、何枚か譲ってあげるよ。
>>232セレナ
「信じたくない、訳が無いじゃない!!!!」
サラは。もしかしたら産まれて初めて、こんな叫び方をしたかもしれない。
貴族としての優雅さも。自分としての、強さの誇りを見せないような。
今のセレナと同じ。只の、少女の叫び声だ。
サラは、躊躇していた脚を進めて。セレナの頭を、抱き締めた。
「貴女が!私の在り方を、美しいと、魅力的だと言ってくれたから!私は、例え貴女の時を止めても、そうであろうと思ったのに!
そんなこと、そんなこと言わないで……!
信じたくなかったら!信じていなかったら!
私の命の宝石を。私の時の一部を、貴女に渡したりなんか、するはず無いのに!」
これはきっと、別れるのが悲しい涙だ。
自分が決めて。自分が処するのに。悲しい涙を流すだなんて、矛盾している。間違いだ。流すべきでも、哀しむべきでも。嘆くべきでもない。
それは、これまでの時間への冒涜だと、分かっているのに。
涙が、止まってくれない
>>233 エルス先生
「あんまり痛いわけではないの。
でも、何だか痛いことを今我慢したくないの。
竜のアベルがね、涙が出ないのは心を守れていない、なんて言うのよ?
……まだ涙は出そうにないんだけど。
指をこんなに切ったのは初めて。
でも、こんなの大したことないって先生に言って欲しくて。」
縫うまでもないだろうが、押せばまだ血が出てくるだろう指先をエルスに診てもらう。
サラがあれほどの怪我をしたのにまだ立ち上がろうとしているのに、指先の切り傷すら気にしている自分は情けない、と大人に示して欲しい気分だった。
>>リリアーヌ
………………表は、無理そう。時計職人じゃないから。
裏は、金みたいだから。まだ多少は加工できるかな。気休めみたいなもんだけど。
(しばらく観察した後、リリアーヌにそう告げて、加工を開始する。穴は少し歪んでいたが、溶接の道具で調整する。アクアマリンが、ぴったり嵌るサイズに。全て奪われたらしいこの裏面に、せめて少女が最後に貰ったものを嵌められるように。黙々と、調整を繰り返した。暫く、金属の加工される高い音が辺りに響いただろう。)
キィィィ……ン
キィィィン
『アーネストおにーさん』
[少女は、自分の時計を加工しながら、心の中で泣いていた。本当は、ダズリーの姿でも泣きたかったけれど、隣にリリアーヌがいたから。必死で我慢する。]
「アーネストおにーさん。ありがとう。トッティに、アーネストおにーさんの、大事な石、くれて。ありがとう。」
しばらくの間、セレナはサラに抱き締められるまま、泣き叫ぶことだろう。
それは、信じてもらえなかった悲しみと、自分の時がここで止まってしまう恐怖とが混ざった、人らしい涙だったに違いない。
落ち着き始めた頃、セレナはサラの胸から頭を上げる。
「…………ぅ…………こんな、早くに……
返すことになるなんてね……。
大事な物でしょう。無闇に人に託してはダメよ」
胸に下げた袋から、サラから預かったタンザナイトを取り出し、サラへと差し出した。
>>240 ルーツ
夜空を見上げれば、朧げに月が浮かんでおり、淀んだ空はそれでも幾分か晴れていた。
こんなに空が近いのならばと、手を伸ばしてみるも、掴めるものなんてなにもなく、ただ空を切るのみで。
ルーツと同じ緑のリボンを頭に付けたその子と一緒にルーツが自分の名前を呼ぶ。
「ううん、絵本の中では、見たことあるけれど、実際に見たことはないよ。でも今なら、見えるかなぁ……」
夜空に煌く星を探しながら、そう答えた。
>>241 オブゼビオ
「……オブゼビオさんが、私を……?」
言いながら、小さく首を傾げながらも、彼の隣、噴水の縁へとゆっくりと座る。
「お邪魔します…」
>>247セレナ
二人をして、泣き叫んで。
その時間は。そこには、只の少女達しかいなかった。その目は、赤く腫れぼったくなっているだろう
「…………私、だって
こんな形で返して貰うことになるなんて、考えたくも無かったわ
………………大事な物だからこそ、貴女に持っていて欲しかったのに。無闇にするわけ、ないでしょう」
セレナへと預けていた、サラの時の一部を受けとる。
カチリ、と。自分の命の時計へと嵌めた。
「……セレナ」
サラは、一言名前を呼ぶと。
セレナを抱き寄せて。その額へと、ほんの軽く、キスをした。夜闇の中で、タンザナイトが輝く
時間は。一瞬だったか。それとも、とても長かったか。
>>245ヘンリエッタ
ふむ。
[ヘンリエッタの右手の人差し指の先に、何か鋭利なものに引っかかったような傷跡が見えた。昨日の晩に出来た傷と言うこともあり、既に殆どかさぶたになっていたが]
何かの破片が見えるな。痛むかもしれないが……
[そこまで言って、「耐えろ」と言いかけて、彼女の言葉の続きを聞いた。
色々な言葉が頭を駆け巡り、言葉に困る。昨日ダズリーに口下手だと言われた記憶が鮮明に蘇った]
……そうか。
………………ああ、いや。
痛いことは、痛いと言えば良い。其方の方が、医者としては分かりやすい。
……いや、違うか。違うな。泣こうが泣かまいが……辛いなら、辛いと言え。今は、それで、良い。
[応急処置用のセットからピンセットを取り出す。まだ柔らかめのかさぶたを少しだけ剥がして破片を取り除き、消毒液をつけた。多少ちくりとしたかもしれない]
[慎重に絆創膏を巻く。本当に細い指だ、と感じた]
……出来た。
[言葉に詰まる。手袋をした手のひらでヘンリエッタの頭にぽん、と手を置き、静かに離した]
>>234 アベル
…………しつこいってよく言われない?
(不機嫌な声を出して、席を立つ。腹ごしらえさえしてしまえばもう、ここに用はなかった。トッティの時計について考えていた時でもあっただろう。)
大切な人…………いるよ。かけがえのないもの、それは、時計なんじゃないの。俺たちの場合、誰でも。それ以外なら………いや、アンタには言わない。ろくなことになりそうにない。
そんな時はきっと来ないけど。俺は…………きっと、人を本当の意味で信じることは……っ、話しすぎた。
(どうしてこんな、つられるように話してしまったんだろう、と後悔する。ガタン、と音を立てて椅子を直し、少し早足でアベルから離れた。)
>>248 アイリーン
見えないの、星が。
手を伸ばした先にあるのは漆黒の帳。
独白が始まる。
理解者「昔ね、友達と喧嘩したの、ほんとに小さい頃。
下らないことって笑うかもしれないけど、その子が昨日の夜、流れ星を見たって言ったの。
その頃にはもう空は薄汚れていて一等星の光だって穢れた層は穿てなかった。
そんな中、言うんだ。流れ星を見たって。
私ね、私。それが信じられなくて、嘘つきって笑っちゃったの。そこからは見える見えないで大喧嘩。その日は、もう知らないって言い合って別れたの。
数日空いて頭も冷えた。話を合わせる大事さだって必要だって。謝りに行こうとしてその子の家に向かったから出てきたのは黒い服を着た友達のお母さんだった。
その子は写真を撮りに行ったんだって、星の。
それで、高い岩場から落ちた。
信じることも謝ることも出来なかった私は喋ることが怖くなった。
だから私は人を信じることにした、そしてあの日吐いた言葉を反省するため自分の口を塞いだ。
つまらない昔話してごめんね。」
星は煌めかず、一筋の涙が煌めく。
虚空にのばした手はそのまま彼女に向き、身体を預ける形になる。
理解者「でも、でもね。今でもやっぱり星は見えないの。
それが信じられない現実が変わらなくて、それをあなたに重ねてしまう。
私、リンちゃんのことを信じきれないの。
ごめん、本当にごめん。」
信じたい気持ちが溢れ、それを理性が引き止める。
止めろ、と心の中の誰かが叫んだ。
これは彼女に背負わせる負担ではないと。
その声を無視して私は人形を外した。
理解者は冷たい鉄の床に落ちる。
泣きながら、顔を填めながら私はリンちゃん、アイリーン・クロッカーを抱きしめる。
「でも、私はあなたを信じたい。本当に心から。
だから、どうにか、
私にあなたを信じさせて。」
『リリーちゃん、レーヴさんのとこ行くんだぁ。レーヴさんになって、トッティ、時計自分で直そうかなぁ。』
[作業しながらぼうっとそんなことを考える。明日の憑依先を、まだ決めきれていなかった。]
『ん.......。ヘンリエッタおねーさんは本物ってみんな思ってるし、たぶんほんとに本物。でも。うーん。
トッティねぇ、やっぱり機械のおにーさんか、アイリーンおねーさんになってみたい。レーヴさんでもいいなぁ。なってみたい人になっていいよね?
あとね、リリーちゃんには、やっぱりあんまりなりたくないんだぁ。なんでだろう。トッティのこと、見つけて欲しいのかなぁ。
機械のおにーさんは、明日ギリギリなんだけど.......もしバレちゃったり、壊すよって言われたら、小悪魔さんと追いかけっこするね。』
破片が入ったままだったのか。
じくじくといつまでも痛むと思ったら。
それを取られたとき小さく悲鳴が漏れたようだった。
>>254 エルス先生
「…………痛かったの」
じんわり涙が滲んできた。
指を切った、お風呂に入れない、お気に入りのお洋服が洗濯できない、母親と話せない、ジャンが動かない、本当は全部イヤなのだが、みんな同じかそれ以上に苦しいはず。きっと先生もそう。
「先生。いい子にできなくてごめんなさい。
ほんとはもう少し我慢してることもあるの。
でも、ヘンリエッタががんばってることだけ……わかっててもらってもいいかしら?」
>>259セレナ
サラにとって。親愛の、額へのキスをした後に。
「セレナ。私、貴女の事をわすれな」
言い切る前に。抱き締められて。
もしかしたら、避ける事だって出来ただろうけど。
サラは、セレナからの口づけを受けた。
「ふっ、ん」
身体が抱き締められて、痛い。痛くて、熱い。
離された唇から、唾液が繋がる
「……私も。セレナの事が大好きよ
でも。駄目よ。こんなことは」
そっと。ただただ優しく。
ほとんど力は無くとも、身体を、押し退けようとしただろう
「……ねぇセレナ。砕けた、貴女の時計は。
私が持っていても、良いかしら」
離して貰えずとも、言っただろう
手を離す。
消毒液は染みたが、朝にはきっと大丈夫になっているだろう。
「エルス先生、ありがとう。
明日もまたごきげんよう、とお話できますように。
……あとひとつだけわがままにお付き合いくださいな。
おやすみなさいとお顔を見て言いたいの。
マスクを取ってくださいますか。」
>>253 オブゼビオ
「えっあ、だって……!」
柄にもなく緊張していたのを指摘され、ぱっと顔が熱るのを感じる。
眉を下げて苦く笑う、それでも幾らか柔らかくなった気がする彼の表情を見る頃には、その緊張は解れていただろう。
「…………私に、ですか…………?」
何か、大事な決断をするときのような、ゆっくりと息を吐き出す彼を目を細めて見つめていれば、続く言葉にリーンの声が一瞬固まる。
本を、託す。
それは、彼が先祖代々途切れることなく受け継いできた、観測者としての。それこそ、命の時計と等しく彼らの命であるようなもの。
それを、他人である私に託すと、彼は確かにそう言っていて。
何かを決意した音がして、リーンのスカーレットの瞳が揺れる。
「そんな、そんなこと……………」
受け取るのが嫌だとか、決してそんな次元ではなく。かなしい覚悟に、リーンは言葉を詰まらせた。
>>251 リリアーヌ
イイ音だろ…………この音聞くと、落ち着く。
(金属を加工する時特有の音を褒められ、少し笑みが漏れる。それはマスクの中のことだから、リリアーヌにはわかることは無いだろうが。
それ以外は、黙々と作業を続けた。夜もかなり更けた頃、簡単な修理と、穴の一つにアクアマリンを嵌める作業は終わった。城の明かりに向けて手を伸ばし、光を反射するアクアマリンと、金色の時計の残骸を見た。片目をつぶったり、目を細めたり。)
…………終わった。はい。じゃ、またリリアーヌが持ってて。せっかく加護を受けた時計職人がいるからな……、うん。聞いてみるのはいいと思う。
(傍で見ていたリリアーヌのゴーグルを外す。小さな手に、トッティの時計を乗せた。)
「……無い!!!!」
広場の中央で無いと叫ぶ。
「まったくもって材料が足りん!」
ここ数日、あれやこれやと作ったり直したりしていたら、工房から持ち出した資材が底をつき始めていた。
「誰も見ていなかったとはいえ、カッコつけて工房を出た手前何となくのこのこ取りに帰る気にはなれんぞ。
しかしなあ…今朝拾ったエルス医師のメモやらルーツ嬢と約束したあれも作りたい…。」
テルミットは眠らない。
「……ここ、王城だな。色々すごい機巧やらなにやらがあるのでは…?お抱えの職人どもの工房とかがあるのでは…?……くく、運が向いてきた。なに、有事だ、罪には問われまい!!すわ急げ!時計の針は待ってはくれんぞ!」
テルミットは眠らない。その時が来るまでは。
『明日は、機械のおにーさんにしたの。トッティ、おにーさんの機械で遊びたいな。
出来るだけ残れるように頑張る。今日は夜更かししちゃったなぁ。』
[少女は眠る前に、ダズリーの命の時計を改めて見る。本当に綺麗な時計だった。]
『ダズリーおにーさん。トッティも、金属を加工する音、好き。ダズリーおにーさんの耳だからかなぁ。
トッティ、大人になったら何になろうかなぁ。』
『学校……行きたいな。』
[目を擦ってあくびをすると、少女はゆっくり眠りに落ちていくだろう。]
なだらかな撫で肩、均衡の取れた手足。同じひとの姿でありながら、彼女はまるで神様が拵えた人形のような、端正な見目をしていました。
豊かな木々、咲き誇る花の中で。初めて彼女と出会った時、王子は一目見てその少女に心を奪われました。
少女は隣国の人間たちをよくは思っていません。しかし、だからと言って争いたいわけではありませんでした。
彼女は、迷い込んできた王子から妖精の森での記憶を奪ったあと、国へと帰してやります。
──しかし、彼女の思惑とは裏腹に、彼は本国へ帰ってから数日と経たずに、再び妖精の国へと足を踏み入れたのでした。
この場所で、なにかかけがえのないものを見つけたような気がするのだと。少女の姿を再びその目に映した王子は、その“なにか”が彼女であると確信します。
愚かなことに二度もこの地に無防備に踏み込んだ王子に、最初は呆れと戸惑いを抱いていましたが、次第に少女も異国の王子に興味を持ち始めました。
>>267 ダズリー
耳でその作業を楽しんでいれば、それは思いのほかあっという間に終わってしまいました。
水色の淡い光が、作業机に落ちてきらりと輝きます。
「わあ……、きっと、トッティ喜んでるね!」
なんて。時をとめた人がどうなるのかはわかりません。しかし、だからこそそんな幸せな想像ができるのでした。リリアーヌの脳裏に、ぴょんぴょん飛び跳ねる赤毛の少女が浮かびます。
「うん! 聞いてみる。完全には直らなくても……すこしでも元に戻ったらいいな。
ダズリーさん、ありがとうございました」
リリアーヌはぺこりと頭を下げて、その場をあとにしました。
>>260>>261 ルーツ
変わらず夜空を見上げながら、ルーツの昔話をリーンは静かに聞いていた。
星は、相変わらずその姿を見せたりはしない。
言葉と、運命の歯車が少しだけズレてしまったが故に起きてしまった、かなしい、彼女の真実の話。彼女が自身で言葉を伝えることをやめた、ルーツの心の奥底の、根幹に関わる話。
信じたい、信じきれない、そう言って涙を流す彼女に、リーンはただただ抱きしめられるた。
泣いているのは向こうなのに、何故だか自分の頬にも、涙が後を伝っていた。
視界の端で、彼女の分身が転がったのが見える。
『あなたのことを信じたい。』まっすぐ過ぎるその言葉は、初めて聞いた、ルーツ自身の言葉。
私は、この言葉に、応えたい。
応えたくて、抱きしめたくて、………それなのに、気持ちとは裏腹に言葉は詰まり、
嗚咽を漏らしながら、ごめんねと力なく呟いた。
急に視界が遮られた。
思ったよりこのマスクの中からはちゃんと見えるらしい。
エルスが笑っているのがハッキリ見えた。
薬と消毒液の匂いに混じって、コーヒーの香りがほんのりした。
きっと今の自分はアンバランスな見た目だろう。
「がおー!!」
怪獣のようなポーズを取ってみる。
次第に、マスクの中で涙が流れるのを感じた。
手を力なく下ろして、その場にうつむきながら
>>269 エルス先生
「ほんとは……いっぱいイヤなことがあるの。でも我慢してるの。
それからお母さまに会いたい、ジャンにまた追いかけまわされたいの。
またできるよね?
おじさまやルクレースの時計は直るよね?」
言ってもしょうがないことを言ってしまった。
エルスだってわからないだろうに。
最後の方はしゃくり上げてちゃんとした言葉にならなかったかもしれない。
「がんばったら、何とかできるよね?」
『ダズリーおにーさん宛のマーマレード食べちゃうけど、ダズリーおにーさんのお腹に入るから、いいかなぁ?
ほんとは、ダズリーおにーさんに食べさせてあげたかったな』
[眠りに落ちる前、パンを齧りながら、少女は無邪気にそう呟く。身体を奪ったものの言葉としてはまるで他人事だったが、少女にとって憑依は『モノマネ』で、他者のからだを「借りている」という認識だった。借りた相手の命を奪っている、という感覚があまりないのだった。]
ひとしきり泣いたら落ち着いた。
ああそうか、心を守るとはこういうこと。
でも誰かに受け止めてもらえると思えないと泣けないなぁ、と思った。
誰かがヘンリエッタになら、と泣いてくれるようになれたらいいなぁ、とも思った。
先生は誰の前でなら泣けるのかしら。
マスクを外したら赤い目と鼻をした12歳の顔が見えただろう。
でも、エルスの顔はとても優しかった。
「先生ありがとう。おやすみなさい。
私また頑張るね。
マスクはお返しします。
でもやっぱりマスクを外したお顔も素敵よ?」
エルスには父親にするように、おやすみのキスを頬にして部屋を出て行った。
1つ目、「何故昨日時計職人ではないと嘘をついたか」。いや職業としては嘘ではないが……コレは詭弁だな。続けよう。
答えは【オレに因縁というものがついている】からだ。
因縁の相手が眷属や悪魔であれば良いが、もし違えばオレが砕かれるだけで2人分の損失だ。
話す時は選ばねばならないと思っていた。
2つ目、「では何故今このタイミングでそれを話したのか」。
これに関しては……ああ、【今朝方、酷い夢を見た】からだ。
普段であれば夢など気にもしないものだがな。内容が内容だった。
[サラに首元が見えるように多少顔を上げる]
サラ嬢、オレの首に何か付いているのが分かるか?
……何も無いように見えるだろうが、オレには蛍光色に光る鎖が巻き付いているのが分かる。
そしてコレがもう1人の人間と繋がっていること、その人間の名前を、オレは何故か直感している。
夢の中で、オレ達はこの鎖を引きちぎられた。顔の見えない誰かによって。
互いに首が締まり、鎖と同時に時計が砕け、そして視界が暗転し目が覚めた。
そうして起き上がると枕元に見知らぬ靴が一足、落ちていた。
夢に影響されるなど馬鹿らしいと思うか。しかしオレは、今日、伝えなければいけないと感じた。それもなるべく人に聞かれぬような時間にだ。
それでも誰が聞いているか定かではない。因縁の相手はサラ嬢が聞いておきたいのであれば告げよう。
アーネストは発言から察するに憑狼が最も有り得る。勿論他の狼の可能性もあるがな。
グレゴリオだが、恐らくアーネストを本物の時計職人だと思ったのではないかと考えている。であれば眷属の所在を知っている狂信者では無い。アーネストを占っていない、かつ本物ごと巻き込んで砕かれる狙いの辻占だ。
昨日までは夢見たがりの可能性も見ていたが、今朝のオレがこの有様だ。
[昨日、ルクレースが靴を投げられたと発言する前からグレゴリオはそのことを知っていた。思い出し溜息をつく]
最後にレーヴだが、オレはコレを智狼>呪狼だと考えている。昨日にも言ったが、決め打ち狙いで博打を打ったと。
レーヴが夢見たがりであれば、今日は靴を投げずにグレゴリオを本物の夢見たがりだと思わせれば良い。わざわざ靴を投げ、まだ夢見たがりの時が止まっていないことを知らせてしまうのは違和感がある。
以上のことを踏まえて、潜伏の場に残っているこの国の背信者は、呪狼、狂信者、夢見たがりであると考えている。ヘンリエッタが狂人ならば賢者はブレイクで、悪魔がまだいる可能性はある。もしかするとグレゴリオが辻占では無く悪魔かもしれん。
[セレナとの会話で多少考えは改めたが、未だにルクレースが本物である説が有力だと思っていた。それを前提に話している。
一通り話し終え息をついた]
なるべく他人に聞かれんように努めた筈だが。もし明朝になってオレともう1人が砕かれていたら、サラ嬢はこのことを皆に伝えてくれ。
砕かれていなかった時の判断は任せる。サラ嬢の短針と相談して決めてくれ。
夜遅くまで悪かったな。
[もしサラに何かしら引き留める様子がなければ、エルスは部屋を出て自宅へと戻っていっただろう]
仲の悪い両国の住人が交流をすることはありません。
もしもそのことが王に知れたら、王子はただでは済まされないでしょう。
だから王子たちはこっそりと、二人だけの時間を過ごすようになりました。
二人しか知らない秘密の語らいは、王子にとっても少女にとっても、特別でかけがえのないものになりました。
王子は自分が棲む国の話を語って聞かせます。人間の国では戦争が絶えないこと。みな強欲で、自分のことばかり考えていること。
けれど、悪いことばかりではないことも少女に教えました。
城から見上げる夜空は美しく、星々が手が届きそうなほど近くで煌めいていること。人間が生み出した音楽や絵は、とても素晴らしいこと。
少女もまた、妖精の国の話を王子に語ります。
森は豊かであたたかく、様々な種族が支え合って成り立っていること。
住人たちは仲が良く、自然豊かなこの国でみな手と手を取り合って幸せに暮らしていたこと。
>>272 アイリーン
かけ違ったボタンが漸く出会う。
2人は寒空の元抱き合った。
伝わる温度はアイリーンのもの、伝える温度はルーツのもの。
溢れる涙の上にのさばる本音、2人は謝罪だけを重ねる。
言葉が枯れていく、この季節だけが覚えている。
不信は絶対に埋まらない溝になる、と。
あの時、冬の桜は散っていた。
そのズレは視界にまで及んだ。彼女の表面張力が夜を保つことを拒む。
意味は無い、意味は無いけど、意味は無いとしても。
抱き合った先、もう1度、私はリーンの頬に手を伸ばす。
彼女の瞳から零れるそれは、確かに"星"だった。
「リンちゃん、私の星はここにあったよ。」
涙をなぞり、ぐしゃぐしゃの顔で笑う。
落ちたチクタクを抱え、私は背中越しに「さよなら」を告げた。
赤いカーディガンは彼女を暖める残る私の忘れ物。
いつしか王子に心を開いていた彼女は、自身が時を司る魔女であることも教えてくれました。
神様から《マザー・クロック》という神秘の時計を託され、彼女はこの世界が正しく時を刻み続けるように、それを守っているのだと。
そうして二人は互いの時を重ねて、やがて愛し合うようになります。
王子は、生まれた初めて得た愛に心から幸福を感じていました。彼女さえそばにいてくれれば、二人の間に芽生えた愛が認められれば。
歪みあっていた両国の架け橋になれるのではないかとさえ、思ったのです。
そうして王子は、ある寒い日の夜。
彼女が誕生した日に、永遠の愛を誓おうと真実の愛のキスを贈るのでした。
>>288サラ
恐らくだが、夢見たがりは時計職人を騙る気でいたのではないかと考えている。それがアーネストとグレゴリオの回避により、出るタイミングを失った。3人目の時計職人ともなれば、本物と見られ残されやすい。それを恐れて出られなくなった。
その内にレーヴが出てきた。
これ以降は完全な想像になるが、「引っ込みが付かなくなった」のではないかと思う。状況に困惑し、取り敢えず黙った。
故に……夢見たがりは、臆病な性格の可能性があるのでは。というのは今考えたことだが。
[適当に該当しそうな人物を挙げるならばアイリーンやルーツがあるだろうか。多少考え、サラに話した]
──今宵の全ての出来事が終わったあとのこと。
空を黒い煙が覆う。柔く吹いた風は、その黒を押し退けることはなく、ただレーヴのピアスを揺らすだけだった。
広場を見下ろせる屋根の上。まだ、まばらにそこにいる人々を見ながら空を見た。
ふと、時計台に人影が見えたような気がしたが(>>231)、気の所為だっただろうか。
「あんなとこにいるのは、魔女様くらい、か。」
視線を時計台から外し、ふと、昨日の出来事を思い出す。
あの魔女が現れた時。いや、現れなかったとしたら。魔女への少女の問いが、もし自分に向けられていたら。
自分は少女に、どのように答えていたのだろうか。
お星様になってお空の上にいる。
花畑がある綺麗な場所で少女が幸せに生きることを願ってくれている。
今でもきっと傍にいて、少女を見守ってくれている。………とでも言っていただろうか。
どれも在り来りで、耳障りの良い幻想だ。幼い頃に一番嫌っていたその言葉を、今度は自分が口にしていたかもしれないと思うと、嫌でもあの時の大人達のようになってしまったのだと実感する。
好きだった母は目覚めず、燃やされたその身体は小さな壺に入れられて墓の下に埋められた。冷たくて暗い、墓の下。レーヴの目の前で砕けた時計と共に、ずっとそこから出られることはない。
『仮にお嬢さんは、大切な人が亡くなり、その行き先がわかったら、さあどうする?』
あの場で聞いた魔女の言葉が再生される。憂いを帯びたような眼でこちらを見て、そう少女に問うていた。
「………口では綺麗事を言ってても、所詮、俺もワガママなガキってことだな。」
そんなもの、追いかけたいに決まってる。その先に、大切な人が待っているのなら、待ってくれているのなら、もう一度会えるのなら。
何がなんでも追いかけて、手を伸ばして、今度こそ──
「…………………………っ、」
ズキリと胸が痛む。ぐらりと視界が揺れる。
呼吸が苦しくなる。息が乱れる。汗が滲む。
チカチカと、蓋をしていたはずの記憶が、映像が、甦る。
白い部屋で、手を繋いで、扉を開けて、声が聞こえて、叫んで、走って、駆けて、駆けて、駆けて、手を、伸ばして。
兄の声、砕ける時計の音、間に合わない手、
折れた歯車、切れたゼンマイ、割れた文字盤、折れた針、最期に見た母の顔。
ズキリ、ズキリ、ズキリ、ズキリ、
胸が痛い、頭が痛い、目が痛い、喉が痛い、
全てを、あの日見た全てを、消す、消す、消す、消し去る。
ノイズが走る。プツリと、電源が切れたように突如映像が黒く塗りつぶされた。
荒い呼吸を繰り返す。内に、正常の呼吸に戻ってくる。汗が頬を伝い、落ちる。カタカタと小さく震える手は、力強く握ることで震えを止めた。
「…………ハハ、ハ。疲れてんだな。」
ふらりと立ち上がる。瞬間、強く風が吹いく。よろめいた足が屋根を踏み外し、ふわりと落下する。まるでスローモーションのように、時がゆっくりと進むように、落ちていく。
落ちゆく視界は空を捉え、風に吹かれた黒い煙が形を変える。一瞬空いた隙間から、キラリと光る何かが見えた。
「ぁ…………」
視界の端に映った樋。咄嗟にそれに手をかければ、重量が急に戻ってくる。時が戻ってくる。
ブラン、と揺れた身体は宙に浮いたまま。何とか身体が地面へ打ち付けられるのを回避した。
「あっぶねぇ……………」
そう零せば、そのまま下屋に飛び移り、地面へと着地する。
どうやら今日は屋根を駆けるのは避けた方が良さそうだ。未だにバクバクとうるさい心臓を抱えながらローラースニーカーを転がして、レーヴは夜の闇へと消えていった。*
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