情報 プロローグ 1日目 2日目 3日目 4日目 5日目 6日目 7日目 エピローグ 終了 / 最新
アメジスト クロエ に 1人が投票した。
クリスタル グラジナ に 8人が投票した。
ターコイズ ユーディト に 1人が投票した。
クリスタル グラジナ は村人達の手により処刑された。
次の日の朝、ペリドット スクルド が無残な姿で発見された。
次の日の朝、ラリマー ヨルダ が無残な姿で発見された。
現在の生存者は、アメジスト クロエ、サファイア ソラ、ガーネット イグニス、ルビー アルバート、ヒスイ センゾウ、ターコイズ ユーディト、タイガーアイ ミズリ の 7 名。
「……ああ、そうか」
青い宝石の欠片と、薄い緑色の宝石の欠片を見る。
「……そうなんだな」
そして、いつものように当番表を貼る。
これは、遠征だからな。
「本日、【風紀当番は不要】とする。現状の人数では優先順位がひくいと判断した」
「……食事当番が3人居るか……そんなもの(風紀)より、食事当番の方がずっと大事だろう?なあ」
口の端を少し上げて、静かに言った。
ソラは厨房で頭を抱えていました。
食事当番です。すっかり忘れていました。
ユーディトやイグニスが料理を出来るならその補佐をする事で何とかなったかも知れないのに、聞くのも忘れていました。
ソラは頭をフル活用して考えます。
まず、白米を炊くだけならセンゾウの指示の元こなして来たので、出来ます。
それに自分の好きな食べ物…溶き卵を混ぜて、調味料を少々。そしてカリンが流しの下に入れていた梅干しを一粒乗せてまず一品。
料理を出来ない人の味方、卵かけご飯(梅干し添え)。
御御御付けも作りたかったですが、出汁や味噌の分量、そして詳しい材料が記憶になかったので、代わりになる品を用意する事にします。
豆を取り出し、水と調味料を適量。その後はグズグズになるまで粉砕、攪拌を続けます。
ドロっとした緑の液体に、牛乳を加えて伸ばします。
サラサラとスープ上になるまで加えたら、器によそい上から胡椒をまぶせば、枝豆のポタージュの完成です。
自分の実力では2品が限界です。ひとまず朝餉には足りるだろうと、配膳していきます。
「…!」
厨房を見回すと、昨日の夕ご飯であるカレーの余りが鍋に蓄えられているのに気づきます。
容器皿に一口サイズに切られたじゃがいも、ウインナー、マカロニ、くし切りした玉ねぎも水を切って並べます。
そして中央にカレーと溶き卵、チーズを添えてオーブンにかけます。
……カレーマカロニグラタンの完成です。
卵かけご飯との取り合わせはよろしくないような気もしますが、切って並べて焼くだけの簡単な物だとこの辺りが限度でした。
「相棒らしいこと…ほとんどできなかったな。」
砕け散った鮮やかな緑色の石。
状況が全てを物語っていた。
「敵の城に忍び込んで情報を集めるとかそういうの、私の役目っぽくないか本来。」
ぶつくさ言いながら散らばる宝石の欠片たちをそれぞれ、用意した革の小袋に入れていく。
「みっつ…と。…増えたなこりゃあ。」
そこにあるのは共に黒狼騎士団に入団した、十一人の誇りと希望の欠片。
「…飯でも食うか。」
溜息をひとつ残し、センゾウは食堂へと向かった。
朝起きて、そこにいる騎士たちを見て目を疑った。
宝石を砕こうとした者は何故かそこにいて、かわりに違う者がいなくなっていた。
「……そう。わたしとしたことが、最後の最後でその色を違えるなんてね。」
毎晩遅くまで悩んだ。騎士の誇り。その人の夢が詰まった宝石を、クロエは自分たちの願いをもって砕くのだから。
けれど、すべて台無しになった。台無しにしてしまった。
ウィアが掴んでくれたチャンスも、すべて。
栄養バランスが保てるように、サラダを作ります。
しっかりと水を切ったレタスや水菜、トマトを刻み、マヨネーズで軽く味を整えて出来上がりです。
(これ卵かけご飯じゃなくて普通の白米でいいね。)
初めに作った卵かけご飯は自分への賄いに取っておき、カレーマカロニグラタン、豆のポタージュ、野菜サラダの3品を朝餉とする事にしました。
食卓には昨日のカレーを使ったカレーマカロニグラタンがあった。
鼻腔をつく芳ばしい香りに空腹は刺激されるが、しかし手は進まなかった。
そこで、不意に背を叩かれる。
>>11 ソラ
「ソラ・カルセドニ」
──いつかの再現のようだと思った。
あの時、ウィア・ディーガを失って俯いていた時も、クロエを気にかけてくれたのは彼だった。
真っ直ぐで、正しいひと。騎士としてはあまりに心が優しすぎるひと。その誇りをかけて相対したサファイアの騎士。
だからこそ、クロエは彼に勝ちたかった。
「……バカね。」
黒狼騎士がそんな言葉を異種族にかけてはいけないだろうと、しかし歪んだ唇はそれ以上言葉を紡いでくれなかった。
>>クロエ
クロエの方を時折見た。
普段はあの細身のどこにそんなに入るのかと思う程食べているのに、今はあまり食が進んでないのを確認する。
こちらから、声をかけるべきではなかろう、と判断し、そのまま自分の食事を進めた。
>>13 クロエ
彼女の感情を拾わせない瞳は、しかし拒絶の色ではない事を見て、言葉を紡ぎます。
「……ずっと考えてたんだ。
ウィアが言っていた事、グラジナが言っていた事、キミ達が勝ち取ろうとした物。」
全て見ていました。彼女が、グラジナが、ファルスと肩を並べてあの魔の少年と戦っていた事も、作る料理は常にみんなの事を考えて作られていた事も。
「黒狼騎士団としては、こうして話掛けるのも駄目な事くらいは分かってるよ。でも、…それでも、ボクは…。」
国が認めてくれなくても、自分が認められる一人になれれば。
少しずつでも、変える事は出来るのでしょうか。
「お早う。」
「…………そう、か。」
==
私はいつも通り、空間へと挨拶を投げた。状況を確認すると、俯き加減に席についた。何故か気分は晴れなかった。それが何故なのかは、私にはよくわからなかった。
==
>>ソラ
クロエは目の前のサファイアの騎士に、自分の身の上を話した。その場にいる者にも聞こえるように、彼女の生い立ちを嘘偽りなく話した。
「もともとわたしは子爵であるリシャール家の子どもだった。
けれど、その領土の習わしで、二人目の子どもは後継者争いが発生することから忌避され、跡取りではない子どもは養子に出さなくてはならなかったの。
それを知ったのが15歳の時。決まりならば仕方がないと思ったわ。両親や姉上と会えなくなるのは寂しいけれどね。だからわたしはド=ベルティエ家の子どもになった。」
ド=ベルティエ家に養子に出されてからの生活を滔々と話す。
「ド=ベルティエ家には一人息子がいた。兄上は、わたしを疎んだわ。よそからやってきた女に後継者を奪われるのだから当然よね。
でも、最初はそれでも優しかったの。家族から引き離されたわたしに同情心さえ持ってくれていた。
兄上が豹変したのは、ある事実を知ってからだった。」
>>ソラ
「“クロエにはエルフの血が流れている”と。
ウェリントン・リシャール──つまりわたしにとっては本当の父が、ある日仕事で立ち寄った国境付近の森でエルフと出会った。
魔法を固く禁じられ、魔法や魔法生物は悪であると謳われてきたサリーナで、事もあろうか父上はそのエルフに魅了され、関係を持ったの。
そして、生まれたのがわたし。
お爺様がわたしを引き取ったのは、人間とエルフの特徴を引き継いだこの体に興味を持ったからだった。」
エルフと子をなしたことが知られれば、父はサリーナにいられなくなる。だから、養子を出すことはていのいい厄介払いだったのだ。
断絶寸前だったド=ベルティエ家は、クロエを人間として育て、再びその栄華を取り戻さんとした。
クロエはそっと腕を捲る。そこには爛れた肌があった。
>>ソラ
「ハーフエルフはね、人間とエルフの特徴を引き継いでいるの。寿命もエルフほどは長くないけど、人間よりはずっと長い。わたしはずっと人間として育てられたから、魔法らしい魔法は使えない。だけど、この体には魔力が巡っているから、傷の治りも速い。
厳密にはわたしは人間でもエルフでもないから、交配しても子孫を残すことはできない。」
つらつらと自分について語る。
「後継者としての権利をよそからきた女に奪われた。その上、その女には異種族の血が流れているらしい。そうなれば、酷く酷くプライドを傷つけられた男が、わたしにしたことなんて容易に想像がつくでしょう?」
>>ソラ
「正直に言って、この七年間は地獄だった。わたしには選択する権利がなかった。正体を明かされればサリーナにはいられなくなる。お爺様や兄上の言う通りにするしか、未来は残されていなかった。
一度、すべてが嫌になって母親を探しに行ったことがあるの。いっそわたしもエルフとして暮らそうって。けど混血種って、中途半端な存在としてエルフにも忌み嫌われているんですってね。」
行った先に母親はいなかった。その代わりに、クロエはエルフたちから心無い言葉と石を投げられた。
自分には最初から、生を受けてしまった時点で居場所などなかったのだ。
そうだと分かれば、あの忌々しい家に戻って、尊厳を踏み躙られる毎日を耐え抜くしかなかった。クロエの居場所はそこにしかなかったから。
「……それでも。こんな人生でも、わたしは幸いサリーナのことは愛していた。何かをしてもらったわけじゃない。
でもこの国は、姉さんと一緒に過ごした大切な場所だから。誇りも何もなかったわたしには、黒狼騎士団は光そのものだった。」
「敷かれたレールの上を歩いているだけだったけれど、たしかにわたしはわたしの意志で黒狼騎士に憧れていた。わたしも彼らのように強く気高くあれば、いつか未来を切り開けるのではないかと思った。
黒狼騎士は──このアメジストの石は、わたしにとっての祈りだった。
騎士として認められたかった。わたしはわたしを誇れるようになりたかった。この国に忠義を尽くし、そしていつか同じように苦しむ同胞に手を差し伸べたかった。」
クロエは一度目を伏せ、ほどなくしてソラの瞳を見つめた。
「ただ異種族の血が流れているからという理由で、わたしたちは意志を持つことすら赦されない。それはおかしい。だからわたしたちは、ウィアと共に戦うことを決意したのよ。
……そして、負けた。悔しいけれど、騎士に二言はないわ。わたしたちはその決意を持って剣を取ったのだから。わたしが初めて自分の意志で決めた道。だから、悔いはない。」
[すっかり出ていくタイミングを逃しちゃってたけど、クロエの話に区切りがついたようだったので、おずおずと食堂に入った。そして、いい匂いのするごはんは一旦お預けにして、あたしはクロエの近くに座った]
>>クロエ
「クロエ……お姉さんと別れてからここに来るまで、ずっと……ひとりだったんだね」
[クロエの爛れた肌を見た]
「卑怯だ、こんなの。卑怯だよ。
そういうやつを倒すのが、騎士の仕事なのに。なんで……」
[口をつぐむ。その先を言っていいのか、わかんなかった。この期に及んでって感じだけど、でも、巻き込まれて、石を砕かれた、ヒルダたちのことも頭をよぎったから]
>>クロエ
彼女の話を聞いて、想起したのは自分の両親の最期でした。
人は他者を"正義"の名の元に虐げる時、どこまでも非情になる生き物だという事を、記憶を取り戻した時、無理やりにでも自覚させられました。
その時にも抱いた、魔法が使えて何が悪いのだろうという疑問。
この国ではそんな疑問を抱く事も許されなかったので、当時は零す事はありませんでしたが、蓋をしていたその気持ちが溢れてくるのを感じました。
そして異種族…ハーフエルフだと言う、ただそれだけでこの国の“正義”にズタズタにされた彼女にも同じ疑問を抱きました。
7年…。最早命を絶ったとしても不思議ではない期間に、絶句します。
こんなの、おかしい。
そんなの、理不尽だ。
口をついて出そうになる言葉を、拳を握りしめて抑えて、彼女の願いと、決意を聞きました。
>>クロエ
「……話してくれて、ありがとう。
…キミ達が、黒狼騎士で良かった。
それに、クロエの願いも。ボクは…その"願い"を砕かなきゃいけないんだね。」
砦を解放する為にも、それは避けられない運命です。ですが。
「…クロエや皆の"願い"が砕けても、ボク達がその"想い"を聞いて、背負っていくから…安心してほしい。
キミ達異種族がやった事は…許されないかもしれないけど、無駄じゃなかったって事を、きっとボク達は証明してみせる。だから…。」
隣で彼女に話しかけるミズリを見やりながら、歩み寄れる未来があると一筋の光を感じさせる光景に微笑みながら。
「………キミ達だけでやらなくたっていいんだよ。」
誉れ高き黒狼騎士団の"仲間"に、そう笑いかけるのでした。
目を閉じて、腕組みし、少し上に首を反らせクロエの話を聞いていた。
>>クロエ
「そうか……」
俺の昔の話を聞きたいと言ってきた彼女。
山賊から人質の子どもを真っ先に助ける選択をした彼女。
与えられた役割をきちんとこなそうとする姿勢。
そういうものは、他の騎士となんの変わりもなく。
ハーフエルフ。
人とエルフどちらにも属さぬもの。その存在を知らなかった訳では無い。エルフの森の近くに遠征中、子どもの死体を見たことがある。弔うために連れて帰ると、それがハーフエルフだったことがわかった。
あの子どもも、クロエと同じく、人の世界に絶望し、エルフの世界を求め……拒絶された者だったのだろうか。
そのような過去に思いを馳せながら、ひとつだけ、彼女に言った。
「クロエ。『交配』などと言うな。それでは家畜のようだ」
>>25 ミズリ
ミズリがクロエのそばの席に腰を下ろして、そして彼女らしからぬ弱々しい声で嘆いた。
その先の言葉を紡げないのは、クロエが石を砕いた騎士たちのことを考えてのことだろう。
「あなたは本当に真っ直ぐで清いのね。」
クロエは少し黙したあと、ミズリを見つめて口を開いた。
「だからあのひともあなたに情が移ったのかしら。
“ミズリ・ミズハの石を砕くのはやめてくれ”と、ブレイは最後に言っていた。……もちろん、あなたのタイガーアイが無事なのは、彼の願いを聞き入れたからではないけれどね。
ブレイに会ったら言ってやって。そんなだから仲間に売られるんだって。」
彼は鉄砲玉の役を買うことを立派な役割だと言っていた。
クロエがここまで戦えたのは、彼のおかげといってもいいだろう。
>>ソラ
「……」
国に不利益を被るような、絶対に許されないことをクロエは犯したというのに。
泣きそうになって眉を潜める。けれどその瞳が揺らいだのは一瞬のことで、睫毛が縁取られた瞼をゆっくり閉ざすと、クロエは微かに唇を震わせた。
「……お願い。わたしたちのような不幸な存在をこれ以上増やさないためにも、あなたが受け継いで。きっとそれは、この国のためにもなる。」
>>29 クロエ
……はーああああ……やっぱりバカじゃんアイツ
[クロエの言葉を聞いて、盛大にため息をつく。そんな気はしていたけど、ちょっと予想とは違ったな]
バッカみたいにずーっとブレイ起点でれいのーこーさつしちゃってさー!!
もーね!!ほーんとあたしもバカ。
ブレイはもーっとバカ。
勝ち逃げしといて、そんなお情け要らないっての!!
ばーかばーか。ばーか……。
あ、心配しないでクロエ。次顔みたら死ぬほどバカって言っとくから。あと殴る。
けーっきょく、スクルドもスパイだしさ〜。あったし全然だめだなあ……。
クロエの作戦は成功だよ。
ブレイが異種族だって言ったから、あたしはクロエがホンモノなんだろうってほんとに思った。ブレイは異種族なんだろーなって思ってたよ。可能性だけは捨てないでいてあげたけど。
>>28 ファルス
騎士団長が静かにクロエに指摘した。自分の存在が家畜以下であることは、クロエが一番理解していた。
クロエの話を聞いて、──何者扱いもされなかった話を聞いて、どのような日々を過ごしたかは彼にも伝わったはずだ。
それでも騎士団長は、クロエの石が砕かれるその時まで、クロエを騎士として、一人の“ひと”として見てくれているのだった。
「わたしは……」
ああ、黒狼騎士でありたかった。
この人と一緒に剣を振るいたかった。
騎士になったらもっとしたいことがあった。剣の腕を磨き、もっと知識を得たかった。
ウィア・ディーガとバディでありたかった。
「わたくしは今回の件について決して謝りません。間違ったことをしたとは思っておりません。……ただ、ありがとうございました。
食事を美味しいと言ってくださり、ありがとうございました。
わたくしを信頼して、魔の者の討伐を任せてくださりありがとうございました。
わたくしに、騎士として接してくださりありがとうございました。」
早朝の結果を知り、限界を迎えた為一眠りした。
朝食を取ろうかと食堂に足を運んでいたが、静かに語るクロエの声を聞いて、足を踏み入れないままでいた。
自分の出る幕はない。扉越しに話を聞き終えた後、そのまま部屋へと戻った。
>>32 ミズリ
ほんのすこしだけ唇の端を緩めた。注意深くクロエの顔を見ていなければ、きっとその変化には気付かないだろう。
“俺の仲間なんかに見られていいことはないのに”とぼやいていたブレイの声を思い出す。
ミズリとブレイの関係はとても美しかった。
「あなたは本当に潔白そのものだったわ。濡れ衣を着せる隙もないくらいに。あなたが殴って青痣が出来たブレイに、わたしも明日挨拶をしましょう。」
ふと、不機嫌そうに腰をかけるガーネットの騎士がいた。クロエは逡巡したのちに、結局彼に声をかけることはせずに、冷めてしまった朝食に手をつけた。
==
私はなぜこんなにも遣る瀬無い気持ちでいるのだろうか。
異種族の手から国を守る事ができたというのに、私は真に喜ぶ事が出来ずにいる。クロエの話を聞いて、私は即断罪し、このようなゲームに巻き込んだことを非難すべきなのに。彼女の悲しい生い立ちを聞いて……私は、自分のした事が果たして正しかったのか、黒狼騎士団として、本当に為すべきことがこうだったのか、わからなくなった。
==
>>36 クロエ
ほんとにね!!ぼっこぼこにしてやるんだから。
[口をとがらせて、クロエから目を逸らした。結局毎日ブレイのことばっかり考えてた。きっと、クロエもウィアのことばっかり考えてたんだろうな]
あのさー……クロエ。
あたし、クロエの次に、バディと離れてる期間が長いじゃん。だからちょっとわかる気がするけど。
……さびしーよね。ひとり。
ここにバディが居たらなって思っちゃうんだよね。
……それは別に、アイツがどこの誰だとか全然関係なくて、バディだからってゆーか。
……うまくいえないな。
>>31 クロエ
「…ん。キミの願いと想い、サファイアの騎士 ソラ・カルセドニが引き受けた。
サファイアに誓って、アメジストの騎士 クロエ…リシャールの期待を裏切らないと約束する。」
彼女の瞳は一瞬だけ揺らいで、それでも凛とした態度はそのままに願いを紡いでくれました。
それならば、こちらも正々堂々、騎士として彼女を受け止めるでしょう。
少しだけ逡巡して、彼女の本当に居たかっただろう場所…リシャールの性で彼女を呼びました。
ド=ベルティエは彼女にとって呪いの性だとも思いましたから。
……彼女へ伝えるべき事は伝えました。
他の人と話しているクロエを見て、そっとその場から離れます。
さて、自分の今後やるべき事も固まりました。
この国においては、とても根深い問題。出来る事は少ないのかも知れませんが、やれることから始めていきましょう。
でもその前に、まずやるべきは…、結界の外で待っているだろう皆に、料理を届ける事でしょう。
本当に届いているのかは分かりませんが…。
支度を整えて、結界の境へと足を運びます。
「……この蓄音機は、全てが終わったら破壊しよう。
ただ……まあ、勿体ないのでな。その前に俺の独り言でも残すとしようか」
若しかすると、誰か近くで聞いているかもしれないが、問題なかろう。独り言だからな。
「……周知の通り、この国は魔法を禁止し、異種族を悪としてきた。なにも、理由なくはじめからそのようであった訳では無い。
過去に失敗した歴史があるから、そのようにしたのだ」
「……元々サリーナとセルナリアはひとつだった。そして……この地域に住む者は、土地の影響なのかわからんが。隣国の地域に住む者よりも強い魔力を持って生まれたらしい。
当然、人々は……現在よりも原始的な思考を持つ人々は、それを無尽蔵に使用した。魔法の理論も規範もない、ただただ本能的に利用していたということだ」
これは秘匿すべきことゆえ、口には出さないが……中でも特に強い魔力を持っていたのが、サリーナ王家の祖であるらしい。天候操作、時間遡行、催眠魔術……それらの強力な魔術により、王としての地位を確立したそうだ。
>>39 ソラ
「───。」
その姓は、クロエの耳にとても懐かしく響いた。
もう名乗ることができなくなった姓。どんなにクロエが望もうとも、もう両親に会いに行くことも、姉の笑顔を見ることも叶わない。
どんなことがあっても自分たちは姉妹だと、そう言ってくれた姉の言葉を思い出した。
半分しか血が繋がっていなくても、異種族でも、その事実を知った上でも、姉はクロエにそう言ってくれたのだろうか。
クロエはそれ以降何も言わずに、ソラの背中を見送った。
こんなに都合のいいことがあるわけがないと、頭のどこかでは分かっている。
それでもあの小さな背に、願いを託したいと思ってしまうのはいけないことだろうか。
>>結界の外
大皿に乗せたカレーマカロニグラタンを結界の境にある平たい岩の上に載せます。
「…や。皆。…ボクが本物だなんて、驚きだったでしょ?」
ふふ、と自嘲気味に笑いました。
クロエ達が採った行動は、非常に強い一手で。
自分自身の行動によっても、仲間に怪しまれる結果になったのは、詫びても詫びきれないものでした。
「…そっちは、そっちで話してるのかな。」
そう呟く言葉は、結界の外へと吸い込まれ、消えていきます。
しばらくそよ風が木の葉を揺らす音を聞いていましたが、やがて立ち上がり、その場を後にします。
きっと、この結界が消えた後で話せる事でしょう。
その時に、沢山話そうと。そう心に決めたのでした。
>>44
「人々は、いつしか異種族の住処を脅かし始めた。力の弱い妖精などを奴隷として使役し、彼らを蹂躙した。
しかし、所詮人間の魔力。異種族の本気に比較すればたかが知れている。
人間の愚行に怒った筆頭がエルフだった。彼らは知力にも長けている。その後の歴史において不幸だったことは、エルフの長ははじめ、我らの仲間を装って近づいてきたのだ。
周辺国との戦に勝つ策を授け、欲を満たす術を教え、着実に信頼させ、着実に堕落させて行った。それがある基準に達したとき、彼らエルフは、ケンタウルス、ウンディーネ、ケット・シー、シルフなど森の異種族たちと共に我々に反旗を翻したのだ。当然、人間程度では本気の異種族たちに勝てるはずもなく。我が国は大打撃を受けた」
「エルフの森の近くにあった王都は、中央に移った。彼らから離れるために。エルフ達は少し灸をすえた程度に考えていたかもしれないが……人々はそうは思わなかった。『信頼を裏切られた』と、そう思った。
ゆえに【異種族を信頼するな】【魔法は堕落であり悪である】、そのような思想につながった。
……そのような歴史があるのだ。隠している訳では無い。大きな図書館の奥底にはある」
>>48 クロエ
「ふん、序盤の大した情報のねえ状態で、間違った推論をパーチクピーチク囀ることがそんなに偉いなら、そりゃあ勉強不足だったな」
イグニスはいつものように不遜に言い放つと腕を組んだ。それから、ふと瞳を暗くする。
「……結局、残ったヤツが勝者なんだよ」
ボソリと呟くと、改めてクロエを眺める。
「────謝れよ」
>>50 イグニス
「……嫌よ。」
クロエはきっぱりとした語気でイグニスの言葉を断った。
その表情は、清々しく濁りのないものだった。ゆるやかに風が吹いて、薄い色素の髪が耳の辺りで揺れる。
「わたしたちがしたことは、正しいことではなかったかもしれない。それでも、間違ったことをしたとは思わない。後悔はしてない。申し訳ないなんて思わない。
……そんな生半可な気持ちで、毎晩仲間の石を砕いていたわけじゃない。」
イグニスがあの愛称でクロエを呼ぶことはもうないのだろう。それが本当は、とても寂しく感じられた。
それでも、クロエの姿をどんなに翳った瞳に映そうとも。
「だから、謝る気はない。……あなたが望まなくても、明日にはわたしたちの処遇が決まる。よかったじゃない、もう裏切り者の顔を見なくて済むわ。」
>>51 クロエ
イグニスはぐっと眉間に皺を寄せた。
クロエの生い立ちの話は聞いていた。グラジナの絞り出すような悔しい、という叫びも。最初の日、イグニスらしくもなく、異種族について思いを馳せたこともあった。だけど。
──そんなことは。
そんなことは、今。どうだっていいのだ。
「……今は、黒狼騎士と異種族の話をしてるんじゃねえんだよ」
イグニスは吐き捨てるように言った。
「…………あの月の下。お前は初めから、分かってて約束を取り付けたんだ。果たされることはないと!」
瞳に炎が移る。悲しみとも怒りともつかない色を乗せて、イグニスはクロエに叫んだ。
「それを……、"俺"を裏切ったことを、謝れ! クロエ・ド=ベルティエ!!」
>>52 イグニス
「……」
──そうだ。クロエは頭のどこかで果たされないと分かっていて、あの満月の下でイグニスに約束を取り付けた。
リスクばかりの勝負だった。
いくらクロエが彼の石が砕け散るところを見たくないと、そう願おうとも。
必要であれば、あのガーネットに手をかけなければならなかった。
共に騎士として生きていける道は、ほんのわずかばかりの可能性だった。
クロエは抑えきれない感情を瞳の奥で燃やして、イグニスを睨みつけた。──それでも。
「……あったわ。わたしたちの約束が果たされる道も、あった!」
そのわずかな可能性に、その希望を委ねたかった。そして、本当にそうなったらいいと願っていた。騎士として共に生きていける未来を。
「……あの夜の言葉に嘘はない。わたしは、あなたと──」
それ以上、クロエの口から言葉は出なかった。
>>53 クロエ
イグニスの表情が僅かに怯んだ。
…………もし、クロエの嘘が最後までバレなければ。
「──お前らが最後まで俺たちを騙し通した、その後で、本当に約束が果たされるとでも!?」
だけどイグニスはすぐにそう言い返す。それでも少しずつ、少しずつ、イグニスの瞳から怒りが剥がされていく。
「…………馬鹿野郎」
イグニスは途方に暮れたように唇を震わせた。波紋を広げるように、悲しみが身体中を伝っていく。
>>55 クロエ
去っていく。最後に吐露された思いは、別れの挨拶のようだった。ここで、おしまい。ふっつりとイグニスとクロエの縁が切れてしまうような。
「待てよ」
それが、どうしようもなく許容できなくて、イグニスはクロエの腕を掴んだ。
「…………待てよ、……クロ」
イグニスは眉根を寄せる。そうしていながら、なんと言えばいいのか分からなかった。
>>57 クロエ
「…………」
言葉は見つからない。暫く、二人の間に沈黙が落ちた。ただイグニスはその腕を話すことも出来ず、佇んでいた。
「………………俺と勝負しろ」
>>59 クロエ
イグニスはゆっくりと唇をあげた。
「……立ち会いも、見学も、今回はいらねえ。そうだろ?」
そういって、クロエに向かってコインを投げる。
>>61 クロエ
「……俺からだな」
イグニスは静かにつぶやく。
「俺はガーネットの騎士、イグニス・アッカード。今度こそこの宝石に違えない!」
ガーネットの意味は、勝利。長剣を掲げ、高らかに宣言した。
両足に力を込めると、イグニスはクロエに向かって真っ直ぐと走り出した。
イグニスの戦い方は二刀流。リーチが短い代わりに、速さに分がある。
まず、最初の一閃。右手で操る長剣をストレートにクロエに繰り出した。
5(6)
>>62 イグニス
間合いを図るようにじりじりと、二人の騎士は向き合って互いを睨んでいた。
クロエは相手の胸にしっかりと刻み込むように、強い意志にでもってその声を張り上げた。
「アメジストの騎士、クロエ・ド=ベルティエ。この身はサリーナに捧げしもの──必ずやその宝石に打ち勝ってみせる」
その距離が半分ほどになった時、イグニスが走り出した。真っ直ぐにクロエの懐に飛び込んでくる。
クロエは背に佩く大太刀を振り上げて、向かってくるその一閃を受けた。
ガキン、と金属同士がぶつかる音が辺りに鳴り響き、打ち合わせた剣が長剣の上を滑る。その曲線に沿って大太刀を回し、腹にある鎧の継ぎ目に向かって一撃を落とした。
胸が高鳴る。その瞳に熱が浮かぶ。嬉しいのだと。楽しいのだと。目の前の男を睨め付けながら、クロエはその高揚を体全体で感じていた。
4(6)+1
サリーナの歴史を語り終わり、砦の外に行く。
ウィアの張った結界に片手を置きながら、外に居るだろう騎士達に向け、声を張った。
その声は、結界に響き、波紋を作った。
「聞け!我が騎士達よ!
じきに全てカタがつくだろう。全ての処断は、この場で、この王子ファルス=サリーナの名のもとに行う!
神聖なる儀にて、多勢の介入は不要!
ついては、《ガルセウヌ、ダレン、アルベルト、ローラン》この4名のみ残り、後の者は城へ帰還せよ!
ここにいないものがいれば、明日までに連れてこい!
ガルセウヌ、息災か!
無事ならば、そちら側の指揮を任せる。
新人騎士、並びに異種族と発覚せし者は一人残らず留まるよう!
スパイ疑惑のある者にも逃げられぬよう気をつけよ!
>>64 クロエ
「───はぁっ」
体を捻る。クロスさせた長短二振りの剣で、その重い太刀を受け止める。
刃を返すと一旦体を引く。バックステップで距離を取るが、まだ金の瞳は戦意を失わない。
イグニスは長剣を放り投げた。騎士の誇りを忘れた訳では無い、けれど。
アッカードの家に入り、騎士を目指した時から、イグニス・アッカードの武器は二刀流。──けれど、そのごく本流。かつて、ただのイグニスが、復讐の為に磨いた剣はこのごく短い剣ひとつ。
逆手に構えた短剣と共に再びクロエに近づくと、イグニスは高く跳躍した。狙うは彼女の首元。
獲物を追う瞳が、ギラギラと光っていた。口角が、意識の外で上がる。
懐に飛び込むとイグニスは一息でクロエに短剣を突き出した。
[辺りを見回したけど、イグニスもいないし、ソラとユーディトが困ってたので、カンタンに野菜炒めを作った!あり物ですぐごはん作れるあたし、お嫁さんにしたい騎士ナンバーワンでは!?]
おまたせ!!野菜炒め作ったよ!もうちょっと欲しかったら、テキトーに増やすね〜!
タマゴがあるから、玉ねぎや干し肉入れてオムレツでもつくろっかな。
あ、一応宣言しておくけど、投票は【クロエに合わせておく】ね。
>>66 イグニス
「っ………」
重い一撃が軽やかに返される。距離を取ろうと地を蹴るイグニスを、クロエはその双眸に捉えながらも深追いはしない。
エルフの血を継ぐ痩身の女は腰を落とし、手に持っている曲刀を斜めに、鋭角に両手で構えた。
毎日薄暗い屋敷の中で机に向かって本を開いた。戦術、武器、立ち回り。その体に対応しきれないものはすべて知力で補った。
───来る。投げ出された剣は一瞥するのみで、クロエは短剣を構えるイグニスを、煌々と輝く瞳に映す。
高く跳躍したガーネットをきっと見上げ、月夜が刎ねる刃を横薙ぎに突き出した。
「────。」
イグニスの首筋には長刃が宛てがわれていた。そして、クロエの首にも。
彼が繰り出した短剣はあと数ミリ深く突き出されていれば、確実に彼女の命を奪っただろう。
「ボク一人じゃどうしようもなーい!」
恐らく今日で最後。
そのトリの当番を務めるのがどうして切ったり焼いたりの料理しか出来ない自分なのでしょうか。
厨房から鳴り響く悲痛な声は誰かに届いたのでしょうか。
目の前に広がるのは、今朝炊いたものの結局使う事なく冷ご飯と化した大量の釜の飯。
明日砦から帰るというなら、保存の利くおにぎり…いえ、焼きおにぎりを作りましょう。
準備をしていると、ミズリが手伝いに来てくれている事を確認しました。
>>67 ミズリ
「あ、あ、ミズリありがとう………!!!
おかずは任せていいかな…!!」
強力な援軍に心の底から安堵して、最後の料理当番を務めるのでした。
>>69 ソラ
まっかせて〜!!
こーゆーことなら得意だからさ!!
[鼻歌を歌いながら、オムレツを人数分作る。ふふん、慣れたものです]
ソラは主食をよろしく〜!
>>イグニス
───相打ち。
クロエは剣の構えを解かず、目の前の金色の瞳を見つめていた。ぎらぎらと光るその眼を覗き込んでいた。
鼓動はまだ、激しく胸を打っている。
つうっと鈍く銀色に光る水滴が、クロエの頬を伝う。
終わってしまった。同じ黒狼騎士団の一員として、これがアメジストの石を胸に戦う、最後の試合だった。
これがアメジストの騎士、クロエ・ド=ベルティエの最期だった。
最初の涙がこぼれてしまうと、あとはもう止めどなかった。糸が切れて離れた首飾りの玉のように、涙がぽろぽろと散らばっていく。
静かに涙を流しながら、クロエは笑った。
いつかの手合わせの時のように、その笑顔は曇りなかった。
気づけばもう日は暮れ、1日も終わろうとしている。
空腹に気付き、流石に食事をしようと食堂へと向かう。
途中、王子の号令を聞いて悲しくなる。グラジナは今頃、どうしているだろうか。ひどく扱われていないだろうか。
騎士団を志した仲間なのだ。丁重にとは言わずとも、せめて今まで通り接してあげてほしいと思った。
「…………美味しそう」
朝餉をとっていないこともあり、野菜炒めの匂いにお腹の虫はひどく反応する。合掌をし、食事にありついた。
三角の形に整えられたおにぎりを、片面ずつ焼き上げて焦げ目を付けて行きます。
ある程度の量が出来上がったら、広めの器に焼きおにぎりを並べて敷き詰めていきます。
もう既に食堂では何人かが野菜炒めを食べているようです。
とりあえず、食堂の全員に渡る程度の焼きおにぎりは作れました。早く配膳する事にしましょう。
>>73 ソラ
わーい!!なんか香ばしい匂いがするよー!!
いっただっきまーす!!
[ソラが作ってくれた焼きおにぎりを食べる。うーん!お焦げの風味がおいしーい]
えへへ、ソラありがと!!おいしいよ!
>>67 ミズリ
>>73 ソラ
何となく、慌ただしく準備する二人を眺めながら、椅子に座った。
テーブルの上には、野菜炒め、オムレツ、焼いた米の何か……がある。
「今回の遠征は、同じメニューが全くなく、色々な飯を食べさせてもらった。とても良いことだ。
城では毒味係などもいて冷めてしまうし、面倒だからな。騎士団での食事は俺の楽しみの一つなんだ。
こうして、各々の好みや家庭の料理などを知るのも、世間を知る術のひとつだと考えている。
……さてと」
あたたかい野菜炒めを口にする。シンプルながら、柔らかくなるまで火を通してあり、野菜が甘かった。
また、主食の方も。米を食べやすく丸めたものを焼いてある。柔らかく炊きあげた時とは少し変わった香ばしい風味に、うんうんと頷いた。
「うん。美味い」
>>71 クロエ
イグニスが剣を突きつけると同時に、首筋に鋭く冷たい感触がした。
あと、一ミリ。あと、数瞬。それだけの差が、届かなかった。
ああ、適わなかった。そう思って、イグニスはクロエの顔を見やる。
美しいかんばせを、雫が滑り落ちていく。クロエの瞳から生み出されていくそれは、その髪と瞳の色をうつして、まるで彼女の宝石のようだった。
ふと、イグニスは気づく。
あの時。もはや叶わない約束をした時。
イグニスもまた、ひとつ企てをした。
今度戦って、勝った時には、こちらからクロエのことを聞いてやろうと。
クロエのそのミステリアスな瞳が、隠すものを知りたかった。彼女のことを知りたかった。
こんなふうに、暴かれた嘘によってではなく────勝って、彼女の意思で彼女の話を聞きたかった。
自分に、話して欲しかった。
だから、許せないと思ったのだ。
そして今、彼女の頬に、そしてそのアメジストに指を触れてみたくなった。彼女の細い体を腕に閉じ込めたなら、今度は、どんな顔をするのだろう。
それはきっと、まだ名のつかない小さな感情の芽。
結局、どんな結果でも叶わなかっただろう小さな企みと共に、イグニスはそれを殺す。
ウィアの手紙を公開するか迷った。
彼女は、晒しても構わないと言ったが、普通に考えれば、アレには、サリーナ王子である俺の、許されざる過去が書かれている。それは国の弱みとなるもので、公開すべきではない。
事実、子どもの《悪さ》は直ぐに露見するもので。騒ぎになった後、父王には俺の仕業だとバレてしまった。
俺はそれについて、王子としても子どもとしても、とても厳しい折檻を受けた。異種族に与したことを罰するため、王子であることの自覚を植え付けるためだ。
だが俺は、あの、うつろで、儚げな少女のことを思えば、どうしてもあのことを、間違ったことだとは思えなかった。今でも思っていない。
それでも、子どもだった俺は、責苦のつらさに折れた。自らの過ちを認め、父王には許された。
──それが、本当につらかった。心を折った翌日、高熱が出た。そして、あのこと自体を忘れたのだ。おそらく、幼心に自らを守るために。覚えていたのは……父王には逆らってはならないこと、正しくサリーナの王子であらなければならないこと、この2点だ。
子どもゆえ仕方ないところもあるだろうが、こうして思い出せば、記憶を封印した弱い自分が悔しくて仕方ない。
それでも、どこかにウィアの影は張り付いて居たのだろう。遠征中、異種族と交戦しても、どうしても子どもに手をかけることはできなかった。
何かと理由をつけて見逃した。それは、正しいこともあり、正しくないこともあっただろう。
父王に逆らうつもりは、無い。
国を治めることというのは、俺が思うよりもずっと酷な仕事だ。それに、幼きころ、政務中でも俺を膝の上にずっと乗せていたというほど可愛がってくれた父にはあまり心労をかけたくない気持ちもある。
全てを正し、理想の国にするというのは、はっきり言って不可能だろう。
ただ……。
先刻のクロエの話を思い出す。
だからといって。『ひと』が、ひとらしく扱われないということが許されていいのだろうか。王族はそれを、当然のことと思ってよいのだろうか。
だが、黒狼騎士団長の、俺は──
そんなことを、ウィアの几帳面な字を思い出しながら、じっ、と考えていた。
手紙のことは、明日、あの結界が解かれたら決めよう。
>>81 イグニス
「……泣いてなんかいないわよ、別に。」
イグニスと剣を交える度に、クロエがそれまで抑えこんできたもののすべてが噴出してしまいそうになった。
太陽を見ることもなくじめじめとした暗がりに置き去りにしていた心は、彼といると雲間を洩れる陽の光を浴びたような心地がした。
五歳も年下のはずの彼の手のひらは、とても温かかった。
クロエは両手で顔を覆って、しばらく泣いた。月に似たその瞳は、クロエを見守ってくれていただろうか。
胸にわずかに芽生えた感情は、きっと吐露すべきではない。
今日、クロエの祈りがたくさん詰まったアメジストが砕かれる。
その時に、この思いも捨て去ろう。
そして、砕けたかけらを胸にしまって、時折心の引き出しから取り出すのだ。
「いい加減みんなが心配するわ。……そろそろ戻りましょう、イグニス・アッカード。」
涙を拭って顔をあげる。
赤くなった目尻は、きっとこの夜ならば覆い隠せるだろう。
クロエは剣をおさめて、みなのもとへ歩き出した。
ファルス王子のもとへ行って、腰に差した短剣を差し出さなければならない。
>>85 クロエ
「……そうだな」
イグニスはクロエの頭から手を離すと、大きく伸びをした。
「腹も減ったしな」
二人の間に一瞬あった何かは、そうして完全に姿を隠してしまう。イグニスもまた、程よく疲労の滲む体をほぐすと砦に向かって歩き出した。
部屋を出ると、通路を歩くクロエとイグニスの姿があった。
クロエのその凛とした佇まいは以前と変わるところは無いように見えた。
「やあ、クロエ殿にイグニス氏。食堂へ向かうのか?それならば私も同伴…」
…一点だけ違うところがあった。
泣き腫らしたように赤く染まる双眸は微かなランプの灯りに照らされ、白い肌に映える様だった。
夜目が効くのも考えものだ、とセンゾウは思った。
>>87 センゾウ
「ん? おう、センゾー」
イグニスは言葉を途切れさせたセンゾウに気にせず声をかける。目配せをしてから、唇を尖らせる。
「なんかまた口調変わったな。おら、行くぞ」
クロエが視線を外すのとほぼ同時に、イグニスもクロエに視線をやった。しかし、やはり何かを言うでもなく、すぐに逸らしてしまう。
>>90 センゾウ
「うーん、確かにうめぇけど……」
イグニスはセンゾウの口から放たれる、老成した口調になんとも言い難い顔をする。
「ジジイみてえだな」
お腹を満たし、する事もなく食堂に居座る。
いや、する事はある。自分の記憶が戻るために日記を読んだほうがいい事は分かっている。しかし、昼間も日記に羅列される文字を見るだけで頭に入ってこなかった。
今また読み直したところで同じ結果だろう。
ぼんやりしていると、食堂にイグニス、センゾウ、クロエがやってきた。今日初めて顔を合わせる。挨拶をする間柄でもない為、特にアクションを起こすわけでも無いのだが。
両面に焦げ目がついてこんがりと芳ばしい焼きおにぎりは、シンプルながらも腹を満たしてくれた。
一口ひとくちを味わうように齧って、ゆっくりと咀嚼する。
水気がなく、シャキシャキとした野菜の風味がたつ野菜炒めも、とても美味しかった。
こんなにも穏やかな気持ちで食事の時間を迎えるのは、本当に何年ぶりだろうか。
国を脅かしたクロエたちの処遇が一体どうなるのか、今のクロエには検討もつかなかった。
どうなるにせよ、仲間たちと共に食べる食事は、これが最後だろう。
センゾウとイグニスが交わす他愛のない会話に耳を傾けながら、クロエはゆっくりと食事を進めた。
やがて、夕食をすべて平らげた。
クロエはなんとなく、コップの水に口をつけたり、自分の手元を見つめたりして、食堂にいる時間を長引かせていた。
しかし、いつまでもこうしてここにいるわけにもいかなかった。
談笑をする彼らの中に混ざっていたかったが、きっとファルス王子を待たせてしまっている。
「……ごちそうさま。」
クロエは自分の皿を重ねながら静かに立ち上がった。
>>センゾウ
>>イグニス
「……わたし、そろそろ休むわ。シャワーも浴びないといけないし。おやすみなさい。」
石を砕かれに行くことは、きっと周知しているだろう。
だからクロエは何でもないことのように言って、その場をあとにした。
クロエは言っていた。『砕く色を間違えた』と。
そこから導き出される本来の襲撃者は考えるまでもない。続く、ブレイのバディに対する思いを聞き、3人の中での話し合いは想像がつく。グラジナがどんな風に自分を思っていたのかも、多少違いはあれど概ね予想通りだろう。
自分が利用されそうになっていた事は、正直良い気がしない。宝石が砕かれたくなかった気持ちで考察を進めていたが、裏目にでるとは思いもよらなかった。
それでも、グラジナを憎むことが出来なかった。記憶が無くともこの国のあり方は覚えているし、この考え方が悪いことだともわかっているのに。
どうかしていることは、自分でもわかっていた。
>>97センゾウ
「っ、あ、ああ。本当だね。自己紹介もしてないや。知ってるだろうけど、自分はアルバートだよ。よろしく。」
センゾウに挨拶をされて、同じように礼をする。そういえば彼のバディは隣国のスパイだった。少しだけ境遇は似ている。今、何を考えているのか気になったが、そこまで踏み込んだ話をする勇気は持ち合わせていない。この国を担う王の前では、なおさら。
>>96 センゾウ
「ふうん。なんか適当そうなやつだなと思ってたが、口調が変わると印象も変わるよな。ま、お前もこの国にいればそのうちどっちでも同じように話せるようになんのかね」
そう言えば、とイグニスは話を変える。
「イグニスでいいぜ。なんか氏って気持ち悪い。もしくはイグニス様でもなァ」
イグニスもセンゾウも、少なくなった同輩としてこれからやっていくことになりそうなのだから。
>>100 ファルス
騎士団長の声に従って、クロエは一歩前へ出る。
空は真に黒く、外気はまるでよく磨き込まれた鏡のように砦を映していた。
イグニスとの手合わせの折に辺りを照らしていた月は、ちょうどゆっくりと過ぎる薄い雲にその姿を隠されてしまっていた。
「……そうでしたか。お待たせして申し訳ございません、ファルスさま。騎士団長より賜った、黒狼騎士団の短剣を返しに参りました。」
宝石を砕いてもらいにきた、とは言えなかった。
クロエは視線をすこし下げたまま、腰に差していた短剣を手に取った。
柄にはクロエの瞳と同じアメジストの石が嵌め込まれている。
食事を片付け終えて、一息つきます。
クロエが去っていく様子を目で追うと、少しだけ胸がキュッとするのでした。
ようやく、この過酷な"戦い"が終わるのか。
もう、皆との奇妙な"生活"が終わってしまうのか。
どちらの感情を抱いているのかが自分でも分からなくて、ぼーっと厨房近くの柱に立っているのでした。
>>103 クロエ
視線を、クロエの短剣に移す。
自分の得物がある者は、この剣を飾りとして持つ者も少なくない。しかし、彼女の戦い方を見た。彼女の得物は大太刀だが、この短剣も上手く使用して戦っていた。
「君の戦い方は……よく見ていた。きっと、実戦でも強かろうなと、期待していた」
目を閉じる。その方が、本当のことが分かる気がした。
「……君の、生い立ちは……いや、そんなことは、関係ない。今此処にいる騎士たちも、此処にいない、君たちに宝石を砕かれた騎士たちも、無実のまま石を砕かれた騎士たちも。そして、君の仲間たちも。それぞれ、ひとりひとりの事情も、気持ちも、来し方もあるのだ
無論、この俺もな」
同情するのは違う。人は皆、他者が知りえない何かを持って生きているだろう。
「俺は、君たちのゲームにのった。そのルールに従い、また、騎士団としての誇りにかけ、騎士としての君の宝石を砕こう。クロエ・ド=ベルティエ」
クロエの、アメジストの短剣を手に取った。
>>101 アルバート
「今更も今更。だがそれもまた一興、これから仲を深めればよいだけの話。
昨夜のこともあってな、気にはかかっていたんだ。
アルバート氏の相棒、グラジナ氏のことで気を落としているのではと思ってな。
…斯く言う私の相棒もスクルドといううつけでなぁ。
大きな声では言えんが、グラジナ氏もクロエ殿も、恐らくブレイ氏も各々の矜持の元黒狼騎士団へと潜り込んだのだろう。
ただ、うちのスクルドはなぁ…普通に隣国の間者なんだよなあ…。単純に悪いやつだもんなぁ…。
というわけでスクルドは私刑に処すと心に決めているのだ。
まあ、要するに何を言いたいのかと言うと、それに関しては何も言うことはない、ということだ。
グラジナ氏は確かにこの国にとっての悪いことをしたかもしれんが、それはアルバート氏が気に病むことではない。彼らは彼らの為、夫々の考えで行動を起こした。それだけだ。」
イグニスもまた、夕飯を終える。そして柱に寄りかかるバディの姿を見つけた。
>>104 ソラ
「よぉ、ソラ。……何黄昏てんだよ」
>>108 ソラ
イグニスは瞬きをひとつして笑う。
「……そういや、そんなこともあったなァ。は、今日は風紀当番が居なくて助かったぜ」
悪びれもせず肩を竦めると、ソラの顔をじっと見た。
問いかけに一瞬、先程のことを思い出した。感傷を振り払うように、イグニスは意地の悪いニヤニヤ笑いを浮かべた。
「んだよ、お前、さては寂しかったんだろ?」
>>105 ファルス
よく見ていたと言われて、クロエは胸が熱くなるのを感じた。
本当はもっと見ていて欲しかった。
騎士団長の──この国のために剣を振るう姿を。その忠義を。
「……ええ、このゲームに生い立ちは関係ありません。わたくしたちは負けた。敗北したのですから、これ以上権利は主張いたしません。」
本当は、叫び出したい気分だった。
クロエの大切なアメジスト。ようやく切り開いた道。夢と願いが詰まった美しい石。
覚悟はしていたが、それがこれから砕かれると思うと、耐えられなかった。
そっと瞼を下ろす。ほどなくして、その瞳をあげた。
雲の切れ間から月が顔を出す。アメジストの石が嵌められた短剣が、月光を受けて輝いていた。
目を逸らしてはいけないと思った。だからファルス王子の目を真っ直ぐに見つめてから、その短剣に視線を落とした。
>>109 センゾウ
「ははっ、なんだかんだ似たもの同士のバディじゃねえか! …………。 ……いやてめー、まさかここで知ったサリーナの知識を自国に持ち出そうとかしてねえよな?」
イグニスは帯剣した剣に左手をかけ、冗談半分に尋ねた。
「…………」
イグニスはやりにくい相手だと少々顔を引き攣らせた。
「その呼び方はぜってー変だから使うなよ! ……いや、うん、……まあ、いいか……様でも……」
>>110 イグニス
「やっぱ不良だ!ていうか日誌当番とかもイグニス…!」
振り返れば大体彼はサボっていた事に気づき、もう全て後の祭りな事に肩をがっくりと落としました。
(結局大体ボクがやった訳か…とほー。)
初めてバディを組んだ時に抱いた危機感は見事的中してしまいましたが、不思議とそんなに悪い気がしないのは、彼と言う人物を良く知れたからでしょう。
そして続く彼の言葉には「…はぁ?」と口をついて出てしまいました。
「ボ、ク、は!料理得意じゃないの!!!ユーディトも出来ないらしくて頭抱えてたのにずっと来なかったのはキミだろー!!」
「寂しいってなんだよ!」と悪態をつきながら彼をまくし立てます。
「全く!……寂しかったら普通に探すっての。」
そう口を尖がらせて呟いた小さな声は届いても届かなくてもいいちょっとした本音でした。
>>111 クロエ
「……その心意気、潔し。残念だ。本当に」
目を開ける。クロエの、神秘的な紫色の目が俺の目を見ていた。
クロエの視線を追い、手もとを見れば、クロエの魂の分身たるアメジストは月光を受けてきらりと光る。
この宝石に賭けた思いは……騎士たち、皆それぞれだ。それぞれに、重い。それは18人、全員だ。
クロエの剣を地に置き、膝を立てて座る。ウィア、カリンの時と同様に柄頭をそのアメジストへ当てた。
「クロエ・ド=ベルティエ、黒狼騎士団長ファルス=サリーナの名のもとに、この手で君の宝石を砕こう」
そう静かに宣言した後、己の剣を握る手に力を込める。
次の瞬間には、アメジストは儚い音を立て、散った。
>>113 イグニス
「……あー…………」
そういえば、そんなもんもあったな、とイグニスは回顧する。
「はっ、一度も注意されてねえってことは、まぁお前がよく働いたって事だなァ、褒めてやるぜ」
そうしてちょっとからかうつもりで薮をつついたイグニスは、思わぬ蛇の猛攻に耳を塞いだ。
「あー、あー、うるせー! じゃあそこら辺歩いてるセンゾーとかそこら辺捕まえたらよかっただろ! ってか結局夕飯は悪くねぇ出来だったんだからいいだろうが!」
そう言って偉そうに腕を組む。
「…………ふん」
イグニスは、いつものように鼻を鳴らした。きっと、彼女はイグニスが本当に居なくなったのなら、必死に探してくれるのだろう。
>>114 ファルス
「……」
いとも簡単に砕けてしまったアメジストを、その目に焼き付けた。
さんざイグニスの前で泣いたからか、“希望”が散るさまを見ても、クロエは涙を流さなかった。
ただ、ゆるやかに吹く夜風は、腫れた眦にはすこし染みた。
それでも、ただ静かに。クロエは粛々とその儀式を見届けた。
──そうしてクロエ・ド=ベルティエは、ただのクロエになった。
きっと狡猾なド=ベルティエ家は、上手いこと立ち回ってその責任から逃れるのだろう。
そこまで考えて、もう考えるのはよそうと思った。
クロエはそっと、砕けた紫色の破片を一つ拾い上げる。
それを大事に握りしめて、目の前の騎士団長に深くお辞儀をした。
「……短い間でしたが、わたくしを黒狼騎士団に置いてくださりありがとうございました。」
騎士団日誌(7日目)
記録者:ミズリ・ミズハ
天気:晴れ
朝食:カレーマカロニグラタン、ごはん、枝豆のスープ(ソラ作)
夕食:野菜炒め、オムレツ、焼きオニギリ(ソラ作、手伝いミズリ)
今日は、ソラがスパイを見つけ、本物の占い師と言うことがわかった。昨日、ソラが異種族だと言っていたグラジナを追放したので、残りの異種族はクロエ一人。そして、求愛者ももういない。
我々騎士団は、今日で勝利する。
これは余談であるが、オニギリという食べ物の名は、鬼斬に通じて強そうである。縁起がいいので、騎士団でも、もっと食べるべきではないだろうか。
……これでいっかー……。
[初めての日誌が、ゲームの最終日の日誌になるなんてな。これが日記だったら、ブレイのことも、クロエのことも、グラジナのことも、スクルドのことも、グラシエラのことも、なんでも書きたかったのに。
それを書くべきではないのは明らかで!!悔しいけど、こんな感じでいいやと思った]
>>115 イグニス
「ほんとにね!!」
よくもまあ注意されなかった物だと今更ながらに振り返るのでした。
「ばっ…馬鹿じゃないの!センゾウもアルバートもバディが…その、ああなってるんだから無理に決まってるでしょ!!
イグニスもクロエもいないしユーディトもダメ!
ミズリが居なかったら本当に詰んでたんだからね…!!」
イグニスを恨めしそうに見つめてそう呪詛の言葉を紡ぐと、彼が憮然とするので一瞬きょとんとすると、にっこりと笑って彼がいつぞやしたように肩を組みます。
「ボク達はバディで、相棒なんでしょ?キミが大変な時は必ず駆け付けてあげるから安心してよ。」
>>106センゾウ
「………………そんなものなのか?」
気に病むことではないと言われた。思っていたよりも、あっさりとセンゾウは話す。デリケートな話題であるが、言葉を濁すわけでもなく真っ直ぐに伝えてきた。
「グラジナはグラジナだ、と、そう思って良いものなのか?」
センゾウの話を聞いていると、異種族や隣国者というこの国のタブー視されていることを指摘するわけではなく、個人個人の振る舞いについて話しているようだった。
出身地が違うからこその視点なのだろうか。
異種族であるグラジナを責めることが出来ない自分の考えは叛逆ではないのか。そう決めつけていた頭はガツンと殴られたような気分だった。
ファルスの背が見えなくなるまで、クロエは頭を下げ続けた。
罰を受ける覚悟はできていた。七年間も耐えてきたのだ、今更何も怖くはない。
>>116 センゾウ
「……ふん、ならいいけどよ。怪しい動きしたら覚悟しておけよ?」
センゾーの戦い方は以前カリンとの手合わせで審判として見学していた。あれはあれで手合わせのしがいがあるだろうな、とイグニスは思う。
「あっ! てめぇ、気づいてわざとやったな! ふざけんな!」
イグニスはいつものように吠える。
[日誌を書き終わってから、結界の近くに行った。きっと、もうじきここは開くけど]
おーい!大バカのブレイ、聞こえてますかー!!
あんたけーっきょくお仕事1個もしてないんだから!!美味しいもんでも食べさせなさいよー!!あたし、作るのも好きだけど、食べるのの方がもーっと好きなんだから!!
[ブレイは敵。騎士団の敵。明日どうなるかもわからない。だけど]
やっと一人が終わるんだーって、ホッとしちゃってんのー!!バカみたいでしょー!!
ばーか!!
ついでにスクルドもばかやろー!
[今日は風紀当番が居ないもんね。言いたい放題だ。本人の顔が見えないのは残念だけど]
……ほーんと、面倒見切れないわ。
[脚に付けていたブレイの短剣に触ってから、部屋に戻ることにした]
「グラジナ、ブレイ。……どちらだったのか結局分からずじまいだったけれど、わたしたちの協力者。それから、ウィアも。
テレパシーを使わずに話しかけられるのは、なんだか新鮮ね。わたしの声、ちゃんと届いているのかしら。」
結界にそっと触れる。その先はやはり、水のように波紋が広がるだけで、何も見えない。
「最後の最後でごめんなさい。……こんな結果になってしまって、あなたたちには責められても仕方がないと思ってる。」
ごめんなさい、と。クロエは手のひらにあるかけらを握り締めながら、静かに繰り返した。
>>120 ソラ
「あ? そんなの、別に、…………」
関係ないだろ、と言いかけて口を噤む。バディが敵である可能性を、昨日嫌という程考えていた。
「あぁ、もう、わかったわーった! いやでも料理は────。……うん、まぁ、結果的にこれで良かったと思うぜ」
イグニスは遠い目をすると、ソラの肩をポンと叩く。
「はっ、お前に助けられるより俺様が助けてやる方が多そうだけどな?」
肩を組まれると、イグニスは右頬をあげた。憎まれ口を叩き喧嘩をしながらも、互いを支えあっていくのだろう。
自分にとっては馴染みの深い凹凸の狭間。
その間に座って、頬を撫でる風と共に夜空を見上げます。
思い出すのは、昨日イグニスに告白したあの秘密の話。過去の記憶の続きでした。
/*
ソラを保護したのは、黒狼騎士団であり魔法取締役の一人だったベネデット・ブルダルと呼ばれる黒狼騎士でした。
初老を迎えた男性、しかし鋭い眼光と眉間の深いしわはまだまだ現役を思わせ、正しく猛者と呼んでも差し支えのない壮健な騎士でした。
*
ベネデットは町で騒ぎを起こしている悪童を懲らしめて欲しいという要請を受けてやってきました。
森を根城にしていると言う情報を得ていたので、直接森に足を踏み入れましたが…悪童に会えたのは運命だったのでしょうか。
森に立ち入ってから数分。半死半生の子供が倒れているのに気づきました。全身が徹底的にいたぶられており、至る所に浮かぶ青あざがその苦痛を物語っています。
ベネデットはそれがかの悪童であった事を、薄ら察しながら治療を施します。
懲らしめる筈が既に懲らしめられていた悪童を見たベネデットは、その子供を連れて自身に馴染みのある教会へと赴きました。何の因果か、ベネデットもまた孤児だったのです。
*/
/*
悪童が目を覚ましたと聞き、ベネデットはその場へと赴きました。
そこには粗末な服を着ていた悪童の姿はなく、ゆったりとしたローブ…神官衣を着せられて困惑している少女が1人。
湯浴みも済まされており、透き通るように滑らかな肩まで掛かる青い髪が垂れていて、傍目に見れば可憐な少女にしか見えなかった事でしょう。
彼は、聞きました。少女がどうしてあの場所にいて、何故ああなったのかを。
少女は、答えました。どうしてあの場所にいたかも分からず、生きる為にしたからと。
問答を続けていく内に、少女が魔法を掛けられていると気付いた彼は少女の呪いを解く事にしました。
ベネデットは、魔力の性質を計るだけでなく触れる事で自身の魔力を当てて相殺し、無力化する事の出来る力を持っていました。
時間を要する事と、相手が暴れていると行えないので、戦闘時に使うような代物ではありませんでしたが。
治療を施すと、少女は記憶を取り戻してぽろぽろと涙を零し始めます。
親の最期を見たと。魔法が使えたばかりに処刑されたと。
周りの人達は皆何かしら助けて貰ったはずなのに、両親を助ける事はしてくれなかったと。
どうして、どうして…と。
*/
/*
国の歴史を鑑みても、こういった事は多くありました。
疑わしきは、罰する。今回であれば、裏付けも取れているので執行は回避できるものではありませんでした。
例えそれが、心優しき者だとしても。魔法を持つという事が、罪に値するのです。
少女が呟く『どうして。』
納得させる言葉が見つからないベネデットは、ただ一言。
───知りたければ、騎士になる事だな。
そう少女に伝えました。
護るべき国と民。その礎となる騎士になれば、その問に対して少女なりの答えを出す事も出来るでしょう。
何かを変えようと思うなら、力はどうしても必要になるものです。
丁度、魔法取締役の後釜を探していた所でもありました。素質も悪くはないようですし、運命のようなものも感じます。
ベネデットは、少女の指南役を申し出て、新たな名前と人生を与えました。
そして少女…ソラは、神官見習いとして、教義や規則、振舞いを学んでいくのでした。
*/
/*
──お前の名はなんという?
『……シエロ。』
──ふむ…、シエロ…か。……お前にソラの名をくれてやろう。昔寄った東の小国で聞いたのだが、シエロとは空と言う意味があるらしい。捻りはないが丁度よかろう。
『…………ソラ。』
──魔法使いの娘シエロは死んだ。そして、今ここにカルセドニーの騎士に拾われた孤児が産まれた。…ソラ・カルセドニ。精進するがいい。
『………………ん。』
*/
情報 プロローグ 1日目 2日目 3日目 4日目 5日目 6日目 7日目 エピローグ 終了 / 最新