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この村にも恐るべき“人狼”の噂が流れてきた。ひそかに人間と入れ替わり、夜になると人間を襲うという魔物。不安に駆られた村人たちは、集会所へと集まるのだった……。
1人目、物語の導き手 アリス がやってきました。
物語の導き手 アリスは、村人 を希望しました。
2人目、ニュースキャスター がやってきました。
ニュースキャスターは、村人 を希望しました。
……では、次のニュースです。
本日のお昼ごろに発生したNEXTによる暴動事件ですが、
警視庁のブースト装着者と協力者であるゾンネ=ユーベルス氏によって
迅速に解決されました。
この事件による死者は0で……―――
3人目、ゾンネ ユーベルス がやってきました。
ゾンネ ユーベルスは、C国狂人 を希望しました。
― 事件現場 ―
[テレビに映し出されるのは一人の男。
褐色の肌に白髪、赤い瞳という目立つ容姿をしたその人物は
人当たりの良い笑顔でインタビューに答えている。]
……ですから、お礼を言われる事ではありません。
私は何の因果かこのような力を得たわけです、
ならばその力を良いと思う方向に使うだけです。
いまだ風当たりの強いNEXTですが、
こうして私が信じる物の為に力を使えば、いつかきっと……
争いのない日がくると信じていますので。
…… 以上、現場からの中継でした。
それでは次のニュースです。
昨今増え続けるNEXT犯罪について、
その中のいくつかに特定の人物が関与しているとの情報が
警視庁より発表されました。
この人物については"シャッテン"と名乗っている事以外は
一切不明であり、引き続き捜査を続けていくと……――
[テレビの中のニュースキャスターの声は
その後しばらく続けられていった**]
シンドバッド が見物しにやってきました。
シンドバッドは、見物人 を希望しました。
―都内某所―
[都内にある某高層ビルの屋上に白い影。
西方に向けて跪くような動きをするその姿。]
………………ヴァー…。
征け、戦士たちよ………。
[ここ最近、異常に「蚊」の多い日々だ。]
4人目、ナジーム ラシュディ がやってきました。
ナジーム ラシュディは、村人 を希望しました。
―数日前/関東国際空港―
[この防犯カメラの映像は都、いや日本の
関係筋を震撼させるものであった。
変装こそしているもののこの男―テロリストだ。
各地でテロ行為を行い、以前日本でも
多数の犠牲者を出した"あのテロ"の主犯でもある。
国際手配を受けているはずの彼がなぜ―]
村の設定が変更されました。
5人目、雷 宗太郎 がやってきました。
雷 宗太郎は、村人 を希望しました。
― 街中 ―
[人々が行き交う雑踏の中、フラフラと覚束ない足取りで街を歩く男。
街中に聳える巨大なビル、それの上に備え付けられた巨大なモニターはニュースを映している。
そのニュース番組に映った男に似た髪色と眸の色をした男とすれ違う人々の中には男に対しての悪意の言葉を呟く者もいるだろう]
死者はゼロ……。
きっと、犯罪者も含めての事、か。
[耳に飛び込むニュースキャスターの読み上げる原稿に歩みを止め、巨大なモニターに視線を移して小さく呟きを漏らす。
しかしすぐに視線を戻して再び歩き出す。
ゾンネ ユーベルスと言う男が犯罪者であろうと殺す事はしないのは有名な話だった]
立派な精神だ。
しかし――
[ゾンネの掲げる不殺の精神に思いを巡らせ、再び小さく呟くとポケットが小さく振動するのを感じた]
――俺だ。
……分かった、今から向かう。
/*
奇しくもフォーゼの始まった日に村が建つとは……
東映チャンネルでライダー見まくる。
と言うかPCないとNEXT体参加させるタイミングがむず……
まあ、適当に犯罪のとこに言って変身して倒す時にNEXTになるよ。
しかし参加する段階になって気付いたけどゾンネと似てたね、髪とか目の色w
カウントレス・S が見物しにやってきました。
カウントレス・Sは、見物人 を希望しました。
[胸が歓喜に躍る。
泣き叫ぶ声が聞こえる。幼い子供の声。
たった二人の大人は隅で震えている。それくらいしかできない。ただの人間などNEXTの敵にはならない。
運転席に陣取った一体が、ハンドルを握りながら片手の拳を高々と突き上げる。沸き上がる心のままに、力強く。
車内の二体は人質をおどかすように、両腕を開いて幼児たちに見せつける。
屋根の上に陣取った二体は互いに手を打ち合わせた。健闘を称え合うかのように。
そして、叫ぶ。昂揚を示威するように]
ヴィーーーーーーーーーーッ!
[幼児送迎バスのジャックは、とどこおりなく完了した]
参加者パスワードをhentaiと何回か間違えて入力して、自分に自信が持てなくなりました。KAMEです。
やりたいことが終わりました。
6人目、守川 篝 がやってきました。
守川 篝は、C国狂人 を希望しました。
―― 郊外 ――
[東京都郊外にある、簡素な診療所。
――薬品保管庫の地下に、一つの死体。
血溜まりに沈む男と、傍らに座り込む女。
事実だけを述べるのであれば、そうなる。]
[問題は、理由が分からないということだ。
人の良さそうな遺体の白衣が、細切れになっている理由も。
医者らしき男だけではなく、部屋まで散乱している理由も。
暴風が吹き荒れたような部屋で、
男は全身を切り刻まれ、女性だけが生き延びた理由も。
血に塗れる事も厭わず、子機を握りしめたまま
死に沈んだ暗い瞳を、彼女が覗き込んでいる理由も。
彼女が、何一つ着衣を纏っていない理由も。
血の化粧だけが、彼女の頬を、肌を、覆っている。]
[――通報に駆けつけたのは、今から10分程前の事。
抑揚の無い声で、僅かに震える声で
「ひとがしんでいます」
そんな、呟くような電話だった。
駆けつけてみれば、診療所には何も無い。
保管庫の扉が――血の臭いが紛れていなければ
悪戯電話だろうかと、引き返していた事だろう。]
「…………」
[本部に応援を要請してから更に10分。
何も着ていないのはまずいと思い、私は彼女に
上着を羽織らせようとしたが、首を横に振られた。
男の死についてや、彼女の事情を尋ねても
返る声は少なかった。
得られた情報は、たった一つ。
「かがり」という、彼女の名らしき三音だけ。]
『……遺体には触れないようにしてくださいね。
あと、もう少し離れた方が。汚れてしまいますよ。』
[既に血塗れの彼女には皮肉だったかもしれない。
それでも、かがりさんは是とも否とも応えずにいた。
死に寄り添って、冷たくなった自分の肩を抱いて。
やがて、ふらふらと立ち上がろうとした。
膝からがくりと崩れ落ちる。
慌てて支えれば、彼女は小さく感謝を呟いたようだった。]
『……やはり、このままでは風邪を。』
[彼女は、やはり応えず、今度は自分の足で立ち上がった。]
[見つめる先は、どことも取れない虚空。
電灯も窓も無い部屋では、どこを見つめても闇ばかり。
それでも、かがりさんは一点を目指して歩き始めた。
……あれは、花瓶――だろうか?]
『カガリさん。現場の物に触れては、』
[制止は聞こえているのかいないのか。
とにかく血や傷痕の被害が少ない場所へ連れ戻そうと
歩み寄れば、彼女の方が進路を変えた。
先程の花は、頭部のアクセントに変わっている。
指先も血に濡れていた為か、花弁とは違う赤も咲いていた。]
『カガリさん……!』
[名を呼んでも、どこか別の場所へ吸い込まれるよう。
――そう想っていたから、]
「……着替えを。」
[小さな声でも、答が返ってきた事が嬉しかった。]
「――ですが。」
[かがりさんは、唐突に立ち止まり、振り返った。
私の後ろで、数人の足音がする。
どうやら応援が来たらしい。]
『着替えがあるのであれば、
早く着替えてしまいましょう。カガリさん。
私から彼らには言っておきましょう。』
[私は仲間に、少し待っていてくれるよう伝えに行こうと
彼女に背中を向け、]
SM_04 が見物しにやってきました。
SM_04は、見物人 を希望しました。
[姿を変えた女が、リコイルスタータを引いてから3分。
ガソリンの臭いは、蔓延る死の臭いに塗り潰された。]
…………。
[為す術無く殺された者、変化に驚いた者や、恐怖した者。
中には、NEXTであった事実に、怒りを覚えた者もいた。
最も攻撃的な者は銃を握り締め――腕ごと刎ねられていた。
残ったのは一人。
足を殺ぎ落とされ、死んでいった者のどれとも違う目で
暗闇の只中、チェーンソーを握りしめる篝――
つい先程まで篝だったものを、見つめている。]
[男の傍らで、別の男がぴくりと動いた。
女は流れるように視線をそちらへと向ける。
死に体が腕を伸ばした先は――もう一つの自分の腕。]
『――やめるんだ! 篝さん!!』
[腕には掌。掌には握り締められたままの銃。
制止は女に届かない。
偉業と化した殺人鬼は、幽鬼のように歩を進め
残った最後の一本も――刎ね飛ばした。
迸る悲鳴に動じる様子も無く、作業のように淡々と
翻る秒速20mの刃は、死に損なった男の脳天を轢き潰す。
頭蓋をひび割る甲高い音が、部屋に浸み渡っていた。]
[チェーンソーは動力を停止。
唸り声を鎖し、女の手にぶらりと垂れ下がる。]
――――。
[ほんの僅か、生き残った一人に顔を向けた。
表情の分からない貌は、女の思考を読み取らせない。
最期の男はそれでも歯を食い縛り、見つめ続けた。
同僚の死。大勢の犠牲。
向けられる瞳は、先程とは別の感情に彩られ始める。
――だが、女は呆気なく背を向けて
何事も無かったかのように、
ワンピースとエプロンドレスへ手を伸ばした。]
[――銃を向けられた、と気付いたのはいつだったか。
破裂音とほぼ同時、女は肩口を穿たれた。
肉を貫かれ、湧き出る液の色は赤とは取れぬいろ。]
…………。
『はっ…………はっ、』
[女は、振り返りさえしない。
痛んだ体を、掌でなぞる。
――銃を向けた男は。
闇から生えた幾重かの刃に、串刺されていた。]
――――。
おやすみなさいませ。ミスター。
[一言呟けば、女の変身は解け
宙に縫いとめられていた男は、地に堕ちた。
女は顔を上げる。
――窓の無い部屋。
――闇の息づく世界。
そして、報せを受けた警官の開いた、たった一つの扉。]
7人目、ヴィクトーリア・フォン・リントブルム がやってきました。
ヴィクトーリア・フォン・リントブルムは、村人 を希望しました。
何が起こったのだろうか?ここは薄暗い森の中。
目の前には急所を差されて絶命した熊、泣き叫ぶ小さい弟、その弟をぎゅっと抱きしめる母、おびえた表情をしながらこちらにやってくる父。
そして私の手を見ると、それは私の手でないようで私の手。いや、この甲冑に覆われた身体は私ではないけど、それは私で…。
な に が お き …
…、ああ夢だったのですね。
ゆっくりとベッドから身体を起こす。枕元の時計は4時頃を指していて、夜明けには少し早い。
またNEXTになった日の夢を見てしまった。
家族四人で山へ出かけたあの日のこと。熊に襲われた弟を救いたい心が、彼女のNEXT能力を開眼させた。
白竜騎 リントブルム が見物しにやってきました。
白竜騎 リントブルムは、見物人 を希望しました。
『くるな、ばけもの。おねえちゃんを、どこへやった!』
弟が私を見て叫ぶ。私はここにいる、ここにいるのに…。
声を出してそう言いたいけど、口が動くだけで声にならない。
夢の後、いつも一番辛い言葉を思い出す…。
白竜騎に変身した私を弟は自分の姉と認識できず、そして人間の姿の姉すら、姉と認識できなくなった。
困り果てた両親と私は、懇意にしていた牧師様と相談して、私は牧師様の施設に、両親と弟は故郷ドイツに帰って、弟が落ち着くまで距離を置くことにしたのだ。
牧師様は言いました。
『弟君は、命の危険に晒されたこと、お姉さんが突然変身したこと、お姉さんが凶悪犯罪も行うNEXT能力者であること、色々なことが一度に起きて混乱していると思います。きっと大きくなれば分かるはずですよ…』
そう、私はNEXT能力者。でも決して犯罪は起こさない。
そして犯罪を起こすNEXT能力者も赦さない。
いつか、弟が自分の姉を誇れるよう、そんな立派な人になって、また故郷で四人で一緒に…。
夜明けまで、もう少しあるのね。
明日は平和な一日がやってきますように。
――おやすみなさい、私。いい夢を。**
8人目、風薙 緋焔 がやってきました。
風薙 緋焔は、村人 を希望しました。
─ 街中 ─
……おー、皆さん頑張ってらっしゃるねぇ。
[巨大モニタが伝えるニュースに、もらすのは暢気な一言。
モニタを見上げる瞳には、僅かながらも険しさがあるが、ぱっと見ただけではそれは読み取れない]
しっかしまあ、最近まーた物騒になってきてるし。
……バイト減るのは、ちょっときついよなー。
ま、違う『お勤め』は増えっけどさぁ。
[街の立てる音に紛れ込ませてぽつり、と呟き、休憩のために寄りかかっていた壁から身を離す]
さーてと、配達、後何件だったっけかー?
[ジャケットのポケットから、メモを引っ張り出して確認しつつ、停めて置いた愛車の元へと戻る。
左の袖口から僅かに覗く硬質の銀色が、光を弾いて煌めいた。**]
9人目、紅金の ロージア がやってきました。
紅金の ロージアは、村人 を希望しました。
――対NEXT犯罪組織『STOPPER』・詰所――
はーあ。
[ニュース番組の告げる事件の顛末に、盛大なため息を。
詰所のテレビで頬杖つきながらそんな重さを演出するものだから、すかさずやめとけ、なんて静止がかかる。]
わーかってるわよ。別にあたしは犯罪さえなくなれば何だっていいわー。
あの人が殺さないのを嫌がる人がいるのも知ってるけど、あたしはそれが嫌なわけじゃないもの。
ただね……まあ、最近増えてるなーって思うわけよ。
このまま増え続けたらあたしもバッシングされるのかなー、とかさ。
別に、どうだっていい、んだけどねー。
[椅子をきしませながら、大きく伸びをする。
この"ロージア"もあまり殺しを好まぬNEXTであった。今インタビューを受けているゾンネ程ではないので、必要あらば手を掛けたことも過去にはあったが、それでも幾度かでしかない。]
[伸ばした身体を脱力させながら、過去を思う。
殺さないのは自分の能力がそもそも殺傷に向いていないという面もあるが、それよりもまたさらに、命を奪うのにためらう理由があった。]
執罰の フロウディア が見物しにやってきました。
執罰の フロウディアは、見物人 を希望しました。
[あの日の白い光。
眩しい光は人々を次-NEXT-の時代に導いた。人類はあの光によって進化し、能力を手に入れた。
自分も、その内の一人だった。
光に目を覆い、眩しさに慣れた頃。目を開けると悲鳴と逃げる人の姿が見えた。
あたしはこの姿でただ、その場に立っていた。
皆、あたしを見て恐怖に顔を歪ませて逃げた。
それからあたしがどうしたのかは、覚えていない。]
[気がついたときには、真っ白だった。
そこには誰もいなくて、何もなくて、あたしの記憶すら、なかった。
覚えているのは光がただ眩しかったことと、皆が逃げていく姿だけ。]
[元に戻ってから役所に駆け込んでも、あの光の及ぼした影響にてんやわんやで、記憶喪失なんて真面目に取り合ってはくれない。
それでも何度も通いつめて、ようやく調べて出た答えは、"あたしは誰だかわからない"ということだけだった。]
[それから自分で名乗る名前を決めて、ここに拾われるまでの話はまた別の機会にするとして、とにかく自分はもうNEXTでしかなかった。
NEXTそのものが鼻つまみ物になったらおしまい。自分が犯罪者になったらおしまい。今この立場を失ったらおしまい。
だから本当は、どんな悪であろうと殺すことは彼らと同位置に立つことだと思っていた。けれど殺せないことでここを追われるのも御免被りだ。
だから、あたしは今日も要請があれば動く。それだけだ**]
GroomHuntress が見物しにやってきました。
GroomHuntressは、見物人 を希望しました。
―とある映像記録―
――― ザッ ザザザザザ ザ・
[雑音。夜間、街灯の明かりのみで撮影した暗い画面。
走りながらの録画と思しく、ぶれた画面には撮影者の足とアスファルトの地面だけが映り、足音と激しい呼吸音が混じる。]
「ハアッ、ハアハアハア……何だよ、信じらんねえ……そんなんありかよ……」
「警察っ、けいさ、 あっ」
ガタンッ
カシャン!
ガランガラガラ……
[画面が激しくぶれた後、カメラは一点で止まる。
レンズには、ふらふらと立ち上がろうとしている若い男性が映る。]
「……ックショウ、何だってんだよ!!」
[画面の奥、男性の背後を白いものがさっと過ぎったかと思うと、画面から不意に男性の姿が消えた。]
「うわっああああああああああ]
カシャカシャカシャ、
[続いて上がる絶叫、固いものが擦れる音]
カシャ、カシャ、
[何かがもがく音が微かに聞こえるがそれも次第に収まっていく]
「………………」
[先程の男性の声とは異なる囁き。]
カシャンッ、カシャ、カシャ、
[やがて黒いものがぼんやりと画面に映り、節足動物の脚のようなそれが画面一杯に迫ったところで]
メキッミシ……ブツン
― 警察署 ―
[先程の繁華街から出るとバイクに乗り、警察署へ向かう。
到着するなり定期入れサイズの端末を取り出し、専用の画面を表示して入口に立つ警官に見せる。
公的機関に協力するNEXTという証のようなもの、それを見せると訝しげな目を向ける警官が慌てて敬礼をする]
……挨拶はいい、NEXT犯罪が起こったんだろう?
すぐに現場に向かう、情報をくれ。
[端末にデータを送信してもらい、再度バイクに跨がって現場へ向かう]
10人目、宮古護 がやってきました。
宮古護は、村人 を希望しました。
── 東京都社会福祉課 ──
NEXT犯罪の被災証明の今月分の統計、まとめてあります。
被災孤児の一時受け入れについて、教会施設に依頼する件は、都知事の決裁待ちです。
[都庁の事務室で、車椅子──と呼ぶにはいささかゴツい仕様の多機能型移動補助機体に座した青年・宮古護が日常業務に勤しんでいる。
宮古の両脚は、右が膝の下から、左は足首から先が欠けており、片目もまた白い覆いの下だった。
不思議な閃光によって超人能力を得たNEXTたちが引き起こす事件──自らもその犠牲者である宮古は、都の福祉課職員として、NEXTによって被害を受けた者たちの支援業務に従事している。]
[かつて、NEXTが引き起こしたテロで宮古が失ったものは両脚と右目だけではない。
数年ぶりに会うはずだった兄・進は行方不明、妹の愛は今も病院から出ることができないままだ。
そして、そのテロ事件の犯人も、国際手配されていながら、いまだ逮捕されていない。]
……。
[福祉課に届けられるNEXT事件に関する助成の申請もまた減ることはなかった。
福祉課にNEXT対策室が設けられたのも当然だ。
そして、その対策室の主任主事の辞令を交付された宮古は、特殊な使命を与えられた。
NEXTの力を研究するために開発された強化外装甲"ブースト"
その福祉用モデルの試用者に任命されたのだ。
『 都SF特012号 <東風> 』
それが、宮古が使用するブースト機体に、行政組織がつけた名称である。]
ー街中ー
[一目でイスラム圏から来たとわかる男。
人種のサラダボウルと化したここ東京では珍しくない。
英字新聞を読みながら、優雅なティータイムだ。]
「最近、やたら蚊多くね?」
「うん、蚊取り線香もいまいちだし。」
[そんな会話を尻目に、男は席を立ちレジへ向かう。]
[車椅子を転がして移動し、宮古は上司に業務報告を提出した。]
午後は定期検査で、そのまま直帰します。
…え、出張じゃないんだから、土産なんて期待しないでください。
チーズケーキがいいとか希望されても困りますって。
それでは、お先に失礼します。
[あたふたと事務室を出て、駅へ向かう。
ブースト仕様の車椅子には自動走行機能もついていたが、今はスイッチを入れず、車輪を手で回していた。
公務員らしい地味なビジネススーツに隠れてはいるが、宮古の両腕は日々の運動によって、ガッチリと筋肉がついている。]
「10円のお釣りに…!?」
[レジ係に差し出された手は異様に白く、
真ん中に丸くて紅いボタンのようなものがついている。
それは明らかに「人間のもの」ではなかった。]
「…ひ!?」
[驚いたレジ係は思わず、その手に乱暴にお釣りを置く。
いや、叩きつけたといった方が良い。
……………………カチッ]
─ 街中 ─
はいどーも、ありがとうございましたー♪
またの御利用、お待ちしておりまーす。
[にぱ、と人好きのしそうな笑顔を浮かべて、ぺこりと頭を下げ。
ばいばい、とこちらに手を振る、配達先の子供に、またねー、と言いながらぱたぱたと手を振った]
いよっし、本日分の配達しゅーうりょっ!
[道に停めて置いた愛車──今の『仕事』を始めてからの付き合いであるバイクの所に戻ると、んー、と身体を伸ばす。
バイク便のロゴ入りのTシャツとジーンズ、ちょっと着古した感じのジャケット、という出で立ちは、どこにでもいそうなバイト青年のそれ。
その中で唯一異彩を放つのが、左手首に着けられた、シルバーアクセというにはかなりごついブレスレットだった]
── ブースト研究施設 受付 ──
[都が宮古に貸与した特殊車椅子は、民間の研究所で試作されたものだった。
定期検査のため、宮古はたびたびここを訪れている。
宮古はもう顔なじみのカウンター職員に訊ねた。]
今日、風薙さんはこちらに?
急ぐ用ではないんですけど──お借りしてたDVDを返そうと思って。
GroomHuntress が村を出て行きました。
ああ、そうですね。
ジムに行った方が会える可能性が高いかもしれません。
検査の後で寄ってみます。
ありがとうございました。
[丁寧に礼を言うと、研究所の奥へと車輪を転がす。]
どごぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉん!!!
[轟音とともに、カフェの入ったビルが爆発する。
そして、イスラム男は悠然と褐色の手を振り]
誤って民を手にかけたかの男と
犠牲になった名も無き戦士たちが
アラーのもとにありますように。
[以前と同じ手口である。どのように仕掛けているのかは不明。
何もないとおぼしきところで、爆破テロが起きる。
その男、国際指名手配特Aクラス。シンドバッドーナジーム=ラシュディ。]
[祈るような仕草を見せて、イスラム男は
悠然と立ち去ろうとする。混迷極まる現場を振りかえらず。
のちに、目撃者は語るだろうか、
「黒煙の中に全身白い影を見た。」と。]
――『STOPPER』詰所――
さて、と。
人の活躍に腐ってても仕方ないし、お仕事でも探しに行こうかな。
[つまり、街を巡回しつつ警察署に立ち寄り、事件のにおいを探しに行く。
地道なパトロールは好きだ。暇も潰せるし、仕事を拾えるとあらば、弱小対犯罪チームには嬉しい話だ。]
……仕事、ない方がいいのかもしんないけどねー。
今日は、このまま上がってもだいじょーぶ、かなっ。
……ま、暇なら巡回しとけ、っていわれそーではあるけど。
[伸ばした腕を下ろし、左手首のそれを見る。
銀の上に鮮やかな緋色で何かのエンブレムが刻まれたそれは、今の所は沈黙を保っていた]
まー、静かな方が、ありがたいんだけど、ねー。
[ふ、と笑って緋色のエンブレムをぽん、と叩く。
飾りとしてはいささか──どころか、かなり大げさなそれは、色々あれこれと詰め込まれた多機能端末。
NEXT犯罪に対し、独自に対抗する手段を求めた私設のブースト研究組織『Blaue Flamme』の技術の結晶。
ある意味、最先端技術とも言えるそれを、託されているのが彼──風薙 緋焔。
一見すると、本当にどこにでもいそうな、それでいてあちこちにいたら怖い、と周囲に突っ込まれるような、そんなお気楽青年だった]
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