情報 プロローグ 1日目 2日目 3日目 エピローグ 終了 / 最新
[1]
[2]
[3]
[4]
[5]
[6]
[7]
[8]
[メモ(自己紹介)記入/メモ履歴/自己紹介] / 発言欄へ
●
「「どうしたの?」」
双子は同時に口を開いた。
「「あー。怖いよね」」
「私達も」「ぼく達も」
「「怖かったもん」」
「「でも」」
「どうしてかな?」「どうしてだろ?」
「「おなかがすいてただけなのに…」」
この子達は何を言っているんだ。
声で、目で。
まるで、私を責めるように。
私はへたり込んだまま、子供と、処刑台に交互に視線を泳がせていた。
■
君……は、もしかして、私の心配をしてくれている、のかい?
ウサギのぬいぐるみをそっと抱きかかえて、尋ねてみた。
「なっ……!?グズでノロマなあなたの心配なんか
するはずないでしょっ!?
ぼくはただ…」
「もう、“あんな風”になるのを見たくないだけ。」
●
「ところで」「お腹。」
「空いてるんでしょ」「空いてるんだよね」
ここが血に染まった処刑台の目の前でなければ
双子の笑顔は文句のつけようも無い程愛らしいと思ったに違いない。
くっと上がった口角に、発達した犬歯―というより牙と呼ぶのが相応しいだろうか―を見つけてしまうことも無かっただろう。
だが
白い皿の上に無造作に置かれた人間の手首らしき物体は、
どうあがいても見間違いようがなかった。
■
あんな風…とは?
興味深そうに私が聞くと彼女はいたずらげに答えた。
「ひみつよ、ひみつ…そう簡単には教えないわ。
私が教えて…あげられるのは…ひとつ。
このまま…突き当りまで進…むと扉が3つある…わ。
真ん中の扉には…近づかないで…いいわね。」
…
ぬいぐるみをなでていると、
心なしか彼女の動きが鈍くなっているように感じた。
…私の気のせいだったらいいが。
●
お、お前たちは一体何者なんだ!?
私は私の半分も生きていないであろう子供たちに怯えている
私をどうするつもりなんだ!?
未だ立ち上がれない私には、叫ぶことでしか己の矜持を保つことができなかったのだ
「私達?「ぼく達?」
「「別に何もしないよ?」」
「「だけど・・・」」
「「あなたはなんで床を舐めてるの?」」
「くすくす」 「くすくす」
「「くすくすくすくす」」
●
子供に言われてハッとした
私は無意識に床を・・・
いや床に滴る赤い液体をすすっていたのだ
私の口の周りや衣服は真っ赤に染まっている
ちょうどあの処刑台と同じ色をしていただろう
■
あんな風…?
それはどういうことだろうと、ぬいぐるみに聞こうとする。
と、それまでぷんぷん、と頭から湯気がたちそうな勢いで怒っていた
ぬいぐるみがしゅん、と力なくうなだれた。
よくよく気をつけてみれば、抱きかかえた小さな身体が小刻みに
震えている。
「…泣いて、いるのかい?」
私はぬいぐるみを抱き直すと、安心させるようにそっと頭を撫でた。
■
「…………き、やす…く、触らないでよ、グズ…っ」
憎まれ口を叩きながらも、ぬいぐるみは涙を流すことなく泣いていた。
私は、頭を撫でる手を止めることなく、ぬいぐるみが落ちつくまでそうしていた。
……ところが、不意に、ぬいぐるみがピタリと動きを止めたかと思うと、
意思を持って動いていたソレは、
魂が抜けたかのようにくたりとモノへと成っていた。
■
彼女は動かなくなってしまった。
私が何度も何度も何度も呼びかけても反応を返すことはなかった。
…つい数十秒前まで彼女は私とお話していたのに。
彼女の素の部分を見ることができた気がしたのに。
…
…
でも彼女は動かなくなってしまった。
あぁ…あの時感じた不安が現実になってしまったんだ。
私はしばらくその場に立ち尽くしたあと、
左手にぬいぐるみを右手にペンライトを装備して、
彼女が言っていた突き当たりの扉まで再び歩いてみることにした。
■
「…ぬいぐるみ、さん…?なんで…」
『くすくす…知らなかったぁ、ひとらしい人の心ってうさぎにも残るんだね、ふふ…そうと知ってたらもっともっと遊んであげたのに…』
笑い混じりの囁きが聞こえ、瞬時にライトを部屋の奥に向けると、光に照らされ、俯いて笑いを噛み殺す少年の姿が見えた気がした。
そして目があった瞬間、口が裂けたかのように歪に笑うと、私がなにか言う前に少年の姿はかき消えた。
私の腕の中で、物と化したぬいぐるみの耳がだらりと垂れた。私は部屋にひとりだった。
●
私は何を…
慌てて口を拭うと、手にはべっとりと赤い液体がついていて。
先ほどまでは感じなかった鉄の味が口の中に広がって。
子供達の嫌な笑い声が耳の中に広がって。
恐怖と混乱が頭の中に広がって。
私はその場から一目散に逃げ出した。
笑い声が小さくなって遠くなって消えた時、私は近くの壁に寄りかかって座り込んだ。
汗か血か分からないがベトベトの顔を袖で拭って、息を整えながら。私は少しずつ冷静さを取り戻していた。
私は何をしていたのか。何をしたらいいのか。どうすればいいのか。
今までも様々な危険な目にあってきた。それでも私はそれを潜り抜けて、今ここに座っている。
どうにか出来ない事は…無い筈だ。
■
私はおもむろにその魂の抜けたぬいぐるみを抱えて更に奥に進んだ。
せめてぬいぐるみだけでも救ってやりたいという義憤からだったのだろうか・・・。
そして私の目の前に、
左:青い扉、真ん中:黄色い扉、右:赤い扉
の三つの扉が立ちはだかった。
しかもよく見ると赤い扉だけ上にたらいが仕掛けられている・・・。
さらにそれぞれの扉にはまた紙が貼られていた。
■
青い扉には
『こちらが正解の扉です。』
黄色い扉には
『この先危険!近寄るな。』
赤い扉には
『この扉を開くとたらいが落ちます。』
と書かれている。
あからさまである。
■
ぬいぐるみの言葉を思い出す。
『真ん中の扉には近づかないで』
…根拠は無い。けれど、あの子の言葉は信用できるものだと、そう、私は思っていた。
逡巡の末、私は、赤い扉に手をかけた。
■
私は考える。相手、すなわち「招待者」は幾人もの人間を人形に変えるほどの力の持ち主なのだ。頭脳も相当切れるに違いないのではないだろうか。
黄色の扉はウサギのぬいぐるみが忠告してくれたこともあるから近づかないほうが賢明そうだ。だが、赤い扉はどうだろうか。こんな張り紙をみたら誰でも入りたくなくなる、それこそが罠ではないだろうか。
「ふふ・・・小賢しい。私がこんなトリックに騙されると思いますか?」
私は微笑みながら赤い扉を開ける。
タライが落ちてきた。
■
そう、ぬいぐるみの言葉、相手の思惑を探る智略、そういったものに考えを巡らせていた私は、すっかりとタライのことを忘れていた。
ガァーン、カァーン、カーン、カー…
タライは見事私の頭に命中し、ものすごい反響音をたてた。
目の前に色とりどりの星が散り、くらくらっときた私は、よろめいて2、3歩進む。
そこはもう、赤い扉の部屋の中だった。
なんだ私は、これじゃまるでバカみたいじゃないか…と思いつつ頭をさすり、顔をあげた私は思わぬ光景に息を飲んだ。
■
ピカピカと星が飛ぶ視界の中に映ったのは…
壁、床、天井、
一面に赤いクレヨンで文字が書かれた室内だった。
思い切りぶつけた頭も一気に覚めていくのが感じられた。
あっけに取られていると、背後でバタン、と
扉の閉まる音が聞こえ、はっと振り返って
ドアをガチャガチャ必死に弄っても、もうビクともしなかった。
■
私は間違った道を進んでしまったのだろうか。既に後悔し始めた私は、足元に小型のモニターがあるのを発見した。
ボタンが一つだけあり、「PLAY」と書かれている。何かいやな予感がした。
怖々と押してみる。すると画面が急に一面真っ赤になり、思わず投げ飛ばしてしまった。
流れる声はぬいぐるみが動かなくなった直後に聞いたものと同じだ。
「くすくす・・・ボクとゲームしよう?」
「ルールは簡単。この部屋から脱出するだけ。」
「ちゃんと、脱出できるようになってるよ?そうじゃなきゃ面白くないもん」
「色んな罠が仕掛けてるから気をつけてね?ま、気をつけても避けられないだろうけど。くすくす」
頭が真っ白になる。
「後、さっき青い部屋選んでたらどうなってたか見せてあげるね?」
■
モニターが青く切り替わる。おそらくこれが青い扉の部屋なのだろう。
モニターカメラの視点は、ちょうどその部屋に入ってきた人間視点で、
扉を背に、何も無い向こう側と左右の壁が見える。
一見すると何も無い、シンプルな青い部屋だ。
カメラはゆっくりと前に進み、部屋の中央辺りまで来たかと思うと、
ふっ、と視界が暗くなり
どちゃり。鈍い音がして、モニターの映像は真っ赤に戻った。
「……これがどういう意味なのかは自分で考えるんだね。
くす、さあ、制限時間は無限大だよ。でも、ぼやぼやしてると…
――あっという間にゲームオーバーさ。」
[1]
[2]
[3]
[4]
[5]
[6]
[7]
[8]
[メモ(自己紹介)記入/メモ履歴/自己紹介] / 発言欄へ
情報 プロローグ 1日目 2日目 3日目 エピローグ 終了 / 最新