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「…見なかったことにしよう。」
流石に倒れたままだと可哀想なので、一旦、建物の外まで出て、穴を掘って、埋めてあげることにした。
土の中から何か呻き声のようなものが聞こえてきたような気がしたが、何も聞こえないフリをして、再び建物の中へと戻っていった。
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「ズボッ」
立ち去ろうとした後ろから妙な音が聞こえた。
―スタスタスタ―
私は足を早めた。
しかし後ろからの足音はそれを越えてどんどん早く、大きくなっていき・・・
―ドーン!―
「何すんだよっ!」
●
怒気を含んだ声に恐る恐る振り返ると、つい今に埋めたはずの人が仁王立ちしていた。
「なっ・・・・・!?」
驚いて言葉を失っていると、相手が先に口を開いた。
「こ・ろ・す・き・か」
●
「ああ、殺す気さ。」
溜め息を付きながら私はそこのゾンビに向かって言った。
「何で!?」
何を今更言っているんだろうか、こいつは。
「今までお前が私にしてきた数々の所業、忘れたとは言わせない。」
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「あ、あれはお前のことを思って・・・」
ゾンビは言う
しかし、私にとっては迷惑なことでしかないのだ
「あんたは私が殺した。いい加減安らかに眠ってくれないか・・・兄さん」
私は以前は兄と呼んでいた、今はただの腐敗臭のする肉の塊に言い放った
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「行間で倒されるなんて、弱くなったな。」
と、訳の分からないことを言いつつ、
私は再び建物の中に足を入れた。
しばらく歩くと、広場のような場所に出た。
そこには子供の遊び道具が散乱していたが、肝心の子供がいない。
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で子供の気配だけはする。
遙か昔に遊んでいた子供の残滓なのか、みえない子供がいるのかは、わからない。
ただ、残されていた遊び道具だけが、不思議な存在感を放っていた。
するとその中から何かがこっちを見つめていることに気が付いた。
そこに目をやると、
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懐から拳銃を取り出し、「かつて兄と呼んでいた輩」の頭を躊躇いも無く打ち抜いた。
二度と復活できないように、死体も塵一つ残らないように燃やしておいた。
「兄さん、安らかに眠ってくれ。」
てか、もう出てこないで下さい、お願いします、と心の中で呟きつつ、再び建物の探索に戻った。
●
・・・の顔が大きく書いてある肖像画だった。
「不気味なもん飾りやがって」
兄が、この孤児院に人がいたころの院長だったのは知っていたが、
こんな悪趣味なものが飾っているとは知らなかった。
絵に蹴りを一発入れると、後ろから物音がした。
振り向くと、そこには小さな人形が倒れていた。
「気のせいか・・・」
立ち去ろうとしたその時、その後ろから声がした。
「ちょい待ちなよ、そこのキミィ」
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かばんには、塩気のないパンと水、それから最後に立ち寄った村で
手に入れることが出来た干し肉が入っていた。
何はともあれ、腹が減っては戦は出来ぬ。
ここの探索は、食事のあとでも遅くはないだろう。
そう思った私は、さっそく食事にありつこうと部屋の中央にあった
大きな食卓へと足を運んだ。
材質はマボガニーだろうか。
傷はおろか埃一つない艶やかな一枚板のテーブルが、天窓から零れ落ちる朝の日差しに照らされて柔らかな光沢を放っている。
…何か違和感を感じたが、空腹には勝てない。
手近にあった椅子を引いて腰掛け、カバンからパンを出そうとした…その時だった。
■
「おい、ワシの縄張りでなにしとるんじゃい!」
荒々しくドアを開けて現れたのは、みすぼらしい服装をした初老の男だった。
恐らくは浮浪者だろうか。
そうか、テーブルに埃ひとつなかったのはこの男が此処を住処にしていたからだったのか。
しかし、ここで探索を諦めて帰るわけにもいかない。
私は事態を収拾すべく、かばんのなかの「あれ」に手を伸ばした。
■
鞄の「あれ」をさっと引っ掴んで、浮浪者に突きつけた。
「な、なんじゃこのか弱い老人に暴力を―――」
ナイフや銃などを突きつけられたと思ったのか、泡を食った老人は、私の手に握られた物を見てぽかんと口をあけた。
「ささ、どうぞ一献!お近づきの印に!」
携帯している安酒の入った水筒だ。
悪人ではないようだし、穏便に平和的に解決できればそれに越した事はない。
これを撥ね除けられたら、いよいよ実力行使しかあるまい…と思いながら、相手の出方をうかがった。
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辺りを見回したが、誰もいない…兄のせいで疲れているのだろう、と再び探索を再開しようとしたが…
「どこ見てるのさ、人の事を倒しておいて無視して立ち去るとか酷くない?」
…声は明らかに目の前にある小さい人形から聞こえてくる。
ゾンビはいるし、喋る人形はいるし…この孤児院、怖すぎる。
でも、よく見たら、この人形、凄く可愛い、というか私のタイプだ。
よし、今日から君は私の相棒だ、名前はあとで考えることにしよう。
偶然手に入れた可愛い人形に頬ずりしながら、私は再び探索に戻ることにした。
人形は何やら叫んでいるが、今の私にはこの人形の名前を考える方が大事なので、無視することにした。
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「ワシに、酒をくれるのか?」
どうやら穏便に片付きそうだ、そう私は思った。困ったときは酒を提供する、これは小さいときに父から教わったことだった。事実、それでいくらかの修羅場を乗り越えてきたといっても過言ではない。
父のことについてあれこれ思案している間に、ふと老人のほうに顔をやった私は老人の様子がおかしいことに気づいた。なにかぶつぶつ呟いているように見える。
「どうかされましたか?」
「・・・う・・まされん・・・だま・・・」
心配になった私が顔を覗き込もうとした、そのときだった。40kgはありそうなマホガニーの机を蹴り飛ばしたのだ。
「・・・ワシはもう騙されん!!彼奴だけで十分だ!!」
●
「ん?ちょっと待て」
周りを見回すと他にもたくさんの人形が転がっていることに気づく。ここはまるで人形の墓場だ
「……人形で遊んだらちゃんと元の場所に戻しておきなさいとお母さんに習わなかったのだろうか?こんなに散らかして、親が見たら悲しむぞ!うおおおお!」
私は義憤に駆られると居ても立ってもいられなくなり
人形を地面に叩きつけて叫びながら走りだした
「うるさい奴だな…」
声のする方向を見るとそこにはある人物が立っていた
■
老人の様子に、思わず私は目を見開き、絶句した。
怒りに身悶えだした老人の体色がみるみる変化していき――
――獣人へと成ったのだ。
見たところ、老人は怒りに我を忘れているようだ。
この状態では何を言っても通じないだろう。
私は苦々しく舌打ちをし、ひとまずこの場を脱しようと思った。
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