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― ふたたびホール ―
ずいぶん料理が並んでますねー。
だれかの誕生会か何かでしょうか。
[戻るなり、口から出てきたのが其れだった。
用意したのは、パニーニの女性だろうか。
まず彼女の顔が浮かんだ。]
だめ。
落ち着かないから。ほんとうに。
[自分だってダニールを先生呼ばわりしていたくせに、
棚にあげる。]
……おもしろい?
なにが? どこが?
[ぎょっとした。どころか、ぞっとした。]
あ、今日は、クレーシャさん。
[一人席について、へらりと笑う]
お姉さんが、新年の御祝いに作ってくれたんじゃないかなって。
[いつの間にか、テーブルにはシャンパンも。]
クレーシャさんも、一緒にどうですか?
[どうやら、すっかり懐いてしまったらしい。
くすくすと子供らしい笑い声がする。]
はぁい。
[くすくす。]
えっと、おとなは、クレーシャは大人しいって言いますけど
今のクレーシャさん、近づく人みんな叩いちゃいそうで
[無論、この聲のやりとりで、懐いたのである。]
― 聖堂 ―
――失礼、邪魔をしている。
[キッチンを出て、途中に何かあったりなかったりしながら*06小吉*、こちらに来ていた。
元狼の人とは16奇:会えていた。偶:ニアミスしていた]
新年の……ですか。
[顎に手を宛て、]
うーん、そうですね。
戴いちゃいましょうか。
[にこりと固い笑み。
ゆっくりとテーブルへ歩み寄り、向かい合う席に着く。
無意識に手を祈りの形に組んだ。]
[聖堂ではヴァレリーの灯油の香りとリディヤのホットミルクの香りが仄かに香り、ヴァレリーら男女三人の姿を捉えただろうか]
ガラス……か。
[誰にでもなく、そう小さく呟きながらリディヤの元へ歩み寄ると]
先ほどぶり、だ。
[一度会ってからどれぐらいの時が経っていたか。つい先ほどのことのようにも、数時間のようにも感じられる。そして時間の経過ほどどうでもいいものはないという錯覚さえも――]
其処まで見境なくは……
いや、いくらなんでも
其処まで自制きかなくは、ないから。うん。 ……と思う……
[かつて重ねた罪の数々は、覚えているのかいないのか。]
えへ、ありがとう。
[にこりと笑う様子が、ひと時だけ“いつものレイス”で。
クレーシャと同じように手を組んだ時には、子供の姿だった。]
『主、願わくはわれらを祝し、また主の御恵によりて
われらの食せんとするこの賜物を祝したまえ。』
[幾度となく、一人で行った祈り。
いつしか、声に出すことをやめていきそうだったから
向かい側に座る彼に、幸せそうな顔を向けた。]
遠くて近い――俺の知人から託された。
[そう言って、キッチンに残されていた赤いフード付きケープを彼女に差し出した]
今も尚――届いている、が……
此れを君に返すことはできないらしい。
[蛙を追って去った彼の姿は消えても、言葉は未だに耳朶の奥に残っている。これも悪戯か、奇跡か]
感謝の意は渡した時に聞いているだろうが――
ありがとう。
[代行は慣れているつもりだが、過度の御節介はあまり経験がない。些か礼を言う姿は不器用だったかも知れず**]
叩いたひとも、手が痛くなるって言うから
クレーシャさん、沢山ぶつと、とても痛いと思います
[何処で、如何レイスを助けたのかは、知らない。
それは、おとながそう言うから、そうなのだと思うだけで。]
クレーシャさんに、僕は助けられるそうです。
ありがとうございます。
[おとなと呼ぶ相手に、言われるままに、告げる。]
[祈りを終えてから、ローストチキンにナイフを入れ
見慣れない串焼きに首を傾ける]
これ、初めて。
おいしい。
[一つ一つ口に運び、感嘆し。]
[グラスにシャンパンを注ぎながら]
クレーシャさんも、シャンパンは如何ですか?
[彼が頷くなら、同じくグラスにシャンパンを注ぐつもり。
暫し、料理に舌鼓を打つつもり**]
[ 対峙して「敵」だと睨む癖に、赤い囁きでは強くなる方法を無邪気に問う。そのギャップが面白い。]
強くなりたい、だって?
――――――――そうだな。
[ 指した指の先には、十字架。
彼自身は、これっぽっちも信じていないけれど。
去っていく背中に爪を引っかけたい衝動に駆られたが行動に移す程強くはない。
此処では獣の本能が抑制されるのだろうか。
無性に煙草が吸いたくて、外に向かったその先に――*11凶*。]
これ……?
確かナタリーさんに……
[手渡されるケープに、
不思議そうに青年を見上げる。
どうしてこの人が持っているんだろう?]
[彼の言っている意味は、よくわからない
どうして彼が礼を述べるのかも]
[――それでも
あの少年に逢う事はかなわないのだと
それだけは、なんとなく理解した。
少なくとも、今は。]
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