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お、おち……!
[普段は少し猫背気味だった背が、すぅと伸びていく。
緊張したりしたときの、癖だった。]
あの、…できるだけ、早めにいく、から。
[のんびりした口調にも、すこし心配そう。]
― 物置付近→教会の出入り口 ―
[オリガはついてきただろうか?
もしそうならば、彼女の足にあわせども、少し早足気味で。
そうでないなら、小走りに。]
………、…
[少し、口元が動くけれど。声にはならず。]
[かなしいわけでもないのに、どうして――……?]
[手のなかの石が、だれかの胸の痛みを伝えてくるようで]
す、すみません……
[突然零れた雫の事を謝りつつ
服の袖口で目元を拭った]
― 少し前、リディヤとの話 ―
[挙動不審気味のその様子に、思わず目線をうろつかせた。]
…あ、アップルパイ?
[むしろ、増えていたなんて、知らなかった。
素直に驚いたような顔をしつつ、ゆっくり頷き。]
おれ、…ちょっと、用があるから、…
あとで、行く。
[と、頬を伝うものに気付き、うろたえた。
何か、またやらかした?と。]
きゅうん
[情けない声を出しつつ、
こちらへ向かってきた男をじっと見つめる、黒狼の紅い左眼。
そして]
がう! がうがう!
[嬉しそうに、まるでなにか話しかけているかのように、吠える。]
あ、あの、………
[ごそごそとポケットを漁り、
少し皺の付いたハンカチを、少女に手渡す]
袖だと、…ちょっと、腫れちゃう、から。
こ、これ、…よかったら。
[できるだけ、笑顔をつくって、みた。
ちょっと、困ったような笑い顔に、なった。]
それじゃあ、……
ひとりで、だいじょうぶ?…
おれの用事、終わってからでよかったら、一緒にいく、けど。
[少女が是と言うならば、オリガと共に手を引いて。
否と言うなら、その場で別れを告げるつもり。]
― 回想終了 ―
狼だ!
だにーる?
だにーるだね! だにーる!
[成獣の見た目に不釣り合いな、
やっぱり子どものような聲で喜ぶのである。]
きっと上かな
教会の塔にいける通路あるかな?
[普通は登れない教会の塔の屋根の上
そこは自分の大好きだった村が一望できる場所
そこに声の主はいる―なぜか強くそう信じ込んで。
2階への階段を上がってもっと上に登る通路はないか探しだした]
あ……、わたしは、だいじょうぶ、です。
アップルパイ、いただいてこようと思ったけど……
これから、ちょっと人をさがそうと、思って
[オリガへの遠慮も、なくはなかったけれど。
雫を拭うと、顔を上げて柔らかく笑みを作った]
ありがとう、ございます
[レイス達に小さく手を振って
彼らと反対の方向へ、少女は歩き出す]
― 現在・教会入り口 ―
[ぽそぽそと何かを呟きながら、扉を開き]
………
[やっぱり、声にはならない大きさだったが。
その隙間から、また冷たい風が吹き付ける。+チョキ+]
……っ寒、……
[ふるりと身を震わせ、目的の相手を探す。
きょろきょろと周りを見渡すが、……]
……………?
[探す姿は、見当たらず。
首を傾けながら、足を進めていく。]
[雪に埋もれたまま ばったばった尻尾を振りつつ、
こちらへ向かってくる もうひとり を呼ぶように、
今度は、長く、吠えた。]
[そうしてから、ふるふると頭を振って、
ようやく雪山から抜けだそうと…… +パー+]
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