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―朝/蒼真宅―
―――…。
[じ、と見上げる。]
…分かった。
[言葉を発するまでに空く、僅かな間。]
大学。学舎。
学ぶために行くものではないのか。
ソウマ。
お前は、何故、そこへ向かう?
[それから、ゆっくり立ち上がり歩み寄る。]
今、なにが起こるかも
予想はし難い。
ソウマ。
行くのなら、私もそこへ。
[尋ね聞くかのように
見上げ眸を合わせる。
断られようとも、後についていくのだろうが*]
太陽光?今流行りのエコだね!
安上がりなのはありがたい!
普通の食事も大丈夫なら、俺が食べる時は付き合ってもらおうかな。
一人より二人で食べた方が美味しいし。
あと、お酒はともかく、毒手よりはラーメンの方が美味しいと思う!
そうだ、太陽光エネルギーが必要なら、散歩でもしようか。
歩きながら、戦艦大和の話なんかも聞かせてくれよ。
エコ…。
自我、エコイズムの略称。
転じてわがままの意。
私はわがままではない。
否定する。
[ふるふると首を振った。]
了解した。
私を同席者として使用する。
ダンの目的……
「ハゲながら食事する」
の遂行に協力する。
[頷いた。]
[そっと、日溜まりへと手を伸ばす。
届かねど、陽の温かみは掴み取れる。
例え目に見えない不確かな答だとしても。
少量のエネルギーが掌から体へ、優しく流れ込んだ。]
何故って……だから。
[それが、対外的に見た時の普通だから。
学部に関しても……一応両親を知る人からすれば遺志を継いでる様には見えるんだろうか。
勿論、そんな殊勝な気持ちは殆どない。
ただ単に、周りから見て一番『らしい』道を歩んだだけだ。
素直な気持ちを言えば……
両親を恨んですら、いるというのに。]
――………。は?
[言葉を濁していれば、
続いて告げられた言葉は「ついてくる」という物。]
いや、そんな必要ないだろ。
学校だぞ?何も起こるわけ………
[自分はまだ、常識外の物を自分の常識で計ろうとしているのだろう。
『おこるわけがない』
そんな事を頭の中で当然のように考えている。見上げる瞳に少したじろぎながら、説得を試みようとするが……
結論を言えば、駄目だった。
どうあったってついて来る心算なのだろう。
最後には、こちらが折れるという結果。
小さな溜息と共に二人で家を出る事となったのだった。]
― 自宅→大学 ―
[そこまで離れてない大学に徒歩で向かう。
目指すのは医学部がある棟……講義には十分間に合いそうだ。
安堵の息をつきながら、
途中で出会う顔見知りには軽く挨拶をする。
多少好奇心の視線を向けられるのは諦めるしかないだろう。
適当に言葉を濁しながら、大学の敷地内を進んでいく]
…―――。
[だから、の続きを待つ。
答えは蒼真の口からは語られないか、まだ]
何も起こらないとは
謂えない。
私たちが目覚めたならば
ことはすでに、動き始めているはずなのだから。
[己を構成する信念ひとつにイステは忠実だ。
蒼真が折れるまでは譲らない。
共に行くことになる道、
一定の距離は保ち歩く。]
お前は、何を学んでいるのだ?
[日の光の下、
イステの瞳は藍と青とに煌めき透けた**]
……医学だよ、外科のな。
[こちらに向けられる青い視線を感じながら、
簡潔に答えを返す。]
親がな、両方とも医者だった。
だったら俺も同じ道を行くのが、普通だろ。
[そう、ただそれだけ。
自分が胸の内に何を思っていようとも、
それらしい道を進んでいれば……
周りは勝手に俺の心を推理して、同情し、納得する。
周囲が違和感を感じない、面倒事の無い道筋。]
ハルナ、それエコじゃない、エゴだよ。
よし、それじゃあ散歩に行こう。
ところで、このノートパソコンはどうする?
[適当にキーを叩きながら問う。]
のーとぱそ…?
……
これは補助デバイス。
メンテナンス時必要。
今は大丈夫。
[既に、おへその繋がりは切れている。
だがキーを叩くと反応はするようだ。
"プロトタイプの性能説明"
"シトクロムe3の操作説明"
と書かれた目次ページが出てきた。]
また眠りに就く。
私はその時必要。
欲しいなら。
今はダンにあげる。
ありがとう!大切に使うよ!
[ノートパソコンを貰って嬉しそうに画面を覗き込んだ。]
“プロトタイプの性能説明”?“シトクロムe3の操作説明”?
ハルナ、これは何?
[キーを叩きながら、ハルナに尋ねる。]
…
[嬉しそうにするダンを眺める。
一拍遅れて、質問に答えが返った。]
プロトタイプとは私の事。
シトクロムe3は。
私に関連付けて生まれた。
ただ
[画面はキーに反応し次のページへ。
そこには"準備中"とだけ書かれていた。]
責任者が失踪した。
未完成。
私――プロトタイプ。
併せてシトクロムe3。
眠りについた。
−大学・気象学研究室−
[もう誰もいない。きっとフィリップとリルを二人っきりにさせてあげよう、という心遣いなのだろう。彼らはきっとフィリップの噂話をしながら図書館で研究を続けているかボウリングにいそしんでいるかのどちらかに違いない。
幸い教授もここ1週間は海外出張中。ある意味ここは密室の自由空間となっている。
リルさえいなければ、だが]
これだけ精神的に切迫していれば間違いも起こす。すまなかった。
あと僕の呼称についてだが、これはあくまで学生と僕との関係をもっと近づけるためだ。僕自身まだ学生とあまり年齢は変わらない。場合によっては僕より年齢の高い学生もいるくらいだ。
君が機嫌を損ねるような事ではないと思うんだが。
[道すがら投げかけられた小言への返答をしながら、資料を軽くまとめる。
腕にぴったりとリルが密着しているが、離れてくれと言うのも存外気まずくなってしまい、ついそのままになってしまっている]
[それにしても、彼女から出る光の波紋。それが人に対して向けられている。
手にそんな装置が仕込まれているのだろうか。しかし他の人間にはどうもその光が見えていないようだ。
彼女はどんな人間なのだろうか]
・・・・・・あ。
[そうだ、もっと早く気が付けば良かった。
『Endeavour』から来た。つまり彼女はEndeavourが開発中のアンドロイドの可能性がある。
成る程、そう考えればいろいろ合点がいく。全てではないが。彼女がマスコットキャラクターと同じ風貌である事も。そして彼女がデータベースと主体とした知識参照をしている事も。
ただ、それがまだ過程でしかない以上、リルにはそれを口に出さずにいた]
つまり、君は試作品ってこと?
君に関連付けられて生まれたシトクロムe3も、同時に試作された機械か何か?
うーん、準備中ばかりだ。
完成前に責任者が失踪したからか……。
[カタカタとキーを叩くが、関連する情報には辿り着けなかった。]
……あ、ごめん。
エネルギーを補充しないといけないんだっけ。
とりあえず外に出ようか。
[ノートパソコンを机に置いて、ハルナの手を取った。]
[なぜなら、それが実際にどうであったとしても現状何も解決しないという事を悟ってしまっているからだ。
そろそろ帰宅時刻。だがその前にサラさんに確認しておこうと思い携帯電話をポケットから取り出し、電話をかける。
だが、数回コール音が鳴っても彼女は出ず、そのまま留守番電話になってしまう]
おはようございます、フィリップです。サラさんにリルという女性について説明を頂きたいのですが、お時間があれば折り返しご連絡頂けないでしょうか。
それでは、失礼します。
[従兄弟とはいえ年齢は10近く離れているサラの携帯電話へ電話をかけるのはいささか緊張する。丁寧に留守番電話を録音し切る]
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