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[ベルナルトの所作に城主はゆるく目を細める]
――…そう。
なら、彼女をお茶に誘っても良いかしら。
[態々許可を取るのはベルナルトが先にオリガと話していたから。
礼儀を重んじるがゆえに自らも人の其れに倣う]
嗚呼。怪我の具合は如何?
必要なら――…傷薬や湿布を用意させるけれど。
[足を引き摺っていた彼にそんな言葉を向けて首を傾げる]
ええ。
……彼女もそれを望んでいるなら。
[望んでいるのだろうな、とオリガを見やりながらぼんやりと考える。
彼女は、吸血鬼なのか。それともニンゲンなのか。
別にどうでも良かった。彼女は、願いを叶えて、自分の前から去っていく。
それだけ]
[怪我の具合を問われれば、肩を竦めて]
お気遣いありがとうございます。
ですが、――お気持ちだけで十分です。
痛みを抑えたって、亡霊は消えない。
[今更、と哂う。
声は起伏もなく、ただ冷えていた]
……城門の方で?
知らなかった。わざわざありがとうございます。
[イライダの言葉に顔を上げる。
どうせ眠れそうにない。
夜が明けても構わない。――明けるのなら]
それじゃ、失礼します。
お休みなさい。――いい夜を。
[ゆるゆると頷き、オリガとイライダの前から踵を返した。
城門にたどり着く頃には、騒ぎは一段落ついているだろうか**]
― →城門―
――…あなたも良い夜を。
[外へと向かうベルナルトを見送り
その姿が見えなくなればオリガのローズグレイを見詰め]
今度こそ攫ってしまおうか。
[クツリと咽喉を鳴らしオリガをそっと抱き寄せる。
そうして、二人は闇の中へと消えた**]
[重なる手からは人であるが故のぬくもりが感じられる。
心地好いあたたかさに城主の表情が緩んだ。
蕩けるようなオリガ>>+7のローズグレイを見詰め]
――…欲張りとは思わないよ。
オリガに求められるは嬉しいから。
[甘い言葉を耳朶に囁き掛け
問い掛ける声には当然と言わんばかりの頷きを向ける]
これからはずっと傍においで。
目を離すと、キミは危なっかしそうだから。
[ベルナルトの前での態度を思い出し悪戯な笑みを浮かべた。
腕に包み込めば彼女の香が鼻腔を擽る。
吐息の甘さに誘われるかのような感覚。
瞬きの間に場所は城主の居室へと移ろうが――
さて、何時まで理性がもつか、当人にも分からぬまま]
――ダニール視点――
かわいそうに……
何もしてやれなくて、ごめんね。
[片割れを侵した『何か』は、まるで呪いのようにすら感じられて。
男は眉根を寄せながら、時が経つまでそばにいるつもりでいた**]
――…彼の言う通りお休みなさいの時間かな。
[オリガを寝台へと促してそんな言葉を紡ぐ。
闇に住まう城主にとって今は眠りの時間ではないが
人である彼女にとっては身体を休めるべき時間だろう]
眠るまでの間、少しだけ昔話をしよう。
オリガのお姉さんの話――…
一年ほど前に、私を狩りに来た者が居たの。
人にしては強くてね、大事な眷属も多くうしなった。
キミの姉――ディアーナもその時命を落とした一人……
私を庇って彼女は殺されてしまった。
目の前で生き絶える彼女に私は何もしてやれなかった。
[微かに瑠璃を伏せ語る声には悔恨の色が滲む]
彼女が望めば永遠をあげたのに。
[望まなかった故に深く刻まれた存在の話。
話し終われば眸を覗き、少しだけ困ったような笑みを浮かべた**]
[貿易商の応え>>+17にきょとりと瞬きをした。
彼の言う通り商売仲間であった者も同じように招待した]
――…話をして彼らが望むなら永遠をあげようと思っただけ。
共に過ごす事になるなら少しでも趣味が合う方が良かった。
確かに、吸血鬼である私の糧になる者もあったよ。
刃向かう者には容赦する義理も無いから。
なかには我が眷属となり過ごす者もいた。
なかには刃向けたがゆえに血を喰らい殺した者もいる。
どちらも選ばず人のまま城を出た者もいたけれど……
吸血鬼の住まう城から戻ったと知れれば人に恐れられようから
故郷には帰らず別の町へと行くようにはすすめたよ。
[思い出すように語る其れ。
彼が五年ほど前に財産を託された貿易商は何れかであろう]
[ニコライと言う名の貿易商と
生前語らう事が出来れば何か変わったろうか。
魔性である城主が近付けば狂気を深め追い詰めただけかも知れず
過ぎたことを語るは止めた]
吸血鬼である私の方が神にとっては赦されざる者――…
それに、ね、狂気に苛まれるほど苦しんだのであれば
その苦しみで十分な咎を受けたことになるでしょう。
――…あなたは自分を赦して良いと思うよ。
この場に居たくなくともあなたはこの場に居るしかない。
あなたはこの城に囚われてしまったのだから。
[改めて名を呼ばれると緩む空気]
ご挨拶痛みいるわ。
――…ねぇ、名を教えて貰っても良いかしら。
此処に居て、あなたの話を聞かせて呉れる?
[城主は彼が此処にいる事を求めそれを言葉にして彼に向けた**]
――――……ぁ、
[ユーリーの刃は、吸い込まれるかのように。
砂へと変わりゆくナタリーをただ見送ることしか出来ず、
石のごとく身体はなかなか動かない。
それでも少し時が経てば、そこへ向かおうとするだろう]
風に舞った白銀は、宵闇に煌き*溶けるのか*]
[重たい破片が散ったが、砕けたのは刃の方ではなかった。
攻撃を受けた吸血鬼が霧と化して逃げたのか、あるいは倒せたのか、しかと判別はできなかったが、そもあれ、その存在がこの場から去ったことだけは感じられた。]
グリーシャ…――
[再び首筋に穴を穿たれたグレゴリーを見やる。
急所にこれだけの傷を負って死んでいないことがすなわち、彼の身体が人間のそれを超越していることを示していた。]
わたしの声は届くはずだ、少尉。
──無理を強いてすまないが、あの門を開けて欲しい。
立てぬのなら、苦しいのなら、わたしの血を飲んでもいい。
[本気だと示すように、刃を自分の手首に宛てがった。]
おまえが欲望を制御できるのであれば、
死なない程度にわたしに血を残してくれることを願う。
[幾度となく喉元を撫でる。
もう流れる血は枯れてしまったのか。
―― チ ヲ ヨコセ ――
深淵から湧き上がる闇が纏わりつく。
―― 血 ヲ 寄越セ ――
漠然と脳裏に響いた声は、馴染みのある響きじゃなかったか。]
……血を、寄越せ……。
[自然と口にした言葉に、顔を歪めた。]
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