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── 城館の外 ──
[すでに日は昇っているらしかった。
霧の向うにその姿は見いだせないまでも、世界の明るさでそれとわかる。
わずかに目を細めたものの、立ち止まりはせず、ユーリーは城門に向かって歩き出した。
どんな宴も人生も終わりの刻が来る。
だが、それは破壊ではなく、出発であるべきだ。]
そういえば……
アヴァクームとシュテファン……
本当に酔いつぶれたりはしてないわよね。
[結局確かめず仕舞いの懸念を零し微かに柳眉を寄せる]
あの子は…?
光の子。
[もっとも気丈で、もっとも迷いを知らず、もっとも光に近いカチューシャ。
滅ぼされるなら、あの金の鱗粉は嫌だと苦く笑う。
あれは痛かった]
[滑車と鎖に絡み付く茨へ、ヴォッカの瓶を傾ける。
幻の棘がこの世ならぬアルコールに濡れて、濃く、命なき色を匂い立たせた]
……。
[ベルナルト。
あまりに重い物を負わせようとしながら、同時に出来るならこのまま来ないでくれればいいと、願って。それでもぬばたまの眸は霧の中に金糸を探して彷徨う]
[アナスタシアと擦れ違うように現れたぬばたまの影。
どうせなら手を引いてくれば良かったと思ったが口にはせず]
ほんとうに困ったひとね。
[小さく独り言ちて彼の姿が其処から消えれば ふ、と目許を和ませた]
[門に寄りかかる黒衣に呼びかける。]
ナスターシャ、君は、生きるべきだ。
[この場に集う、すべての存在に呼びかける。]
どうか護り給え──
最後の「吸血鬼」がいなくなれば、
宴はおしまい。
[その後にどうにかイライダをなだめすかして?あるいは脅してかしら。真摯に説得してみようか。
城主が城を開くまでは、この庭に滞在してあげるのも悪くはない。
女の中では、これは出発だった]
――…お茶会に来てくれるなら器を失ってはいけないよ。
茶を飲む為に私の身体など借りたくはないでしょうし。
[零すは城主の描く未来。
何処かで誰かを泣かせたくないと思ってもいたから]
[霧の向こうから姿を見せた人物に、顔を上げて――
そして少しだけ 笑った ]
生きるべきかしら?
どっちでも いいのよ。
私は 私だもの。
―――……。
[城門は、礼拝堂の窓からも伺える。
しかしそちらへ未だ視線を向けず、向けられず。
何故。確かな理由など分からない。
頬を伝い落ちる雫は、ただ熱く、音も無く]
どうか、―――
[自分の心のあるままに、祈った]
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