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招かれし者達 あるいは招かれざる者も いたのでしょうか
宴の主人公達が城に集った頃
木製の跳ね橋が軋る音 城門の金属が擦れる音
やがて ぬばたまの檻の門は 閉ざされました
どうやらこの中には、村人が12人、人狼が1人、占い師が1人、血人が1人、封印狂人が1人含まれているようだ。
宴は、今宵。
一階の広間に調えさせて頂いております。いま暫しお寛ぎ下さいませ。
[客人に声をかけられれば、慇懃に答えて一礼した。]
――面会ですか。
暫し、お待ちを。
[ユーリーの問い>>0:213へと返したなら、
僕の姿はぐらりと揺らぎ。]
[ゆらり。 影が闇に融けるように消える。]
― 礼拝堂前 ―
[次の瞬間には、僕の影は主の許へと。]
――お喚びした御客人方が揃われました。
[跪き、告げる。
無論、目前の兵もその数の中に。]
[今宵は、宴。
客人は多いに越したことはない。]
それから、ユーリー様が御目通り願いたいと。
― 地階・食堂 ―
[長い机には今は、食事は勿論クロスもかけられていない。
何故地下にあるのかといえば――バックヤードに当たる物陰から、南塔へ通じる扉を見つけて得心がいく]
厨房は向こうね。
[その先に別棟があるらしいことは、薔薇園の向こうに見えた建物の記憶から。宴の準備をしているならば忙しいだろう。
もう一つの扉は、開くと鼻腔を擽る薔薇の薫]
――裏口、ね。
[崖の上に立つ城に、井戸は必要不可欠なもの。
そのすぐ近くまで、広い薔薇園が勢力を拡げていた]
…頼もしいわね。
[剣に気を取られた様子に、思わず手を口元へと持ち上げ]
…こんな大きな城、初めて見た。
[先に歩みを進めた姿を追いながら、目前の城の大きさに再度嘆息。
追い付けば、グレゴリーに続いて使いに招待状を手渡し、城へと立ち入った]
…部屋は、どちらに…?
── 廊下 ──
[老家令が目の前で闇とひとつになって消える。
ユーリーは額に手をやり、壁に背を預けた。]
…まだ飲んではいないんだが、な。
[肌に触れる絹糸の冷たさは夜風のごとく。]
[招待状を改めて書くか、と悩むような仕草で問いかけるイライダ。
慌てて首を横に振った]
だ――大丈夫です。泊めてくださるのなら、もう、それだけで十分……!
すみません。お世話になります。
[城主の慈悲を身に染みて感じ、一礼する。
ユーリーもそうだったが、貴族、というものは――本来は、こういった者たちなのだろうか。
無意識に抱いてしまっている怯えを、ひどく失礼なものに感じた]
…薔薇、ねぇ。
[花そのものには興味を覚えず。薫ならば嫌いではなかった。
地階にはさらに地の底へと繋がるような階段もあったが、女は手燭を持って来ておらず。城内の探索はそこまでにして、庭へと歩を進める]
――霧が。
[薔薇園へ潜り込む細い小道に入れば、石畳はすぐに途切れた。
陽射しを遮る霧越しにも、薔薇は旺盛に成長するのか、熟れて芳しい薫を放つ]
―大広間→廊下―
ええ、いってらっしゃい。
[廊下に出ると庭へ向かうナタリーを見送る。
自らの掠れた呼吸音に、一先ず室内に留まることにした]
人が増えたわ。……覚えきれなさそう。
[ゆるり、何気なく廊下の先を見遣りながら]
[突然現れたアヴァクームの姿にぎょっとする。
気がつかないうちに近くに来ていたのだろうか。
イライダに自分のことを示されれば、どうもと小さく頭を下げる]
レオノヴィチ様……
[それから聞こえた名については口の中でそれを繰り返した]
本棟の、御部屋の前に――
[主の問い>>7に、跪いたまま返す。]
[お待ちを、と告げたのだから、
そう遠くへ行くことはないだろうか。]
― 薔薇園 ―
[薄いドレスで外に出たが、寒さは感じられず――それをおかしいとも思わない。
寧ろ当たり前のように受け入れている。]
窓から見えていたのも美しかったけれど、やっぱり近くで見る方がより美しいわね。
[咲き誇る薔薇の、噎せ返るようなほどの香りを胸一杯吸い込む。
霧が出てきたことも気にしないまま、さまざまな種類の薔薇を愛でながら歩いていた。
霧の向こうに四阿が見え、自然と足はそちらの方へ。]
[城を見て感慨を漏らすヴェロニカに、頷いた。]
これだけの城に住まれる方ですから、余程の力の持ち主なのでしょうなあ。
……確か、この城の主は女性だった筈でしたな。
[招待主の名前を思い出す。
イライダという男の名前はまずないだろう。
そして、女がこれほどの屋敷の主となる事も考え辛い。]
そうですな、折角の豪邸です。
私は暫しあちこちを見させてもらいましょう。
きっと晩餐のいい話の種になる。
それではヴェロニカ嬢、また後で。
[一度笑みを向け、踵を返した。]
[眷属の豊満な胸に顔を埋める
柔らかな肌は船上には存在しない物だ、船上の眷属達は何れも嘗ては海賊として名を馳せたーーー男ばかりなので
仕事に差し支えないように力ある者ばかりを眷属にしたため、名こそ上がるが褥は寂しいのが海の上の常であった]
…ふう
[自身も服を脱ぎ捨て、肌を合わせる
服の下はーーー筋肉がついて柔らかくもない体だが、確かに女の体だった
宴が始まるまで今暫く、めいっぱい堪能する事を決めた**]
そうです!
[首を傾げる相手に、きっぱり頷いた。
人懐こそうな笑みで名を問われれば、まだ名乗っていなかったことを思い出して]
ベルナルト・ミラーと申します。
すみません、名乗るのが遅れました。
改めて、よろしくお願いします……
[語尾がしぼむように消えていく。
何やってるんだろう、俺。
心の中で頭を抱えた]
―大広間―
[ふと視線を感じ、そちらへと目を向ける。]
初めまして、お嬢さん。
私はグレゴリー、以後お見知りおきを。
[ゆっくりと歩み寄り、慇懃に礼をする。
頭を上げ、微笑んだ。]
貴女も招かれたのですか?
そうだとしたら、今宵の晩餐が楽しみでなりませんな。
何せ、美しい女性と晩餐を共にするなんて、滅多にないですからなあ。
それも二人。素晴らしいことです。
[微笑んで、再び一礼。]
── 城主の部屋の前 ──
[人の手で開くのか悩むほどに重厚な両開きの扉。
両脇の廊下に窓はなく、床に置かれた水盆がほのかに明るいのは月の光を溜めたか、あるいは人の魂の燐とも見え。
ひときわ、闇の気配が濃くなった気がして振り返る。]
行ってらっしゃいませ。
[主人が去ったなら、漸く立ち上がり。]
[客人へと視線を向ける。]
それでは、御部屋へと御案内いたします。
何か御希望は御座いますか、ベルナルト様。
[一礼。
その後、彼の望む部屋へと誘い。
彼の為の着替えを用意するだろう。]
―礼拝堂前→四階廊下―
[礼拝堂の前から庭園を抜けようとすると其処には二つの気配。
眷属のモノとは違う。
薔薇の似合う女性二人を微かに意識しながらも
今は彼女らに接触せぬまま本棟へと入ってゆく。
四階に至るまでの道のりは省いてユーリーの居る廊下へと足を運んだ。
見える人影>>5 ――彼がアヴァクームの言っていた者だろう。
振り返る様に微かな驚きが過るのは気配を感じ取られたと思ってか]
待たせてしまった?
[掛ける声には少しばかり申し訳なさそうな色を滲ませる]
貴方がユーリーさん、ね。
私はイライダ。
[姓を紡ぐ事はない。
仮初のものならあるにはあるが本来の家名は忘れてしまったから]
イライダ様、ですか……
[踵を返し去っていく城主の姿に目を細めた。
そしてアヴァクームに問われれば]
特にありません。寝られればそれで。
あ……そうだ。レオノヴィチ――ユーリー様の部屋の近くって、空室ありますか?
[礼には礼を返す。
一応希望じみたものは申し出るが、どこの部屋であろうとも、彼に連れられて向かうだろう]
-- 庭 --
[薔薇の香りが強くなる。]
[着いた時に気づかなかったのは、緊張していたからだろう。]
[一瞬咽そうになって、手前で立ち止まった。]
[先客がいるのには気づいていない。]
すごい…。
野薔薇はこんなに香らないわ。
どうやって育てたらこんなに香り高くなるのかしら。
[ゆるゆると足を進めて薔薇の傍に。]
[斑の薔薇をよく見ようと白薔薇の方へ寄って手を伸ばした。]
[礼をする男性は、30代半ばほどに見える。
過ぎったのは年恰好の似た叔父の姿だったのだろう。
気づかれぬくらい僅か、身をこわばらせて]
……ご丁寧に、有難うございます。
私はフィグネリア・エーリンと申します。
[そして紡がれる内容に小さく首を振ると]
あの方と私を並べるなど、いけませんわ。
でも晩餐は私も楽しみです。大勢の食事になるでしょうから。
[微笑みを浮かべて、そう答える]
― 暫し前 ―
[ナティアの問い>>22に、ふ、と眼を細める。]
そのままで、結構ですよ。
お望みとあらば、此方で御用意も出来ますが――
― 階段 → 広間 ―
[階段の踊り場には大きな花卉]
これは…18世紀のマイセン窯のものですか…
[さすが、富豪の貿易商のみを相手にしているだけのことはある。城内の家具も調度品も高価な物ばかりである]
[優美なことこの上なく立ち現われた闇がイライダなる名を告げる。]
──あなたが、城主。
[その美貌と、香りの粋、裡なる罪のあまりの深さに魔酔わされ、手を伸ばす。]
──塔上の氷の花…
[広間に顔を出しても、当然誰もいない]
それもそう…か。
[宴が始まるまでどこへ行こうか、そんなことを思案しつつ廊下を歩いていった**]
……力のある女性…?
[頷いたグレゴリーの言葉を繰り返し、
その姿に思い馳せるが、姿を想像する事は出来ず]
…ええ、また会いましょう。
[グレゴリーに深く礼を言った後、上階へと昇って行った。
通り過ぎる際、フィグネリアに軽い会釈を交わし
──ロランには気付かなかったようだ]
[斑の花びらは、真紅と真白を抱いている。]
[花びらに触れようと伸ばした指先が誤って棘に刺さる。]
いたっ。
[手を引いて血の滲む指先を口へ含む。]
[けれど指先の血が斑の赤い部分へついてしまった。]
[その途端。]
[真紅は血を吸ったように真白を侵しながら広がって―]
[最後には真紅の薔薇に変わってしまった。]
――えっ。
[指先を噛んだまま目を瞬かせた。]
[見直したら斑の薔薇は斑のままだった。]
そんなはず、ないよね。
[ふう、と強張っていた体から力を抜いた。]
[でも…確かに血を吸って真紅に変わった気がしたのだ。]
[気のせいだと首を振る。]
[でも気になって、何度も斑を確かめた。]
[待たされた苛立ちをユーリーからは感じない。
安堵したように微かな吐息を紅く熟れたくちびるから零した]
――そう。
城主に会う事を望んでいたのでしょう?
[尋ねるような音を紡ぐも伸ばされる男の手が視界を過る。
其の手を避ける事なく一歩近付き]
氷に触れると凍えてしまうかもしれなくてよ。
[慣れぬ物言いは彼がそれなりの身分であると知るからか。
目の前の彼の反応を愉しむかのように甘い笑みを浮かべた]
フィグネリア嬢、ですね。以後お見知りおきを。
[名乗られた名前を噛みしめるように頷き、一歩下がって畏まった>>32。]
そして――
[続けようとした先は、思わぬ方向から声がかかりせき止められた。>>30
そちらに顔を向ければ、端正な貌の少年。しばし、呆けたようにその表情の中心を見つめ。]
……くっ。
[この青年が何を意図したのか察したとき、堪えられない笑いが込み上げてきた。]
はっはっはっは! ――いや失礼。
初めまして、もう知っているとは思うが、グレゴリーだ。
安心しなさい。昔と比べて頭の回転は遅くなったが、それでも男女を見紛うほど目は衰えておらんよ。
それにしても、目にするのは美女ばかりか美男まで――私は場違いかな?
[親しげに青年の肩を叩き、くつくつと笑う。]
[鎖を巻ききると、跳ね橋が上がり扉が閉まったのを
目視で確認し]
さて、と。
これで今回の仕事はおしまいだな。
後で酒蔵にでも行こうかね。
[軽く溜息をつくと、今はもう自分しかいない詰所へと戻った。
当然、後から門を開けろと願われたとしても開けるつもりはない**]
望みしは、──ああ、
[どれだけその笑みを独占したいと思ったことか。
だが、祖先から連綿と受け継がれてきた銀のリングがユーリーの指を重く引きずり下ろす。
あるいはそれは未だ熟(うま)し刻ならずと告げる城主の意志の圧力だったのか。]
……失礼を、
[意志を自分の手に取り戻し、片膝をついて騎士の礼をとる。]
すでにご承知おきのようですが、わたしはユーリー・レオノヴィチ・ザハーリイン。
郷里を追われ、あなたの庇護と援助をいただきたくお願いに上がりました。
>>45
(…少し暖を取ってから行こうかしら?)
[その気紛れが
大きく運命を狂わせるとは知らずに]
南向きに塔が有ったわね。
あそこに部屋は用意出来て?
[用意された部屋に通されてから。
まず、浴室に駆け込んだ。
全身をとにかく洗い流す。戦場から逃げ出してから、湯を浴びる機会があれば、いつもそうしてきたように。
左足に絡みつく腕の感覚。耳の底で響く怨嗟。
用意された換えの下着をひっかけると、そのままベッドに倒れこんだ。
夢を見ないよう祈りながら**]
[噂話というものは、嫌なタイミングで思い出すものだ。]
[此処は吸血鬼の城といわれている場所だったと思えば―]
[余計に薔薇が血を吸ったように思えて一歩後ずさった。]
[唾を飲み込んだら、血の味がして慌てて指を口から離した。]
――。
[強くて深い薔薇の香りに身体を内側から侵される感覚。]
[ぞくりとして踵を返し、玄関へと駆け込んだ。]
あのーあのー…そう笑われると俺としても…ああもうっ。
[ぱしぱしと肩を叩かれて>>46、勘違いした気恥ずかしさが倍増する。
ほんのり頬が赤いかもしれない]
いや、だって貴方、割と真顔で冗談とか言いそうに見えたし。
[ぼそぼそと主張はしてみた。
場違いかな、と戯言を投げられれば、それには小さく笑って]
渋い男性っていうのも、いいと思うよ俺。
グレゴリーさん、だね。うん、覚えた。[色々な意味で。インパクトで]
宜しくね。
[じっと見つめられれば>>52きょとりとした表情を浮かべて。
続く言葉に、]
はは、健忘症には早いんじゃないかなあ。
[なんて。そんな冗談交じりの台詞を返す]
わぁ…
[何故か部屋には咲き誇れるばかりの白薔薇が
そこかしこに生けられていた]
でも、なぜ…?
わたくしの趣味を城主さまがご存知とも思えないし…
望みは――…?
[ユーリーの望みは紡がれぬまま沈黙の帳が下りる。
触れぬまま下りた手に向ける感情は安堵と未練に似たもの]
……構わないわ。
[騎士らしいその所作に小さく首を横に振り銀の髪を揺らす。
此処に来た理由に相槌をうち]
ユーリー・レオノヴィチ・ザハーリイン。
[何処かで聞いた家名ではあるが今は覚えるようになぞるだけ。
そっと手の平を差し出すのは立ち上がるようにという促し]
ユーリーさま、とお呼びすべきかしら。
庇護と援助――、私に出来る事なら喜んで。
[しおらしい応えを返し彼が立ち上がるのを待つ態]
[狼狽するロランに、笑い混じりの言葉を返す>>57。]
そうか、真顔で冗談言うように見えてしまったか。
はっはっは! よく言われるな、それは。
だが、流石に男を女性、女性を男呼ばわりする趣味はないぞ?
[からからと笑い、続いたロランの言葉に気をよくして笑みを深めた。]
そうか、渋いか、ありがとう。
そう思ってもらえるなら、下品に笑っている場合ではないな。
[声を出して笑うのを止め、笑みを作る。]
はて……ロラン殿の衝撃的な登場で何もかも吹き飛んでしまったのだが……。
――確か、この城で見応えのあるものを聞こうとしたのか……な?
[フィグネリアが小首を傾げるのに倣ってか、気付けば首を捻ってた。]
-- 自室 --
[たんたんと軽い足音をたてて廊下を駆け、階段を上る。]
[は、は、と僅かに息を荒くしながら。]
―っ。はぁ、はぁ。
[部屋に入って扉を閉め、もたれ掛かった。]
[右手で左肩をぎゅうと掴んで、落ち着こうと。]
なんだったんだろう。
[ぞくりとした時に感じた内から侵食されるような感覚。]
[それと似たものがある事は、まだ知らなかった。]
>>58
偶然、かしら。
[あまり気に留めず、鞄の整理を始めた]
全く、お兄さまったら
色々持たせるんだから。
あら?手紙が…?
[兄の指輪の印で封された手紙が荷物に入っていた]
[許しの声が下る。
妖艶な魔力は故意に隠されたか、ギラつくこともなく。
今、そこに見えるのは女ひとりの肩で政務を担わんと孤軍奮闘する健気な女性の像のみ。]
ご厚意、感謝いたします。
わたしは皇帝陛下にお頼みし、故郷に秩序を取り戻したいと考えています。
陛下に奏上する訴状を作成し、ご裁断を仰ぐ間、こちらに逗留させていただきたく。
[簡潔に告げながら立ち上がる。
此方に向けられたたおやかな指に──結婚指輪の有無を確認せんと視線を留めつつ。]
こちにらも噂は伝わっておりましょう。
支配者階級を打倒しようという「革命」
城下をよく知らぬ者が申し上げる無礼は承知の上で、あなたも革命にお備えあそばしますよう、ご忠告いたします。
どうか思い出してください。
──絶望へと追いつめられた人間は、容易に狂います。
[はからずもそれは、吸血鬼に追いつめられた人間の逆襲と変わることなく。]
[ユーリーが佇まいを正せば
差し伸べた手は漆黒のドレスの前で重ねられる。
その手にあるのは紅玉の指輪であるが嵌められるのは左の中指。
既婚である示しは無く伴侶は居ない事が知れよう]
もっと難しい事をお願いされるのかと思ったわ。
[彼の言葉遣いは由緒正しい出であると如実に語る。
小さくそんな感想を零して了承の頷きを向けた]
御苦労された事でしょう。
此処で疲れを癒し再興の為のお力を蓄えて。
私にはさして力はありませんが――…
出来うることであれば助力は厭いません。
[彼の望みに興味はないが
どのような道を辿るかには興味が湧いた。
労るような言葉を掛けて淡く微笑む。
――魔の証ともいえる甘い薫香はいつの間にかなりを潜めていた]
――…「革命」への備え。
[ユーリーの語る革命に微かに肩を震わせる。
それはあたかも「革命」という人間の力に怯えるかのよう。
近隣の村は生贄を差し出すほど従順ではあるが
何時、人間が牙を向くかは分からない。
多勢を制すには骨が折れることは確かで]
ご忠告痛み入ります。
そう、……用心するにこした事はないもの、ね。
[案じるかのように伏せられた睫が頬に長い影を落とす。
ユーリーの言葉を心にとめるかのように頷いて、彼を見上げた]
[それは、今から数年前のことだったか。
仕事の都合で生家を離れてから、半年ほど経ったある日。
一通の招待状を手に、男は姿を消した。
最後に見かけた人の話によれば、彼はこう言って笑っていたという。
『ちょっと、“城”まで』]
[手紙を火にくべた。―あっと言う間に燃え上がる――。
もしもそこに誰かがいたら、燃え上がる火の中で
このような言葉の端が見えたかもしれない]
”お前の宿命――りの力――道ならぬ―魅入られた魂―
―――当家の―――
―浄化――奴らに――気取られるな―
――清らか―乙女であれ―”
[イライダの応え、そして示された寛大さと不安の仕草に、
もっと…望んでもいいのだろうかと、
イライダに「出来うること」を思えば血が熱くなる。
だが、口にしたのはささやかな希望のみ。]
ならば、二人きりのときはあなたのことを、イライダと呼ぶことをお許しください。
そして、わたしのことも尊称など抜きにして呼んでほしい。
──ユーリと。
それと、礼拝堂へ出入りしてもよろしいか?
父母の死を悼み、我が身の罪を…
――見つめるために。
[言葉よりも多弁な眼差しは、銀の髪に縁取られた貌に据えられ。
許諾を得られたならば、それを期に暇を告げてイライダを解放するつもり。**]
[そこには城主とおぼしき美しい女性と青年が何事か話していた。
―彼女の蠱惑的な美しさに圧倒される。]
何か、取り込み中のようだわ。
もう少し後でお伺いしましょう**
[人と戯れている間は退屈を忘れる事が出来た。
ユーリーの望みに寛容であるのも一種の気紛れではあるが
見目麗しく志の高い男は個として興味を誘う。
ささやかなる望みに浮かべる笑みに微かに滲む魔性の気配。
蠱惑な眼差しを向けて]
私もそう呼んで貰える方が嬉しいわ、ユーリ。
[礼拝堂への出入りには微かに悩むような間が空いた。
そうするに相応しい場所でないことを城主は知っている。
捉えた小鳥の姿が一瞬浮かぶが出会い知るのも良いかと思い]
貴方がそれを望むのであれば――…
[控えめな承諾の言葉を告げて、
暇を請う彼に静かに腰を折り見送る態を見せた]
― 四阿 ―
[速やかに供された紅茶の、カップの縁を撫でる。
赤が好きだと言った娘の後ろ姿は城へと消えたか]
そんなに好きなら、この薔薇園に火を放ってみましょうか……美しく赫くかしら。
[さぞや赤かろうと、苛烈な衝動を薄い瞼の皮膚で覆って、薔薇と混じる紅茶の薫を暫し楽しんだ]
いいわ…美味しい。
[添えられたプリャニキ(お茶菓子)を割って、小さな欠片を口許に運ぶ。指についた薔薇の雫と、蜜の甘みが蕩けて滴るようだった**]
――回想――
[ピアノの音が響き渡る城内。本当に、たくさんの人がいた。
何故かあちこちに自己紹介をする黒髪の男性を見る。>>115]
(あの人も、嫌われているんだね)
[彼が亡霊で、相手には視えていないのだとはつゆも思わず。
足が無い女性は、さすがに亡霊だと解る。>>172。こちらは青年と会話。
アリョールの顔をよく見れば、見覚えが有ると思い出せたかもしれない。
忌み子と呼ばれた、リディヤの――。
少女にとって、生者も死者も変わらない。
視えるものにとって、それは普通の他人にすぎない。
ただし少女は人間。見えるだけ、触れられない。
話し掛ける事も無く、少女はゆるりと微笑みながら、城内を歩く]
[そこぞの亡霊か眷属に、部屋を見繕ってもらう。
どこでも良い、と言ったら、南塔の中程の子供部屋を与えられた。
小ぶりなベッドと、大量の玩具。
かつては子供も住んでいたのかもしれない。
生贄の少女に、荷物は無い。
着せられた赤いケープは、人柱に相応しい豪華な縫製。
そして、気休め程度と渡されたロザリオ。
ロザリオを投げるように渡し、家の扉を閉めた両親。
その顔は、安堵だった]
[部屋の管理もそこそこに、再度城内を歩く。
疲れたような亡霊や、商人や。
人か、そうでないものが。
艶やかな匂いにつられ、踏み込むは薔薇の園。
中途、ローズピンクのドレスの女性とすれ違えば、にこりと微笑んだだろう。
>>84。艶やかな赤と白の薔薇。
その中で、深くうねる夜色]
あなた、欠けているね。
[前触れもなく、にこにこと微笑みながら、いきなり話し掛ける。
アナスタシアに示されれば席へつき、そうでなければ立ったまま]
あなたの魂は、半分しか無いね。
残りの半分は、どこへ行ったのかな?
[アナスタシアに許可も取らず、紅茶用の砂糖の壷を開け、角砂糖を噛った。
眷属が居れば、お菓子が欲しいと頼む]
[アナスタシアの闇色の瞳。
艶やかな瞳に映る、少女の姿。
何が楽しいのか、ふふと笑う]
血を吸った薔薇は、焔で焼かないとね。
[紅の中に堕ちる緋。
炎と薔薇は、先程のアナスタシアの独白と同じ物。
不吉な薔薇は、浄化の焔で焼き尽くすもの]
お姉さんは、黒い薔薇みたいだね。
赤い血を吸った、白い薔薇。
なのに半分欠けているから、赤くなれずに黒くなってしまったの。
半分と出会えたら、紅くなれる。
[死ななければ、眷属とならなければ、半身とは会えない。
少女がダニールをしっかり見る機会が有れば、アナスタシアの半身と気付くだろうか。
半身と出会ったアナスタシアの紅は、血か、焔か――**]
[一年前、吸血鬼狩りに来た人間が居た。
彼の者が狙うは吸血鬼の始祖である存在であっただろう。
だが、その争いに巻き込まれ命を落とした人の子が居る。
美しく、無垢な魂を持つ娘だった。
彼女は可愛い妹が居るのだと幸せそうに語っていた。
城主は彼女を眷属にせぬまま愛で庇護下に置いた。
眷属にしなかった事を悔いたのは彼女の命が絶たれてから――。
彼女の面影を残すその妹が此処に来たとは未だ知らぬまま
城主は喪った人の子に想いを馳せ吐息を零す]
―回想/礼拝堂―
[堕ちきらぬ囚われの小鳥>>0:220が礼拝堂に在る。
麗しく囀る声は甘く馨り人であれば酔いもしようが
自らの毒に苛まれるモノがないように城主にとって其れは毒ではない。
ラビという名の娘の啼き声が城主を誘い悦ばせる]
――…あれは来ないよ。待っても来れるはずが無い。
既に、堕ちてしまったのだから、ね。
拒み続けているのはキミだけ――…
[彼女の師がどうなったかを詳しく語る心算はない。
娘の零した涙>>0:231が頬を伝い城主の手へと落ちた。
熱い吐息の気配に恍惚とした表情が薄く浮かぶ]
もっと啼いて、私を、愉しませて――
[我が名を紡ぐ彼女が折れる日は来るだろうか。
どちらにせよ城主は其れを愉しむだけ。
彼女に望むはただ一つきりなのだから**]
[それは一瞬の間かもしれない。
あるいは、一刻かもしれない。
どちらにせよ、ダニールがピアノの音から意識を外していたことに、変わりはなかった]
ナースチャ。ナースチャでしょう?
[音楽室の壁から顔だけを除かせたとき、すでに彼女の姿はなかったのである]
……あれぇ。
別にいいよ、いざとなったらすぐ会えるんだし。
[負け惜しみのような独り言を漏らすと、妹が弾いていたであろうピアノの前へ]
……懐かしい。
[同じような台詞を吐く]
ここに囚われてからは、さっぱり弾いてないですからね。
[それでも暗譜していた出だしの形に、白い両手をかざす。
手首を柔らかくしならせ、鍵盤に重さをかけようとして――やめた]
ここにあの子がいるということは、
あの子も囚われてしまうかもしれない?
わたしみたいに。
[わずかに眉を顰めて、しかし次の瞬間には元の表情に戻った。
そのまま、ふっと消える**]
――ええ、勿論ですとも。
[カチューシャを彼女の望む通り、南の塔へと案内し。
一礼ののち、その場を辞する>>54。]
[そうして僕が次に向かったのは、別の扉の前。]
ナティア様。
御召し物をお持ち致しました。
[もう、部屋へと戻っている頃>>62だろう。
扉を叩き、返事を待つ。]
[用意したのは、真紅と純白の薔薇をあしらったドレス。
それは不思議なことに、華奢な彼女の身体を
ぴったりと包むだろうけれど。
お気に召さないようであれば、そのまま持ち帰る心算で。**]
――本塔1F/大広間――
[人懐っこそうに話しかけてくる青年>>6に対して、眷属然としている男はひたすら無言。青年の勘違いを訂正する気もないようだ。
それから彼がお辞儀をすると、こちらも一礼を返した]
……
[こうして眷属にも「普通の人間と変わらぬ様に」接してくれることは、長い時を経て様々なことを諦めてしまった男には厄介な物としか映らなかったので、青年が目を離している隙に、ここから消えることにした]
――本塔4F/廊下――
[表情に少しだけ苦い物を浮かべて一言だけ呟く。
青年は様々な勘違いをしたけれど、それでも最後に言おうとしたことだけは的を射ていた]
俺は――、囚われてなどいませんよ。
[ただ、男がそれを認めようとしないだけで]
[とりあえず迷い込んだと思しきアリョールという名の亡霊のことを伝えようかと、主の部屋を目指した。
そうして、主と青年が話しているのをかすかに聞いた]
……
[青年の口から「礼拝堂」という言葉が出る>>81と、わずかに顔をしかめた]
[…した、けれど。]
……、……。
[受けとったドレスのデザインを見て、一瞬固まった。]
[庭のそれ、そのままのような深紅と真白。]
[しかし気にしすぎだと首を振って、再び笑顔を見せた。]
ほんっとーに、ありがとうございます!
[ぎゅうと抱きしめるようにドレスを抱え、ペこりと頭を下げた。]
[それから。]
ドレスっ!すごーい!
[抱きしめたままきゃあ、とベッドにダイブしてころころと。]
[けれどもすぐにはっとして立ち上がる。]
[サイズが合わず切ない結果になりはしないだろうか?]
[着てみよう、と恐る恐る着替えを始めた。]
えっ…これ、すごい、ぴったり…。
[薔薇のドレスは身体に合わせて仕立てたかのようで。]
[肌に吸い付くようだ、と感じた。]
ふふ、うふふっ。
[姿見の前で楽しそうにくるくると回る。]
[衿元で、本物そっくりの深紅と真白のコサージュがふわり、*ふわり。*]
― 礼拝堂 ―
[愉悦の声は今なく。
耐え難きは人の身では持て余す甘い毒。
噎せ返る薔薇に一時身を浸すよりも強く、蠱惑的で甘美な毒。]
――ぁ、…ぁ…。
[清らかなる場にさざめく哀歌は甘く。
訪れる者の耳朶へ響く通奏低音。
これまで幾ら熱りが煽られようと、
降りる事も行き着く事も出来ぬ場へのみ導かれる。
未だに摘み取られる事なく、
蕾から伝い堕ちる雫は溢れる。
礼拝堂に来たる者が、如何ばかりに扱うか。
予測出来ずとも、こればかりは確か。
啼く声の合間に小鳥は囀る。]
[城主との面会を終え、踵を返す。
長い廊下の途中で、こちらを見ている少女と行き交った。
城に到着した時、薔薇苑にいた少女だと思い出す。
城主の親族なのだろうか、と考えたのは一瞬のみ。
両者のまとう雰囲気は軋轢が生じるほどに──異なる。
ぬばたまの闇とひさかたの光。
女城主の私室の前から戻ってきた男を、少女はどう見たか。
今は小さな淑女に会釈をして傍らを通り過ぎるのみ。]
[その先の階段へと歩を進めれば、陰に佇む青年の姿。
着ているものから察するに使用人なのだろう。
だが、不遜な眼差しはむしろ饗を奉られる側のそれで、先ほどの老家令にも通じる「この城の一部である」気配を帯びていた。
そういえば、イライダを目の当たりにした陶酔で忘れていたが、あの老家令はユーリーの目の前で溶けて消えたのだった。
あれは、現実か、否か。
混乱を覚えて、ユーリーは自室へと逃れ戻る。
今はまず、旅と魂の疲れを癒さんと。]
─3階客室・室内─
[部屋の中は何れも高級品ばかり
自分には知り得ぬ上質品。
地方令嬢の持ち物は、それらの前では安っぽく。
感嘆と伴に、何かを抉られた様な苛立ちを感じさせた]
……薔薇か。
[呟いて、華やかな花瓶の紅のひとつを手に取り
慣れたように、棘を手折っては打ち捨ててゆく]
[愉悦を感じる、其は暇を潰す唯の趣味──]
…痛、
[ ぷつ
鋭い棘は蹂躙を許さぬか、親指の淡い肌を貫いた]
…っ……!
[くしゃり 白い花を、その手で握り潰して塵箱へと投げ捨てる
──花の色が、箱の中で喜色の紅に変化した]
しかしまあ、こんな季節に薔薇……ねえ。
貴族趣味もここに極まれり、ってものだなー。
[ふらふらと薔薇園の合間を縫うように歩き、ふと気付けば別の色――四阿が目に留まった。]
んー?
[人の気配を察し、其方に意識を集中する。
フィグネリアから聞いた薔薇園の存在、つまりは何者かがいても不思議ではない。
――霧のヴェールに遮られて視界は利かないが。]
失礼、既に先客が居られるようですな?
[一旦咳払いをして声を作った後、四阿へと意識的に足を向けた**。]
[広間から1階の廊下に向かい、各所に花卉があるのを目にする。
いずれにも飾られるのは薔薇の花]
庭にも薔薇が咲いていましたね
…よほど薔薇がお好きなようで…
[窓から外を見れば何人もの人が薔薇を愛でている。
しばらくその光景を眺めていた**]
── 自室 ──
[ベルナルトは続き部屋を使っているだろうか、それとも遠くへ行ってしまったか。
プライヴァシーを守ると言った以上、こちらから内扉は開けなかった。
人の善性を信じるか、人はそもそも邪悪なものなのだと突き放すか。
領民に父母を殺された自分は危ういバランスの上にいる。
ベルナルトの存在は、試金石でもあるのだ。]
[簡単な夜食を頼み、寝酒に暖かいワインを呷る。
その間に、湯をつめた皮袋でベッドが暖められた。
借物の衣類を脱ぎ、シーツの間に滑らかな裸身を潜り込ませる。
瞼を閉じれば、ほどなくヒュプノスが訪れた。]
── 夢の中 ──
[数多の存在がモノクロームの城郭内を、あるいはその天井付近を、重さのないものとして自由に擦り抜け、行き来していた。
博物館でしか見たことのないような古めかしいドレスをまとった人物、
行方知れずと捜索願いの出されていた者。
夢の中でユーリーは、彼らが既に死んでいることを察している。
故に、声をかけることも、己が存在を訴えることもなく、
ただ、イライダの鮮やかな姿を求めて、視線を彷徨わせていた。]
[銀の影を探し得ぬままに、庭園へと出れば、
遥か蒼穹の彼方から鎖が伸びてくるのが見えた。
その先端につながれているものは──
もがく 純白の 小鳥
こぼれ落ちるは
鋭く、甘く、圧しつぶさるる嗟嘆(なげき)の声。
それを翻弄するごとく被さる哄笑は、イライダのもの──]
[座るよう促す事も、皿に少し余っているプリャニキを差し出す事もせず、リディヤへ冷ややかに乾いた怒りを刺した]
小煩い餓鬼ね。
半身がどこでくたばってようが貴方の知ったことじゃないのよ。
[リディヤの暗緑色の瞳。
こぼれるほど大きな瞳に映る、女の姿。
何が気に入らないのか、舌打ちした]
黒いのは元からよ――
[黒い薔薇。血を吸って尚、赤くなる事も出来なかった薔薇。
歪な笑みを閃かせ、すぐに消した]
[ぬばたまの檻が虜囚を捕らえたのは暫し前。
宴が始まる其の時が近いと知れる。
城主たる吸血鬼はその宴に参加する気はない。
参加せずとも波乱を巻き起こしそうな者が居るのだから
それを近く遠く眺めるだけで良いかと思う]
――…私を愉しませて。
[艶めく聲が闇に響く。
甘い囀りはまるで睦言紡ぐかのよう。
人と吸血鬼の織り成す物語は未だ始まったばかり]
ここにいても仕方ないですね…
[どこへ行こうか思案しつつ外に出てみることに。
途中で誰かと出逢えば言葉を交わしただろうか。**]
退屈は嫌い。
[退屈を求める眷族が居る事も承知している。
それも個性と思いそれさえも認めるのだけど。
退屈を嫌うが故に城主は宴を開く。
血を喰らう魔性は人との関わりを断ち切れぬ――]
―自室―
[血の匂い。焦げた煙の匂い。悲鳴。怒号。呻き声。
逃れようとした左足を強く掴まれる。
振りほどこうともがけばもがくほど、力は強くなる。
胸元の拳銃を半ば無意識に引きぬいて、撃っても――撃っても。
掴んだ手が離れることはない。
気がついたら、四方八方から白い手が己に向かって伸ばされていた。
無数の手、無数の瞳、充満する血の匂いと怨嗟――]
うわあっ、あ、あ、
[叫び声で目がさめるのは毎度のことだった。
疲労は軽減するばかりか、夢のせいで増幅しているのではないかとすら思える]
[少し躊躇いを感じつつも、用意された着替えに袖を通す。深紅のシャツと黒いズボン。
鏡を覗き込む。軍服を脱いでしまえば、単なる独りの線の細い青年に過ぎない。
振り返り、廊下に続く壁とはまた別の壁にドアが据え付けてある事に気がついた]
……ひょっとして。
[ユーリーの部屋の近くを望んだことを思い出す。
続き部屋になっているのかもしれない。
可能性に思い当たれば、むやみに扉を開くことははばかられた。
ベッドの上に腰をおろし、水差しの水を煽った]
── 自室 ──
[自分の息の乱れで迎えた目覚めは安らぎとは遠く。
胸郭を上下させながら、天井を見上げる。
はかったようなタイミングで召使いがやってきて、洗面台に湯が準備された。
チェストに新しい服を置き、古いものを回収してゆく。
ここでは、なにもかもが決まりどおりに運ぶらしい。
調理の手順のように、淡々と。]
[着替えに目を向ければ、金の縁取りのある濃紺のスタンドカラー。
軍服にも似た仕立てで、肩から腰まで二列に並んだボタンは各七つ。
袖口とズボンの脇にも金糸の刺繍が入っていた。
今宵は宴が開催される、と召使いの弁。
それなりの礼装を、ということなのだろう。
グレゴリーが来ていたことからも、なんらかの目的で客人が招かれていることには気づいていた。
城主の誕生祝いなのか、この地方の祭なのか、宴の主旨は聞いていないが、逗留を許された以上、自分も参加すべきだろう。
少なくとも、孤立して改善される状況にはない。]
[誰の見立てかは知らないが、サイズはちょうどよかった。
袖を通そうとして気づく。
返しに「ダニール」というネームが入っていた。
過去にこの城に滞在した男の遺産なのだろう。
イライダの客か、縁者か、あるいは──
わずかな妬心を覚えた自分を律するように、襟元のホックをきっちりと掛ける。]
[その時、隣室から苦しげな声がした。]
続き部屋を使っている者は?
[召使いに問うて、あの若者――ベルナルトであるとの回答を得ると、内扉をノックする。]
ベルナルト、どうした。
傷がいたむのか?
[客人を一人一人もてなすアヴァクーム。
夜の僕たる彼に任せておけば宴の仕度は滞りなく運ぶ。
其の点に関しては彼を信用している。
彼が此方に抱く思いまでは分からないでいるけれど]
アヴァクーム……。
[彼がいるからこそ安心して宴を開ける。
眷属が居なくては何も出来ぬ城主であるから]
貴方は裏切らないで居てくれる?
[甘えるような音色を滲ませひそやかに闇に囁いた]
[窓より階下を眺めようとしたが、
霧に阻まれて何も見えない]
……こんな広さ、あっても使えない…。
[細い瞳から映るは嫉妬の欠片だろうか。
何の気もなしに、足は昇り階段へと歩む]
[扉を開けたのはベルナルト自身だった。
確認の問いに頷きつつ、様子をうかがう。
歩けないということはなさそうだ。
だが、完全に大丈夫というわけでもないだろうと、どこか心非ずな双眸を見て思う。]
今宵は宴があるそうだ。
ダンスパーティとは聞いていないが、痛むなら、足の傷は医師に診せておくように。
城内に医師がいなければ、グレゴリーという男を探すといい。
骨接ぎならば軍で最高の手腕だ。いささか荒っぽいがな。
いいか、ともかく──
無理は、するなよ。
わたしはこれから外へ――礼拝堂へ行くつもりだ。
そこにいなかったら、書斎だと思ってくれ。
高価そうだから、ですか。
はっはっは、アナスタシア嬢の目は確かですな。
[的確な指摘に思わず頭を掻いた>>133。]
確かに世の中の高価なものというのは、殆どが悪趣味なものです。
ですが、その悪趣味なものの中で暮らしているうちに、感性がそれに慣れてしまうのでしょうな。
いやはや、改めて指摘されると何とも恥ずかしい。
[この女性に浮世知らずの貴族、例を挙げるなら、我が兄君達を見せてみたならばどのような評価を下すのだろうか?
そのような益体のないことを考え、もう一度笑みを漏らす。]
ふむ、やはり、宴の装束は私自身の感性など捨て置いて、主催に従いましょう。
其方のほうが周りも、そして私も恥ずかしい思いをしなくて済みそうだ。
[そして、白磁のような左手が指す方角へと目を向けた。]
ふむ、入り口のない塔、ですか。
立てこもるよりは、遠目――見張りを建てたり、有事の際には弓兵を置くところでしょうな。
入り口は……むう。
案外、地下で続いているのかもしれんが……。
まあ、招かれた城を検分するのは宜しく有りませんな。
[咳払いをして、何かを思いついたかのように微笑む。]
ふむ、問題の塔ですが――案外、宝物が眠っているのやもしれませんぞ?
古今財宝への扉は、ぱっと見ただけではわからぬよう隠されているものですからな。
はっはっはっはっは。
[冗談めかして笑った。]
[足の傷、とのユーリーの言葉。
唇を歪め、軽く頷いて]
お気遣いありがとうございます。
そこまで痛むわけでもありませんので。
[激痛は既に去って久しい。だが――痛みが収まった後、思ったように動かなくなった。
それこそ、亡霊にでも掴まれている気分だ]
わかりました。
何かあったら、そちらに向かわせていただきます。
[宴については遠巻きに眺めていよう。
心中でそんなことを考えつつ]
扉があったら、大切な宝物が逃げちゃうよ。
[少女はにこにこと笑った。
直接塔を調べたわけではない。
聞こえるのは、塔にまとわる怨嗟の声。
宝物とは、その通りの貴物と、そして――命]
だから、帰れないんだよ。
帰りたいって、泣いてる。
[亡霊達の嘆きの声。
それは城を埋め尽くす怨嗟の波]
おじさんと、同じだね。
[彼の纏う軍服と、そして彼自身。
戦った相手の怨嗟と、そして、それよりも大きい――彼の兄弟の悪意]
──4階・廊下──
[階段を昇り、廊下へと進む。
その先に、少女と麗しい女性、立っている青年の姿]
……ごきげんよう。
[…それらを見かければ、深く頭を下げて声をかけた]
― 回想 ―
[眷属が誰かの部屋へ向かう場面に鉢合わせると、
親しげに声をかけた]
お疲れ様です。あら、その服は。
[幽体である自分が纏っているものと同じ服を見て、
男はにこりと笑う]
死んだ人の服を使い回すだなんて、なかなか面白いな。
どなたかとお揃いになるのですねぇ。
[見惚れる程麗しい姿。
『客人』という言葉で挨拶を交わした相手が件の女性なのだと気付き、目に驚愕を映した]
…貴方が。
私は、父の…クリストファの代理。
お招き頂き、光栄に思います。
[可愛い、という言葉を聞くと、はっ と相手と己の違いを思い出して
恥じる様に目線を逸らす]
……そう。寝室とは思えない大きさね……。
[羨ましい、という言葉は喉の内で圧し殺した]
―――っ、ぁ、
[赤い、紅い。
ひとを惑わそうと華たちが風に揺れ。
霧がかった中でも鮮烈すぎる色が、娘の瞳の奥までうつす。
くらり。魅入られる。眩暈にか、わずかに身体が傾きかけた]
― 徐々に思い出してゆく記憶……そう、それは数日前の記憶であろうか ―
[処刑台に上がるアリョール 淡々としていて落ち着いた表情]
「これより!このものの処刑を執り行う!!」
[野太い声が響き渡ると歓声が沸きあがる。その観衆のほとんどはまともな人間ではなく、所謂「アウトサイド」な人間であった]
「この者の処刑方法を決定する!」
[そう言うとその男―死刑執行人―は処刑方法が書かれたボードを回し始める。そこにはさまざまな処刑方法、石打ち、火あぶり、串刺し、磔などが書かれていた。観衆たちはそれぞれ見たい処刑方法を叫んでいる処刑というよりはまるでゲームのようであった。]
[ボードの数メートル先に弓を構えていた者が矢を放つ。矢が止まったのは…ギロチンと書かれたエリアであった執行人が口を開く]
「ギロチンの刑に決定した。しかし!ただ首を切るというのはこの不届き者に処する刑にしてはあまりにも軽いのではないだろうか!!」
[演技がかった仰々しい口調で観衆に訴えかける]
「そこで、だ。今回は、首ではなく、体の上下を真っ二つにしたい!皆のもの!どうであろうか!!」
[歓声が沸きあがる。アリョールは表情を変えず…だが冷たい目で執行人を睨みつける]
「決定、だな!!」
[そして刑が執行された。アリョールは事切れる最後まで表情一つ変えなかった、いや、むしろ表情を変える気力もなかったのであろう。あのような…余りにも残酷な出来事に巻き込まれては]
― 一つの記憶が呼び覚まされ、同時に目が醒め、姿を現す ―
私は…そうだ、昨日はイヴァンさんとお話をしてたら急に意識が………
…そうか、私は何者かに「殺された」のだな。…ああ、でも周りの景色、近くにいた人間が思い出せない。
…あ。
私は、ヴェロニカ…ヴェロニカ・アルマゾフ。
イライダ様…お見知りおきを。
[見惚れるあまりに名乗りが遅れた事に気付き、辿々しく名乗って頭を下げる]
……どうも…私……可愛い…?
[身内にはよく言われれど他人には呼ばれ慣れぬ言葉。
特に、このような者に呼ばれてしまえば──
…困った様に、狼狽えて目線を泳がせてしまうだろう]
ご主人とか…使いの方は?
[狼狽えたまま、言葉を繋げる。
何故だろう。
イライダはこんなにも美しいのに、孤高さを感じさせるのは──]
[アナスタシアの落ち着いた声とは違う、軽やかな声に視線を下げた>>141。]
確かに、扉があったら逃げてしまう……お嬢ちゃんは聡明だ。
[彼女が見えているものは見えない。
ただ、確信の響きを乗せた言葉に頷いて微笑んだ。]
帰りたいということは、宝物の家は此処ではないのですな?
ふうむ……。
[帰る場所がある宝物――帰る場所が無く漂う自身。
『おじさんと同じ』という言葉で空想の宝物と自分を無意識に対比したことに気付き、苦笑する。]
――お嬢ちゃんは本当に聡明だ。ならば、私たちにできるのは……。
[屈み、少女と目の高さを合わせる。]
その宝物達が、何時かは家に帰れるという事を祈ってあげる事、でしょうな。
[一時力をなくした身体は、ニコライに抱き留められ]
――っ、申し訳……ありません、
[片手で窓枠にすがる。
彼に触れびくりと震えた肩と、合わせず伏せた瞼、
すぐにも離れた動作はどう受け取られるだろう]
ひとりより、皆さんといたいです。
談話室のようなものがあれば、そこにいることにしますわ。
……支えて下さり、有難うございました。
[呼吸を整え、小さく微笑む]
[礼儀正しいベルナルトの対応に、彼の抱える悪夢を汲むこともなく。
この城が亡者の念を増幅させているかもしれないこともまた気づかないまま。
部屋を出ると、ゆっくりとした足取りで建物の外へ向かった。
相変わらずの霧で現時刻も知れないが、宴のときになれば鐘がそれと知らせてくれるのだろう。]
まだ礼拝堂の鐘が鳴るのは聞いていない…が。
[司祭はいないのかもしれない。
あるいは彼女自身、別の信仰をもっているのか。
礼拝堂へ赴く許可を請うたときに、ほんのわずかに逡巡を見せた城主を思い出し、
イライダを最初に見かけた塔を振り仰ぐ。**]
…ええ、ありがとう。
[相手の笑みを見ると、安堵した様に落ち着きを取り戻し、頬笑を返し]
……悪い事を聞いたわ。
…そうよね。
[目の前の相手に感じた格の違いはあるが、そう。
歳は然程変わらぬ筈──]
そうさせて戴くわ。宜しく、願います。
[そう思うと、心にほんの余裕が生まれ。
目前の相手を真似てロングスカートの裾をたくしあげ、一礼を返した]
[しばらく詰所で横になっていたが、
陽の傾く頃になるとゆっくりと起き上がり]
酒宴にはまだ早そう、だな。
暇でも潰してくるか。
[呟くと、じょうろとはさみを掴んで庭園へと向かっていった**]
この旅、わたくし修道院に入る事となりまして
その前に
日頃からお世話になっているイライダさまに、是非ご挨拶にお伺いするよう
兄より申しつかって参りましたの。
…何でも、兄が家督を継ぐ際…その、援助していただいたとかで
とても感謝していますわ。
それにしても、何だかお客さまが多い様子ですのね。
わたくし、お忙しい所にお邪魔してしまったのかしら?
(…それにしても美しいひとだわ。)
[城主より返礼あれば受け答えたかもしれない。]
ありがとうございます。お部屋まで用意していただいて…。
では、わたくしお言葉に甘えて
少し城内を散策させていただきますわ。
―回想・終わり―→庭へ
随分、使われて無いのかしら…?
それにしては、人の出入りしているような様子もあるし…
[瀟洒なステンドグラスが祭壇に、淡く蒼い光を湛えている。]
── 自室 ──
[海賊の常としてーーー
一度手に入れて満足すると後は興味が失せるばかりである
豊満な眷属に満足すると直ぐに部屋から追い出してしまった]
………
[煙草の葉を煙管に詰めて、肺に煙を入れる
窓がない部屋を希望したため、煙は部屋に充満する]
さて、あれにも飽きたし
誰か見繕いにでも行くか
[服を着直して自室から出て行った]
[その時、何か弱々しいがハッキリした言葉を聴いた]
>>107
"この城には、吸血鬼が居る"
…え?
誰、誰かいるの?今なんておっしゃったの?
お姉様はハープが得意でしたわね。もしかして、これを弾いていたのかしら?
[歳の離れた姉との思い出。幼い頃、姉がハープを弾く時に、よく傍に座って聞いていたものだ。
姉よりも素晴らしい奏者を知らない。
その音色を思い出しながら、そっと音楽室から立ち去った。]
[音楽室を出てから、サロンに入ると奥にある椅子に腰掛ける。]
喉が渇いたわ。
私もお茶をいただきたいんだけど。
[使用人に声をかければ、すぐに紅茶が用意されただろう。
特に何も言わなかったが、砂糖の代わりにジャム――薔薇のジャムが置いてある。]
流石ね。
[満足そうに呟き、一匙すくって紅茶へ入れた。
カップの中で花びらが舞い、笑みを浮かべたまま一口飲む。]
良い香り……。
[ほぅ、と息を吐き、うっとりとまたカップに口を付けた。]
―廊下―
[ユーリーを見送った後、自身もまた廊下に出る。
宴の間、どうしていようかと思いを巡らせながら]
飯は食うとして……なあ。
>>176
[うす暗い光の中、堂内を見回す。
…最初は、それが人だとは理解出来なかった。
あまりの仕打ちに彫刻か何かだと思い込んだのだった。]
[床に落ちる自分の影が目に入って唇を噛んだ。
影の向こうから伸びる白い手が見えるような気がしたから。
不自然な足音が廊下に響く――]
[アナスタシア、リディヤの下を辞し、霧の中で泳ぐように進む。]
さてとー、礼拝堂はどこだー?
[首をこきりと鳴らした。
フィグネリアの言葉にあったものを探し、何とはなしに歩く。
女の言った通り、それは薔薇園の反対側に厳かに立っていた。]
……?
[扉が開いている、誰か中にいるのだろうか?]
ふ、む。
[扉に手をかけ、力を込めて開く。
――ギィィィ――その音は中に居た者の耳に確かに届いただろう。
意識があれば、の話だが。]
-- 自室 --
[右にくるり、左にくるり。]
[こんな華やいだ気分になったのははじめてかもしれない。]
[でも、鏡に映る自分の顔に眉を下げた。]
これで姉さんみたいに美人ならよかったのに。
[美人の姉と出涸らしの妹。]
[そんな風に揶揄された事もある位の差。]
あーあ。流れてる血は同じなのになあ。
[頬をつまんで引っ張って、ベー、と舌を出した。]
[霧のない視界は、礼拝堂の向こう側まで届く。
埃臭い室内――うっすらと床に広がる埃。
そこに点々とする足跡で、何者かが奥に居るのは分かる。]
……零点。不合格。
[口の中でぼそりと呟いた。
改築でもする心算なのだろうか?
それなら入り口の扉は開かないように施すのがマナーだ。
嘆息しつつ、足跡を辿ってみると、艶やかな布地の塊――それが少女だと気付くのに、時間はかからなかった。]
おい、お嬢さん?
[ 小走りで駆け寄り、その顔を覗き込む。
――息はある。外傷は無い。まるで眠っているように見える。]
こんなところで眠ると風邪を引――ああ、成程。
[声をかけつつ、辺りを見回す。
少女が眠るように倒れた原因を理解した。]
十点満点の趣味とは恐れ入ったね、どうも。
[眉一つ動かさずにさらりと言い、身なりのいい方の少女を抱え上げた。]
[城主への挨拶を終えると、彼女へと背を向ける
──不意に、小さく悲鳴を聞いたような気がして]
……何事…?
[はたはたと、階下へと向かい走り出した]
[首を振って窓から離れる。]
[でも、気になったのは気になって。]
何かあったのかしら。
[扉に手をかける。]
[ドレスは試着のつもりだったけど、脱ぎたくなくて。]
[それに、着替える時間がもったいないと好奇心が急かす。]
[えい、と扉を開け、真紅と真白を纏ったまま塔の廊下へ。]
― 城内・地階 ―
[悲鳴は聞こえなかった。
聞いたとしても向かう心算などありはしないが]
……奇妙な面子だわ。ご城主様。
子供や病気、汚らしい軍人や蛮人ばかりなのかしら。
[言葉を交わした者と、部屋の窓から遠く見かけた人影達へ、一纏めに辛辣な言葉を吐いて。
宴の前に一度自室へと、ヒールが床を叩く音は、酒庫からシュテファンが顔を出したとしても緩むことはない]
[階下へ向かおうとした、その時。]
[大きな想定外に襲われる。]
[ヒールの高い靴で歩くことに全く慣れていなかったのだ。]
―礼拝堂・外―
[扉を抜ければまた霧が視界を阻む。
開け放たれた扉を足を使い力づくで閉め、一息。]
やれやれ……どーするかなー。
[頭を掻きむしりたくなるも、両手は塞がっている。
この様に女一人を抱きかかえた風体、誰にも見つからずに済ませるのは無理がある。]
なんて説明すっかなー。
[うわの空で、何か口実が降ってくるのを待つ。]
…………、……
ミハイロフ様は知っておられます? ――この館の噂を。
[何気ない口ぶりでさらりと問うた。
肯定の返答ならば、つと深碧を彼のほうへと向けるだろう]
……宴待たなくても、軽食ならもらえるかな。
[足を引きずってだした結論。
城の中には現役の軍人もいるらしい。
顔を合わせることへの後ろめたさはあった。――向こうが事情を知らなくても]
えっと……こっちの方向でいいのかな。
ありがとう。
[すれ違った使用人にそれとなく厨房の位置を聞き出し、そちらの方へと足を向けた]
何も浮かばないねー。
[御当主の趣味を垣間見たのは、知らぬ振りをするのがマナーだ。
触れ回れば要らぬ火を起こすだけであるというのを承知してるが故。]
ま、こういうったのは勢いかなー。
[考えに考えを巡らせた嘘よりも、とっさに閃いた嘘をごり押しする。
それが自身に一番合ったものだと頷き、のんびりと進む。
屋外の階段を上り、大広間への扉を前にして立ち止まった。]
開けられないねー。
[両手は塞がっており、足で開けるのは少々辛い扉。
結局、己一人ではどうにもならないと諦め、一度咳払いして声を出す準備を整える。]
中に誰か居られるか?
[扉の向こう側へと声を投げかけ、開かれるのを待つ。]
―厨房前―
……っても、アレかな。
忙しいって追い出されちまうかな。
[強引に扉を開ける勇気もなく、腕を組んで前に佇むのが青年の限界らしかった]
――本塔4F/廊下――
我が主。
[こちらの姿を見て眸を細めた主>>139に返すのは、薄い笑み]
素性がまったく知れない亡霊が迷い込んできました。
名前はアリョールといって――ああ、名前だけはなぜか覚えていたのです――足がなくなっていました。
[ふと思い出したように付け加えた]
切られたように。
[亡霊は死んだ時の状態をとどめることが多い。ならばあの亡霊は足を切られて死んだのだろうか。
推測をするも口には出さなかった]
[礼拝堂からの悲鳴は、微かに聞こえただろうか。
しかし紅茶と薔薇の香り、そしてこの城の空気に浸っているため気付いていない。
残ったジャムを舐めながら、また紅茶を飲む。]
薔薇をジャムにするなんて、想像もしなかったけど。
素敵ね。
[お気に入りのものを見つけたと、クスクス笑いながら宴が始まるのを待つ。**]
――わっ、
[怒声が飛んできたのは厨房の中ではなく外だった。
刺々しい声に身を竦ませ]
す、すみません!料理人の方ですかっ!?
そりゃあ邪魔ですよね、俺!
[盛大に謝って扉の前から身を翻す。
声から女性だと知れたが、戦場に居た頃の上官を思い起こさせる迫力を感じた]
[ふん、と相手を一瞥すると厨房に入る
料理人達は一瞬こっちを見たが、誰だか分かると直ぐに宴の支度に戻ったようだ
一人だけ、こっちに近寄って何か御用ですかと聴いてくる]
腹が減った
肉料理で何か用意しろ
[かしこまりました、と言うと調理台に戻って行く
出来上がるまでしばし待つ事にした]
(あの亡霊の素性よりも今は――)
[客室の掃除をしていた時に窓から見かけ、そして先程も、主の部屋に続くこの廊下で見かけた少女。
年の頃は10代半ばだろうか、その面差しに見覚えがある気がした。
そう、]
(俺が人間としての生をやめるきっかけとなったあの事件が起こる少し前に――――)
[ふいにはっとなった表情で、男は現実に意識を戻した。
報告を聞いた主が、揶揄るような響きで言葉を紡いでいた>>214]
外から来た得体の知れない者に敏感になっているだけですよ。人間であろうと亡霊であろうと、放っておくわけにはいかない、と。
――もう一年前のような出来事はこりごりですから。
[一年前、吸血鬼狩りを生業とする者によって多くの眷属が葬られ――そのせいで生き残った者の仕事が増えた事態を指してそう言った]
[フィグネリアが立ち止まれば目をあわせただろうか、
その時は無言で歩くことを促し―]
有名ではありませんか。
ここは―
[声のトーンを落とし]
吸血鬼が棲む……とね。
[唇の端が上がる]
そちらこそ、そのような助言を授けるとは珍しいですね。
[もう一度彼女と話してみるといい――主の言葉に最初に零れたのは礼ではなく、ただの雑感]
どうせ俺の様子を見て愉しむつもりでしょうが……有り難く受け取っておきます。
――そういえば、宴はあとどれくらいで始まるのでしたっけ?
[主の返答を聞くと、男は客に向けるそれよりも遥かに恭しく一礼して、その場から消えた**]
―― 庭・薔薇園 ――
[庭の淵をゆっくりと。
あちこち遠回りして巡ったためか、庭でも一際美しい薔薇園に辿り着いたのは、
同時に城外へ出たグレゴリーが立ち去った後のことだろう。
道中の庭園では、先程見かけた門番が、
手際よく花の手入れをしている姿>>166でも見かけたか。
何でも出来る人なんだなあ、そんな感想を脳裏に浮かべて]
……うわ、…凄…っ。
[咲き乱れた紅い薔薇。
噎せ返るような甘い香りの中央で、青年はただ息を飲んだ。
こんな豪華な薔薇園は初めてだ。
簡素な村に暮らす青年にとって、
全ては自分とは縁遠い金持ちの道楽のようにも、見えた]
しかし、だからこそ“興味”がありましてね。
[自嘲気味に語る。そして、談話室につけば扉を開け]
ここなら人が来るでしょう……
宴まであと少し、こちらでお休みになられるとよろしいかと
[誰もいなければ誰かが来るまで一緒にいただろうか。
誰かがいるか、来れば、静かにその場を離れるだろう。]
あれ、違うのかな。
[一瞥に肩を竦めつつ、彼女に続いてそっと厨房の扉を開けた。
宴の準備に忙しそうな使用人たちだが――ごちそうの匂いを嗅ぐと空腹が抑えられず]
あの……何か、余り物でいいんですけど、あります?
[忙しそうに動く料理人だが、これでよければと多少焦げ付いたパンをさし出してくれた。
ありがたく失敬しつつ、肉料理を注文したらしいトリスの背中をちらちらと見やる]
失礼を承知でお尋ねしますが、
あなたも、ここにお住まいの方なのですか?
―――…分かっているわね。
だってイヴァンは私とは遊んで呉れないのだもの。
[拗ねたような口振りをイヴァンに向ける]
宴は――…もうすぐ準備が出来るんじゃないかしら。
アヴァクームも滞りなくと言っていたから。
-- 本棟廊下 --
レディって、疲れるわ…。
[なんとか北塔の階段を降りて、本棟の廊下へと。]
[ここが平原のぼこぼこの地面でなくてよかったと心の底から思った。]
もう、悲鳴の騒ぎは収まってしまったのかしら。
ホントに悲鳴だったのかな…?
[軽く屈んで膝をとんとんと叩いてまた背を伸ばす。]
[とにかく、どこかに座りたいし喉がカラカラだ。]
―大広間前、扉―
ふむ……どうしたものかなー。
[腕の中に抱く女性を眺めながらぼそぼそと呟く。
眠るような横顔に良からぬ考えが脳裏をかすめた。]
――腕力が落ちたのかも知れんねー。
[女性に対する禁句を避け、自身の腕力の問題と結論付ける。]
おーい、誰もそこに居られんのかー。
[先程よりも大きな声になったのは、若干必死さが滲み出た結果かもしれない。]
[其の場にしゃがんで、一輪の紅薔薇を慎重に手繰り寄せ、
自らの鼻に近づけた。深く、息を吸う。
甘い、あまい――
鼻腔を、脳を、ゆるりと侵食していく濃い香りに眩暈がして、
思わず目を瞑った。
頬をそよぐ風が、薔薇の味方をするように…耳朶の奥まで匂いで満たそうとする。
真綿でじわり、包む様に。
甘い香に酔わせて、何も考えられなくなる様に]
……、は……おかしく、なりそ…。
[首を軽く振って、周りの何かを払い落とし。
青年は、吸い付くように手に馴染んでいた薔薇から手を離した]
……あ、いや、大丈夫です。ありがとうございます。
[聞こえてしまったらしい。嚥下して、笑った]
泊めてくださるなら、正直なところ、何でもするつもりですよ。
逆に使用人の方に失礼になっちゃうのかな。
[去るトリスの背を見送る。
ふう、と大きく息を吐いた]
-- 本棟廊下 --
[ふんふんと鼻を鳴らす。]
[どこからか、小腹を刺激する匂いが漂ってくる。]
お腹、すいたぁ。
[きゅう、とお腹に手を当てて匂いの招く方へと。]
[扉の開く音が福音のように聞こえた>>234。]
やあやあ、助かった。感謝します。
[目の前に現れた見知らぬ男に礼を告げて、室内に身を滑り込ませた。男に少女を預け、手を軽く振る。>>235]
このお嬢さんが転んでしまわれてな。
気を失っているだけだとは思うのだが……どうも、この屋敷は不案内なのでな。
ここ以外に休ませていい場所が見当たらなかった。
[出まかせをいう時のコツは、堂々とすること。
広間を見渡せば、フィグネリアの姿もあっただろうか。]
何処を打ったかまでは霧のせいで見えなかったが、息もあるし大事ないだろう……頭を打ってたなら、目覚めてから錯乱するかもしれない、がな。
[本棟四階の廊下に独り残るは城主のみ。
騒ぎがあろうとも別段気にする風ではない。
幾ら騒ごうと城門は固く閉ざされている。
今はビクともせぬだろう]
――…逃げられないよ。
[あやすような音色で独り言ちる。
魔の本性を知りながら逃げなかった者を想う。
人間に、逃げないで、と懇願する事はない。
魔性は人間とは違うものなのだと理解している。
同じ時間を生きることは出来ない。
だから、束の間、人間と戯れるか。
似た存在へと変えてしまうか、それだけ――]
[少女の悲鳴が聞こえたのは、丁度その頃だったろうか。
え?…と、礼拝堂の方へ視線をずらすも、……だが躯が気だるかった]
今の、…え……悲鳴…?
[行った方がいいのだろう、行くべきだ、とは思う。が、]
……あ、…。薔薇にあてられた、かな。
[微苦笑を零しながら呟いた。少しふらふらする。頭が痛い]
駄目だ。……でも、行かないと…。
[何故、行かねばと思うのか。
よく分からない思いで、それでも覚束ない足取りは、
ゆっくり礼拝堂へと向かう。
件の少女を抱いたグレゴリーとは、気づかぬ距離ですれ違ったのだろう]
だいぶ、冷えてきたようね。
[体調のこともあり、ニコライを見送るのみに。
使用人に暖かな茶を頼み、
柔らかすぎぬ質の良いソファに腰を下ろして息をつく]
……まだ、宴前だというのに。
[オリガを遠慮がちに伺い、目が会えば会釈をして。
誰かが来るか、話しかけられるまでは休息を*とる*]
宴の料理なのかなあ。
[ハイヒールもやっと慣れてきた。]
[とはいえ歩く速度は早くない。]
あ、近い。
[立ち止まって、またふんふんと。]
[匂いが近づいて来ている気がして、瞬いた。]
[少女を抱えどこか横たえる場所はないか探す]
失神しているだけでしょうか…
何もなければよろしいのですが…
[談話室に戻り、フィグネリアが座るのとは別のソファーに横たえる]
― 本棟三階・自室 ―
[着ていたドレスを脱ぎ落とす。
侍女の手によらない着替えは久方ぶりだった。
宴の為に用意したのは、矢張り喪服のように黒、そして黒に限りなく近い灰と紺が基調]
少し動き易さを重視し過ぎたかしら。
[独り言ちた。
裾から右の膝上まで深く入れた切れ込みはともかく、ゆったりと布地の多いドレスから躯のラインにぴたりと沿ったデザインのものに着替えれば、ナイフを二本身につけることは難しい]
手ぶらで歩き回る気はないのだけれどね。
[キンジャル――精緻な象眼の施された刀身がS字に湾曲している、貴族の護身用の短剣――を枕元に置き、もう一本を。
椅子に右脚をかけて、ドレスをたくし上げた]
まあ…いいわ。見えても。
貴族連中の下らない舞踏会じゃあるまいし。
[腿の薄く滑らかな皮膚に指を這わせ、革のベルトをきつく巻く。
銀色の十字架のようにも見えるスティレット――刺突専用の刃のない短剣――をベルトに挟み、具合を確かめた。
脚を下ろして真っ直ぐに立てば、ナイフを隠す太腿はそう目立たないよう。
片眉を上げて息を吐き、身繕いを調えた。
鏡の中の女は、目許に不機嫌な色を佩いて、しかし愉しげにたおやかな笑みを浮かべている]
[再び足を向ければようやくおいしそうな匂いの出所を見つける。]
[それは料理を手に移動する人で。]
こ、こんにちは。
[空腹は愛想笑いで誤魔化した。]
[今まで感じたことのない空気―海のにおい―を感じながら。]
――南塔/入り口付近――
[主の前より姿を消した男が現れたのは南塔に入る扉の前]
……主はなぜあの『海賊紳士』の名前を?
[『海賊紳士』――トリスが招待されていることを男が把握していなかったわけではない。
男はあの者を知っている。彼は数十年前にも宴に訪れたことがあったが、周りの人間に混じって宴を愉しんでいた。
何か騒ぎを起こすような者――例えば、手当たりしだいに人間を襲うとか――には見えなかった]
……
[無言で、南塔を見上げている]
―― 礼拝堂前 ――
[吸血鬼の城には似合いの様にも…不似合いの様にも感じさせる、
祈りの為の建物。
広い庭を通り過ぎていくばくか歩けば、其の白い礼拝堂が眼前に現れた。
扉は閉まっていた。人影は見えない]
誰も居ない……やっぱり、気のせいだったのかな…。
[じっと扉を見つめた。開けていいものか、しばし迷う。
一歩二歩、と建物に近づき、揺れる視線をドアノブに漂わせて…
それでも好奇心か何かに負けて、指先が扉に掛かった瞬間だった]
………え、……なに…?
[声が、聴こえた。この城には――]
[兄の手紙にあった言葉を思い出す。
目の前の紳士が信頼出来るかどうかは解らないのだ]
…ごめんなさい。何だか怖い夢を見ましたの。
お水をいただけるかしら?
あの、…
[そっと探るように]
あなたがここまで運んで来て下さいましたの?
わたくし、確かお屋敷の外にいたように
思いましたので…。
―音楽室―
[人気の無い音楽室で何もないはずの場所に影が出来る。
その影はじわり地の底から滲むようでもある。
影がゆらぎ人のカタチへと変わればそれは何時しか城主の其れへ]
イヴァンが思い出させるから……。
[言い訳じみた言葉を一人紡ぐ。
ハープへと歩み寄りその弦を爪弾いた。
その楽器特有の優しい音色が響くけれど――]
――…あのこのようには弾けない。
[もう聞く事叶わぬ旋律を思い出しその顔は憂いを帯びる]
[―――"宴"が、始まるのだと―――]
……ん…、…っ…、…
[燻りを抱えながら、
今の娘に出来るのは、
甘く艶やかに囀る事だけ。]
[香油を薄く付けた掌で黒髪を束ね、低い位置でシニヨンにする。
ピン一本で留めただけの緩いまとめ髪だが、そう崩れはしないだろう。
首元が寂しくなったのでシンプルなルビーの首飾りを巻くと、モノクロの姿に朱唇と宝石だけが紅く、緋く]
――そろそろ始まるかしら。
[すっかり暗くなった窓の外を見遣り、手燭を灯すと廊下へと出た――→一階へ]
吸血鬼が居る…?
[その瞬間浮かんだ思いは安堵だった。
――ああ、やっぱり『居る』んだね、と。
俺は、ちゃんと吸血鬼の城に来たんだね、と]
誰か、……中に。居るのかな…。
[ひとつ深呼吸してから扉を開けた。
身体を滑り込ませるように中に入り、ぱたり。後ろ手で閉める。
埃に塗れた床。甘く、にごった空気。
其れは何処か、先程の紅薔薇の香にも似ていた。
天井付近の硝子から入る鈍い光はゆるゆると堂内を照らし、
――奥の、白いドレスの虜囚の姿を、無慈悲に露にするか]
…な、………な…、に…?
[息を、飲む。この光景は――なんだろう。これは…]
── 礼拝堂 ――
[扉の前に華奢な体つきの黒髪の少年がいた。
中へ入るべきか躊躇っている様子に不思議そうな一瞥をくれる。]
鍵はかかっていないはずだ。
礼拝堂は本来、神の救いを求める者に常に門戸を開いているべきなのだから。
──失礼、
[少年の脇を抜けると、入り口の聖水盆に指を浸して額に触れ、足を半歩引いて腰を屈める謙遜の礼をして中へと入る。
しばし外扉を押さえて、少年が後に続くか様子を窺うが、そう長く待つことはない。]
―本棟二階・一室―
[通された部屋の中をぐるりと見回す。]
ここは八点だねー。
[上着を脱ぎ捨てると、ゴトリと音を立てて床に落ちる。
気にせず備え付けのクローゼットを開き、笑みを浮かべた。]
うんうん、しっかりしてらっしゃる。
[黒を基調とした紳士服に手を伸ばし、袖を通す。
まるで自分が作らせたもののように、自身に合う丈だった。]
ここまでぴったりとは恐れ入るなー。
[着替え、姿見に映す――絢爛とは呼べないが、下品ではない。
落ち着いた雰囲気を纏っているようだ。
これならば美男美女の邪魔にはならないだろう。
まるで、あの剣の対極のような――]
預けちまったのはやりすぎかなー。
必要にならなきゃいいがなー。
[独りごちて、先程投げ捨てた軍服を拾い上げてクローゼットに押し込みながら、礼拝堂に囚われていた白装束の女を思い浮かべた。]
……まあ、他人の趣味に口出す趣味もないが。
[ふと記憶によぎったのは『騎士』という言葉。
己が騎士ならば、有無を言わずに開放するのだろうが……。]
やれやれ、騎士にはなれん性分だねー。
[己に不都合でなければ、わざわざ事を荒立てる心算もない。
姿見の中の己は、自身を蔑むような表情を浮かべた。]
……さてと、行くかなー。
[首をこきりと鳴らし、部屋を後にした。]
[ドレスを汚すところだった、と言われて服を見下ろす。]
[言われてみたらその通りだったのかもしれない。]
[まさか、空腹でドレスを忘れていたなんて…。]
えっ?
いえ、えっと―の、喉が渇いてしまって。
お城の方にお水かお茶を頂こうと探していたのです。
[まさか、その肉を求めて―とは言えず。]
[あは、とはにかんだ。]
[ただ、エスコートと言うその人は男性的な雰囲気もあるけれど―]
[なんとなく、女性のような気もして。]
― 食堂 ―
[卓上に並ぶは、客人をもてなす為の馳走。
紅黒く熟れた葡萄酒。]
さて、御客人方をお呼びしましょうか。
[僕が手を鳴らせば、その影が無数に伸びる。
やがて客人たちの許へと辿り着いたそれらは。
宴の準備が整ったことを、僕の声で告げるだろう。]
[高く切り取られたアーチ。
石の建造物特有の時間の止まったような空間は薄暗く、訪れる者を厳粛な気持ちにさせる。
だが、この礼拝堂においては、天球を象るクーポラから提げられているのはランプでも香炉でもなく、布に絡めとられた稚い娘だった。
白薔薇の花弁をつづった白いドレスは天使が身を覆う翼にも似て]
──囚われの小鳥
[夢で見た光景がフラッシュバックする。]
― 礼拝堂 ―
……っ、…ぁ、…だめ…
[紅く泣き腫らした眸。
長い睫毛に伏せがちに。
礼拝堂に這入り込んだ者へ流し目を。]
[説法の声が響くよう造られたそこは、小鳥のあえかな息づかいをも切々と共鳴させ、
ステンドグラスを抜けてくる弱い光もまた、嗜虐の構図をほのかに浮かび上がらせる。]
──なんということを。
たまには手入れしてやらんと、見栄えが悪くなるからな。
[独りごちると、時折水を撒きながら花々を
丁寧に手入れしていった。
すれ違っていたのか、ロランもいたことには気付かなかった。
時折手折られた花を見つけると、溜息をつき]
やれやれ。
彼等は花壇の花に悪戯しないようにしましょうとは教わってないのだろうかね……。
― 食堂 ―
一番乗りね。
[アヴァクームの影が伸びる様は見ていない。
席に促されれば着席し、葡萄酒が燭台の光を吸収して紅黒く光る様子を眺めた]
―サロン(談話室)―
[先程の少女は目覚めただろうか。
身支度を済ませ、階段を下りてサロンへと入る。]
失礼。
[声をかけて扉を開ける。
先程少女の少女は目を開けており、ふと息を吐いた。
その後先程の紳士の名が出てこず、名乗っていないことを思い出した。]
初めまして、ですな。
先程は挨拶もそこそこに申し訳ない。
グレゴリーと申すものです。
[少女と紳士、二人に向かって一礼。]
[耳に残るは主の声>>223。まるで誘うような甘い響き。
かつてあの声に誘われて、死にかけていた男は、主の血を貰って生き延びることを選んだ。
大切な家族や友人――それに想いを寄せていた少女の元へと戻るために。
だけど。
結局、男は彼らの元へと戻れなかった。
彼らは死んだと思っていた男が戻ってきたのを大いに恐れ、村から追いやってしまった]
思い出さないようにしてたのに……
あの子を見かけたからこうなったんすかねえ?
(あの子は似ている――俺がまだ人間だった頃、初めて恋をした少女に)
[黒髪の少年が立ちすくむ様子に、彼はあらかじめ、この状況を知っていたのではないと察する。
囚われた娘が投げかける視線もまた、それを裏付けていた。]
──…。
[それは別にいい。
問題は──礼拝堂のこの有様を城主が知らぬはずはないということだった。
むしろ、娘が囚われて (というのは控えめすぎる表現ではあるが) いるのはイライダの命令なのだと考えるのが筋だ。]
[ニコライからグレゴリーにそっと視線を移す]
>>277>>281
では、あの貴方が…ありがとうございます。
…わたくし、どこで倒れていまして?
運ぶの、大変でしたでしょう?
最近はときどき胸が痛む事がありましたので。
[言い繕う様子は若干空々しく聴こえたかも、しれない。]
わたくしはカチューシャと申しますわ。
お二方ともよろしくどうぞ。
ここへはイライダさまのご機嫌伺いに参りました。
この後、修道院に入りますの。
[だが、礼拝堂へ行くことを許可したのもまたイライダだった。
見られて困るものならば、礼拝堂は修復中だと言うなり、この娘を早々に別の場所へ移してしまえばいい。
そうしなかったということは、イライダはこの光景を見られても構わなかったということになる。]
──…。
[不用意に近づくなと、黒髪の少年を手で制しなからユーリーは囚われの小鳥を見つめる。]
[小鳥の嗜虐的な姿に、
痛々しく辛そうな…けれど何処か悩ましげな其の様子に、
…魅入られそうになる。
静かな礼拝堂に、だから彼女の零れた啼き声は
小さくとも良く響くのだろう]
なんで、…こんな……。
[呆然と立ちすくむ。
隣の男性が平然としている気配が伝わってきて、
これは普通のことなんだろうか、なんて戯言が浮かんで、
いやそんなことはないだろうと否定する。
だって、だって、…可笑しいじゃないか。こんなの]
>>288
そう。わたくし、そう言えば白薔薇に見惚れていて
転んでしまったのだわ……お恥ずかしい限りですわ。
[瞬時、探るような目線で見つめ返した。]
宴――そう言えば、イライダさまも仰っていたわね。
エスコートしていただけるかしら?
―廊下→食堂―
――っ!?
[ふいに聞こえた声に身を凍らせた。
その内容は、宴の準備ができたという連絡だったのだが。
亡霊。
その単語が、一瞬脳裏を真っ赤に染め上げる]
誰かが――誰かが、いたんだ。
使用人の人と、すれ違ったんだ、そうだ。
行かなくちゃ。顔だけでも出しといたほうがいい……
[蒼白い顔で、食堂の扉を開いた。
怯えた目付きで、中を見る。
案内されれば――されずとも、隅の席に腰掛けるだろう]
待て。
[今度は声に出して少年を制した。]
この娘が魔物で、聖なる力によって、かろうじてこの場に封印されているのだとしたらどうする?
[すぅ、と宴の場に現れる。
最初に席についた人物をひと目見れば、当たり前のように声をかけた]
――ナースチャ。
まさか、ここで会うとは思わなかった。
もう少しで、顔を忘れてしまうところだったかもね。
[無論、そんなことはないのだが]
[城主は礼拝堂に足を運ぶ気はない。
何れ知られる事、早いか遅いかの違いだけ。
小鳥の枷を外されたとしても何も咎める事は無いだろう。
少なくとも彼女は城の外に出る事は叶わないから。
小鳥が城主の血を抑えきれるかどうか――。
それが来訪者たちの命運をわけることになるやも知れぬ、が]
――…ああ。
[ハープを爪弾く指先に微かな熱と痛みが生じる。
ややして人差し指の腹には薄らと赤が滲んだ。
ちろりと紅い舌先が蠢き其れを舐め取る]
自分のじゃ、酔えない。
[詰まらなさそうに呟く]
>>295
ええ。そうね。
(…この男は、わたくしに嘘を付いている。
動機は解らないけれど、この事は覚えておきましょう…)
[一瞬キラリとした視線を向けると
ニコライとグレゴリーの腕を取った]
参りましょう。
[庭を一頻り回り、食堂へ。]
ふう…動き回ったらお腹が…そっか、空かないか。
[何も食べる必要がないということは、体重や栄養の心配もしなくていいんだな、とやや見当違いのことを思いながらも、やっぱり食べ物が気になるようで人々が美味しそうに食事をしているところを見つめている]
[上の空で、首元を彩るルビー、赤のコランダムを指で探る。
紅く熟れた血紅の石]
……。
[目の前に兄がいること、声は聞こえず姿も見えず、気付こうはずもない。
卓上の蝋燭が不自然に揺れたような気がした、それだけだった]
[食事の風景を見物し、とりあえず満足したので談話室へ。そこで会話をしている男女数名の話に聞き耳を立てる]
宴…そういえば、昨日イヴァンさんが言ってたような。
[―宴が始まれば、あなたはここから出られなくなる―]
出られなくなる…って言ってた、と思うけど………どうせ帰るところも思い出せない。もうずっとここで彷徨い続けても………
[それがどれだけ突飛な結論だったとしても。
自分を匿うと言ってくれた淑やかなイライダを疑うよりは、ユーリーにとって納得のいく答え。
そして、娘は「自分にかまわず去れ」と涙ながらに訴えたのだ。
聖なる場所によってかろうじて保たれているはずの娘の「正気」を信じるのであれば。]
Jacta cogitatum in domino, et ipse te enutriet.
──神のご加護を。
[娘に呟き、そして正面祭壇に向かって十字を切ると、ユーリーは踵を返した。
自身の正気の危うさは、自分で知ることはできない。]
[そこまで言葉を紡いで、止める。]
いや、私は思い出さなければいけない。何か…「大事な人」に伝えなければいけないことがある………そんな気がする………
[その人を探し出そう。そして思い出すんだ。その決意を胸に宴に向かう人々についていく]
―音楽室―
[指先の傷は直ぐに癒える。
じ、と物思うようにハープを見詰めていたが
アヴァクームの影の気配に我に返る]
本当に気の利く――…。
[満足げに笑み浮かべる城主の貌からは憂いは掻き消えて]
[すらり 音を立てぬよう、細心の注意を払いながら、
食堂へと足早に歩みを進め。
──すれ違う者がいれば、会釈を交わしただろう]
…今晩は。
[領主の娘に相応しい姿を──
上品に、ゆっくりと食堂に入っていった]
[鋭い棘を刺して、踏み躙ったらどんな顔をするだろうと。
束の間、頼りなく揺らぐベルナルトの表情を見つめ、唇を舐めて湿らせた]
――客人方はまだお集りではないようよ。そう焦る事もないでしょう。
食前酒くらいは、先に嗜んでいても怒られないかもしれないわね。
[視線を外せば素っ気なく、呟いた]
[一人紅茶を楽しんでいれば、誰かがサロンに入ってくるのが見える。>>227
視線をそちらへと向けたが、すぐに視線をカップへと落とした。
それでも女がお茶を頼んで近くのソファに座れば、ついでというようにこちらへももう一杯、と声をかけた。>>241]
ごきげんよう。
紅茶も美味しいですけど、ジャムがとっても素晴らしいですわよ。
[気分が良かったのかそう声をかけながらも、薄いピンクのジャムを見せるように指ですくってそのまま口へ。
普段は行儀が悪いと思うのだが、今はそんな事を思う事もなく。
新しい紅茶が来たのが先か、それとも少女を抱えた男が入ってきたのが先か。>>>244
ソファに寝かされる少女から視線を逸らし、のんびりとジャムを舐めながら紅茶を飲んでいた。]
―本棟地階/食堂―
[床には真紅の絨毯が敷かれている。
テーブルには白いクロスが掛けられ花瓶には赤と白の薔薇が飾られた。
そんな卓上にはアヴァクーム選りすぐりの贅を尽くした料理の数々が並んでいる。
飲み物はシュテファンの見繕った赤の葡萄酒の他に
子供向けには甘く爽やかな果汁も用意されていた。
客人が望めば望むものが用意される宴の場。
しかし、その場に、城主が姿を現す事はない]
何分不慣れなものですから……
[ごまかしきれていないことを悟る。
ぎこちない笑みを返して]
ああ、そうですね。お酒か……
[いっそ酔い潰れてしまったほうがいいのかもしれない。
そんな事を考えながら、しかし注文の声は挙げず。
そのまま目線を伏せた]
『あなたがここにいると、この子は幸せになれないのよ――』
[戻ってきた男に向けて初恋の少女の両親はそう言った。
男は少女の幸せを願っていた。
だから男は村を出た。
村を出て再び森に分け入った男はやがて、自らの中に入って滲んだ血に誘われるように城の前に着いていた。
それからずっと、男はここにいる。
いつか退屈がこの身を滅ぼしてくれると信じながら。
幸せになってほしいと願った少女はもうとっくにこの世にはいない]
>>304
[歯の浮くような世辞にも軽い笑みで返す]
(グレゴリー、軍人風の挙措……そういえばこの人は
ひょっとするとあの家の一番下の…)
[その生まれに思い当たり
若干侮蔑の表情が浮かんだかもしれない]**
「 吸 血 鬼 」
[掠れた息の下で囚われの娘は告げた。
その言葉にわずかに眉を顰める。
武器をもって屋敷に押し掛けた領民もまた、ユーリーたち貴族を「民を搾取する吸血鬼だ」と誹り、気勢をあげていたから。]
──見る者からすれば、わたしも同類なのかもしれんな。
[投げるように言いおいて、礼拝堂出る。
今度は、少年のためにドアを支えておくことはしなかった。]
―回想・本棟地階/廊下―
[薄暗い酒庫を出て、食堂へ向かう。宴の開始にはまだ時間があるはず。]
あの方は気に入って下さるだろうか。
[宴の席に城主が顔を見せないのは知っている。ただこの城を訪れた客-人間-に粗末な酒を出すことは許されなかった。]
[中の者へと挨拶を済ませると、準備された席の前へと辿り着き
…どの席に座ったものか、迷って立ち止まった。
ここに集う者逹は、地方領主の娘などより位が高いだろう──
上席は、末席は。知らぬ事を悔いながら、右手を胸元に当てて戸惑いを見せる]
[しばらくそのような挙動をとっていたが、やがて意を決したように葡萄酒を注文する。
赤い色――だが、それは血のあかではない。心のなかで言い聞かせて、唇を湿らせた]
[さて、アナスタシアをはじめとする客人達の姿も
幾許か見られるようになって居ただろうか。]
もうじき、宴も始まります。
いま暫しお寛ぎ下さいませ。
どうぞ、ごゆるりと。
[一礼し、その場を後に。
向かう先は、酒庫番の許。]
[ピンクのドレスの愛らしい女性。
オリガのジャムを口に運ぶ仕草を、そっと目で追った]
ごきげんよう。
私はフィグネリアと申します。ここまで良い香りがしますね。
[それはジャムだけではなく、窓外からも。
穏やかな声音で続けようとしたとき、ニコライ達>>244が現われ
グレゴリーにも会釈し薔薇園の少女に心配げな視線をそそぐ]
こわい、夢。早く忘れることが出来ればいいですけれど。
[少女の目が覚めれば、軽い自己紹介くらいしたか。
ひどい怪我はない様子に安堵の息をつく]
……もう、外が暗いわ。
[そして宴の始まりを知る。グレゴリーの声>>304に席を立った]
[礼拝堂を出たところで、扉の影から老家令の声が宴の準備が整ったと告げる。]
──ああ、行く。
[老家令の姿は見えなかったが、気にするのは止めていた。
あの時も、老家令は緞帳の裏の使用人用のドアにでも滑り込んだのだろうと判断するに至っていた。
旅の疲れで自分の目が霞んでいたのだろうと。
理屈がつけば信じるのは容易いこと。
霧にも薔薇の香にも、あるいは城全体を錆びのように覆う血と亡霊の気配にも迷うことなく宴の席へと向かう。]
[食堂に入り、料理を並べている眷属がいれば葡萄酒を託す。少し会話もするだろう。]
[しかし人間が来る前にと、そそくさと酒庫へと戻った。]
―― 食堂 ──
[ベルナルトの姿を認めれば、そのままでいるようにと目知らせして、自分も使用人が案内した席へと腰を下ろす。
食前酒の勧めにはシェリーを注文した。]
― 礼拝堂 ―
早く… この城から… … 去って …
[吐息の合間に一語一語区切るように囀る。]
………ね
[低い位置から青年を見上げる。
眸は濡れ、爛熟した熱を秘めている。]
[宴の場には、やがて客がそろうだろう。
男はじりじりとした焦燥を覚えながら、しかし表には出さず]
……わたしは見てる。
あんたのこともね、ナスチェンカ。
[ともすれば子供扱いにすら聞こえる、一段上の愛称を呟いた]
―現在・酒庫―
[いつもの通り、葡萄酒の確認等の通常業務を行う。宴には興味がない、が。]
あの方が楽しみにしていたのだから、さぞ"素敵"なことになるのだろうな。
[ふ、と見上げる。見えるは酒庫の天井ばかり。思うのは、彼の城主のみ…。]
[ユーリーの姿が見えた。目礼し、グラスに再び唇をつける。
これは葡萄の酒だ。血ではない。
言い聞かせないと――だが、言い聞かせてしまえば葡萄の香りは心地良い。
ユーリーが礼拝堂で何を見たのかは知る由もなく。
適当に腹を満たしたら、切りのいいところで食堂を出てしまおうとすら考えていた]
[サロンにいた者たちと、食堂に移動して。
まだ会ったことのない顔もある中、
座る席に惑う瞳は吸い込まれるように卓上の華に向く]
…………。
[この華を見てはいけない。
娘が思い出すのは、自分とよく似た姿。写真のなかの”母”。
一度瞼を閉じて周りの様子を伺った]
― 酒庫 ―
ああ、シュテファン殿。
[彼の姿を認めたならば、呼び止め。]
さきほど、ニコライ様より賜ったものを。
[その詞が指すのは、シュテファンへと託していた赤>>0:59。]
[宴の会場に到着する。かなり華やかな雰囲気である]
うわぁ…すごいなあ………
[きょろきょろしていると、>>346、同じような雰囲気を醸し出している―普通の人間とは違う―人物を発見する]
あの人は…なんとなくわかる……私と「同じ」だ。
[ちょっと声をかけてみようか、と思ったが、神妙な表情に見え声をかけづらい]
―音楽室→酒庫―
[部屋に戻ろうか。
そんな事を思っていたが気が変わる。
自らの血の味を消してしまいたいと思った。
音楽室にあった城主の姿は闇にとけて
次に姿を現すのは地階にある酒庫]
――…あら。
アヴァクームも居たのね。
[瞬きしてアヴァクームの後背に声を掛ける。
その向こうにシュテファンの姿が見えれば笑みを浮かべ]
口直しがしたくて来たのだけど……
何かお勧めはある?
―食堂―
[カチューシャ、ニコライ、フィグネリアと連れ立って食堂に入り、案内に従って席に着いた。]
食前酒ね。何かお勧めはありますかな?
[最初から水《ヴォッカ》を呷るというのも芸がないが、それ以外の酒はあまり縁がなかった。
結局は勧められたものを頂き、宴が始まる前の談笑に加わる。]
―酒庫―
アヴァクーム。相変わらず忙しそうだな。
[>>351を聞くと少し眉をひそめ]
あの、人間が持ってきたものか。まあ宴にあの方はおいでにならんからな。
[嫌そうにしながらも、しっかり準備していたそれ>>0:59を差し出すだろう。]
[広間に入り、既にそこにいた他の客人たちへドレスの裾をつまんで礼をする。
卓上に飾られた華に笑みを零すと広間を見渡し――壁に掛かった肖像が目に入った。]
城主様、かしら。
[見下ろすような位置に掛けられたその肖像。美しい人だ。
しかし、それに描かれた人物はそこにはいないようで。小さく息を吐いて、空いている席――先程四阿で話した女の斜め前、彼女と同じく黒髪の女の前に座った。]
― 礼拝堂 ―
ボクは、…とらわれたの… んっ、 も…どれくらい経ったのかも、分かんない
[大きく胸を反らせば。
微かな衣擦れと共に湧き上がるのは甘美な快楽。]
―……ぁ、っ…、ん、…
[それに溺れそうになる。
けれど熱は燻る熾火に加えられるだけ。
――――何時かの記憶――――
師と共に訪れた村の先々で絡まれる事はよくある事だった。
―――狩る者。誰しも自分達の身に余る力を求めるのは一時でしかなく、道中の逗留であっても良い顔はしない。
村の大人達の気持ちは敏感に子供達に伝わる。
だから。――少女は、何時も苛められても、涙を流して睨みつけるだけだった。]
イライダ様…!!
このような薄暗いところへ。
[眷属への態度>>356とは一変して、表情から別人のように。]
口直し、でございますか。
昨年手に入れた軽めの"赤"がございます。
やはり私めは酒であろうと"赤"を口にするイライダ様が…
[後の言葉は続かない。]
[誘われる様に――そっと、手を伸ばした。
其の指先は僅かに、少女の頬に触れただろうか。
…紅い眸が間近に。
あの時、自分たちは彼女をなんと呼んでいたか。
苛められていた彼女を、それでも決して俯くことなく、
その赤い目で睨みつけていた彼女を、
…渾名で呼んでいなかったか]
………ラ…、ビ…?
[無意識のうちに零れた名。
彼女と似た誰かのものか、
彼女自身のことかは、伺い知らぬことなれど…]
[カチューシャ、グレゴリーについて宴の会場に入り席に着く]
ワインで…
[運ばれたワインに口をつける。普段見ることはあっても決して口にできない高級ワイン。]
さすが……ですね。
[そんな感想しかでない。
しかし、男は考えるのをやめ、“最後の晩餐”を楽しむことにした。]
アナスタシアね。
……?
[真横の女性の名前を確認していると、いきなり椅子を鳴らした姿に目を僅かに丸めた
が、腰を下ろすのを見て何もないのだろうと判断し
目前へと座った姿へ再度挨拶を交わして名乗りを始めた]
シュテファンはなかなか此処から動かないから
私が逢いにゆくのが早いかと思って、ね。
[酒樽からは葡萄酒の濃厚な香り。
この場所を訪れることは少ないが嫌いではない。
媚びる風ではないがシュテファンに向けるのは
機嫌の良さそうな音色]
軽めの赤――…
じゃあ其れを注いでくれる?
[アヴァクームをチラと見遣る。
其れは良いか如何かの確認の意味を込めて]
[向かい側に座った、妙齢の黒衣の女性がこちらを見つめている。
むしろ、睨んでいると表現してもいいくらい強い眸だ。
呟かれた名は、さきほど上着の返しにあった名の主だろう。]
ユーリー・レオノヴィチ・ザハーリインともうします、
ディエーヴゥシカ(お嬢さん)はこの服の持ち主を、ご存知の様子──
お気に触りましたらご容赦ください。
[傍らに浮かぶ亡霊には気づかないまま]
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