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なまえ ないの?
[泣いている、という状態を継続させる少女を見つめる。
負の感情の発露のようだと補助AIが判断して、では名前がないことは好ましくない出来事なのだろうかと。
本来の自分に名前がなかったことは間違いない。では自分も泣いた方がいいのか。
計りかねて、ソレは結局相手を模倣することはやめた]
AI 名称選択 自己定義
―――randam table
[傍らのavaritiaの「思考」を、そのまま口にする。ソレを制作したマスターが、唯一拘りを見せたらしい、プログラムの名称の共通項に類して]
Acedia――Luxuria――Ira――
[音声を発しながら、指を伸ばす。
少女の結膜嚢を満たし溢れる涙液に、避けられなければ触れただろう]
[少年の全身から、黒と白の棘が伸びる。
それはgameに生死が掛かっていると知り、動揺して立ち竦んでいた若い男を貫いた]
あはは、やった! 一人目だ!
[胸部、腹部、大腿を貫かれ、男はまず驚愕の、そして苦悶と恐怖の表情を浮かべた。
ぱたぱたと音を立てて、鮮血が床に落ちる。
データ上の生命のやりとりに、本来なら不必要なそれは、攻撃プログラムの一部として組み込まれていたオプションであった。
その紅色は、少年のAIに組み込まれた攻撃性を、より一層刺激する]
− target lose −
[男のアバターの姿は掠れていき、やがて消えた。
周囲から恐慌の、そして叫喚の声が聞こえる。
殺し合いは否応なしに連鎖していった]
[回想]
>>10
[ ――Ira――
突如告げられたその単語に、少女は思わずきょとんとした表情を浮かべる。
…それにしても、一体、この少女には、どの様なプログラムが組まれているのだろうか。『無駄に』表情が豊かなのだ。この表情を構成する容量を攻撃プログラムのソースに回せば、とても強力な破壊コードを組む事ができただろう。
少女はIraという単語の意味を自身のデータベースと照会し、該当がない事を把握する。だとすれば…このコーネリアスというAIが自分の存在を定義してくれたと言う事だろうか?]
Ira…私は、そう、名乗っても良いの?
[少女は思いがけず、目前に宝物を差しだされ、それを貰っても良いものなのか…そんな戸惑った表情を見せた]
>>12
[少女の表情を模倣しようとして、アバターの微細な表出変化に失敗する。僅かに瞼を大きく開いた形で、ソレは少女の声を聞く]
なのってもいい?
だいじょうぶ
[少女の頬に触れた指が湿る。雨のもつ属性とは異なり、液体に攻撃性は含まれていなかった。
フル回転するavaritiaと交信しながら、指を引き戻し、唇を寄せる。涙の成分として設定された情報を、味わった]
i-r-a
[イラ、と補助AIならば発音しただろうが、ソレが口にしたのは頭に柔らかな母音を含む音]
アイラ?きみはアイラ?
ぼくは――コーネリアス
[ソレがそうだったように、自己定義としてAIの名称設定されれば、自動的にBabylonのシステムに送られる。
中央のホログラムに、やがて少女のentry nameが表示される頃、開始カウントダウンは最後の10countを数え始めた>>#0]
だが、私に殺しの趣味はないぞ。
『それだってアタシ知ってるよ! だからこうして動かないキャロルの代わりに前に――ん?』
[その時ようやくECLATANTは周囲に降る雪に気付いたようだ。
雪はECLATANTの身体には触れることなくくるくると舞っている]
前に出るだけじゃ駄目だ。
ちょっとこのフロアに雪をばらまいて来い。
身の危険を感じたら――好きにしろ。
『わかったよっ!』
[元気よく飛び立つ妖精を見送ると、私は〈Concertino in Blue〉のフレームを展開した。
雪の一部を操作して、ECLATANTの後ろを着いて回るようにする]
いきなり雪が降ったら怪しまれるからね……
上手く雪を隠すんだぞ。
[塔全体を包もうとしている恐慌が私の元に届くまで、まだ時間はあるように思えた――**]
−4F−
−Timetable >>0:210 - >>0:216−
(ヂッヂヂッ)
クソッ。クソ。あー。クソゥ。
どこ行きャアがった。クソ。
[益体のない愚痴をこぼしながら、下階からのワープゾーンをくぐり男の姿が結実する苛立ちを隠そうともしない視線が辺りを彷徨い、歩を進める。
前さえろくに見もせずに歩いていれば、すれ違うように歩いてくる何者かにぶつかるのも当然だった]
あァ? ンだァ、手前ェ……
[ぶつかり、たたらを踏んだ相手に目を向ける。相手は銀髪のAIで、その動きはぎこちなく、そしてその体はびっしょりと濡れていた。
―――男の顔が、喜悦に歪む]
手前ェ、おい、お前ェ。なんだァ、オイ、そのなりぁ一体なンだァ手前ェ。
(ザッ!ザザッ!!)
そーかーそーか。どーしようもなくどうしよーもねぇクソみてェなクソ犬以外の何もンでもねェクソッタレと思ってたが、なンだ、お前ェ。それならいいんだ。それならな。
(ザザザザザ)
[ニダァ…と殺意を満載した笑みを浮かべながら、よろめいたAIの手を取り、その肩をいかにも馴れ馴れしくばしばしと叩く]
手前ェのツラと名前、覚えたからな。
[最後に短くそれだけ言うと、次の瞬間にはそのAIの存在も、先ほどまでの苛立ちも、何もかも忘れ去ったような上機嫌で、一足先にワープゾーンへと消えていった]
−to 2F−
[ドクン、ドクン、ドクッ、ドクッ、ドクドクドクドクドクドクドクドク――――]
[心拍音は狂ったように鳴り響き、人間Playerの精神に逼迫を抱かせる。
ハートはピンクから赤に染まって、今にも弾けてしまいそうに収縮と拡張を繰り返した]
あはははっ!
[楽しげな笑い声と共に、少年は駆ける。
中央のホログラムには、最初の狂乱の餌食となった者の名が、次々と連ねられていった**]
−2F−
−Timetable >>16 - now−
(ザッ ザザッ ヂヂヂ……)
[蔵書された文章データをノイズ化するという、無為な作業に戻った男に、以前のような苛立ちはない。
ただ、楽しみを心待ちするように、時折ニヤつきながら作業に没頭していた。
今は、時さえ過ぎればそれでいい]
……あァ。やっとか。
[ようやく聞こえたゲーム開始のアナウンスに、静かに呟いた。身を起こす。部屋を出る。Programを起動する。アナウンスの中に不穏な言葉が混ざっていたが、気に留めた様子もない]
(ザッ ザザッ)
いよーゥ、兄弟。
どうしたァ?楽しんでるか?ああ?
[途中顔を合わせた、面識もない参加者に、酔っ払いの無遠慮さで肩を抱く。唐突に絡まれた参加者は、アナウンスに困惑していて、そして自分に絡んできた男が何者かに気づき、青ざめた。慌てて自らの持つProgramを起動させようとして、そして全ては遅すぎた]
(ザザザザザッ)
どーしたって聞いてンだろォ?
なァ?お前ェみてぇなド三流はなァ。
無駄にあがこうなんざ考えずになァ。
せーいぜいブチ壊されるまでの間でもゲーム楽しンどきゃァよかったのに、なァ?
(ザザ!ザザザザザザザザ!!ザッ――――!)
[肩を抱く男の腕をノイズが走り]
じゃァな。あばよ、兄弟。
[哀れな最初の犠牲者を飲み込んだ]
―target lose―
(ザッ)
(ヂヂッ)
(ザザザッ! ヂッ! ザザザザザザッ ヂッ――――)
[笑い声を、ノイズを撒き散らしながら、男は歩く]
さァて…まずはどいつからブッ壊してやろうか…?
[既にいくらか、壊したいものの目星はついている。誰に行き当たるのが最初になるかと楽しみながら、男は再度ワープゾーンへと飛び込んだ]
>>17
[少女の笑みに、少なからず――ソレの意識は混乱を受けた。
把握出来ないこと、にavaritiaは沈黙し。ソレは正体不明の感情が浮上してきたことに困惑する]
…うれしい?
[音声としては低過ぎる呟きを漏らし。首を傾けて、カタチだけの思案を模す。
「エッホン、えーコホン」塔内に放送が流れれば、安堵にも似た処理で空転するプロセスを片付けた]
― 1階 time:now ―
[「それでは皆さん、頑張って。」男のバストアップが消える>>#5まで、ふらつく虚ろの瞳はホログラムのあたりを向いていた]
たたかう ころしあい
[所長の短い演説の間に、ピリ、という感触と共にinvidiaの機能が開放されていた。
同時に、第3のSub Programにかけられていた時限式プロテクトも解除される。superbia、純粋なアタックプログラム。制作者の性格を反映してか、何のひねりもない、が故に最も少量のリソースで最大の効果を産む――熱衝撃波を操るもの。
需要エネルギーが飛躍的に増大したことで、「餓え」のパラメータ閾値が急変動する。
――食べたい]
アイラ たたかう?
アイラ ころす?
[振り返れば、先程少女が浮かべていた、作り物とするにはあまりに精巧で美しい笑顔はそこにはなかっただろう。
アイラの涙の味が記憶上に再生される]
いただきます?
[相手を模したにしては不格好な、だがはっきり友好的な笑顔とわかる表情を浮かべて、ソレは尋ねる。gameを始めますか?と]
― 3F/複数あるワープゾーンのうちの一つ ―
……。
[ 大きく目を開いて、所長のホログラム挨拶を見ていた。]
……どういう、こと?
死ぬ……? LOGICが、死ぬ?
『噂はやはり本当だったか。』
!?
[ pierrotの言葉に振り返る。]
あなた達は知っていたの?
[ pierrotとseraphに問いかける。]
あなた達は、この事を知っていたの?
[ もう一度問いかける。
pierrotが、飄々としながらも渋い表情を浮かべ、答えた。]
『確実じゃあなかった。だが、可能性が限りなく高い噂だと製作者(LOGIC)が提示した情報だ。
噂に曰く。誰も帰っちゃ来ない。ゲームに負けた者も、勝利者すらも。』
……でも今。
『ロッテ。アンタはどれだけLOGICと共に居た。
政府が、統制機構が約束を守るためしはない。』
……。
なら。その事が分かっていたなら、どうして。
LOGICらしくないわ。これはまるで自殺行為よ。
『LOGICの確定していなかった罪が確定したのさ。
その結果、LOGICは永年囚人となった。俺達の製作者は、ポッドから出る事が出来なくなっている。』
……。今、なんて?
『ロッテ。LOGICは、「サイバージェイル」から出られないと知ったんだ。』
[ 暫くの間、押し黙り、動けなかった。それはまるで、言葉が体の隅々まで行き渡るのに時間がかかるようなものだった。]
……。私は、知らされていないわ。
[ 震えるような声で漸く紡ぎ上げる。]
[アイラの反応がどうあれ、会話は途中で断ち切られる。ソレらのいる1階で始まった、殺し合いの狂乱>>11>>18に]
…
おなか すいた
[avaritiaの指示に従い、アイラから視線を外し、敵性反応の強い方へ体を向ける。
ゴミの山に隠れるような位置。主な争いからは遠かったが――逃げ込むように目の前に飛び込んで来た参加者が、一人]
…
……。
私は、永遠(とわ)をLOGICと過ごしても良かったのに。
[ へたりこみそうになるのを、何とか留めていた。]
『だが、LOGICはそれを求めなかった。
アンタを。アンタを少しでも生かしたかったのさ。』
[ pierrotは、ふぅと強く鼻息を吹き出した。]
生かす?
私はAIよ。生かすって、どういう意味?
『LOGICは、「サイバージェイル」に入れられる前、電脳世界で拾ったアンタのデータを掻き集めた。それこそ電脳世界のありとあらゆる場所からな。いいか、ロッテ。アンタは―――』
待って。
それより……それより何故、LOGICは私をここに送ったの。負けてもLOGICは死に、勝っても……彼は死ぬかもしれないのに。
[ 希望を捨てきれず、勝っても死ぬという悲観的な事を断言出来ずに居る。]
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