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塔内部には、多数の球体型をしたセンサーアイが漂っている。
各フロアの中央中空には、
フロアの何処の位置からでも見えるホログラムが浮かんでいた。
とても簡単な塔の表示(線だけ描かれたようなシンプルな表示)と、
各フロアに現在何人の参加者が居るのかが数字で示され、
さらに大体の位置が光点で表示されており、
光点によって端に居るのか中央付近にいるのかが分かるようになっていた。
(LittleDancerが持つような地図はないようだ。もっとも、動画配信チャンネル「Channel:nHk」が放送する番組「Babylon」をもし見た事のある人物やAIがいれば、最初から、多少空間の把握はしているかもしれない。)
ゲームが始まれば、この中央中空のホログラムには、
脱落者と非脱落者のエントリーネームが表示されていく。
この電脳閉鎖空間「Bybylon」に踏み入る前に、
参加者のエントリーネームと対応する顔を知る機会がなかった場合は、
参加者を見る事によって、対応するエントリーネームが自動的に表示されエントリーネームを知る事が出来るだろう。
[檻の中から周囲を見回していると、中央付近に浮かぶホログラムが見えた。
ごく単純な塔の形に、疎らな光点。
1Fの端に表示された一つだけ色の違う光点は、恐らく現在地を示しているのだろう――と、推測する]
塔?
人、が、たくさん。
――こわしたら、どうなるかな。
[この場所で何が催されるか、少年のAIは知らない。
ただ、製作者により与えられた感情が、彼の目的を果たさせる。
即ち、破壊――そして、殺戮衝動]
[少年は立ち上がった。
先程の妖精の正体は、まだ、わからない。
エントリーネームが表示されないのは、参加者本体を目にしていないせいだろうか**]
― Babylon 4F ―
『よぉく聞きな、ロッテ。
アンタにとって必要な事はだ。
俺達の使い方を知る事だ。』
[ 雨を見つめたまま随分と長い時間が経った頃、pierrotは話し始めた。言い聞かすように、言い含めるように、人差し指を前後ろに振っている。]
『大体の奴は、持っているプログラムの事を分かっている。
プログラムを組んだ人間は当たり前。アンタと同じようなAIの参加者の事だ。
あそこにいる刀を持ったAIを見ろ。あいつは獲物(刀)のアタックプログラムの使い方を知っている。向こうのAIを見ろ。何も武器は持っているように見えないが、AI自体がアタックプログラムの塊だ。きっとな。こちらさんみたいに危ないぞ。』
[ pierrotは、人差し指の前後運動の反動を使い親指でくいっとseraphを示した。pierrotの動作に、seraphは無言で不動だった。]
『だがアンタは一つも分かっちゃいない。
俺達の製作者はアンタに教えなかった。』
― Babylon 4F ―
何故?
彼なら私に最初から教える事も出来た筈よね。
『アンタが……、』
[ pierrotは、まるで人間のようにわざとらしく間をとる。]
『そいつぁ、アンタが、LOGICの対話をしていたからだ。』
どういう事?
『アンタへ最初から使い方をロードする事は簡単だった。それ以上は今は教えられねぇ。時が来るまで、教える時が来るまで、アンタ自身で考えな。時が来なけりゃあ……、どちらにしろゲームに勝たねぇとどうしようも出来ねぇ。』
[ pierrotは、最後はぶつぶつと呟いた。]
『アンタは大事にされてんだよ。』
今は聞かないわ。
[ そう言って、細身の柱から手を離しフロアの端から中央へと向かい歩いてゆく。硬質な床が足音を硬質なものに変えた。]
[ 歩みが止まる。]
何か用かしら?
[ 見上げる先には、親しげに笑みを浮かべる男がいた。]
…Irvine。
[ 形の良い唇が、電脳犯罪者のエントリーネームを紡ぐ。]
[ その手を掴んで止めたのは、seraphだった。
しかも、掴んだだけではなく、圧力をかけ手首を折ろうとしている。]
待って。今はまだゲーム開始じゃないわ。
[ 若干驚きながら、seraphを制止しようとする。だがseraphは止まらなかった。男の方も笑みを消して、元から笑っていなかった目がそれより鋭くなる。]
ま…
[ 再び制止する言葉は出なかった。言葉に先んじてseraphがIrvineを殴った。ずざぁと男は滑らかな床を滑り、痛みに呻きを漏らしている。他の電脳犯罪者やAIの視線が注目するのを感じた。]
行くわよ。
[ 補佐AI達を促し足早に4Fを離れた。seraphは、暫くの間、BlackDahlia Irvineを殴ったままの臨戦態勢だったが、間も無く移動した。]
― Babylon 1F ―
[ 選んだ先は1Fだった。]
どういう事?
どうして私の制止を聞かなかったの。
[ 着いた先、ワープゾーンから出て少し歩いた位置で、後ろへ反転するとseraphへ問いかけた。]
【相手の位置は貴方にとって危険な範囲であり、相手は危険な快楽殺人者だ。開始前のペナルティを恐れたのか手札を見せたくなかったのか反撃して来ず貴方に一切の危害がなかったのは幸いだった。】
……。
『言っただろ。
俺達の使い方を先ず知らなきゃならねえって。
しかしま、これで俺達はちょっとした厄介を抱え込んだな。』
[ pierrotは意地悪く笑いながら肩をすくめた。]
『…おいアンタ。俺達の製作者も罪の一つに殺人があんだろうが!』
だからって。
[ pierrotが、切った言葉の後を引き継ぐ。]
『開始前に喧嘩騒ぎや脱落させようとする馬鹿はいないってか?
やる奴の一人や二体、居ないとは言い切れんよ。
それにゲームってのはハプニングがある方が盛り上がるって言うじゃないか。あぁやだやだ。人間様の考える事も政府の考える事も恐ろしいねえ!』
[ く、と少し強く口を結ぶと反転。
補佐AI達に背を向けまた歩き出した。]
『俺はそうそう強い力はないが、やっこさんに任せていれば大丈夫だって。』
[ pierrotが小走りで横に追いつき小声で話しかけてくる。]
『…そうなっちまうと、ちぃと具合は良くないが…』
[ ぎりぎり聞こえるかどうかのpierrotの声。
その呟きの大きさもpierrotに持たされた最終目標へ到達させるが為に、演算して出された結果上での行動。]
分かってる。
[ pierrotが、seraphに任せていれば良いと言った事へ返答した。
疑問は生じていたけれども。]
― Babylon 1F ―
[歩き出そうとしたその時、眼前に人影が現れた。
思わず後退し、背面側の檻に背を付ける]
おねえちゃん……誰?
[口に出して問い掛けたのとほぼ同時に、塔中央のホログラムに新たな名前が表示される]
Charlotte――それがおねえちゃんの名前?
[少女の姿をしたものを、じっと見詰める。
どこか金属的な光沢を持った、青色の髪。
傍らには黒服の男と――何だろう。
語彙の中で近い物を探すとすれば、ゴーレムといった所だろうか。動く土人形]
なんだか、怖いな。
[怯えた表情をして、無機質な戦士を見詰めた。
胸に抱えたピンクのハートが、きゅっと縮こまる]
5人目、NONAME (名前を入力してください) がやってきました。
//////////////////////////////
sub system check....
[OK]
main system run ....
/name ... [no name file]
/etc/AI/will ... reject
/etc/AI/think ... reject
/etc/AI/feel ... reject
main system fail
<entry name>(名前を入力してください)
//////////////////////////////
[少女は眠る。
未だ自らの生きる世界を知らず。
未だ自らの仕えるべき主人を知らず。
未だ自らの生きる意味を知らず…**]
―― Babylon 1F/ワープゾーン付近(>>26の少し前) ――
[空間のある場所と場所を繋ぐ。
電脳世界においては、やり方さえ分かっていれば実に容易いことだ。
そして――やり方をよく知っていた私は、犯罪者達や困っている人達の頼みに答えて、様々な場所を繋いできた。まるで、隙間と隙間を縫うかのごとく。
ただし、向こうが金を払ってくれた場合に限り、だが]
これのシステムを乗っ取れたら……偽者のワープゾーンをあちこちに作って、場に混沌を……
『いや、その前に偽物のワープゾーンをどうやって作るんだよ? そのためのプログラム持って来てないんだろ?』
[ECLATANTの声は〈prism〉を表示しているフレームから聞こえている。
現在探査モード中だ]
そういえばそうだが、ゲーム開始後にプログラムを組めば問題はないさ。
[さらっと答えた私に、ECLATANTが返してきたのは、しかし]
『どうしてだ?』
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