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[...は、冷え切った体を起こしながら、周囲を無防備にも見回す]
あれ…あたし?
[どうして意識を失ったかは、すぐに思い出すことができたけれど、どうして目が覚めたのか判らない。その時、過去の人狼騒ぎで覚えてしまった、香りと気配が周囲に満ちているのに気付いた。・・・・・それは血臭と獣の臭い]
[先刻見た陶然とした瞳とは違う、殺気に澱んだ瞳。
カチューシャとは、夕食時に一人だけ居た少女の事なのだろうと予想は付いていたけれど]
…………知らない。
私たちは彼女に会ってはいないから。
でも、見つけてどうする気だい?
私は何があったか知らないけど、でも、そんな風に子供を追いかけて、何がしたい……!!?
[未だ一等車両内とは言え、列車の廊下の幅など高が知れている。
退路を、或いは進路を塞ぐよう、彼の前に立つ]
[途中、ダニールが何かに驚いたように歩を止めた。
首を回すことも儘ならず、自身の名を呼ばれても振り返ることは出来無かったが、掛けられた声の主がユーリーとエーテルと知れば僅かに力を抜く。]
無事、と言いたいトコだけどな…
[このザマだ、と苦笑した。
ユーリーからタオルを渡されれば>>20礼を言って受け取り、傷口を抑える。直ぐにタオルは紅く染まったが、無いよりは気持ちが幾分か楽な気がする。
個室から出てきたナタリーから二人の死亡を聞いたなら、驚きに双眸は見開かれる。]
ロランと、ミハイル………が。
っくそ、一つの死体を見つけて戻ればまた死体かよ!
[あの場に居合わせたロランだけでなく、何故ミハイルが死んだのか。カチューシャを襲い、ロランに撃たれたあの人狼はどうなった?]
[出来れば事の仔細を聞きたいと思うが、それは叶わなかった。逆上したサーシャが舞い戻り、進路を塞ごうとするダニールを振り切って走り出す。]
――ッ!
待て、サーシャ!!
[ナイフから庇われて僅かに沈んだ身体は、そのまま廊下に崩れる。
ナタリーの方へと寄せる手は配慮だろうが、相手は女。血塗れの男を押し付けられても困惑するだろうと、この期に及んで微妙な心理が働いてしまうのは、情けなくも習い性。
ともあれ自分の体重を支えるのが精一杯で、走り出すダニールに声を掛ける時間は無かった。]
[サーシャが走り出す。ユーリーが追う。ダニールの手にはナイフ。
直ぐに追うことも出来ぬ身が、歯痒い。思わず硬い廊下の床に爪を立てた。
片手を上げ、エーテルがナタリーに治療を頼む声を制止する。]
治療はいい。気持ちは嬉しいが、今は時間がない……タオルがあるからコイツで抑えとく。
こんな訳の分からないまま、どんどん殺されて、喰われて、手遅れになるんじゃ……っ
[気力を振り絞って立ち上がり、二人の女性の反応を確かめる暇も無く、ダニールからやや遅れて列車後方へと歩き出す。]
― 食堂車 ―
[灯りが灯されたままの食堂車。
イヴァンの遺体が置かれたままの場では不謹慎だろうけれど、月の支配下に無い灯りの色に、微かにだけれど精神が落ち着くのを感じた]
[辺りを見回す。
カチューシャを探し奔走するサーシャを追って、ユーリーは既に食堂車両からは抜けたようだ]
[人気の無い車内。
ぱくりと開いた腕の傷が、露出した肉と流れる体液から夜気に冷やされて行く感覚に、怖気が立つ]
…………救急箱はナタリー君のところか。
[誰にとも無く確認の言葉を呟いて、飲料の棚に歩み寄る。
幸い此処は食堂車両、応急処置に使える物くらいは幾らか置いてある]
――――ッ、……っ。
[ぎゅ、と目を伏せウォトカの瓶を傾ける。
唇を噛んでも、40度のアルコールが肉を焼く痛みは耐え切れる物では無く、小さな呻き声が漏れる。
それでも透明な液体に紅を流され覗く桃色の奥の奥まで、肉を捲り消毒を施し、包帯の代わりにテーブルクロスを裂こうと机に向かう]
[ベルナルトの様子を確認して、命の別状がなさそうな事に安堵する。ナタリーが救急箱を広げるなら、いくつかの傷薬を取り出し、タオルを縛り止血をしながら]
…見た目ほど深い傷じゃないわ。大丈夫そうね。…後部の車両では…少し揉め事が起きているみたいね。
[寄り添うように立つ二人は、何も言わない]
[それでも分かる。
人間と人狼との魂――或いは残される思念――の有り様は、大きく違う]
[其処に居る二人のうちの一人。
ミハイルの気配は、人の目からは酷く禍々しいものに見えた]
[そのまま、二人の姿は溶けるよう消えて行く。
線路に揺れる列車に、揺らめく灯りのように果敢無く]
……あれは君だったんだね。
[ナプキンの上の『ミハイル』の文字に語り掛ける。
彼等の間に交わされた出来事を知る事は放棄してしまっていたけれど、多分そういう事なのだろうと紅を纏った黒獣の姿を想う]
親切そうな子だと思ったのに。
[人など見掛けや言動などに寄らないものだ。
そんな事は、先の人狼事件で思い知らされていた筈なのに。それでも苦い声が漏れる]
>>59
[列車後方に向かったベルナルトを見て]
待って…その傷で、あまり出歩くのは…!
[だが、呼びとめは間に合わず、ベルナルトは後方車両へと姿を消す]
[サーシャを強引に扉から引き離す。抵抗されることなく、呆気なく彼は離れた]
ぅお!?
[二歩三歩と後ずさると、背と後頭部を壁にぶつける]
[...は、ベルナルトの後を追って、食堂車に入る。…と、そこには、ナプキンとそれを見つめるダ二ールの姿が目に入る。肩越しにナプキンの文字を見て、何かを察したように眼を伏せる。]
…
[...は、導かれる様な足取りで窓際の席に座る。そこは...が、いつも座る専用の席。...は、ポケットからタロットの束を取り出し、三枚を捲る。]
{11力:逆}
{09隠者:正}
{05教皇:正}
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