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>>27
キ・・・ス?(今までは相手を捻じ伏せるか、自分が捻じ伏せられるかの状況でしかそう言った行為をしてこなかったため、打算抜きのオズマの素直な言葉に戸惑いを隠せない。)
ん・・・。お前がしたい様にすればいい。(と一言素っ気無く返して目を逸らす。)
…ありがとうございます。
(許可が出ると、少しだけ頬を染めて、恥ずかしそうに笑う。そして、じっと顔を見つめてから、ちょっと目を伏せると、そっと顔を寄せて、ちゅっと軽く唇に口付ける。さらに、もう一度、啄むようなキスをした。)
ん・・・む・・・。(オズマの体温が重なり合う唇を通して流れ込む。とても優しい彼からの口付けは、ティラエルの理性をグラつかせるには十分すぎる程だった。
獣の本性を出して襲いたくなる衝動に駆られて沸騰しそうな頭を落ち着かせるのに精一杯だったティラエルは、2度ほど啄ばむ様なキスを繰り返すオズマが唇を離した後で冷静さをかろうじて保ったまま呟いた。)
・・・これで?満足したのか?(これ以上したいと言うのなら、自制が利かないぞ?と言った軽い脅しも含んだ口調だった。)
満足…?
(きょとんと問い返す。脅しの意味は汲めなかったらしい。
瞬きをすると、指先で自らの唇に軽く触れた。
唇を触れ合わせた感触は、くすぐったいような気持ちにさせた。くすり、と笑う。
でも…何となく、物足りない。)
…もう一度…
(小さく呟くと、そっと手を伸ばし、ティラエルの頬を包み込むように触れた。そして、再び唇を合わせる。先程より、長めに、しっとりと。)
(オズマの表情から、ティラエルの牽制に全く気が付いて居ない事が分かり、只でさえ理性が何時飛ぶとも知れない危うい意識を必死に引き留める。
が、頬を両手で包み込んだオズマの幼さの残る整った顔がゆっくり近づいて、もう一度唇が触れあった瞬間にティラエルの理性は完全に弾けとんだ。)
…これ以上は………無理だ。(と、一言呟いた一瞬後にオズマを見つめる目は鮮やかな紅蓮に染まって居た。
オズマの薄く空いた口に強引に唾液を絡ませた長いざらざらと舌をねじ込むと、キスをしなれていないであろうオズマの口の中を執拗に舐め回した。それはキスと言うより味見と言った方がしっくりくる。)
――。ぁ。
(ゆっくりと体をあげる。
腰が痛い。
何が起きたのかを瞬時に理解して顔を押さえる。)
…っ。
(強い快感。それを欲していたのだ。体が。
しかし言い訳は浮かばない。
オリバーはこんなボクをどう思った?
軽蔑?侮蔑?嫌悪?
ただ、今はどうしても彼に会いたいと思った)
(ゆっくりと体を起こし腰の痛みも忘れて立ち上がる。
服をかき集め、ボタンも止めきらないまま扉を開け彼の部屋に。――居ない。
みんなの集まっていた薔薇園。――居ない
ロビー。――居ない。
居ない。居ない。居ない。居ない居ない居ない居ない居ない居ない居ない居ないイナイイナイイナイイナイイナイ)
……ああ。
(気づくと、膝をついていた。雨が降ったすぐあとの水溜りに影が映る。)
(心のなかで声をかける。しかし声は帰ってこない。
心の繋がりというものを知っているだろうか?
共鳴。心が共鳴することがあるらしい。
彼は共鳴していた。しかしそれはオリバーではない。
彼が共鳴していたのはフェイだった。
ただ運命の輪のイタズラで繋がれた二人は、しかし今はもう居ない。
オリバーが彼を同じ所に言ったのだと、カンが告げていた)
『―みんなどこに消えたの?』
(そっと問う。返事はない)
『ボクはどうやったらそっちに行けるの?』
(返事はない)
『そこは、何処なの?』
(返事は。ない)
(喉を振り絞り。声を上げる。彼に届くように。)
♪
君がいない
運命が居ない
心がいない
声がない
唄が消え去り
喉が枯れ
絵は色を失い
空は濃灰
世界が居ない
ボクの場所がない
涙も枯れ
力無き腕は
どこに伸ばせばいい?
君をかき抱く事もできずに
(掠れながらも凛とした声で一気に唄いきると瞼を閉じる。
人を守れないのは幾度目か。
旅に出た理由は何か。目的は?
過去を捨てるために旅に出た彼にも、過去はあった。
そして。感情も絶望も。)
……旅、やめようかな。
(ふっと口を突く。
しかしそれは明らかに暗い色をしていて、
一所に落ち着く、過去を受け入れるような意味ではなく
そう、それは帰ってこれない別の場所へ行く宣言のようだった)
ふっ…ふっふっふ……
(高らかに笑い始める。しかし能面のように表情はない)
♪
羽を無くし飛び落ちる
鰭を無くし溺れ死ぬ
息を無くし首を締め
色を無くし失血死
(口を突くのは暗き鎮魂歌か、それとも死に逝く者の唄か)
舌を切って息止めて
水の中でどざえもん
薬でも打って飛んでくか
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