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― 宿の自室/少し前 ―
[くしゃみで、目を覚ます。
窓際に据えた椅子に腰掛けて外を眺めたまま居眠りしてしまったらしい]
――え、?
[うー寒い。自分のうっかりを後悔しかけたところで。
下階からの、悲鳴を聞いた]
[階段を駆け下りて。
駆けつけた先には]
あ……
[言葉が喉に詰まった。
部屋に散る赤の色は、そこでなにがあったのかを想像させるには十分で。
ゆるりとさまよう視線の先。
遺骸を覆う布が、美しかったので。
だから滲む朱色が、余計に生々しく見えた]
[何をしようとしたのか。
中途半端に伸ばした指に。
アナスタシアからあふれた朱色が移って。
小さな悲鳴をあげかけて、口元を手で覆う]
――っ
[こみ上げてくる何か。
そのまま洗面所に駆け込んだ**]
―JUDGMENT―
正午を告げる鐘が鳴る。
運命は+表+を選んだ。
{表ならイヴァン/裏ならオリガに投票して下さい。}
[水は貴重なのに。
その水をざあざあと流しながら。
口の中に入ったアナスタシアの血を吐き出そうと。
口をすすぎ]
……消えない。
[血の味が。血の香りが。
恐ろしく甘美な、とろけるような感覚は]
……ただの人なのに。
[いつまでもいつまでも、舌に残る]
[何度も手を洗って口をすすいで。
ぐったりと床に座り込む頃。
甘美な誘惑に抗えずに人を食べてしまうかもしれないという恐れの他に。
ひとつの事実に気が付く]
誰か、いる。
[自分の他に「人狼」が]
――ダレ……ドコ……?
[見ることのなかった「同胞」が]
[いる。
確信を持つ。
胸をよぎるのは不安よりも大きな、期待]
――ドコニイルノ?
[幼い頃を思い出す。
狼の姿でも、自分と父とは「会話」ができた。
自分はそれがとても下手だったけれど、確か、こう]
――キコエル?
[もしかしたら、自分のこの声を聞き取れる者がいるのかもしれないと思えば。
囁かずには居られなかった**]
[瞼を開ける。]
[そのままじっと、前方を見つめてみる。]
[それから、軽く左右を確認して。]
……寝る気はなかった。
[明らかに嘘だった。]
[寝る直前に、誰と何を話していたかすら覚えていなかったが。]
[常にやや貧血気味の体調は、元通りのようだ。]
[直前にした会話のせいなのか。]
[それとも意識の底で、薄らと聞いた話のせいなのか。]
[思い出したことが。]
[あった。]
[イヴァンがまだいたなら、軽く礼を云って毛布を返し。
立ち上がる。]
[向かう先は。]
[地下。]
**
― 食堂 ―
厨房を借りる。
[時計を見れば昼を過ぎていた。
朝から食べていない者もいるだろうと、
ブリヌイをフライパンで焼いていく。
望む者がいればその分もを用意する]
(あの人の使用人嫌いのせいで、こんな事まで仕込まされている訳だが…皮肉だな)
[こんな皮肉な構図に気づくのは自分のみか。
思考を遮断してしばし作業に没頭した]
― ? ―
(父はこれを奇貨として昔から村にいる人狼を滅ぼそうとしていたのか)
[ただの仮定だが、他の予想よりはマシな気がした]
(だとすれば、その人狼は誰だ)
外部の者であるイライダ。
一度、身軽に村を出た姉さんも外していい。
サーシャならば、
寧ろここにいるのはサーシャではなく妹の方だっただろう。
[...のこの推測が正しければ
ミハイル、イヴァン、ドラガノフ、ナタリーの中に
人狼はいる]
ミハイルならば行動がおかし過ぎる。
[ソファで寝ていた彼。悪目立ちするのは不自然だった]
むしろ、彼が真実を知っていて隠している者と憶測をすれば…
(一番考えられるのはイヴァンかナタリー、か)
[どちらが人狼にしろ、好んで人を襲うようには見えない。
実際、今までこの村で人狼騒ぎが起きた事はない。]
(敢えて藪を突付いた、か)
[人はどこまでも残酷で、悪辣で、計算高いのかと思うとため息が漏れる]
(まあ、あくまで推理に過ぎん)
[だが、その二人に視線が向いてしまうのは、仕方がなかったかも*知れない*]
―食堂―
[昨日見た夢を思い出していた。
数年前に村はずれに出来た、例の研究所の夢だった。当時は訝しがりながらも、村に人が増えると喜んでいたのだが]
…イライダさん。
[彼女に来た手紙の件>>69は知らない。ただ、おずおずと話し掛ける]
人狼をどうやって見つけて、
どうやってやっつければ良いのか、…知ってる?
イライダさん、物知りだから。何か分かるかなって。
[問いかけた所で、丁度正午を告げる時計の鐘が響いた。
宿の集められた者に残された時間は、きっと、後わずかだ。反射的に、先ほど見ていたのと逆の窓を見つめた。どうやら宿の周囲には、「見張り」の者が張り付いているようだった**]
――…人狼が現れる時、天は我らに恩恵を与えるだろう。
[イヴァンの問いかけに、嘗て読んだ本を思い出す]
人狼は上手く人に変化するらしいけれど、それじゃ私たちのような人間には対抗できないからかしら。
本当の姿を見抜く…水晶とか、魔鏡とか…そう言った物が見つかったり、何かしらの宣託を受ける占い師が現れたりする。
遠い国には、そういう伝承があるって聞いた事があるわ。
[ロランが、せめて飲み物だけでも、と入れてくれた紅茶を一口飲んで]
人狼に滅ぼされた…と、されている村も多いから、そんなの眉唾だって哂う人も居るわ。
でも、こういった伝承は、人が生きていく為の知恵が残ったものとも云えるから、一笑出来ないって私は思ってる。
ここに人狼が居るのなら、そういう何かをもった人も、この中にいるのかも、しれないわね。
そしたら、見つける事は、出来るんじゃないかしら。
[正午の鐘。
霧で辺りは見えないのに、やけにこんな嫌な響きだけは聞こえてくる。
イヴァンが、ちらりと窓を見れば、同じようにそちらを見。
その向こうに見えたモノに、少しだけ眉をしかめ、カップをそっと抱いた**]
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