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ウートラ は、突然死した。
次の日の朝、アナスタシア が無残な姿で発見された。
照坊主の下駄が、どこからともなく アナスタシア の頭に飛んできました。
からんころ〜ん♪…明日は… 煙霧 かなぁ?
……そして、その日、村には新たなルールが付け加えられた。
見分けの付かない人狼を排するため、1日1人ずつ疑わしい者を処刑する。誰を処刑するかは全員の投票によって決める……
無辜の者も犠牲になるが、やむを得ない……
そして、人間と人狼の暗く静かな戦いが始まった。
現在の生存者は、ロラン、フィグネリア、オリガ、サーシャ、ミハイル、イライダ、イヴァン、ドラガノフ、ナタリーの9名。
旅人が去りゆけば
濃い霧が村中に立ち籠めた。
不穏な空気の流れるなか
宿の女主人は長い黒髪を散らし
自室の寝台に横たわっている。
― 自室・就寝前 ―
[夜が来れば、用意してもらった部屋へと戻ると、ドアの隙間に紙が挟まっているのを見つける]
これは…アナスタシアさん、か。
[地下牢の話はしていたが、鍵の管理についてはこちらからは何も言わなかった]
(確かに人前で話す事ではないが…だがどうして手紙で?)
[疑問に思ったが、続けて並ぶ3人の名前にも注視する]
(オリガとミハイルはわかるが、姉さんが何で知っているんだ)
[二人は仲が良いとは言え、些か疑念が残った]
まあ、いい。
[明日以降も外出には制限がつくだろうかと思案しつつ、*ベッドの上へ*]
―昨日・自宅―
[そろそろ夜になろうかというころ。]
お前、飯食ったんか?
[イヴァンに問えば、どう返ってきただろうか。]
[まだ、というのが判れば、薄く笑って。]
食ってこい。
飯は巧いだろ、あいつ。
[自分はというと。
宿に戻る気はさらさらない。]
[無理にでも引っ張られない限りは、ここで夜を明かすだろう。]
**
― 深夜 ―
[誰もが寝静まった夜の事。
宿内に起きている人の気配を感じなくなれば、
女はするりと音もなく。戸から身を滑らせ、友人の部屋へと向かった。]
……ナースチャ。
ナースチャ、開けて……。
[潜めた声は室内へと届くだろうか。
ほどなくして開く扉。そして夜着姿の友人がその姿を見せる]
[開かれた扉の裡へ、滑り込む。
後ろ手で、かちりと鍵を掛けて。
若干訝しげな表情を浮かべる友人へ腕を伸ばし、引き寄せた]
……ナースチャ。
可哀そうな、ナースチャ。
大切な人と引き裂かれて、今また、狼の恐怖に怯えてる……。
前の村で、沢山見てきたの、でしょう?
人同士が疑い合い、殺し合う姿を。
……でも、大丈夫よ。あんたにもうそんな辛いものは見せないから。
[まるで愛を語るかのように、それは耳元に落とされる囁き。
白い白皙の肌を、女は一つ舐めて]
……良い匂い。
あたいね、ずっと……こうしたかったの。
村に帰って来てから、ずっと……ずっと……。
ずっとずっと……食べたくて、食べたくて。
我慢するの、大変だったんだよ?
[くすり、笑う。
その面に浮かぶのは、狂気を孕んだ笑み。
アナスタシアを抱きしめる腕には力が籠り、
骨の折れる鈍い音が部屋に響く]
[痛みから、息も絶え絶えに喘ぐ友人を寝台へ横たわらせると、
女は睦み合うような熱い吐息を付きながら、見下ろして]
あんたの身体も、心も。
あたいがみんな、食べつくしてあげる―――…
[裂いた衣服の下、
白くなだらかな稜線を描くその腹へ、頬を寄せて]
あたいたち……一つになるの。
ふふ、うふふふふ………。
[うっとりと、笑みを浮かべて。
その柔らかな肌へと、鋭い牙を突き立てた]
[女にとっては愛の交歓と謂っても良い食事を終えれば、
夜陰に乗じて窓から姿を消すだろう。
誰もいなくなった部屋には、
物言わぬ姿の女主人が一人、寝台の上黒髪を散らして。
何処か満ち足りた笑みを浮かべて、
喰い散らかされた無残な姿を曝している―――]
―明け方―
[なんともなしに。]
[窓の外を眺める。]
[いや、目は向いているが、見てはいない。]
[濃く漂う霧の匂いに。]
[なにかが、混ざって。]
[ふと。]
[聞き覚えのある誰かと、よく似た声がすぐ傍に、居た。]
――――
[灰の眼を見開いて。]
[なにもないところを振り返る。]
[しばし瞬くのも忘れ。]
[そのまま。]
[やがて上着を羽織ると。家を出た。]
―宿―
[正面から入ると勤勉な従業員の姿が既にあっただろう。]
[が。そんなことはどうでもいいので、目に入っていない。]
[迷わず、ある部屋の前まで辿り着くと。]
[扉を、開けた。]
[驚きはしなかったが。]
[僅かに、顔を顰めた。]
[中を覗き込んだ従業員が奇声をあげるなり倒れるなりしたようだったが、どうでもいい。]
[静かに歩み寄ると。]
[事切れたアナスタシアの。]
[浮かべた、笑みを、じっと見つめ。]
[振り返り、部屋を出た。]
―食堂―
[そのうちに。警察なり役場の人間なりが、来るだろう。]
[適当な席に着くと。]
[手近にあった紙に、なにかを書きだす。]
[いや、書くというよりは。]
[なにかを、聞き取るような、動作。]
……ここに。
[そう云って、来た人間に渡したのは。]
[ここではないどこかの住所と、ここにいない誰かの名前。]
埋めてやってくれ。
[相手がどんな顔をしたか。それもまた、どうでもいい。]
[眩暈がした。]
[珍しく、付き合ったものだから。]
[どうやら、疲れたらしい。]
……はぁ。
[軽く、頭をおさえながら。]
[ソファまで移動すると。]
[そのまま、横になった。]
**
―自室→アナスタシアの部屋―
[誰かがあげた奇声に作業を止めて、部屋を出る。
さて、状況はどうなっていたのか、アナスタシアの部屋の前。
止めるまもなく扉を開く]
…アナスタシアさん?
[彼女の目には詳細は映らず、ただ赤と黒の色彩が飛び込んでくる。
ただ一カ所そこだけきれいなままの白いかんばせ]
…おやすみなさい。
[人狼がいることだけは、彼女は疑ってはいなかったから、この村にも確かにいたのだとストンと納得する。
先ほど仕上がったばかりで、おもわず握りしめてきたそれをアナスタシアの顔にそっとかける]
[一部は彼女の血に染まる]
ごめんなさい、真っ白なものの方がいいのでしょうけれど。
[未だ彼女がそこにいるかのように語りかける。
アナスタシアの顔を覆うのは暖かな土色の縁取り、緑の葉を茂らせた枝を左上にあしらい、右下には一輪の朱色の花の春の意匠のリネン]
受け取ってほしかったな。
[それは、彼女のために用意したものだった。
なぜと問われたなら曖昧に返しておいただろうけれど。
それほど接点があったわけではないが、どこか寂しげな彼女の印象が、頭を離れない。
――もたらされた死を悼む]
[死者のために、自分にできることがあるとは思わない。
積極的に騒ぎに加わろうとも思わない。
ただ、なにも知らずにいることはいやだった。
もしもミハイルが起きてきたなら、アナスタシアの思い出話でも問いかけたかもしれない]
[友人の血肉に胎の中の赤子が喜ぶのが判る。
そっと、下腹を撫ぜて。謳うは子守唄]
ねむれ、ねむれ……ははのみむねで
ねむれ、ねむれ……血肉を喰らって骨までしゃぶりつくして
……ふふふ。
あたいの可愛い子。ナースチャがそんなにお気に召したのかい?
さあ、今日は誰をお前のために喰らおうか。
誰が良いと、思う……?
[愛しげにさすりながら、
女は今日の獲物――<<ナタリー>>について考える]
同族食いはぱっとしないね。
変な物を食べれば、胃がおかしくなってしまうよ。
……悪食な子だね。
[ナタリーが自分と同じ存在である事は、
彼女から感じる人と違う気配で判っていた。
だけど自分から接触する事はない。
女が求めるのは同族ではなくて。
胎の子のための餌だけなのだから―――]
他の子で、我慢しておくれ。
そうそう、<<ドラガノフ>>なんてどうだい?
美味しそうだろう?
[部屋の中、ひそひそと。
子と語らう母の愉しげな声は、暫く続いていた*]
―回想―
[イヴァンが自室に下がるのにあわせて>>1:184上、彼女も腰を上げただろう。
あかされた話には少しも触れぬままに、どかぎここちない会話が交わされる]
ありがとう。
[部屋の前まで送ってくれた相手に礼を言う]
イヴァンも気をつけて、ね。
[一体なにを気をつければいいんだろうとは、彼女自身疑問だったけれど。
パタンと扉が閉まったなら、一つため息をついてベッドに倒れ込む。
しばらくするとのろのろと起きあがり、アナスタシアのための刺繍をほどこしはじめる。
どこか後ろめたさと、彼女の悲しみへの共感を込めて。
夜も更けたなら、眠りへと誘われる]
― 昨夜:ロストヴァ家・マリーヤside―
[ダークブラウンの髪に深い蒼の瞳の少女の両親へと詰め寄る声が響く]
姉さんが療養にいったなんて、やっぱり嘘!
昨日みたいにごまかされないんだから。
[宥める母親の言葉をはねのけるように]
…イヴァンもいないし、確かめた訳じゃないけどロラン兄さんの姿も見かけないわ。
[ロランの父親は閉鎖的で、直接確認にいっても相手にされないのは分かっていた]
こんな、人狼の噂が広がってるときに、おかしいじゃない。
ほかにも、姿が見えない人、いる。
[唇を噛みしめて、いらだちを押さえきれないかのようにくしゃくしゃと髪をかき回す]
[お前が気にする事じゃないとの父親の言葉には、きっとにらみつける]
…姉さんが心配じゃないの?
それでも親?
[糾弾する響きに懇願が混じる]
ねぇ、お願い、何か知ってるんでしょう?
[口をつぐむ両親の姿に、悔し涙が光る]
もう、いい。
[サーシャの部屋に飛び込むけれど、昨日ひっかき回した姉の部屋に手がかりはなく。
裁縫道具といった愛用の品が持ち出されていることから、自らの意志で出て行ったのだろうと、昨日は無理矢理自分を納得させたのだけれど]
[姉の部屋に閉じこもったまま、いつもサーシャのいた窓際から外を眺める。
マーシャと愛しげに呼びかけててくれる、声が、聞こえた気がした――]
姉さん、どこ…。
[いつしかそのまま夜はふけて――]
― 第一幕・了 ―
―昨日・夜の村道―
[霧がかり暗闇に覆われた村道。けれど歩む足取りは慣れたもので、迷いは無い]
人狼、か……。
[ぼそりと呟く。ミハイルは、確かに「いる」と言っていた。そしてそれは、間違いのないことだと思う。
何故なら]
……………………。
[ふと足をとめた。
いつの間にか青年の周りを取り囲むように、動物の群れが輪をなしている。何かを訴えるように、まるで通せんぼするみたいに、動かない。無数の瞳は、青年の姿をした何かを見つめている]
森におかえり。僕は大丈夫。
人狼なんかに、やられたりはしないから。
[あくまで穏やかに告げる。その言葉に嘘は無い。
冷たい風が吹き抜けて、コートの首元に仕舞っていたマフラーが外れて靡いた]
[やがて観念したように、青年を囲んでいた気配が還っていく。其れを何処か遠い目で見守りながら、ぼんやりと思う]
(………別の何かに、殺されてしまうかもしれないけどね)
[一度顔を伏せ、再び歩き出す]
(それでも、「あの子」は宿に居続けるのだろうから)
[やはり足取りに、迷いは無く]
(だったら僕は、彼女のそばに居たい)
[転々とした足跡は、宿へとまっすぐ伸びて行った**]
"居る事になった者"に対して、俺から簡単な話をしておく。
[外からの人が消え、亡骸が運び出され、宿の扉が閉ざされた後、
人が集まれば、...は予め決められていた事のように話し出す]
本当に人狼の襲撃か、それに見せかけた殺人かはわからない。
[実際は"いる"のだろう。最初から老父の様子は
ロランよりも詳しく識っているようだった]
アナスタシアがここで人狼に食べられたように殺された。
俺たちが泊まっているこの宿で。
[虚しさと莫迦らしいを意識の底に沈めながら、口を開く]
村の方ではこの宿にいた俺たちと、
第一発見者のミハイルの中に人狼がいると看做すことにした。
村の全員を人狼容疑者にする訳にはいかない、そんな判断だろう。
(元々、その為に集められたのだから――)
既に村の者は、俺達を人狼容疑をかけられた
可愛そうな被害者ではなく、
自分達まで容疑者、被害者にしかねない災厄と見ている。
[村人個人個人の内心はどうあれ、
過激で軽率で無責任な声ほど大きくなるし、
煽動する者が存在すれば当然勢いはそちらに流される]
俺たちの中から人狼を見つけるまでは、
宿の外には出られないと思ってくれていい。
無理に出たら恐らく――
宿の外に居る皆は、昨日までの村の皆とは別人となり、
その者は人狼として扱われ、命はないと覚悟してくれ。
[噂に踊らされ、人が死ぬ。疑う事で、人が死ぬ。
どこにでもある話だった。
それがこの村でも行われるだけに過ぎない]
俺たちに与えられた時間はあまりないと思ってくれ。
人狼を見つけられずに長引いた場合、
この宿ごと、火をかけることが検討されている。
[判断するのが父だけならば、今日にも火をかけていることだろう。
薪を大量に用意させていたのは、最初からその心算もあったに違いない]
人狼と共に死ぬか、
人狼を見つけて生き残りに賭けるかは、
その方法も含めて、皆で考えて決めてくれ。
この事に関して、俺は主導的立場をとる気はない。
資格もないかもしれないしな。
[そう言ってから、少しだけ間を置いた]
怨むのなら、この状況でアナスタシアを殺した思慮のない者を怨め。
村を恨むなとは言わない。
ただ、生き延びたとしても死んだとしても村を、赦して欲しい。
これは俺の我侭だ。聞かなくても全く構わない。以上だ。
[これが最後の仕事だと、心の中で*区切りをつけて*]
(そう、恐らく父は知っている)
[直接ロランに「人狼の存在が認められそうな場合、ここの者を人柱として始末する予定だ」と最初から告げていたのだから。ロランを含めて]
(隠したいものが多いのは知っていたが、その中に人狼の存在そのものも含まれているとは思わなかったが)
[道理でと、自分が街で拒絶された友の亡骸を引き取る事すら許されなかったのかと理解する]
(人狼という言葉すら、消したかったのだろう。あの人は)
[結局、異郷の地でただ死んだとしか扱われず、人目を避けて、自分の手で密かに埋めることが妥協点だった]
(人狼と取引をしているなんて馬鹿な話はあるまい。
となれば、この村自体が末裔村であるとか、
人狼に関わる金にまつわる話だとか、
俺の知らない何かがあるのだろう。
調べる術はないが。それに興味もない)
[となれば今頃、別に集められているだろう従業員達もこれからどうなることか]
(関心が低かろうとも、自分の息子の命を「不満や、不公平感を与えぬ為」という理由だけで差し出せる人だ。仮にアナスタシアをこの村に置いていたのさえ、この日の為だったとしても驚きはしない)
この状況に焦るのは人間か、人狼か、それとも……。
[...は昏い悦びに浸る自分に、軽い嫌悪を覚えていた**]
[ロランの言葉に手を休める]
兄様、いったいどうやって終わりを判断するというのでしょう。
[静かに問いかけるが、あきらめの色は、ない**]
― 自室 ―
[天気が良くなっている事を期待しながら、昨晩は眠りについたけれど]
昨日より酷いわね
この、天気。
[窓の外で不安を誘う霧は。
まるで宿と外界を切り離しているかのよう。
ぼんやりと、昨日の事を思い出す]
― 回想 ―
[虹の樹。
自分が知らないその、苗木]
知らないわ。
きっと…伝承にも乗らないくらい
ひっそりと
それでいて、大事に、大事に
されてきたのでしょうね。
[それを囲む3人を、優しい眼差しで見る]
[村おこしどうのこうの前に。
苗木を囲む彼らは、そこにある生命を慈しんでいるように、そう思えたから]
こんな嫌な噂も消えて
晴れたら
……皆で育てたいわね。
[少し大きめのマグにドラガノフの分を入れて、渡す]
[ドラガノフがミルクを一口飲む様子を見てから。
ナタリーの分を含めて、幾つかのマグを取りながら「手伝いましょうか」と声をかけてくるロランに]
ふふ
用意がいいんだから。
ロランさ…ん、の分も、ね。
[こぽこぽ、と白い陶器にミルクを注ぎ。
しばらくはそれを飲みながら、暖炉の前で話す。
誰かが折を見て、部屋へ戻るように促せば、その場は解散となっただろう]
― 回想・了 ―
― 自室 ―
[それは楽しい思い出。それは、晴れればいいと思えるだけの思い出。
だけれども、やはり今日も霧がかかっていて……]
暖かい物でも貰おうかしら
そろそろ朝食の準備も終わってる時間でしょうし。
[懐中時計を取り出して、時刻を確認し。
ブーツのつま先を、こんこんとしていれば]
……っ?
[下の方から、誰かの叫び声が聞こえてきて。
階段をもつれるように慌てて降りれば、凶報を知る**]
― 場面は移り変わる:ロストヴァ家・マリーヤside ―
[昨日眠ってしまったそのままに、サーシャの部屋で目覚める。
もはや日は昇りきって、いつもよりはずいぶんと遅い目覚め。
部屋をノックする音に、扉を開けると青ざめた母親の姿]
おはよう、かあさん。
いったいどうしたの?
[母親の姿に不安が募る]
[母親が口にするのはサーシャに来た手紙のこと―手紙の読めない娘のために読み上げたのは彼女だった―そして、宿で起きた惨劇のこと。
村に情報が回るのは、とても、早い]
な、なんですって!
[彼女の顔からもさっと一瞬で血の気が引き、次いで怒りに紅潮する]
[母親の腕をつかんで、ゆさぶる]
どうして、引き留めてくれなかったの。
それじゃ、生け贄みたいなものじゃない。
[いつかと覚悟をしていたのは、こんな場面じゃない――]
やっぱり、姉さんはこの村を出て行くべきだったんだわ。
[暖かな場所でなら、命をつなぐことも絵空事ではなかったのに、一度として頷いてはくれなかった]
いくわ、宿へ。
[まずは、なにがなんでも姉の無事な姿を目にするつもりだった]
― 第二幕・了 ―
―1日目 夜-深夜―
[宿に帰れば、何事も無かったかのように食事をもらう。
ドラガノフの「虹の樹の苗」が目に留まれば、ほう、と表情を和らげた]
育つと良いね。大きく、大きく。
[心から、そう思った。
その日の夜も、自室で遅くまで木彫り細工を続ける。そうして漸く完成したのは、水車小屋の隣にたたずむ、
髪の長い少女の人形―――]
―2日目―
[階下から響く絶叫で目を覚ました。何が起こったのか察しはついていた。けれど同時に、酷い絶望も感じていた。
この宿に人狼がいるのは間違いないだろう。だけど、それでも「何事も起きずに」日が経てば、無事に解放されるのではないか。
…そんな一抹の希望は、砕かれた]
――――――……アナスタシアさん。
[無残な女の屍には既に美しい布がかけられていて、その詳細を目にすることはなかったが。
顔を伏せ、冥福を祈る]
[淡々と感情を見せず、或いは殺したように語るロランの説明を聞き終えれば、遠慮がちに口を開いた]
………ロランさんは、どうしたいの。
[唯一最後の科白、村を赦して欲しいとの言だけには、微かに感情の色が見えた気がしたが]
僕は嫌だよ、死ぬのは。…死なせるのは。
[ただ、守りたいと思う。膝の上で握る拳に力を込めた]
俺ならば、そうだな…
ここにいる皆の投票で一日一人、
襲撃以外の犠牲者を決め、
その者が人狼であることを願うのが折り合いの付け所だろうか。
[そうして、街で余所者であった友は吊られて、死んだ]
心中は構わないが、身代わりは認めたくない。
身代わりの相手が人狼でないとは限らないし、
そこで一度免れたとはいえ、
再び対象にしないと身代わりの者に誓えないからだ。
わざわざこれだけの人間を一箇所に集めて
人がここで殺され
(どう考えたってありゃ自殺じゃねえよ)
で、ここにいる人間でどうにかしろ、と言う。
・・
お前さんの親父は
他に何か思惑があるとしか思えねえんだが。
ああ、さっきのはあくまでただの一案だ。
後悔しないように、慎重に皆で決めてくれ。
[年下や同世代向けに口調を戻す]
その際、もし処刑人が必要ならば、俺が死ぬまでは俺がやろう。
恨むなら、父と俺を恨むといい。
それだけの事をしているのだから。
………………。
[秩序ない殺し合いは避けたい、と。ロランのその言葉には静かに頷く。
そしてそんな事態に発展してしまえば、それこそ本当に宿に火をつけられかねないとも思った]
――――…こわいね。
[投票の話になれば、息をのむ。仮に自分が選ばれれば素直に処刑されるのか、とか。一体何を基準に投票をすれば良いのか、とか。色んな思いが頭を巡った後、零れたのはただの呟きだった]
……兄さん。
[いつもの調子で返事が返って来る、ミハイルの声>>50に少しだけ安堵したけれど。
でも、何だかやっぱりぐったりしているように感じられた]
人狼が「いる」って、分かってたなら…。
[ぼそりぼそりと、小さな声で囁く。
多分、相手にしか聞こえていない]
…なんで戻ってきたのさ。ミハイル兄さんの、馬鹿。
[守りたいのは、幼馴染の少女と、古くから慕う兄と。
宿に勤める少女を此処から連れ出すのは、きっと難しかっただろうけれど。ミハイルは宿から離れてくれたから、安心していたのに。
結局巻き込まれてしまった彼の顔を見つめ、少しだけ泣きそうなように顔を歪めた]
おっちゃん……?
[腑に落ちないことが、と声を上げるドラガノフへ顔を向ける。
村長のことを「卑劣」だと言うその声に、ロランもいる手前、否定も肯定も出来ずに黙り込んでいたが]
――――――……っ。
[猟銃に目をやる姿に、びくりと思わず肩を揺らした]
おっちゃん、駄目だよ。
そんなことしようとしたら…。
多分、此処に居る全員、殺されてしまう。
[それに]
……アナスタシアさんを殺したのが人狼なら、…。
協力なんて、してくれる筈ない。
[力なく呟き、視線を落とした]
[妹の評価を思い出した。
無愛想で人の名前を覚えない失礼な男]
今度ばかりは誇張じゃなかったよう。
[男が眠りについた後、今度こそ起こさないように口の中でつぶやくと、作業を*再開した*]
ぃへあ
[寝呆けたまま。]
[頬を抓られながら。]
[相手の言葉を、耳に入れる。]
[死なないで。]
[ か。]
…………うん。
[生返事をかえしつつ。]
[今度こそ、完璧に]
[寝入った。]
**
………………っ。
[ここに集められたのは、容疑者であり、人狼の「餌」であると。
自分にもその発想がなかったわけではない。ただ、考えないようにしていた。考えたくは無かった]
で、でも。
ロランさんは、村長の息子だよ。
家族なんだよ…!
[声を潜めながらも、必死にドラガノフへと言い募る。
家族が「死んでも構わない人間」だなんて、哀しすぎるから。否定して、欲しかった]
家族じゃ、なくても。
…死んでも構わない人間なんて、本当はいる筈がないんだ。
[今の状況においては、虚しいだけの言葉かもしれないけれど。呟きと共に溜息が落ちた]
[夢を、見た。
昔の夢。
私は父と旅をする。
ふたりきりで、旅をする。
本来群れで行動する人狼の父に。
どんな理由があったのか、わからないけれど。
父が死んだら私は一人きりになった。
似ていても狼とは違う。
似ていても人とは違う。
私はひとりで旅をした]
― 宿の自室/少し前 ―
[くしゃみで、目を覚ます。
窓際に据えた椅子に腰掛けて外を眺めたまま居眠りしてしまったらしい]
――え、?
[うー寒い。自分のうっかりを後悔しかけたところで。
下階からの、悲鳴を聞いた]
[階段を駆け下りて。
駆けつけた先には]
あ……
[言葉が喉に詰まった。
部屋に散る赤の色は、そこでなにがあったのかを想像させるには十分で。
ゆるりとさまよう視線の先。
遺骸を覆う布が、美しかったので。
だから滲む朱色が、余計に生々しく見えた]
[何をしようとしたのか。
中途半端に伸ばした指に。
アナスタシアからあふれた朱色が移って。
小さな悲鳴をあげかけて、口元を手で覆う]
――っ
[こみ上げてくる何か。
そのまま洗面所に駆け込んだ**]
―JUDGMENT―
正午を告げる鐘が鳴る。
運命は+表+を選んだ。
{表ならイヴァン/裏ならオリガに投票して下さい。}
[水は貴重なのに。
その水をざあざあと流しながら。
口の中に入ったアナスタシアの血を吐き出そうと。
口をすすぎ]
……消えない。
[血の味が。血の香りが。
恐ろしく甘美な、とろけるような感覚は]
……ただの人なのに。
[いつまでもいつまでも、舌に残る]
[何度も手を洗って口をすすいで。
ぐったりと床に座り込む頃。
甘美な誘惑に抗えずに人を食べてしまうかもしれないという恐れの他に。
ひとつの事実に気が付く]
誰か、いる。
[自分の他に「人狼」が]
――ダレ……ドコ……?
[見ることのなかった「同胞」が]
[いる。
確信を持つ。
胸をよぎるのは不安よりも大きな、期待]
――ドコニイルノ?
[幼い頃を思い出す。
狼の姿でも、自分と父とは「会話」ができた。
自分はそれがとても下手だったけれど、確か、こう]
――キコエル?
[もしかしたら、自分のこの声を聞き取れる者がいるのかもしれないと思えば。
囁かずには居られなかった**]
[瞼を開ける。]
[そのままじっと、前方を見つめてみる。]
[それから、軽く左右を確認して。]
……寝る気はなかった。
[明らかに嘘だった。]
[寝る直前に、誰と何を話していたかすら覚えていなかったが。]
[常にやや貧血気味の体調は、元通りのようだ。]
[直前にした会話のせいなのか。]
[それとも意識の底で、薄らと聞いた話のせいなのか。]
[思い出したことが。]
[あった。]
[イヴァンがまだいたなら、軽く礼を云って毛布を返し。
立ち上がる。]
[向かう先は。]
[地下。]
**
― 食堂 ―
厨房を借りる。
[時計を見れば昼を過ぎていた。
朝から食べていない者もいるだろうと、
ブリヌイをフライパンで焼いていく。
望む者がいればその分もを用意する]
(あの人の使用人嫌いのせいで、こんな事まで仕込まされている訳だが…皮肉だな)
[こんな皮肉な構図に気づくのは自分のみか。
思考を遮断してしばし作業に没頭した]
― ? ―
(父はこれを奇貨として昔から村にいる人狼を滅ぼそうとしていたのか)
[ただの仮定だが、他の予想よりはマシな気がした]
(だとすれば、その人狼は誰だ)
外部の者であるイライダ。
一度、身軽に村を出た姉さんも外していい。
サーシャならば、
寧ろここにいるのはサーシャではなく妹の方だっただろう。
[...のこの推測が正しければ
ミハイル、イヴァン、ドラガノフ、ナタリーの中に
人狼はいる]
ミハイルならば行動がおかし過ぎる。
[ソファで寝ていた彼。悪目立ちするのは不自然だった]
むしろ、彼が真実を知っていて隠している者と憶測をすれば…
(一番考えられるのはイヴァンかナタリー、か)
[どちらが人狼にしろ、好んで人を襲うようには見えない。
実際、今までこの村で人狼騒ぎが起きた事はない。]
(敢えて藪を突付いた、か)
[人はどこまでも残酷で、悪辣で、計算高いのかと思うとため息が漏れる]
(まあ、あくまで推理に過ぎん)
[だが、その二人に視線が向いてしまうのは、仕方がなかったかも*知れない*]
―食堂―
[昨日見た夢を思い出していた。
数年前に村はずれに出来た、例の研究所の夢だった。当時は訝しがりながらも、村に人が増えると喜んでいたのだが]
…イライダさん。
[彼女に来た手紙の件>>69は知らない。ただ、おずおずと話し掛ける]
人狼をどうやって見つけて、
どうやってやっつければ良いのか、…知ってる?
イライダさん、物知りだから。何か分かるかなって。
[問いかけた所で、丁度正午を告げる時計の鐘が響いた。
宿の集められた者に残された時間は、きっと、後わずかだ。反射的に、先ほど見ていたのと逆の窓を見つめた。どうやら宿の周囲には、「見張り」の者が張り付いているようだった**]
――…人狼が現れる時、天は我らに恩恵を与えるだろう。
[イヴァンの問いかけに、嘗て読んだ本を思い出す]
人狼は上手く人に変化するらしいけれど、それじゃ私たちのような人間には対抗できないからかしら。
本当の姿を見抜く…水晶とか、魔鏡とか…そう言った物が見つかったり、何かしらの宣託を受ける占い師が現れたりする。
遠い国には、そういう伝承があるって聞いた事があるわ。
[ロランが、せめて飲み物だけでも、と入れてくれた紅茶を一口飲んで]
人狼に滅ぼされた…と、されている村も多いから、そんなの眉唾だって哂う人も居るわ。
でも、こういった伝承は、人が生きていく為の知恵が残ったものとも云えるから、一笑出来ないって私は思ってる。
ここに人狼が居るのなら、そういう何かをもった人も、この中にいるのかも、しれないわね。
そしたら、見つける事は、出来るんじゃないかしら。
[正午の鐘。
霧で辺りは見えないのに、やけにこんな嫌な響きだけは聞こえてくる。
イヴァンが、ちらりと窓を見れば、同じようにそちらを見。
その向こうに見えたモノに、少しだけ眉をしかめ、カップをそっと抱いた**]
― ロストヴァ家→宿・マリーヤside ―
[引き止める両親との口論、家からの脱出に思いのほか時間をとられ、昼もかなり回った頃。
その後も、出会う人から引き止める声がいくつも上がるけれど、全て振り切って]
まってて、姉さん。
[息を切らせてようやくたどり着いたのに、宿の周りを見張るものたちに捕まる]
お願い、姉さんに合わせて。
姉さんが、人狼なわけ、ない。
[拘束を振り切ろうとむちゃくちゃに暴れるけれど、数人に取り押さえられればなすすべはない。]
どうして放っておいてくれないの!
姉さんにあまり時間が残されていないことくらい、分かるじゃない!
[今まで生きていることがおかしいだろうといわれたなら、頭が真っ白になってふっと力が抜ける。
つられた様に拘束が緩む]
[彼女の顔面は怒りに蒼白となっていて、目の前の男の頬を平手で張る]
ばか、言わないで。
姉さんが人を喰らって生き延びてきたとでも言うの?
[パァンと響いた音に幾分冷静さを取り戻したようで、押し殺したような声で告げる]
いいわ、あんた達下っ端に聞いたって何一つ分かっていやしないんでしょう。
[この喧騒が届いて、姉が姿を見せてくれやしないかと立ち去る前にじっと宿の方向を見つめるけれど――この騒動も何もきっとこの濃霧に吸収されて、届かないまま――]
毎日だって、来るんだから。
姉さんの無事な姿を見るまで。
[あきらめたように宿から視線をはずすと、挑むように告げる。
彼女が暴れないとなれば、見張りの男達に無理に拘束しようと言う意思もなく―それはやはりどこか後ろめたさもあるのだろうか―もはや形骸だけとなってしまった拘束から抜け出す。
次に姿を眼にするときには骸との対面になってしまうかもしれないとは思ったけれど、ふるふると頭をふってその想像を振り払い背を向けた]
[どこへ向かうべきかと考える。
手紙の出所である役場へいくことも考えたけれど、責任逃れでたらいまわしされた挙句、結局は村長の名が出てくるのだろうと思えた]
会ってくれない可能性のほうが、高い。
けど・・・。
[何もせずには、いられない。
足早に村長宅へと向かう道すがら、彼女に向けられる村人の視線はどこかよそよそしく、冷たく感じた――]
― 第三幕・了 ―
[幼少の頃から。]
[ 生きる よりも 死ぬ 方が身近にあった。]
[死は何者にでも平等に訪れるものだと、知っている。]
[いまさら。]
[誰が死のうと。]
―地下・酒蔵―
[人狼は、いる。]
[いや、正確には。]
[いた のだろう。]
[かたちのないものや、いろのないものが。]
[アナスタシアが帰ってきた理由を教えてくれた。]
[奴らの中には、人狼に殺されたものや。
人狼そのものだったものも、いるようだった。]
[とすれば。]
[棚に並んだボトルのひとつ。]
[見覚えのある8桁の数字。]
[姉だったものと同じ年月を過ごしてきたという、証。]
[首を掴み。]
[壁に叩きつける。]
[濃緑とともに飛び散るのは。]
[紅い。]
[あの花と同じ。]
[濃い、紅。]
[祖父は云った。 あれは愛の花だと。]
[そして、哀の花だと。]
よぅく意識を研ぎ澄まして御覧?
そうすれば判るはずだよ。
美味しそうな人の血肉と、
それ以外――それを糧とする同胞の存在とを。
[囁く声には、血肉への抗いがたき甘美な誘いが混じる]
ちゃんと意識を集中できたかい……?
さあ、問うよ。
【わたしは、だぁれ――――…?】
[同胞の気配も感じ取れない幼子ならば、仲間足り得ない。
だから問う。
同胞足り得るかの期待を込めて]
……ふふ。
[暖かな寝台の中、女の口元には、緩く笑みが浮かんでいた]
さあ、どんな返事が返ってくるものやら。
もし答えられなかったら……その時は悪食だって構うものか。
[うっとりと下腹を撫でて]
お前の糧にしてしまう、かね?
[くすくす、くすくす。
布団の中に笑みがこぼれる]
[寝台を出ると、荷物の中から新しい服を纏う。
昨晩来ていた服は、燃やしてしまったから]
……しかし、一人食う度に服を一着ずつ燃やすのは面倒だね。
ここはなんとかしないと。
[炭となった服の残骸に、ため息交じりに呟いて。
何時ものように金の髪をまとめ、スカーフを巻いた。
そうして部屋を出た女は、何も知らぬ顔をして食堂へと向かう]
[気丈な女が初めて見せる涙に、
弟分であるロランなどは驚いたかもしれない。
取り乱したりはしない。
ただ……友人を喪ってしまって悲しいと。
何かを喪失した様な空虚さを、その眸に映して。
女は静かに涙を零し続けていた]
[泣き腫らし紅くなった眸を、ハンカチで拭う。
最期に泣いたのはいつだったか。
頭の中でそんな事を考えながら、
傍目には友人を喪って悲しいと謂わんばかりに、微かに肩を震わせて]
……ナースチャ。
もうあんたには、逢えないんだねえ……。
[――否。友人は我が身に残る。この子の糧として]
あんたがせめて……そっちであの人に出会えることを
祈るよ―――
[その言葉には、嘘はなかった。
身体は我が身とすれど、その心は真に求める人の元へあれば良いと。
そして暫くは、彼女の冥福を祈る様に眸を閉じる。
ロランが話す投票の話等も聞えてはいたが、
口を出すことはなく、ただ友人の死を*悼んで*]
[床に座り込んで、どれほどそうしていたか。
ふと感じた空腹は、漂う香ばしい香りのせか]
……はは、ゲンキン。
[胃の中の物を全部ぶちまけた後だというのに。
香りに誘われる様に。
ゆたり、と食堂に向かう]
[否。
本当に自分を誘うのは]
――ワタシハ ダァレ――――…?
[同胞の、赤き囁き。
自分に問われるその言葉を、オウム返しにつぶやいた]
ジャラ…
[金属同士がぶつかる音]
(これはミハイルは受け取らないかも知れない。だとすればこれは彼女に渡すのが妥当だろう。だが…)
[ズボンのポケットの中にはアナスタシアから教えて貰った地下牢の鍵と共に、彼女が持っていた金緑石の首飾りがあった]
(妥当ではない、気がする)
[結局、渡さなかった]
― 食堂→地下 ―
[軽食や飲み物を用意し、寝ていた筈のミハイルが地下にいることを知れば、そちらに向かう]
ミハイル、なにを――
[地下に降りれば既に壁にボトルを叩きつけた後。一瞬、彼の凶暴性を疑った、が]
(だとして、この行動は少なくても人狼の衝動からくるものではないだろう)
食べたい。
[ふとつぶやいた言葉。
一体何をだろう、と自答する。
空腹で居たら。見境無く欲しくなる気は、した]
それは、だめ。
[伯父との約束を破ってしまう。
それに。
今空腹を満たしたら、五感が鈍ってしまう。
そうしたら、きっと、探せない]
[安直な判断と思いつつも、声をかけた手前、相手から反応があろうとなかろうと、言葉を続けた]
ミハイル。彼女の部屋に残されていたものだ。
もし受け取るのなら、お前が適当だと判断した。
[そう言って、ミハイルに生前彼女がずっと弄っていた金緑石の首飾りを取り出した]
一応聞いておく、受け取ってくれるか?
[首飾りの中身は見ていない。が、今までの彼女からどのような遺品であるかは予想はできる]
処分するにしろどうするにしろ、できればお前に任せたい。
[受け取らなければ、そのままポケットへと戻す。用はそれだけだと...は、食堂へと戻っていく**]
[声に振り向けば、そこには。]
[…………]
[相変わらず、名前は出てこない。]
[そのまま、黙って相手の言葉を聞く。]
…………
ああ。
[差し出されたものを、受け取る。]
[暗い地下で見るそれは。]
[以前見たときとは違う色を、していた。]
[厨房には誰もいなかったけれど。
食堂には幾らか人と、軽食が用意されていて]
……ロラン、かな。
[なんとなく、そんな気がして苦笑が漏れた]
いただきます。
[軽食を少し、取り分けて。
テーブルの間をすり抜けると、隅の方の席に両足を上げて座り込み。
話の流れを追っている]
[確か、小さい頃に。一度。]
[ここに入れられたことがある。]
[――が。]
[ぐるりと、辺りを見回し。]
……どこだったっけ、な。
[腕から指先へと伝った血が、床に落ちる。]
[首飾りを上着のポケットに突っ込むと。]
[階段を上った。]
[口に入れる食べ物は、なんだかずいぶんと味が薄い]
……。
[目だけでひっそり食堂を見回す。
今までよくこの「欲」を抑えてこられた、と。
伯父の約束に感謝した]
[食堂の隅、階段のそばにいたから、地下から上がってくる人影にはすぐに気が付いて]
ミハイル……?
[いつもと変わらない表情に見えたけれど]
……手、血が。
[慌てて椅子から降りると、ポケットからハンカチを取り出した]
[広がるミハイルの血の香りに。
やめて、と、唇を噛む。
そして、ふと、気づいた]
――ワタシハ ダァレ。
[ひとりだけ。涙を流す女からだけ。
何も、欲を感じない。否――]
――ソレハ アナタ。
[フィグネリア。
返す囁きは、迷うところ無く響き。
視線は真っ直ぐに向けられる**]
――――…。
[真っ直ぐに向けられる眸に、無言で顔を上げる。
幼子の目覚めを悦ぶように、女の口端がにぃっと。
弧を*描いた*]
……ぬ。
[駄目。]
[と云われては。]
[そのまま大人しくする。]
[血が流れるのは、煩わしかったから。]
[ふと。]
なあ。
[思ったことを、訊いてみた。]
お前、名前。 なんだっけ。
[男の傷にハンカチを巻いて。
朱色が隠れればこそりと息をつく。
ふと。上から振ってくる問いに]
ナタリー。
スペルも教えましょうか。
どうせすぐ忘れちゃうんだろうけど。
[少しだけ唇をとがらせて、ぴしゃりとハンカチに覆われた相手の手を叩いた]
いや。
[手を叩かれれば、なぜか。]
[無意識に、笑みが浮かんで。]
覚える。
[その手で、彼女の頭に触れようと。]
[伸ばす。]
ナタリー。
……ありがとな。
[いまなら。]
[なんとなく。]
[忘れないような、気がした。]
[笑みを浮かべる男に。
本当に痛みがないんだろうかと、きょとりとして]
覚える?
[さらなる言葉に、さらにきょとりとしたが]
ん、わかった。期待しておきます。
[ただ目の前の男に名を呼ばれることは。
けっして悪くない気がして。
頭に触れる手の感触に、少しだけ、微笑んだ]
[椅子に座り直して。
ちらりとフィグネリアを見る。
確かに先程。
彼女は自分を見て、笑ったのだ]
――ずっと、会いたかった。
[自分と同じ、存在に。
だから、今食堂からは、離れがたくて**]
― 夕刻:宿→村長宅・マリーヤside ―
[日が沈むのは遅く、されどひどい濃霧に辺りは薄暗く――。
息を整えると、村長への対面を願った]
お願いします。
あわせてください。
[憤りを押さえ込んで、丁寧に頼んでみるも相手にはされず。
応対する使用人の表情はどこか能面のようで気味が悪かった]
どうして…ロラン様も宿にいらっしゃるのでしょう?
[使用人に相手に言い募ってもどうしようもないことはわかってはいたけれど、取り次いでさえもらえないのが納得できなかった]
[ずいぶんと粘ったのだけれど、不確かな情報だけでは取り合ってもらえず、あげく疑念が頭をもたげる]
まさか、ロラン兄様が…。
[普段の呼び方が口をつく。
あまりに愚かしい疑念に自分の正気を疑う。
くるりと背を向けると再び駆け出した。
息子のために村長が餌場を用意したのかもしれないだなんて…。
馬鹿馬鹿しいと一笑にふす――しかし、疑念が浮かんだそのこと事態が、兄と呼んだ人への裏切りと思えた]
[占い師の話題で、表情を変える者はいないか。
そっと、けれど注意深く周囲を見渡していたから気づいたのだろう]
サーシャさん……?
[ふと考え込む様子を見せた彼女へ顔を向ける。
返る答えが何もなければ、それ以上問いかけはしないだろう]
あ、いや、……。
[ふと感じた違和感を、上手く言葉にすることが出来ず]
考え事してる風だったから。
体調、大丈夫?
[先ずは病弱な彼女の身を気遣うけれど。
でも其処で引くことが出来なかったのは、色んな意味で残された時間が多くないことを知っていたから]
―――…何か、気づいたこととか、あった?
[体調を心配する言葉に、大丈夫と返すけれどもやせこけた頬のその顔色は青ざめて]
気がついた、こと。
[呟くと、完成間近の手元のリネンに目を落とす、イライダのための―]
水車小屋、いかない?
[実際のところあまり調子はよくない…この騒動に心労が募る。
誰かに聞いてほしかった]
[顔色の悪い彼女を心配する眼差しは本心から。
ただ、本の僅かに、相手を人狼か否か見極めようとする気持ちが混じってはいたけれど]
……………。
[彼女の手にした布を見て、思う。アナスタシアの顔に布をかけてやったのは、きっとこの人なのだ]
うん。いいよ。
寒いから気をつけて。
[水車小屋へという提案に頷き、ゆっくりと立ち上がる。具合の悪い彼女を気遣うように、手を差しだした。
窓の外には既に暗くなり掛けている。何処かから再び、狼の遠吠えが聞こえた気がした]
― 食堂→水車小屋内部 ―
[イヴァンの気遣いに礼を述べ、そっと目立たないように移動する]
ふふ、どうしてかしら、この宿に来てから、何かが狂いだしたよう。
[いえ、あの幼い日が始まりだったのかもしれないとは胸中にとどめる]
…夢を、みるわ。
[端的すぎて伝わりはしないだろう言葉を落とす。
遠吠えに耳を澄ます]
―水車小屋内部―
この村は変わらないよ。……何も。
[それは18歳の青年が語るにしては、深い重みを持って響く言葉。
彼は見つめ続けてきた。何年も、何十年も、否、それよりも更に、遥か昔から。
―――…冷気に閉ざされたこの村を。
彼女が心中で呟いた言葉も思い出も、知る術もなく]
夢……。
それは、どんな、……ゆめ?
[静かな小屋の中、遠い獣の声だけが響く。
そっと息をのめば、僅かに緊張した空気が彼女に伝わるだろうか]
変わらない、か。
人は変わっても、営みは続いても、そうね、この村は変わらないのかもしれない。
[その言葉は彼女の胸にも重く響き、目の前の青年に初めてあうかのように感じてふと視線を正す]
不思議な夢なら、昔からみたわ。
あの子も知らないことだけれど。
[目の前の青年の言葉に宿った緊張に、彼が人狼の可能性もあるのだと思い至って身を堅くする]
だけど、それはこんなに夜毎じゃなかった。
誰か別の人の過去の情景、たとえばそれはマーシャの。
[探るような視線は隠せなかったけれど、それでも告げたのはすぐそばの食堂に人の気配があるから]
ここにきて最初の夜は…。
[躊躇いに言葉をきるものの、泣き笑いのような表情で告げる]
アナスタシアさん…。
[断片であることは今までと変わらず、けれど誰の過去であるかは判断できるほどに鮮明な]
これだけじゃ何ともいえないでしょう?
過去をのぞき見られるなんて、気味悪いだけ。
[もし決定的な場面を夢見たなら、人狼とはいえるかもしれないけれど、人であることを断定はできない気がした]
[視線を正す彼女に気づけば瞬いて、それから緩やかに目を細めた。それは、「いつもの」イヴァンの顔]
――――夢はね、教えてくれてるんだよ。
自分では気づかない大切なことを、教えてくれてるんだ。
父さんの受け売りだけどね。
[他人の過去の情景を夢に見るというサーシャ。
其れを聞けば、身体に走る緊張は更に強く。確かに決定的ではない。曖昧かもしれない。
けれど、…そう、彼女は間違いなく]
…………………。
[占い師だ、と。言いかけて、泣き笑いのような顔が目に留まった。
自分の能力に怯えているようにも見えた。其れに気づけば、なんだかすとんと、緊張感が抜け落ちて行って。
…後に残ったのは、得体の知れない哀しさだけだった]
………サーシャさん。
その夢は、イライダさんの言う「占い」なのだと、僕は思う。
人狼を探すための手がかりが、
僕たちには、あまりにも何もない。
でも、サーシャさんの夢なら、きっと役に立つと思う。
[彼女の言葉が本当か嘘か。それを判断する術など持ち合わせてはいないが。目の前に居る「占い師の子」へと、静かに語り掛ける]
気味悪くなんてないよ。…凄いことだ。
僕は守りたくても、それができないから。
僕は探したくても、それができないから。
サーシャさんのことが、羨ましい。
[そして同時に、恐ろしくもある。けれどそのことは、胸の内に仕舞って]
出来る限りで良いから、…人狼を、探してほしい。
多分、サーシャさんにしかできない。
[深く頭を下げる相手に、応えたくはあったけれど]
…だけど、誰の夢を見るかだなんて、私にはわからない。
[戸惑いにその目が揺れる]
できることがあるなら…と、そう願うけれど。
[頭をあげさせるように、そっとイヴァンの肩に手をかける]
私が、ほんとに占い師なのだとしたら、多分、イライダさんも人間だわ。
[今朝見た夢を思い返す―イライダに尋ねて、一致するのか確認するつもりだった。
彼女の父親が生きていた頃の――]
死ぬのなんて怖くなかったはずなのに、なんて皮肉。
あの子に看取られずに逝くのはこんなに怖い。
[イヴァンの顔を見つめる眼は、相変わらずわずかに焦点があってはいない]
[と、唐突に胸に痛みが走る。
両手で胸を押さえると、意識を失ってその場にくずおれる]
あ、まだ…だめなのに…。
[しばらくは乱れたままの脈は、徐々に正常に戻っていくだろう]
――――――……。
[頭を下げた体勢のまま、誰の夢を見るのか分からないとの言葉を聞けば、緩く目を開いた。つまり無自覚なまま、彼女に殺されてしまう可能性もあるということだ。
大きく一度瞬きをしてから、肩に乗せられる手に顔を上げた]
イライダさんは、人間。
[彼女の言葉を深く頭に刻み込む。誰が人狼で、誰が人間か。
相手が人狼だと知れれば、―――きっと殺すことにためらいなんてない、筈だ。その為にこの宿にとどまったのだから。
…大切な人が人狼である可能性なんて、欠片も考えてはいなかった]
死ぬのが怖いなんて、当たり前のことだよ。
マーシャはその言葉を聞いて、喜ぶかな。…悲しむかな。
[おそらくは、その両方だと思う。
姉思いの彼女もきっと今頃不安な夜を過ごしているのだろうと思えば、苦笑交じりに溜息が零れて]
――――――…ッ、サーシャさん!?
[ふと揺らめいた彼女の身体。反射的に身体は動き、崩れ落ちるサーシャを受け止めながら、床に膝を突く]
誰か、……
[人を呼ぼうと食堂へ視線を走らせるが、徐々に彼女の容態は落ち着いてきた様子で。ほっと安堵の息をつく]
ごめんね。疲れさせちゃったみたい。
温かい部屋に戻ろうか。
[その声は、彼女に届いていただろうか。
拒まれないのならば、軽いその体を抱き上げて水車小屋を後にする]
[―――――その、道すがら]
ねえ、サーシャさん。
「占い師」の力はね、人狼を見つけるだけじゃないんだよ。
…知ってるかい?
[ぼそりと零した声はあまりに小さく、夜の空気に吸いこまれてしまうだろう。発作の後で意識がぼんやりとしていた彼女の耳には、はっきりとは聞こえなかったかもしれない。
けれど彼女が問いなおしたとしても、寂しげに笑みを浮かべて「何でもない」と告げるだけ]
また、夜が来るね。
[霧がかる夜空を見つめながら、今度ははっきりと呟いた。
やがて食堂へ戻れば彼女を暖炉のそばへと連れて行く**]
― 宿・自室 ―
[...は、昼過ぎからずっとベッドの上でぼんやりと寝転びながら、天上を見つめていた]
結局、前向きな意志を見せていたのは、サーシャとイヴァンだけだったな。
[昼間の騒動後、残された面々の様子を思い出せばそんな感想しか出てこない]
(明朝の騒動からいきなり突きつけられて、即座に心を落ち着けて対処できる方がどうかしている)
[ミハイルはまるでアナスタシアを
悼んだような素振りを見せたが、それだけだった。
ドラガノフは怒りを隠さず、フィグネリアは涙に暮れ、
ナタリーは衝撃を乗り越えようし、
イライダは思案に耽っているようだった。
オリガはショックのあまり部屋で寝込んだまま姿すら見せない]
このまま無為に一日を過ごし、
もう一人あたり、誰かが人狼に殺されれば慌て出す、か。
[必要ならば関わるが、そうでない限りは、村人個人個人の判断、決意に水を差す気も邪魔をする気もない]
(その殺される誰かが、俺であってもそれはそれでいい)
こうなるとは思っていなかった。
[人狼騒動が、ではない。騒動が起きて、こうなっていることが、だ]
怒り狂うのは姉さんで、ミハイルは無関心を貫き、
ドラガノフさんやイヴァンが感情的になり、
ナタリーやイライダが宥めつつ場が膠着するのだと、な。
…身体の弱いサーシャは、てっきりいち早く諦めるのだと思っていた。
[それが誰よりも早く立ち直り、あの意志の篭った目で自分を見た]
本当に、人はわからない。
[普段とは違う事態で、人は思わぬ本性を見せる]
……。
[食堂で、とぎれとぎれに話を聞きながら]
人狼を見つけるもの、か。
[椅子の上で膝を抱えながら、ぽつりとこぼす]
物であれ、人であれ。
一番最初に人狼に狙われそうです、ね。
[私が人狼なら、そうするし、と。
指先で唇を撫でながら]
自分の死ではない、別の何かを恐れているのか…
それとも…
[二十数年、この村で共に生きてきた相手でもこのザマだ。
他の者や人外、人の心を持たぬような存在などの事などわかりようがない]
それとも、俺がただの木偶が過ぎているだけなのか…
[自分自身ですら、わかっていないのだから*]
友人の心すら判らず、
心底からの呼びかけにすら応じなかった俺だ…
[育ちで持たされなかったのか、元々持って生まれてこなかったのか]
それでも…
俺は、後悔しているのだろうな。きっと。
(あの時、迷ってすらいなかったと思っている。
それなのに今でもずっと引き摺ったまま、か)
[永い月日をかけて与えられ続け、隅々まで廻った毒は、今も尚湿った心を腐らせる*]
― 食堂 ―
[イヴァンに話した事。
それは、誰かからの受け売りとも言えるもの]
自分自身が何かわかってる訳でも
何か出来る訳でも無いのって
こういう時には、どうしようもないわね。
もっとも、そうとも言ってられないのだけど……。
[頬杖をつきながら、冷めた紅茶を見ていれば。
サーシャを支えるようにして、イヴァンが食堂へと戻ってくる]
……アレクサンドラ?
[大丈夫とばかりに視線を送ってくる二人。
ソファでまどろむサーシャに、近くにあったブランケットをかけて]
人狼も怖いけど……
息詰まる、この状況もきついわね。
[ナタリーの方を軽く見て、彼女が先ほど呟いていた事を反芻する]
一番最初に、狙われる……か。
[ふむ、と顎に手を当てて考える]
―食堂―
[食堂に戻った青年は、辺りを見渡してみる。オリガの姿がない。
何処へ行ったのかと尋ねれば、自室にこもっているのだと告げられた。彼女の使用人部屋へちらりと向いた視線は、やがて虚しく窓へと落ちて。
まだ人狼の手がかりを何も掴めていない。それなのに、夜が。また、夜がやって来る]
………………。
[ただ、笑っていて欲しいと願うだけなのに。どうしてこんなにも難しいのだろう。
村を覆う霧は、深く、深く、まるで、「あの日」のようだった]
―追想―
[>>1:92 両親が亡くなったあの日、悲しみと共に深い森の中へと彷徨いこんだ「少年」は崖から足を踏み外し、
―――――…そして、「死んだ」のだ]
(あーあ、死んでるよ、この子)
(まだ小さいのに、何だか可哀想だね)
[少年の亡骸を最初に見つけたのは、一匹の妖魔。
本当の形はない。実態もどこにもない。強いて言うなら、それは森の意志そのもの。森という大きな命が膨らんで、分裂して、そうして出来た一個の存在]
(くすくす)(くすくす)
[可哀想だと言う割に、妖魔は楽しげに笑っていた。
何故なら「彼」にとって「人」というのは全く違う次元の存在であり、例えばぱらぱらと摘み読みした物語の主人公だとか、それくらい遠いものだったから。
森を愛し、村を愛し、生命の存在そのものを愛でていたけれど、此処の命に向けられる感情は時に軽薄で残酷だった。そして、それが「妖魔」として、「森」としての正しい姿でもあった]
(あ、誰か来る)
[崖の上に、人の気配を感じた。少年を探しに来た大人のようだった]
(ちょっと悪戯しちゃおう)
[それはあまりに無邪気で愚かな気まぐれだった。
「妖魔」は「少年」の亡骸へと潜り込み――――…、そして「イヴァン」としてその大人の前に姿を現した]
ちょっと足を滑らせちゃったみたい。でも、もう大丈夫。
[おずおずとそう告げたのと同時、抱きしめられた。
その大人は、随分と長い間森を探しまわってくれていたのだろう。頬は氷みたいに冷たかった]
………………っ。
[妖魔のイヴァンは、困ったように顔を歪める。悪戯は楽しいことだと思っていたけど。何だか、思っていたのと違う。
申し訳なくなってきて、「偽物です」なんて言いだせなくなって。仕方なくその大人に連れられて村へ帰って行った]
[村に戻って来たら、何だかやたら無愛想なお兄さんがこっちをじっと見てた。気まずくなって目をそらしていると、手を引かれてお兄さんの家に連れて行かれた]
……………?
[温かい部屋の中、ソファに座らされて暫く待っていると、テーブルの上に小さなカップがとん、と置かれた。初めて見る飲み物だった。そっと口をつけてみると、火傷しそうなほど熱くて、ふうふう吹きながら飲んだ。
…甘くて美味しかった。どうやらココア、というらしかった。その日から、イヴァンの好物はココアになった]
[ココアに満足した妖魔のイヴァンは、そろそろ森に帰ろうかと思った。
森に帰ったら、他の皆にもあの飲み物のことを教えてあげよう。そんな風にわくわくしながら]
『――――――イヴァン』
[急ぎ足で駆けていると、細い声で呼びとめられる。振り返ると、其処には可愛らしい女の子がいた。
…泣いていた]
え、ど、どーしたの!?
[慌てて彼女の元へと寄り、慰めようとしてみるけれど。どうしてその子が泣いているのか、妖魔のイヴァンには分からない。
その子はイヴァンの頭に巻かれた包帯にぺたぺた触りながら、『心配したんだから』と言っていた]
ぼ、僕の所為で泣いてるの?
あぁ、えっと、…どうしよう。どうしよう。
[よく分からないけど、このままではいけない気がした。うろたえながら辺りを見渡していると、足を滑らせて素っ転んだ]
――――…痛た…。
[雪に埋もれながら、頭をかく。女の子を慰めなくちゃいけないのに、こんなことしてる場合じゃない!
恐る恐る、顔を上げれば]
『もう、イヴァンってば、…なにやってるの。 ふふ』
[何故かその子は、泣きながら笑っていた。
元々可愛かったけど、ふわりと笑う姿は、さっきよりもずっと可愛らしかった]
……………………。
[だから、もっと、笑ってくれると良いなと思った]
……………。
[それが、妖魔の初恋]
[「彼」が「イヴァン」の姿を借りて、村に留まることになった*理由*]
― 食堂 ―
(まだ皆いたのか)
[階段を降り、夜も遅いこの時間になっても、食堂に残っている面々を見れば最初に浮かんだのはその感想だった]
[もし昼の提案などに対して改めて聞かれれば「皆で決めてくれ」という姿勢は崩さず]
どういう事になろうとも責任は取る。
[その為に自分がここにいるのだと言わんばかりに]
ここで起きた事全てに於いて、
生存者が表に出すのに不都合な事全ては、
後で俺の命令だったと証言してくれてもいい。
だから村人である皆が、ここにいる皆で対処を決めてくれ。
(別にこのまま何もせず、人狼と共に滅びようとも皆が選ぶのなら俺は気にしない)
[そこまでは口には出さなかったが]
俺は腹が減ったが、夜食は必要か?
もし良ければ、手伝ってくれ。
[代わりにそんなことを口に出していた]
人狼からすれば、物を壊すのも、人を……。
[その先を口には出来ない。
けれど、聞いた人がいれば、何を言いたいのかは予想できるだろう]
難しいわね。
考えてるだけじゃ、何も変わらないって解かってるのに……。
[知識が、行動の足を引っ張る。
良くある事だ。
今の自分は、まさにその状況――]
でも、考えないと。
[考え無しでは、居られない状況だ。
自分にとっても、それは同じ]
イライダさんはいろいろ知ってるから、頼りにしてるんだから。
[その言葉に何の力も無いことはわかっていたけれど。
力強く頷いてみせた]
[ロランが食堂に姿を現して、夜食を作ると言うから]
イライダさん、食べません?
元気出して、襲われたら、フライパンでひっぱたいてやりましょう。
[みんなも。と、言って、野球のバットでも振る仕草。
空元気でも、出ればいいと。
だから無理に食べろとは言う気はない。
それから、ロランに]
責任、とらないと駄目なのかな。
[あまりに責任と繰り返すから。
伺うような上目遣いで訪ねた**]
……ロランさんの言う対処、は
誰か一人を選べって事よね…。
[気が重いからか、そこから先に思考が進まない]
出来るだけの事は、しようと思ってるんだけど、ね。
[そしてロランと一緒に厨房に入る。
何を作るのかは、ロラン任せ、だったけど]
[イライダとナタリーの会話は夢うつつに聞いたように思うけれど、自らが占い師であるとは未だ確証を持っては告げられず、口にすることはない]
…イライダさんは、なぜ研究をしようと思ったんですか。
[食事の準備が整ったなら、起こされる。
軽く食事を口にしながら、たずねるのは研究の内容ではなく、彼女自身のこと。
もしも、そう、確証さえもてたなら、彼女は人狼の牙の前に身をさらそうとも自らの見た真実を告げるだろう。
それはきっと、明日のこと――。
静かに思い出話に耳を傾けたなら、自室へと戻るだろう]
―食堂→オリガの部屋―
………ロランさんだって、村人だよ。
[繰り返されるロランの言葉に、少しだけ違和感を覚えて。窓から視線を外し、首を傾げながら彼にそう告げた]
僕、オリガの様子を見てくるね。
[人狼への対処も気にかかったけれど。でも、それ以上に気になるのは少女の様子だった。
夜食を作りに行く面々へ頭を下げ、自分は使用人の少女の部屋へと]
―明日の明け方近く:自室→イヴァンの部屋の前―
[調子が悪いこともあってか部屋に戻ったならストンと意識を失うように眠りにつく。
夢に見たのはイヴァン―否、妖魔の姿]
そんな…。
[思い出されるのは昨日のイヴァンの常とは違った様子。
時間帯も考慮することなく、イヴァンの部屋へと向かう]
…イヴァン!?
[彼はどんな様子でいたのか、なんだかそのときのことは曖昧で…]
[ああ、今までとなにが違ったというのだろう…彼が人ではないと知ったことが?
見えぬはずの彼女の目がその瞬間だけ視力を取り戻す。
――最後にみた彼の表情は寂しげだったのか満足げだったのか、彼女の目に焼き付いて、再び光は失われる。
床に座り込んだ、彼女を取り残して――。
この一幕を今はまだ誰も知らない]
― 夜:ロストヴァ家・マリーヤside ―
[泣き濡れた彼女の元に、母親からもたらされる赤い花嫁衣装――姉が彼女のために仕上げた。
急いで仕上げていたのだという、母親の言葉に姉の思いを知る]
姉さんも、何かを感じていたのね。
[こんなものよりも姉にいてほしかったと思ったけれど、これは姉の思いのかけらと思えてぎゅっと抱きしめる]
あきらめないわ。
[無力な己を痛感したけれど、それでも彼女は宿へと足を運ぶことを止めないだろう。
姉と再会を果たすまで――それがどんな姿であろうとも]
― 終幕・了 ―
―オリガの部屋―
[慣れないノックの音を響かせた後、そっと彼女の部屋へ。
寝台には青ざめた顔で寝込む少女の姿があっただろうか]
……オリガ、大丈夫?
[人気のない室内の空気は、酷く冷えている気がして。彼女の枕元に椅子を引っ張ってきて、見守るように腰かけた]
驚いたよね。急に、こんなことになって。
[白い息を吐きながら、彼女に声をかける。
返事は無かったかもしれない。それでも出来るだけ平静を装って、彼女が少しでも元気が出るように、語りかける]
オリガはアナスタシアさんのこと、慕っていたものね…。
でも、君のことは、僕が守るから。
だから心配しなくて、良いから。
[訥々と告げる声だけが、室内に響く。しばし、音は途切れて。
凍ったような空気が二人を包んだ]
………熱、あるんじゃない? 平気?
[恐る恐る、彼女の額に手を伸ばした]
―――――――――…。
[熱はなかった。むしろ酷く冷たかった。
黙ったまま額から手を離す]
ごめんね。
[少女の小さな手をそっと握った]
……ごめんね。
[謝罪の言葉を繰り返しながら、気づけばぽろぽろと涙を零していた]
何もできなくて、何もしてあげられなくて、ごめんなさい。
君は幸せにならなくちゃ、いけなかったんだ。
なのに。それなのに、どうして――――…。
[ぐしゃぐしゃになるまで、泣いた。泣いてもどうにもならないって分かっていたのに、涙は止まらなかった。一秒一秒がオリガの命を奪い取っていっているようで、時計の針の音が憎かった]
[できあがっていくスープは良い香りだ。
そう感じる自分は、まだ人を騙していける、そう思う]
それにしても。
[ちらりとロランを盗み見る。
責任をとる。というのは。
一体どうやってするのだろう。と。
人狼が人を食うのは。人が牛を食うのと同じことだ。
また人が人狼を撃つのは。人狼が狼を追い払うのと同じことだ]
[そこに責任があるとすれば。
生きていくもの個人が、自然と、とるものではないかと、思う]
誰かの分を肩代わり出来るものじゃあ……ない。
[そんな風に考えるのは。自分が人狼だからだろうか。
そこまで考えて、ふと、違うな、と思う。
この考えは多分、ロランには当てはまらないだろう、と。幽かに、首を振った**]
[泣き腫らしたまま、気づけばうつらうつらと、椅子の上で居眠りをしていた。
オリガの手はしっかりと握ったまま。感じられる体温は―――まだ、あっただろうか。分からない。
分からない、振りをした]
―――――――…ぅ、うぅ。
[酷い頭痛と、全身を引っ掻きまわされるような苦痛を感じて目を覚ます]
……?? ?
[何が起こっているのか、直ぐには理解できない。
だって、占われるのも、消えてしまうのも、初めてだから。知識では分かっていても、これが「そう」なのだと直ぐにはピンとこない]
い、 たい…。 痛い、痛い痛い痛い …ッ
[冷や汗がだらだらと出てきた。吐き気もした。其処で漸く、今が「異常事態」だと認識するに至る。
痛みを堪えようとしても、声が喉の底から零れだしてくる。必死に口元を手で押さえつつ、ふらふらと立ち上がった。
……こんな所を、彼女に見られたくは、ないから]
たっ ッ、 …た、す、け、て―――…
[壁伝いに廊下を歩く。
悲鳴をあげているのは、身体だけではなくて。…というよりも、身体の痛みの方は、次第に楽になっていって。
次に削られていくのは心。「イヴァン」が、「想い」が、「思い出」が、ざらざらと音を立てながら、崩れ落ちて行く]
に。 兄さん、 ミハ、 …… 。 ………?
[歩いて、歩いて、漸く辿り着いたのは誰の所だっただろう。
顔はまだ分かる。とても大好きだった人だということも分かる。けれど、名前が思い出せない。それでも助けを求めるように、腕を伸ばした]
ごめんなさい。ごめんなさい。
ぼくは ぼくが、 イヴァンで でも、其れは嘘で
ちがう 本当に ぼくは、 ただ、…
[支離滅裂な言葉を吐きながら、子供のようにがくがくと震える。
その様子に彼はどう対応しただろうか。いずれにせよ、もう、妖魔の眼には何も認識できていない]
消えてしまう 占われた ぼくは
ぼくが いなくなる 妖魔は 占い師に 殺される
でも人狼を みつけ ないと だから だけど
………… …こわ い 。
[そうして遂に、相手のことも完全に分からなくなった。
急に彼を見上げたかと思うとびくりと肩を竦め、逃げるように走り去って行った]
だから、もう、「イヴァン」でいる必要は無いんだ。
「イヴァン」はお終い。
[最後に彼女の瞳に映った青年の顔は、一見無感情で
――けれど、やはり何処か寂しげな眼差しだった]
それじゃあね。さようなら。
[でも、それも一瞬のこと]
[さよならを合図に、さらさらと、彼の身体は砂になって崩れ落ちて行く。身体と一緒に、「イヴァン」が「想い」が「思い出」が、全て消え去っていく]
[涙は何時しか枯れて。女はよろり立ち上がる]
……ごめん。
今は付いて行けない。
悲しみが大きすぎて、頭が何も受けつけちゃくれないんだ。
悪いけれど……先に休ませて貰うよ。
[そう謂って食堂を出たのはいつのころだったか。
気分悪そうに口元を覆い、泣き腫らした紅い眸のまま、
女は自室に戻り、鍵を掛けた]
[ゆらり。]
[紫煙が揺らめく。]
―宿の一室―
[背にコートを掛けた椅子。]
[それに腰掛け。]
[なにもしない。]
[食事を摂る、という行為も、あまり好きではなかった。]
[大人数であれば、なおさら。]
………っ。
く、……ふふ……っ。
[錠を下ろした部屋の中、漏れ出る声は嗚咽とも嘲笑とも区別がつかぬ。
ただその唇は弧を描き、端正な顔は愉悦に歪んで]
[人の理屈など、女にはどうでもよかった。
ただこの飢えを満たせるか、否か。
胎の子の為にも、食事を欠かすことはできない。
ロランや皆の話を聞き流しながら、
<<サーシャ>>の味はどんなものだろうかと想像し、唇を舐めた]
――――
[煙草を灰皿に置いて。立ち上がる。]
[声が、聞こえた。]
[確かに。]
[聞き間違えようのない、声。]
[扉を開ければ、そこには。]
……イヴァン。
[頼りなく、伸ばされた手を。]
[掴む。]
お前。どうし……
[目の前の彼は。]
[言葉を並べ続ける。]
[それは。]
[かたちのないものに、よく似て。]
[全身を、怖気が走った。]
――っ、イヴァ……!
[掴んだ手を振り解き、彼は走り去る。]
[追おうとしたが。]
[足が、動かない。]
[あいつは、死ぬ。]
[それだけは、ひどく冷静に。]
[理解できた。]
[みえないなにかに、阻まれたのか。]
[それとも、最期を迎える瞬間を、この目で見たくなかったのか。]
[おそらく、両方。]
……あ、や。まんじゃ…… 、ねえよ。
[死は。]
[何者にも、平等に。訪れる。]
[こうなることは、はじめから。]
[わかっていたはず。]
[だけど。]
[部屋に入り、扉を閉める。]
[震える、右手で。]
[かちり。]
[時を刻む音は、止まず。]
[ハンカチを巻かれた左手で。おさえる。]
[――はやすぎる、だろうが。]
[扉に寄り掛かり、瞼を閉じて。]
[最後に聞いた言葉を、頭の中で。]
[繰り返す。]
――うらないしに。
殺される。
[静かに、瞼を、開いた。]
**
― 夜・キッチン ―
[くつくつと野菜が煮込まれるシチー]
ちゃんと"全員分"作る所が、ロランさんらしい……。
[ここに居るのは数名だけれども。
この場に居ない誰かが何か食べたいと思ったら、暖めて食べられるだけの量が、作られている]
みんな、後ででも
食べてくれるといいわね。
[かちり、と鍋の火を止める。
気の利くロランが、タイミングをあわせ、木の器を渡してくれば。
それを受け取り、シチーをよそって、渡し返す]
ナタリー、テーブル拭き終わった?
アレクサンドラも食べるかもしれないから、起こして聞いてみてくれるかしら?
[そう頼めば、ナタリーの明るい返事が聞こえただろう]
[話しながら、思い出すのは常に、その事ばかり話していた父。
母は、父にあきれたのか、何時の間にか居なくなってしまっていたから]
ん。
父は、自分の好きな事をやっていたから、かな?
一度集中し始めれば、食事とかも取らなくってね。
どうしたらいいかな? って考えたら
作業とか、資料の整理とか、そう言った事を手伝って
少しでも時間を作るようにして
一緒に食べたり、何かしたりしないと、って思って。
それから、かな。
……研究を始めた、と言っても、なし崩し的みたいな、ものよ。
熱意のある研究者じゃなくってごめんなさい。
[思わずそんな事を言って、苦笑し。
ほんの少しだけ、話を変えるように、声のトーンをあげる]
前の街で、父は先生と会って、意気投合したみたいだったわ。
先生は湖と妖精の関連について調べていてね。
父と先生、二人で研究をするのに、どこか適している場所は無いかって、中央で調べたりしたら。
氷、妖精、湖、その全てがそろっているのが、この村だ、ってわかって…。
それから、何だかんだと中央に言って、この村に研究所を建ててもらって……
後の事は皆も知ってるでしょう?
[つかの間、人狼の事を頭の中心から、追いやる事が出来たからだろうか。
話しながらも、自分が思っていた以上に、シチーを食べる事が出来ていた。
このテーブルについている人も、口をつけずに全て残す様子は見られず。
ほんの少しだけ、安心する]
昔はね、父に書類の順番がどうこう、なんて言われて
声をあげて言い争った事があったのよ。
その後は、どっちから謝るって訳じゃないけれど…
二人で一緒にブランデー入りの紅茶を飲むのが、仲直り。
[自分が話している事の何がサーシャのトリガーになるかなんて。
知りもせず、気付きもせずに。 そんな、話しを―――**]
[ふと窓際に置かれた苗木に目をやる]
お前もそう思うだろう?
..虹、"絶望の後の希望"か。
皮肉なモンだな。
だが、そうしてみせるさ。
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