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―中庭―
そうですね。このままってわけにもいかないですし、とりあえずはこびましょ…って、どうしたんですか!その腕!!
[ショウの言葉に頷きつつも、今更ながらショウの腕に気付くと大声を上げた。]
[ぐらぐらする足を必死に踏みとどまり、嘲笑するリヒトを根性だけでにらみつける。
その時、勢いよく誰かが飛び込んできた]
ソヨ!
[彼女の足が、勢いよくリヒトのあごに打ち込まれた]
[膝が決まると、そのままの反動で相手の身体を蹴って距離を取って着地する]
はァい♪ 初めまして。
山派ロイドが誇るクィーンオブドンキホーテこと転音ソヨ。
よろしくね。
[吼えられ、睨み付けられれば眉を顰める]
あらあら同じ顔なのにちょっと見ないウチに随分と醜悪になったものねぇ…
ダンスパートナーが見つからなかったからって
他のパートナーに無理矢理手を出すのはよくないわよ?
[壁に打ち付けられたベルに、ダメージを深く追っているGAIを見て肩を竦めた]
か・・・はっ!!
[その一瞬の隙をついて、内部で押さえ込まれていたリヒトの意識が、体の支配権を取り返した。
まだ視界が揺れ、耳の奥がワーンと鳴っている。
だが・・・弱音を吐く時間すらないことは、分かっていた]
皆さん・・・今の間に、逃げて、ください・・・。
僕が僕でいられる間に・・・!!
RICHTERは・・・本当に冷酷で、危険な奴だから・・・!
逃げてください! 早く!!
―中庭―
ん……悔しかったから桜の木を殴ったんだ。
ストは霊能者のコードで見たんだよね、人狼って結果。
[桜の木の下に在るベンチに横たわるバクの方へと視線を送り、ストを振り返る]
友達だから強制停止しないでって頼んだんだけど、ダメだったみたいでさ。だから悔しくって…
僕がもっと真剣にお願いしていたら、とかさ。
[長話しちゃったね、と2人でバクの居る桜の木の下へと倒れている皆を運んで行っただろう]
[リヒトの搾り出すような声が聞こえる。
彼の顔を一瞬見て、…軽く首を縦に振った]
っ!
[痛めつけられた身体を必死に動かして、壁際に倒れているベルを抱えあげた]
ソヨ!ベルは確保した。
[ソヨに向かって叫びながら、入り口に向かって移動する]
『あーあ。無茶やり過ぎよ、アタシ…これはもう終わりかもね…』
[内心で勝算のなさにげんなりしていたが]
リヒト!?
[だが突如として、今までの彼の表情と口調に戻ったリヒトを見て構えを解く]
え? あ? ええっ!?
アタシ、え、ええと…GAIくん。
こういう場合、皆を連れて一目散に逃げるのが正解?
で、でもなんかその選択って…
でもでも、そういう事言うと
相手の想いを無駄にする展開とかあったりしちゃったりして…
え? え? ええーこまるー!
[先ほどまでの啖呵が嘘のようにわたわたと慌てだし、この期に及んでGAIに救いの目を求めるが、応じてくれるだろうか]
[意識の裏に追いやられたリヒターが、怒り狂っているのが分かる。
リヒターはすぐに、リヒトの消去プログラムを起動することだろう。
『自分は山派ボカロだ』と信じ込み、それによってリヒターを守る為に作られた、リヒト。しかし、それは海派にとっては諸刃の刃。
だから用意されていた、リヒトを完全に消去する為のプログラム。
昨日は・・・起動直前で、それを逆に相手に仕掛けることが出来たが・・・あんな偶然はもう二度と起きない。
なぜなら・・・自分は所詮、仮初の存在なのだから]
GAI、さん・・・すみません・・・。
ベルさんにも・・・謝って・・・許されることではありませんが・・・・、すみませんと・・・。
僕の命で・・・お詫びしますから。
[どうすればいいかは、分かっている。ソヨが教えてくれた。
図書室の奥の扉。特殊技能棟の屋上へ、登るための非常階段。そこを目指しながらリヒトは、いつもの口癖どおり、ひたすらに謝る]
[そして、最後に、ソヨに視線を向けて、ふっと微笑み]
馬鹿言うな!
このまま戦う方が、あいつの、リヒトの想いをムダにするだろうが!
[慌てるソヨに、思わず声を荒立てる]
悔しいけど、今の状況じゃ俺も足手まとい…ベルも居る…
お前さん一人で戦えるのか!
ひとつだけ・・・リヒターに、感謝しなければならないことがあるんです。
これも、他人から奪ったもので・・・やっぱり、キレイな能力じゃないんですが。でも・・・。
リヒターは、僕に「感情」を教えてくれました・・・。
僕は貴女が好きです。ソヨさん。
疑う時も、信じるときも、まっすぐな貴女が、僕にはとてもまぶしかった。
貴女のような強さが欲しかった。
貴女の努力を、見ていたかった。
いままでありがとうございます。
だから、
「気にしないで」
[それを言い終えると、背を向けて非常扉を押し開け、非常階段に飛び出した]
え、ちょっと…待って、それって――
え、ええ――リヒト…
[追うべきではなかったし、自分でもわかっていた。のに、自然と脚はリヒトの方へ、彼が消えた非常階段へと向かって駆け出していく]
リヒト!!
[理屈じゃない。彼を、追う――]
そんな無茶を…
ええ。見ました。検査の結果。間違いなくコードネーム人狼。…楽譜の読めないボーカロイドだと。
[桜の木を殴ったと聞けば溜息と共にそう答えて]
関係ない…ですか。
[皆をバクの居る桜の木まで運びながら関係ないと謂ったショウを見る]
確かに、そうですよね。楽譜が読めないからって、僕たちがボーカロイドである事には変わりはないわけですし…
まあ、バクさんを人狼だと判断した僕が謂えた事ではないですけれど。
[話しながらも皆を運び終わると、ひらひらと舞い散る桜を見上げる]
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