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[ふざけている様に見えて、左之助にも計算はあった。
要するに「やり合いたいけど女が許してくれないよね」と言っているわけで、武士が相応の自尊心を持っていれば受けるだろうという思いがあった。
もちろんそれは、彼が生きてたころの概念ではある。]
――東ブロック・マンション――
[気配遮断。アサシンの能力をベースにするキラーのそのスキルは、かなりの質を誇る。あの状況で追っ手から逃れることができたも、それが無ければ難しかったであろう。
玄関で意識を失っているみなみを一瞥し、割り当てられた部屋へと入る。
気配遮断は続けたまま、部屋の隅の影へと身を潜めるように座した]
丁寧な挨拶痛み入る。貴殿といい、信長といい、堂々としたものだな。
蒲生延、蒲生家24代目の当主だ。先日は大した持て成しも出来ず失礼した。あまり気の利かん奴でな。
[言ってキャスターを見やった。
続く言葉を聞いて、全身の血液が逆流するような悦びを感じる。こうなってはもう止まらない。]
良かろう。“死損ね左之助”の槍捌き、存分に楽しませていただこうではないか。
[今にも抜きそうになる逸りを抑えて、ランサーを睨みつけながらその提案を呑む。]
3時間後だな。了解した。
よいな、キャスター。
おっと、その名を知ってくれているのですかい。
さすがは武家の末裔、油断がならねぇや。
先日の事は気にしないくだせぇ。こちらも突然の訪問でしたからねえ。
話は決まった、ではこれにて失礼。
じゃあな、シエラ、3時間後に会おうや。
[左之助は来た時と同じように軽く手を上げ、去っていく。]
おい、ツカサ、何鳩が豆鉄砲食らったような顔してるんでい。もう行くぜい。
[左之助はそう言うと、梧桐を連れて流廻川へと*向かった。*]
決闘の申し込みとは律儀なことだ。
ゴドウという魔術師、なかなか面白い。
予定が変わった。一旦戻るぞ。
[冷たい笑みを浮かべたまま屋敷に*戻った*]
[
――反対しなければならなかった、のだろう。
もっとも、その結果がどうなるかは明白だった。
主は令呪を使ってでも、一文字――原田左之助の挑戦を受けただろう。
]
――……三時間、ですか。
[
それまでに、主を翻意させることは出来るだろうか――いや、出来るはずもない。
そのような説得を試みるだけ、無駄なことだった。主の歓喜に水を差し、機嫌を損ねるだけになるだろう。
そう――……主は最早、止まるまい。
一切の手出しを認めず、ただ一介の戦士として、英雄にと挑むに違いない――英雄にだ。
近代の英雄とはいえ、英雄は英雄――もしも、主がそこに届くとすれば。それはきっと。
]
――……考えたくは、ありませんね。
[大股で歩む主の背を眺めて、*+小さく首を振った。+*]
―― 流廻川・昼前 ――
さてと。どのくらいで来るものかね。
[ 河原を一巡りし、人避けの結界を張り終えて左之助へと話しかけた。]
罠らしき結界がこの河原一帯に仕掛けられている。解除を試みたがどうにも私では手の施しようがない代物だった。あのシエラというキャスターが仕込んだものかも知れないし、誘い込まれないよう注意してくれ。
[ 感知できた限りの、罠の大まかな範囲を説明する。その配置を完全に感知できた自信がない上に、どのような罠かさえ把握できていない。どれだけのアドバイスになるかは判らないが、調べられた限りの旨を伝えた。]
−蒲生邸−
[屋敷に戻って何をするでもなく、静かに過ごしていた。蒲生正宗の手入れを終え、布で包んだ後、身支度を整える。
ランサーたちと別れてから、もうじき3時間が経とうとしていた。]
そろそろ時間だ。行くぞ、キャスター。
何でぇ、既に敵の手が入っているのかい。向こうさんも本気だねえ。
向こうが呼び出しに乗ったのは、案外このためもあるのかもしれねぇな。
ふーむ、結界の位置はなるべく頭に入れるが、位置からして全部回避は難しそうだ。
[左之助はそう言うと、辺りの魔力に気を配りつつ、キャスターたちを待った。]
[
――……流廻川へと向かう道を、主の後ろについて歩く。
主と左之助が戦うということは、同時に、自分がゴドウという魔術師と相対することになる。
まさか、一対一の決闘を申し込んできた側から、介入はするまい。
だが、仮にもこの身はサーヴァント。
人間の魔術師を相手には、遅れを取ることは、まずないだろう。
だからこそ――……どうやって対応するべきか、難しいところだった。
]
――……見えてきましたね。
ん……どうやら、人払いの結界を張ったようです。舞台は整えたと、そういうことでしょうか。
[迷いを残したまま。河原に立つ二人の影へと、視線をやった。]
−流廻川−
なるほど、あちらも準備は万端というわけか。
[キャスターの言葉に冷たい笑みを浮かべる。]
キャスター、戦闘中ランサーが範囲に入ったら結界を発動させろ。それ以外は俺たちの邪魔をしなければ何をやっても構わん。
――ただし、殺すなよ。
[蒲生正宗の戒めを解き、ランサーたちとの距離を縮める。]
待たせたな。
こちらもいま来たところですよ。
[ お約束的に、言葉を返す。]
人避けの結界は施しておいたけれど、何があるか判らん。他者を巻き込まない事だけは約束してもらえるか。
[ すでに戦う気満々に見えるガモウに話しかけながら、左之助を前に出すかのように、一歩後ろへと下がる。]
おうよ、早速始めようか。
[左之助は蒲生にそう声をかけ、槍を手にキャスターの姿を見る。
彼の今の目標はキャスターである。
先ほど会った時、蒲生に「手合わせを願いたい」とは言ったが、それは決闘を受けさせるための挑発であり、まさか本当にマスターが人の身で自分に向かってくるなどとは今の左之助には予想できてはいない。]
ツカサ!気合入れていくぞ!
[左之助は槍を手にキャスターに向かって走り始める。]
[
魔術師を殺せば、左之助が消える可能性がある。
単独行動スキルの有無や現在の魔力量にもよるが、敵が消えることは許さないと、主はそう言っているのだ。
各種の強化呪文を主へと掛け終えて、半歩。
]
――……どうぞ、ご存分に。
−東ブロックへ移動中−
[さて、現在2人は肩を並べて――むしろくっ付きそうな程近づいて歩いているわけだが、これにもひと悶着あったりした。
茜が『近すぎる。もっと後方に離れろ』と主張するも、信長の『不自然で怪しい。何より咄嗟の時に反応できない』という発言により主張は却下され、現状が出来上がっているというわけだ。]
黙ってばっかりだとつまらんぞ。
少しは口を開け。
よかろう。
[ゴドウの言葉に頷いて蒲生正宗を構え、己の獲物目掛けて駆けた。]
どうした原田。
貴様の相手はこの俺だッ!
[弾丸のように走るランサーに向けて、切り払いの一撃を仕掛ける。]
[ 基本、聖杯戦争において戦闘を行なうのはサーヴァントだとツカサは考えていた。
ただし、相手のマスターを狙うのは戦術として有効なものであること、また、ガモウが武闘派魔術師である事から自分が狙われる可能性は充分に考慮していた。]
勿論だ。こちらは気にせず全力で行け、一文字!
[ 三本の絵の具を取り出すと、指に挟みいつでも動けるよう、戦場全体に意識を拡大した。]
[苦虫を噛み潰したような表情で、横を歩く。]
…口を開いたら、罵倒しか出てこないんだけどっ!
[ぷりぷり怒りながら、高いビル群が聳え立つ方へ向かう。]
……正直、この辺は、私の力が落ちるわ。
この場所での戦闘は、出来れば避けたい所ね。
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