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[見開いた目に、ナイフが突き刺さる。]
………………ッ!!
[唇が二、三言を呟く。]
[――カラン。
ダガーが床に落ち、喉から落ちる血と、眼窩の辺りを拡げるナイフに沿って滴る血が、カジノのレッドカーペットの赤をさらに深く染め上げる。]
[まるでモノか人形のように、キャロルの身体はドサリと崩れ落ちた。ピクリと指先が動き、カーペットをズルズルと掻きむしる。]
[しかし、それも刹那のこと。
いくばくかの後――女は静かに*事切れた*]
[崩れ落ちた女の死体を見つめ、ベンジャミンは無言で立ち尽くしていた。
銃口から立ち上る煙が、「女を撃った」という状況を冷静に伝えている。]
……死んだ、か。
[それしか言うことができずにいる。]
―カジノ―
[物陰からひょこりと現れた。]
…………。
[ただただ、ぼうっと突っ立って中心部での
事を見ている。いや、見ているのか見ていないのか。]
[たどたどしい足取りで、中心部へと歩を進める。]
……死んだの?
[周囲に尋ねる。そして、傍らの老人を一瞥し]
そっちは?
……おう。いっそコイツのこと、燃やすか?
[先ほどから背負っている火炎放射器のホースを取り出し、静かに溜息をついた。]
跡形も無く処理するっていうのも、悪い話じゃァねぇ。
「邪悪な存在」は消し去っておいた方が、何かと気持ちがいいモンだ。
……それとも、こいつがやったのと同じように、死体晒しておくかい?
あァ、筋肉坊主。
性悪姉ちゃんは…たった今、「死んだ」サ。
そっちの爺さんは知らねぇ。
生きてるかもしれんし、死んでるかもしれん。
[ポケットから煙草を取り出し、くわえた。]
[女が絶命したのを確認すると、男はさっさと眼窩からナイフを抜き取った。
握り締めた手からも、こじ開けるようにしてダガーを捥ぎ取る。
ちらりと老人の方を見た。]
ふうん……。
[キャロルのそれをマジマジと見つめた後、吐き捨てる。]
これが敗者の姿ってわけか…。
体張って番組盛り上げるなんて、プロだね。
[ゴキリと首を捻る。]
御老体はわかんないのか。このままじゃどの道死ぬね。
放っておいても、生きてりゃ勝手に目覚めるか。
戦争マニアな爺さんだ。
もしかしたら、ゾンビのように生き返るかもしれねぇよ。
[煙草に火をつけ、ナサニエルの方を見た。]
キャロル女史にゃァ、「死に様はこう晒せ」という例を見せていただいたのサ。全国の視聴者の皆様にも、とくとご堪能いただけただろうよ……
[ふぅ、とひとつ紫煙を吐き出す。]
オイ、そこで震えてるバニーの姉ちゃんよ。
バーボン、一本くれねぇか。
言えてる。あまり話してない爺さんだけども、
確かに首斬っても死ななそうなツラしてる。
[クスクスと笑った。]
なるほど。こう殺すのね。プレビューマッチは終わったし、
メインイベントに向けて鍛えておかなきゃね。
[プロレスラーとはいえスポーツマンである。
煙草は毒になりかねないので、相手が気を悪くしない
程度に顔をしかめておいた。]
・・・これであらかたの人間が共犯者ね。
見てても止めない人だって、広義で考えれば無関係ではいられない。
もう・・・後には引けないわ。
[バーカウンターの影で、ガタガタと震えているバニーガールに手招きする。「バーボンは全て割れてしまった」という彼女の声に、小首を傾げてこう言った。]
……じゃあ、飲める酒なら何でもいい。
とりあえず1本くれや。
[バニーガールは、ベンジャミンにおそるおそる近づき、ハイネケンの瓶を渡した。]
ビール、か。
コーラの間違いみたいなモンだが、……まあいいか。
明日、酒が入荷されるのをおとなしく待つとするか……
[酒瓶の欠片が散乱するバーカウンターを眺めながら、ベンジャミンはハイネケンをゴクゴクと*飲んでいる*]
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