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──誕生日>>93──
24時までって、それじゃ泊ま、……
[普通に返しかけて。
あっとなり、途端に何かを想像したかのように真っ赤になると、目を逸らした。
彼の意地悪は的確に効いたということだ。
しかし以前の自分なら、夜に男性の一人暮らしの家に上がろうだなんて、高校生の間にするとは思わなかったに違いない。
恋人の威力とは恐ろしい。
何より、彼だからなのだろうけれど。]
……、
[エレベーターの中では、
前の会話を引きずってか、背をたたかれると安堵より胸の高鳴りが上回ってしまい。
俯いていたのは、実は恐怖心よりそちらが主だったとは、言えるはずもなかった。]
[展望台では、距離が離れて少しホッとする。
あのまま引っ付いているのは危険だ。
人混みはそこまでではなかったから、あまり周りは気にすることなく景色を楽しめる。
手を繋いで、きょろきょろと眺めて。]
ああ、そうだな。
あれが多分美術館で──……
[共にはしゃいでくれるエディ。
気持ちに寄り添ってくれるのが、嬉しい。
彼と共にいると、時々、自分はこんなにも話し好きで表情豊かだったのかと、子供っぽくもあったのかと思うことがある。
それは全部、この人の優しさのおかげだ。
最後は景色よりもエディを見つめて。
ありがとう、と呟いた。*]
― 誕生日>>157 ―
なら、泊っていけばいいよ?
両親に怒られるなら、僕も一緒に怒られるから。
[紅葉のように紅く色づいたひとに、ささやいて。
うん、そんな反応するだろうと思ってた。だから言ったんだけど。
僕だって、誰にでもこんなことは言わない。ダッドじゃないんだからそんなに外面はよくなれない。
ミサキだから、一緒にいてほしいと思ってるから、だろうなとは思う。]
ああ、じゃああのあたりが一緒に行ったカフェか。
あのとき、僕もだいぶ緊張してたんだよな。懐かしい。
[手を繋いだまま、一緒に同じものを見よう。
できれば、同じ気持ちで。
だから。言葉の代わりに。
もう一度、その手をぎゅっと、ぎゅっと、握って。もっと一緒にいたいと、叫ぶように。*]
― コンサート>>144 ―
ありがとう、リカ。
[小さくほほ笑んで、その笑みに、安心する。
正直に言えば。
五月のリカになら別の曲を贈っただろう。例えば幻想交響曲のような。例えば、ありえたかもしれない未来に贈っただろう、リカに一番ふさわしいだろう曲とか。
けれど。クラスで、あるいはふとした時に。ナギ―と笑って寄り添っている今のリカになら、この曲がいいと思った。
プレイアデス舞曲。これは古い形式で書き出された、ダンスを踊るための曲。
リカが生まれた日本で、現代の作曲家が書き出した曲。
ふたりで寄り添って、舞踏を踊って初めて完成する曲だと、僕は思っている。
―――あのときの。紅い衣をまとった貴女との舞踏は、僕はたぶん忘れない。
けれど、貴女には、凪沙との、新しい舞踏を踊ってほしい。]
"Clair de lune"か。
……ありがとう。僕はそんなに、音が跳ねて光る人だったのか。
[リカから渡されたCD>>49>>50に記された曲は、もちろん知っている。
曲だけならば世界で一番美しく記した作曲家の、その中でも音が跳ねて遊ぶような曲。]
なるほどね。Moolight Sonataの第三楽章は、たしかに僕向きじゃないね。
リカはあのくらい激しいほうが好みだろうけど……
贈るなら、ナギ―向けかな?
[あの曲の裏話を知ってればなおさら。
身分違いの悲恋に終わったけれど、不滅の恋人と称されたひとに献じられた曲。
強固な意志で、伝統から離れた展開をしつつもフィナーレをまとめ上げた曲。
それはたしかに、僕向けじゃないよ。すくなくとも、リカからは、さ。]
[リカを送り出して、長く息を一つ。
そこにミサキはいただろうか。もしかしたらリカを送っていっているかもしれないけれど。]
……こっちは、な。
[鍵盤にもう一度、向かい合って、指を走らせる。
似合いはしないけれど、貴女に一番ふさわしいとおもう曲。
もし僕が、ベートーヴェンの立場になれば、贈っただろう演奏。
Libertangoを、丁寧に奏でて。
―――今日の、アンコールにしよう。*]
[手を繋ぐ力が強くなる。
小指には、彼からのリングがきちんとある。
上着の中のブラウスには青い花。]
それでね、
君は外国育ちだし、スマートだし、自分と全然違う世界の人なんだなとどこか思ってた。
とても気安く話してくれるし、優しいけれど……どこか触れられない感じなのかなって。
多分、私が臆病だったんだろうな。
[穏やかな声で。]
私は、あの日、
君と話せたのも、手を繋げたのも嬉しくて。
何より、君が、私といるとホッとするって笑ってくれたのが、本当に嬉しかった。
君は飄々として見えるようで、張り詰めて感じられることがあったから、……君にもっとそんな顔で笑って欲しいなって願ったんだ。
君には笑って欲しいんだ。
幸せそうに、心からほっとしたように。
勿論いつもそんなわけにはいかないだろうし、悩むことも沢山あるのだろうけれど。
そんな時はすぐ隣は無理でも、手を伸ばしたら触れられる場所にいたい。
[手を繋いでいない方の手を伸ばし。
エディの頬に、触れる。
キザな笑みも好きだけれど、何より、どこか子供っぽい笑みが、柔らかな笑みが愛おしい。]
ここが私の生まれ育った町。
これから君と過ごす町だ。
そして、今度は、──ベルギーの街も眺めよう。
[大好き、の代わりに。
未来への希望を紡いだ。*]
[戻ってきた梨花からはパナップのぶどう味を受け取ろう。苺も捨て難いけども。
差し出された木のスプーンには思わず感心したように目を見開いて。]
流石梨花。分かってるな......。
んー、じゃあぶどうの方いただきます。
[木のスプーンでたべる良さをわかってくれてる事に感動した。
さて、蓋を開けるとそこには......+裏+
表:はーと 裏:スマイル]
−誕生日(鍵谷)−
[友達とはいえ正月に...しかも誕生日に愛しの彼女を差し置いて野郎と過ごすなんていうのは鍵谷もごめんだろう。
だから誕生日プレゼントを渡すのは冬休みに入る前くらい。
誕生日プレゼントをちゃんと買おうとすると気づくのだが、俺は鍵谷のことを、知っているようで知らない。
特に、絵を描くことについては「絵を描く」という事実以上のことを知らない。どんな絵を描くのが好きなのかとか。沙也加に聞けば分かるかもしれないけど、なんとなくそれは本人から聞きたくて。
鍵谷に渡したのは油絵の絵の具。
https://tshop.r10s.jp/auc-touo...
筆や他の用具も合わせて用意したかったが、多分使う人によって好き好きが別れるだろうからありがた迷惑かと思い用意はしない事にした。]
[油絵具はアクリルよりも乾きが遅い。
重ね塗りなんかをしようとすれば大変かもしれないけど、その分じっくりと時間をかけて描ける。
素人ながらにそんなことを思って用意したのだった。]
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