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[迸る感情を受け止める覚悟は出来ていた。
ハイレートエリアで勝負をしながら、意識の比重を念話に置く。
そうしなければ、自分自身が影響を受けて押し潰される可能性があったからだ]
──── っ、
[睨むような気配の後に、響き渡る”声”>>*29。
悲痛な叫び。
ずっとずっと、抑え込まれてきたもの。
ぶつけられるようなそれを受け止めるように意識を張った。
泣いたなら切る、という宣は、耐えることを優先したために為すことは出来ず*]
─ カジノ・ハイレートエリア ─
[落ち込んでても仕方が無い、と。
スーツケースを取り出した仲介人に応じるべく顔を上げる。
ふと、視界の端にやたらと目立つ3人組>>96の姿が見えた]
「うわー、どっかのお嬢様かな」
そわそわすんじゃない。
[隣で騒ぎ出したドライを一喝し、しばし3人組の姿を眺める。
顔は良く見えなかった。
随分目立つなぁ、と言う感想だけが浮かぶ。
あの3人組のうちの1人がヴェスだなんて、欠片も思いもしなかった*]
── カジノ ──
[そうして、ハイレートフロアも一頻り見終わったか]
…、大体回ったっぽいけど……
どーする?
[薄い蒼のサングラス越しにベルを見遣り尋ねる]
ブラック・ジャックだっけ……?
そっちの方で暫く遊ぶならそうでもいいし…
少し、俺、休もうかと……
[視線が緩く揺らいでいる。
ベルの返答はどうだったか?
まだ暫し共に行動するも良し、逆に暫し別行動をとる場合は、待ち合わせ場所なり、何なり定めて別れたろうか*]
最後、あいつと、何話した?
あいつの、声。
……思い出せねぇ…っ
[声を抑えることなどできず、ただただ、漏れ出ていく。]
ああああああああああ!!!
[何度も叫ぶ。]
…いやだ…
んで、んなの…!!
[泣いて、叫んで。もういないのは、分かっているはずなのに。そう叫んだところで、変わらないのは、もうずっと分かっているはずなのに。]
……なんで、いないんだよ…
[抑えることのできない感情と、心が叫び続けていた*]
─ ハイレートエリア ─
[ロールエリアが片付けられ、テーブルの上にスーツケースが開かれる。
現れたのは数多の梟人形。
年代は様々のようだ]
「さぁ好きなのを選んでくれたまえ」
…好きなのを、と言われてもな…。
[しかし賭けに負けたのだから買わざるを得ない。
仕方なく1つ1つ確認するように梟人形を見ていった]
[その中で、1つの人形に目が留まる]
………んん?
[数ある梟人形の中からそれを拾い上げた。
仲介人が満足げに笑っている]
おいドライ、これってもしかして……
「え? …………あー!?」
やはりそうだよな!?
[端末を取り出し、画像の梟人形と見比べる。
模様やデザインは寸分違わぬものだった]
「ミスター、これってどこで……」
「ここを出入りしている者が買い取って欲しいと言ってきてな。
4・5年前だったかねぇ、作られたばかりの割には汚れていたが、手入れすれば十分売り物になりそうだったのでね。
買い取ったのさ」
そいつ、他に何か言っていただろうか?
「そうだねぇ…オークションの種にもなりゃしねぇ、なんてことを言っていたかな。
宛が外れたような物言いだったぞ」
オークション……もしかして。
[これもまたCoCの仕業では、と。
大方プレミアものだと思って拾ったが、そうではなかったために売り飛ばしたと、そういったところだろう]
「それで、買うのはその人形でよいかね?」
……ちなみに値段は?
[一番気になるところを問えば、まだ5年しか経っていないものだから、とそこまで高い値にはならなかったよう。
リルは安堵の息を吐く]
「値切るのならばもう一勝負だな。
勝てば2割減、負ければ2割増だ」
遠慮しておく。
[負ける気しかしなかった]
[ともあれ、リルはノーマが所持していた梟人形を見つけ、手に入れることに成功する。
手持ちのキャッシュで支払いをし、安堵の息を吐くのだった*]
─ カジノ ─
[人の多さにやや目眩に似た感覚を味わいながら人混みを抜けていく。たどりついた卓は「ルーレット」。ヴェスから手ほどき>>58を受けて頷きはしたものの、飲み込むまでに時間がかかったのか、最初のゲームは周りの様子を見るだけだった。]
『赤の7!(セブン・レッド)』
[ディーラーの宣言に歓声と落胆の声が響く。]
なるほど、やっぱり7って縁起のいい数字なんだ。
[そんな気の抜けた発言をしながらもようやく仕組みは理解したらしい。比較的当たる確率の高いアウトサイド、黒にチップをおそるおそる差し出した。]
『黒の24!』
あ、やった、当たった!当たりましたよ!
[賭けに勝てば、ベルのもとへと配当が配られる。小額とはいえ、初めての勝利にベルは興奮気味にヴェスやハロルドへはしゃぎたてた。]
(なるほど、これがギャンブル依存症ってやつになるんだ。)
[興奮さめやらぬ中でもふいに浮かんだある人物の顔。昔ベルのカウンセリングを受けた女性だった。ギャンブルをやめたいがやめられない、そんな悩みをベルへ相談しにきたのだった。]
『黒の9!』
あらら、外れちゃいました。
[赤に賭けたベルのチップが没収されていく。先ほどの勝ちの分とで相殺されてはいるものの。外れた時の喪失感はまた大きい。]
大丈夫、大丈夫、節度を守ってやるなら遊びだから。
[結局数ゲーム続けた後もベルのトークンは増減を繰り返して最初とほぼ変わらずといったところだった。]
[表層へと浮かび上がった後悔>>*31が響く。
かける言葉は見つからない。
否、こう言う時は何も言わない方が良い。
泣いて、叫んで、全て吐き出した先に道が拓けるものだ]
………────
[零れた言葉の一つ一つが心に刺さる。
辛い、悲しいという言葉だけでは表現しきれないもの]
───……スティ
[粗方叫び終えた頃、そっと撫でるように名を呼ぶ*]
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