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−−ふっ、と、力が抜ける音がした。
どんな踊りであろうか。
家業とまで名を冠して仰々しい力を受け継いだと思えば、いざその段になれば自分はその力を一度とて村のために行使した試しはない。
どんなにも簡単に、悪事を働く狐が、
狼が、この村を乗っ取ってもおかしくはなかっただろう。
ところが蓋を開ければ、そんなことは御構い無しに、遊ぶだけ遊んではふらりと帰られたかの伝承の物の怪たち。
こんなことなら、俺が家より授かった力など、あろうがなかろうが構わないのではないか。
一気に、
力が抜けるのを感じる。
−−本当に、自分の言い続けていた通り、ただの言い伝えで、昔話で、現実にはありえない話だったのではないか。そうとさえ思ってしまう。
言うなれば、なんと称すべきか。
「杞憂……だったのかな」
岩戸から顔を出して一言、
眼前に広がる、例年と変わらぬ稲荷祭の賑わいを見て口をついた言葉。
今までの気苦労が、馬鹿みたいだった。
−−そしてそれはきっと、カガチだけではない。
>>甘利
「……ねぇ、甘利ねえさん。
もういいんだよ。
古い村の風習とか、家から伝えられたお役目とか、本当にどうでもいいんだよ。
見てみてよ。俺たちがずっと昔から、この時期に楽しんでいた稲荷祭だ。
全然、関係なかったんだ。
だから、いいんじゃないのかなぁ。そんな気に引っかかることなんかなくて。
俺は少なくとも、甘利ねえさんが帰ってきてくれたこと、嬉しかった。
この村のことも、俺のことも忘れて何処かへ行っちゃったんだって、ずっとそう思ってたから。
だから、
なんも気にしないで、このお祭りだけでも、楽しむのが、正解なんだと思ったんだ。
一緒に行こ、甘利ねー」
−−何もかも考えることのなくなったカガチは、
それまでの−−それこそ、村にいた時の甘利さえ存ずるところの、カガチそのものだった。
「……あ」
−−そういえば、と思い出したようにカガチは続ける。
「お花のお披露目会、どうなったのかな。
キクヒメさんが攫われたから取りやめになったって聞いたけど。
今の村の状況なら、何も問題なく、できそうなんだけどな」
−−家の縛りから解放されたカガチは、
それでも頭の隅に、自分らと同じくして家業に囚われている二人のことを思う。
−−彼らは、この騒動を後にして、どう歩いていくのだろう。
せやなぁ……
そも、気ぃ晴らそう思ってお祭りきたんもすっかり忘れとったわ……
お狐さんと遊べるんも、ここだけやろし。
アザミちゃんと遊べるんも、ここだけやろし。
>>甘利
「うん。
千代の花のお披露目もある。
朱と調の本番もそろそろだし、
リェンさん、まだ残ってるんでしょ?
アザミさんはもう、多分始めちゃってるけど……。
せめてお祭りの間だけは、楽しもう。
俺もまた、晩酌付き合うからさ」
「ねーさん。
そろそろ稚児行列、始まるんじゃないかな。
朱と調ちゃんが出るんだよ。
二人とも、特に調は頑張ってたから。
ほら、見に行ってあげよう」
うわー!!稚児行列見に行かなきゃー!!
キクヒメ様のお説教長いんだよもぉー……そもそもボクここ数日の記憶があんまりないっていうのに……ボクが何したっていうのさ!
ねっ、そう思わない?小鳥さん!(ピ……ピヨ……)
あーもー時間がないや、走れー!
[朱と調が出る稚児行列の始まりを今か今かと待つ人が増えてきた。かくいう自分も最終調整をあらかた終わらせ、全力で会場へと走ってきたばかりであった。]
「はあ、は……間に合った、か?」
[自分のいるところまでまだ来ていないようだ。一息つくと安心して腰を下ろし、行列を待った。]
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