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集会場は不信と不安がない交ぜになった奇妙な空気に満たされていた。
人狼なんて本当にいるのだろうか。
もしいるとすれば、あの旅のよそ者か。まさか、以前からの住人であるあいつが……
どうやらこの中には、村人が1人、占い師が1人、霊能者が1人、守護者が1人、結社員が2人、囁き狂人が1人、狂信者が1人、憑狼が2人、闇守護が2人含まれているようだ。
─Bar"Blue Moon"─
[この時間では来客も少ない]
マスター、ごめん、ちょっと人を探しに来ただけだったんだ。
そうだ、この前のお代、ツケてありましたね。これでお願いします。はい。
それじゃ、また来ますんで、失礼します。
[....は─Bar"Blue Moon"─を後にする]
─Bar"Blue Moon"─ → ─labo.兼自室─
自室に戻る途中で役人の集団に出くわした。
『あの学校の学生だな。学校内の者は先に『Masquerade』感染有無検査の血液採取をすることになっている、早く戻らないか!』
「はい、すみません。でも、俺、生体人工医学の学生ですよ。感染の有無を確かめるのは構わないんですが、俺、検死官の資格も持ってるんですよ。」
『検死官の資格があるかどうかなんてどうでも良い、早く戻って採血されなさい……お前が、検死官だと?』
「はい、学生ですが、生体人工医学の学生のうち、検死官の資格がないと研究できない分野があるモノで」
『そうか、それじゃ、『Masquerade』感染があったかどうかを確かめることが死んだ後にできるって訳だ。こちらとしては生きている間にして貰いたいモノだがね。せいぜいその能力を遺憾なく発揮してくれよ。』
……結局、役人達と一緒に構内にはいることになってしまった。
―― 街外れ(湖のほとりにある自宅) ――
『こんなものが何の役に立つというんじゃっ』
[荒げる声に定期検診に来た役人達がおろおろしている。更に祖父はその一人が持っている検査器具の入ったトレーを乱暴に地面に投げつける]
『馬鹿馬鹿しいっ』
おじいちゃん?!
[その姿に慌てて駆け寄って祖父のかわりに謝罪する]
ごめんなさい。
検診を拒否するとかじゃありませんから。
[地面に散らばった検査器具を拾いながらそれだけは伝える]
おじいちゃん…この人達はお仕事でここに来てるだけ。
困らせちゃダメだよ……。
[祖父の気持ちも痛いほど理解出来たが、こんなことでMasquerade感染の疑いをかけられるのはもっと悲しいことだと思った]
―― 自室 ――
[定期検診では検査器具により個人を調べデータを取るが、その結果が出るのに時間がかかり過ぎる。感染者にとっては確かに邪魔なものではあるが(今の自身の身体を捨てることを余議なくされるので)有効性は低く駆逐には程遠い]
お父様もお母様も、それが分かっていたから、もっと簡単に迅速に調べられる手段を見つけるためにMasqueradeの解析に命を――。
[祖父が反発するのは、国がもっとしっかりしていればこんな研究に手を出さずに済んだと思っているから。
誰も、死ななくて済んだと思っているから]
……でも。
だからこそ、おじいちゃん、わたしは研究を完成させたい。
世界に蔓延するこのウィルスから、みんなを守りたい。
そして、感染の恐怖などから人々が傷つけ合い殺し合う現実を変えたいと思うの。
[静かに目を閉じて祈るように心の中でそう告白する]
行こう、リアン。
[仔犬に声をかける。
首にはあの日身に付けていたのと同じシルバーのロケットペンダントが光っている]
―――自宅→研究室へ―――
―街外れ・自宅―
[その晩は、きちんと歯を磨いてから眠りに就いた。
次の朝、いかにも役人風情といった男たちが現れて、あのめんどくさい定期健診を母と共に受けたのだった。]
……終わったぁ。
『終わったわねぇ』
[データを採取した役人達が帰った後、気が抜けたように母と顔を見合せて苦笑い。
…そして、顔を見合わせれば、カトリーンは我が子に哀しげに笑う。]
『行ってらっしゃい』
あはは。
[突如、顕在化する意識]
面倒臭い。
また身体換えなきゃな。
この前換えたばかりだってのに。
[再び意識が*沈んでいく。*]
…行って、くるよ。
[カトリーンの目には見えていた。
少年の復讐の想い、決意、そしてその思いの行きついた先が。]
…俺んコトはもう気にすんなって、もう何回も言ってるだろ母さん。
母さんは、母さんのコトだけ考えてりゃいーの。
……いっつも通り、さ。
あと、ちっと野暮用が終わったら…ちゃんと学校行くから。
[責めるわけでもなんでもない、ただ優しい目で、カトリーンは出て行く子を見送る。
少年は振り返らず、歩きだす。教会へと。
ジャケットの下のロザリオを握りしめて。]
―→スラム街・教会―
―スラム街・教会―
[着いた先には、“相棒”がいるはず。
この前伝えられたパートナーの名前は、とても意外な人物のものだった。
もしかしたら、相手もびっくりしてるんじゃなかろうか、とぶつぶつ。
ともあれ、教会に来たのにはもう一つの理由。
ひとり聖堂に赴き、主の前に跪く。クリスの姿は、見られただろうか。]
……神サマ、力をお貸しください。
親父の仇を、それと同じモノを全て、撃ち抜く力を。
[ちら、と胸元に覘く、赤い石をあしらった十字架。
懐の更に奥には漆黒の短銃。
願いを天に伝えれば、“相棒”を待つために、しばらく教会の子供たちのイタズラに*付き合うことにする。*]
―早朝・自宅―
[薬を変えたせいか、眠りは深く。
幾度も鳴る呼び鈴に、ようやく身じろぐ。
殺風景なベッドサイドには、シンプルなスチールの写真立て。
2人の姿を隠すように、寄り添って掛けられた2つの十字架。]
…うっせぇ……
[定期検診に来た係員の応対に出るには、もう少しかかりそうだ。*]
[薬のせいだろうか?
幾度も夢を見る。
輝く無数のシナプス。
複雑に絡み合い、つながりゆくニューロン。
無数の声。
無数の意識。]
…ジャヌス……?
[何処からか声が聞こえた気がした。
けれどもそれは、酷く遠くて。]
[【仮面舞踏会】の名を持つ病。
未知のウィルスだと呼ばれるそれは、無数の微生物の集団でありながら、それ全体が思考する一つの意識であるという。
脊椎生物のシナプスに酷似したそれは、既に存在する存命中の生物の神経系ネットワークへと強制アクセスし、相互に置換転写することで爆発的に繁殖する。
それによって、感染した生命体は肉体的に崩壊し、生命活動を停止するに至るが…]
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