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呪い。…意外だな。
フィオナはもっと、自由な存在かと思っていた。
[勿体ない、という言葉へ不思議そうにする少女>>27へ]
いや、単純に。
キミは名前の通り真っ白で綺麗だから、
それが仮初の姿なら勿体ないと思った。
[何故かその白色には、惹かれるものがあった。
似た何かに触れたことがあるような気がするのだが。
…思い出せない]
Meister、そう。
名前の心算かは分からないが、
僕を作った博士の手帳にそう記してあった。
人間は、弱くて脆い。
生み出しても、また壊れてしまうのではないだろうか。
だとしたら、難儀なことだ。
心があるから愛が生まれるのに、
その愛が心を壊すのか。
[心底途方に暮れたように零す声は、やはり平坦だったけれど。
不意に思い出したかのように、顔をあげた]
――――…ああ。でも、僕も知っているぞ。
愛に壊された命のことは。
…………。
[今は何を想うのかと問われ、また暫くの間。
複雑な計算問題ならすらすらと答える自信があるが、
彼女からの質問には時間がかかってしまうことが多い。
そしてその思考は、
答えとは少し離れたところに行きついた]
思うに。
僕はあまり色々なことを、
考えないようにしてきたのではないだろうか。
心が育てば壊れてしまうことを、
もしかしたら知っていたのかもしれない。
[それでも無表情のまま、一つ大きく瞬いて]
僕はフィオナの問いに、寂しい、と答えを出したから。
真っ白で綺麗? そう。
容姿を褒められたのは久しぶり。ありがとう。
[意外そうに瞬く]
私は「フィオナ」と言う名前を得た。
同時に「フィオナらしく生きてほしい」そんな願い受けた。
それ以来、私は「制限」を受けている。
……呪いみたいなものだよ。
適応はしたけどね。
[口角を吊り上げるシニックな笑みと共に肩を竦めた]
……うん。
愛をはじめとした感情を持つ存在は脆い。
壊れてしまう物を生み出す事に価値はあるのかな?
この地上から消えてしまった人間。
また創りだしてどうするのかな……。
壊れないように可愛がってみる?
それで――愛に壊された命はどうなったの?
……自己防衛という事だったのかな。
あなたの寂しさを埋めてくれるものは何?
そんな存在を知っている?
[答えを出したマイスター
微かな喜色が言葉に乗った]
…キミは色々と興味深いな。
[どうやら、彼女の世界には彼女の世界の理があるらしい]
フィオナに名を与えた者は、
フィオナであることを願った者は、
どのような存在なんだ?
キミの口ぶりからすると、
一般的な親、とは少し違う気がする。
人間が壊れたなら、
僕は作り直さなくてはいけないのだろうか。
何度も、何度でも。
いよいよ途方もない話になってきた。
可愛がるという行為は、僕には、難しい……。
[相手の言葉に少しぎょっとして、困ったようにぼやいた]
―――愛に壊された命は。
博士は、人間を愛し、焦がれ、
自分の命をすり減らして研究へ没頭して、死んだ。
最期は錯乱したようだった。
寂しさとは埋まるものなのか。
僕は、そんな存在は知らない。
[その寂しさというものも、自分で言っておきながら
今一つ実感が湧かないというように、緩やかに首を傾けて]
ああ。一つ約束があった。
それが答えになり得るものかは、分からないが。
[あの猫はまた、研究室にやってくるのだろうか。
やってきたなら少なくとも退屈はしないだろう、と思った]
興味を持ってもらえたんだ?
ありがとう。
どんな存在……か。
そうだね。強大な力を持つ存在。
気まぐれか何かしらないけれど、力を分け与えられた。
―無に還るまで、フィオナらしく在れ―
こんな感じの方が伝わりやすいかな?
そんな事をする存在。
……そんな事ができる存在。
[時折、演技じみた語調を挟みながら言葉を返す]
可愛がるのが難しいなら……さ
適応できるまで人間を改良し続けるのも良いよね?
[マイスターがボヤけば不思議そうに首を傾げる]
愛で壊れた造物主、か。
ねぇ。博士を創りたいとは思わない?
博士を再生して、一緒に人間を創りたいとは思わない?
[ふと、思い浮かんだモノを率直に問いに出した]
寂しさを覚えるならば
それを埋める事ができるみたいだよ。
約束……?
そう。そんな約束があるのなら――……。
あのさ……マイスターってさ、人間みたいだね?
[唐突にそんな感想を漏らす]
ネコはネコ?でもネコはいないのではー?
ネコはネコでも別のネコ?
ネコはネコでもいないネコとは別のネコ。奥が深いですな!
名前はガヤ。
ガヤガヤ。ガヤガヤ。
オマエは誰だ?オマエはわたしでわたしはハルピア!
ネコは食べたことないですなー。
あーでもおなかは減ってきたかもなー。
[おなかが減ったこととか喉が渇いたこととかすっかり忘れていたけど、言われてみればそんな気がする]
いなくないネコのガヤはどこかにおいしいものでもご存知?
あいでもいいよ!
ハルピアはあいを知りたいですので!
[あいのことが分かったら、心置きなくご飯を探すこともできるので。すっかり近くまで近寄って、相手がずいぶん小さいみたいだからしゃがみこんで、すぐ近くから問いかける。
とはいえ、それはあくまで逃げられなかったらの話で。
逃げられたら、見失わない程度に追いかけながらの話になったけど**]
無に還るまで、フィオナらしく…。
[その存在は、神に近い何かというような印象を受けた]
キミは適応したといったが、
随分難しいことを言われている気がする。
フィオナとはつまり、今はキミのことだから。
自分らしくということか。
[先程のシニカルな笑みを思い出す]
フィオナは、今に満足しているか?
[ふと気になった疑問が口をついて出る]
改良か。改良するのは―――…、
[言いかけた言葉は、彼女の意外な提案に中断され]
博士を創るなんて思いも寄らなかった。
やはりフィオナは、面白いことを言う。
創るにしても、僕は博士のことを詳しく知らないからな。
似通った何かしか生み出すことは出来ない気がする。
しかし人間を創るよりは、いくらか簡単そうだ。
[誰かと一緒に研究を続けるということは考えていなかった。
少し、楽しそうな気がして。少しだけ、笑った]
……僕が人間。
そう、であれば、良かったのだろうけど。
どうしてそう思ったんだ?
[彼女の言葉は、あまりに意外なもので。
驚いて相手を見つめる男の顔は、きっと唖然としていた。
確かに見た目は人間と同じだけど、それは相手も一緒。
だから中身のことを言われたのだろうと、思った]
博士は、全くの純粋な人間を求めていたようだ。
だから先ほど言いかけたが、改良するのは難しいのだ。
僕は人間にしては、頑丈すぎるし。
僕は人間にしては、足りないものが多すぎる。
……んっと。
1×1という式の答えをねじ曲げて他の答えを出すために私は造られた。
ねじ曲げた答えが適応した私……って余計にわからないかな?
[首を傾げて思案顔]
満足はしていない。
私は不自由だからね。
……星間旅行とかしてみたい。
[ぽつりとそんな言葉を返す]
似通った何かでも単独で考えるよりは良いと思う。
別の視点って重要だと思うから。
それに、目標を共有できるものが居れば――うん。
独りで道を歩くより二人の方が楽しいよ。きっとね。
―その楽しみの先に何が待つかは解らないけれど―
[冷水を浴びせかけるような言葉は心の内に留め置いた]
なぜ、か――。
寂しさを自覚できるから。
自分が足りない事を自覚しているから、かな。
[上手く言語化できない様子で考えこむが――]
ああ、そうだ。
戦闘用アンドロイドをあげる。
あなたなら上手く使えるかも。
いらないといっても押し付けるけどね。
[カタコンベのラグーンを思い出した様子]
ラグーン。
セカンドマスターの認証を。
[チャンネルを開けば、認証作業を開始。
ホクロを思わせる極小の通信機を風に乗せてマイスターへ送る]
[首を傾ける相手に、一つ頷く]
先程よりは、分かった気がする。
[満足していないという返事の後、呟かれた言葉に]
この宇宙船の修理なら、出来ないことはなさそうだが。
フィオナが乗ることができるのかは、分からないな。
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