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[そういう気持ちを払拭していたいというのはあった。
そして次に――]
セレスが願ったおかげかな。ありがとう。
よし、続けて飲み食いしようか。
[何も無かった。少なくともこの時点では。
この後にも何らかの変化は見られるかもしれないが
それは誰にも分からない。]
[ソラオへの願いを終えた少年はすこし手持ち無沙汰な様子で]
…うーん、セレスさん。何か手伝えることとか…あったりする?
正直、ちょっと申し訳なさを感じてしまう…
[チキ!]
ううん。
それはきっと、
元からソラオが持っていたものだよ。
うん、食べて食べて。
[と、セレスはにっこりしただろうか。そして、ジュストへも、木苺ジャム&生クリームを添えたパンケーキを持ってゆく。]
[ジュストから申し訳なさと言われると、ちょっぴり不思議そうな顔をしたけれど、]
だったら、木苺のタルト作りを手伝って欲しいのよ。
それか、……もし良ければ、これからも、このお店とジュストのお父さんのお店を繋ぐ、架け橋になって貰いたい。
[それは、暗にまたこのお店に来てとも言っていただろうか。一度触れ合っただけでは分からない世界も、何度も触れ合えば、そこには理解が生まれるだろう。]
[大根入りのカレーはとても美味しかった。今度お母さんに教えてあげようと思う。
サラダも野菜が新鮮で、めずらしく好き嫌いなく口にした。サンドイッチとパンケーキはひとつずつ。
少女にしてはとてもたくさん食べられているのだ]
おいしかった! ごちそうさまでした。
[ぱちん、と手を合わせる。
皆の笑顔をそっと見遣り、窓の外に視線を向ければ抜けるような青空とたなびく水蒸気、どちらも眩しい]
(――――ゆき、)
[自分を呼ぶ声がする。
もう時間だね、少女はそう理解していた]
このタルトを食べたら、わたし、そろそろ帰るね。
[甘酸っぱい香りのするタルトは絶品だった。
でもほんの少しだけしょっぱかった。
ごしごしと、誰にも知られないように袖で目元を一度拭って]
また、絶対来る。
今度はちゃんとお金持って、あと、お土産も持って。
[まだみんなはテーブルを囲んでいただろうか。
少女は立ち上がると、ぺこり、大きく大きく礼をして笑った]
さよなら! またね。
[みんな大好き。ありがとう。その気持ちを込めて。
少女にはやってきた青いドアが淡く金の光を帯びて見えた]
[最後に不思議な声で繋がったシャノとソラオに]
『シャノさん! 元気でね。
シャノさんみたいに綺麗な黒猫さん、初めて見たよ』
『ソラオさん。お姫様が見つかりますように、なの』
[最後にどんな言葉を交わしただろうか。
少女はあたたかなドアノブに手をかけ、一度だけ振り返って手を振ると、小さな音を立ててそのドアを閉めた。
最初と同じ真っ白な空間。
でもそこにはもう、黒い扉は存在しない。
帰り道と示すようにひとつ木の扉があるだけ。それにはカフェを思い出させるような、花の彫り物がしてあった。
少女はゆっくりとその扉を――]
――――。
――…
[重い瞼を上げれば、そこには見慣れたお母さんの顔があった。
自分と目が合った瞬間泣きそうに顔を歪めたかと思うと、よかった目が覚めたのね、よかったと、抱きしめられる。
傍らにはいつもの担当の先生がいて、柔らかく微笑んでいた。
あれ? わたし、どうしちゃったんだっけ]
[少女が扉に手を掛けて]
「さよなら!またね。」
[と、声をカフェに響き渡らせたら。]
雪さん!またね!
[少年もまた、声を返す。]
[数日後。緩やかな風が病室に吹き込む。
ノックとともにお母さんが入ってくると、そこに優しい花の香りが加わった。花瓶に鮮やかな青と紫の花。
めずらしい色合いは、あの人の瞳の色を思い出させる]
あれ、もしかして……。
[お母さんはひどく嬉しそうな様子で箱を自分に差し出した。
これは近所で評判のケーキ屋さんのもの。
中には大好物の、木苺のタルト。
手術が成功してもうすぐ退院のお祝いだって]
[わたしは一時期かなり危ない状態だったらしい。そう聞いて一瞬、あの黒い扉のことを思い出す。
その割には幸せそうな寝顔だったわ、とお母さんに苦笑されてしまったけれど]
いただきまーす。
[このタルトは――あのカフェの、あのタルトに似ていた。
クロスケを抱きしめながら、少女は微笑む。
そしてそのクロスケの首元では。
リボンで結ばれた、白い鍵がきらりと輝いている**]
[食べ終わって、みんなはそれぞれの日常へへ戻って行くのを見て、]
ボクももう戻らなきゃ、師匠が心配だ。
セレスさんありがとう。
楽しい時間過ごさせて貰って・・・。
このエプロンもありがとう。
これはお返しします。
[綺羅星の入ったエプロンを返そうとする。]
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