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人造妖精 エステル に 1人が投票した。
中毒 カイン に 2人が投票した。
灰色翼人 ランス に 1人が投票した。
手紙狂い パース に 1人が投票した。
毒舌家 セルマ は村人達の手により処刑された。
次の日の朝、手紙狂い パース が無残な姿で発見された。
闇が村を覆い、村人達は自らの過ちに気付いた。人狼達は最後の食事を済ませると、新たな犠牲者を求めて無人の村を立ち去っていった。
―薄れて行く意識の中で―
[…研究所に居た仲間たちに思いを馳せ、
男はくすりと微笑んだ。
研究所には、色々な奴がいた。
議論をしたり、喧嘩をしたり…
ああ、そういえば。
あいつは、一体どうしただろうか・・・]
―回想―
[最初は、苦手な相手だった。
親を失い研究材料として送られてきたと言う境遇の彼は、
自分からすればどう扱っていいか分からない難敵だった。
それでも、研究所では年の近い相手なんてろくに居なくて。
気付けば、何も気負わず話せるようになって居た。]
…花を白く、ねぇ…
一番雑で手っ取り早いのは、絵の具か何かで塗る事なんだが。
残念ながら、それじゃ面白くないんだよなぁ。
[冗談めかして言いながら、ひょいと小瓶を取り出して。
瓶の中にはアルコール。…飲む用にするにゃ危ない純度の。]
…さて。ここでちょっとまめ知識。
アルコールって言うのは、結構いろいろな物を溶かせる液体でね。
このアルコールに花を入れて、暫し漬け込むんだが…
・・・数時間付け込まないと白くならないんだよなぁ。
即白くするなら塗るぐらいしか浮かばないけど、どうするよ?
[…灰に埋めても、きっと白くはなるだろうけど。
花がボロボロになりそうなので、選択肢には入らなかった。]
― そして ―
[おかしくなったと思われたまま、迫る刃を受け入れた。
そうしたい、と記憶が告げたから、そのままの記憶に従って。
激突すれば痛い筈、刺されれば呻く筈、の先入観による刺激もすべて、記憶が作り出した産物。
生命を維持した肉体は、擬似的な体温はあっても、生きているものとは異なる。
濁った鮮度の無い血液が零れ、パースの手を汚してしまうのが、酷く申し訳ないことのように、思えた。]
[同時に、それは己がカインではない証明になった気もした。]
一緒に死んでやれなくて、ごめんな。
[首を狙われたのであれば、言葉と共に、白い煙草を押し流すようにどす黒いものが溢れた。
上手く紡げたかも気にすることは出来ずに。
――死した身体は、漸く眠りの波を見た**]
―回想―
[それから、アルコールを花に漬け込むのを手伝う。
すっかり作業を終えると、トロイの服の裾を引っ張る]
ようし、完成までには時間がかかるんでしょ。
それなら稽古の相手してよ。
強くなって、僕のお父さんとお母さんを食べた魔物を、
やっつけてやるんだから!
[父が魔物化したことを少年は聞かされてはいなかった。
ただ、"両親は魔物の為に死んだ"とだけ聞かされていた。
えい、やあ、とう、と。
何も知らない少年は、無邪気に組手の構えをする]
─教会─
[神の命が、 途絶えた 瞬間 。
世界は陰りを増した。
人の身《死体》に籠ろうと、神が居る事で、
辛うじてあった世界の秩序は更に麻の如く乱れ断たれた。]
神が死んだわ。
[ピシリ、と音がして──────。
両手を組み合わせ祈るエステルの、何処かに 罅 が入る。]
[神様の話を知っているのかしら?
神様は慈悲深く、愛に溢れ、忍耐強く、希望を持っていた。
そんな神様の話を。
でもね、そう。
そんな神様が世界を終わらせようなんてのはよっぽどのこと。
ずたずたな有様の神を希望に振り向けるなんてこと。
そんなむごい望みが許されるのかしら?]
[一対の翅は捻れ。
其れは最初からその様な形状だったのか、
死の灰によって捻れたのか。]
セルマサン、
あなたの未練は何かしら?
[エステルは眸を開き、
何処か夢見るような緩やかな口調で言の葉を零す。]
[ピシリ──────。
教会の内部にフレスコ画があれば、
神と創世に纏わるものも描かれていただろうけれど。]
……………。
[エステルは微笑み佇んでいる。
薄暗い建物内部にて。髪や翅には灰がはらりと積もり、
石像とまでは行かないまでも霜のようには見えただろうか。
ドワイトとギュルスタンの血は混ざり合い、陰鬱な絵を床に描いている。]
……。
[傷を誰かに見せることはよくあることなのに、
心なしか緊張して、ガーゼの上から傷口を押さえる手に余計な力が入りそうになる。
この真っ赤な傷を見て、ナデージュは実のところどう思っているのか、
訊きたいのに言葉が出てこない。
ちろり、と不安の色が瞳に浮かんでは消える。
そんなことを繰り返しているうちに、処置は終わった]
ありがとう。
……だいじょうぶ、…?
[ふいに視界が歪んで、ぱちぱちと瞬きを繰り返す。
するりと頬を流れるのは血ではなく涙。
透明な雫が床に落ちて、赤とほんの僅かに混ざり合った]
[処置が終われば、わたしは包帯をもうひと巻き、道具箱から取り出しました。
だいじょうぶ、とは、何に対する問いかけなのでしょうか。
ゆるやかに笑んだまま、わたしは首を傾げます。
スーさんの傷は確かに酷くはありますが、醜いと称するものではありませんでした。
もっと医者の設備がちゃんとしていれば、綺麗に治ったのかもしれません。
ですが、わたしにそんな知識は無く。
涙を流すスーさんの頭を幾度も、リズムをつけながら撫でます。
それから少し身体の向きを傾けて、顔が正面から見えないようにすれば、わたしは自分の包帯を解きました。
わたしの包帯は傷ではなく、病を隠す為なので、直ぐに巻き終わるでしょう。
赤く染まった包帯が、床に落ちます。]
―回想―
[…二人で花をアルコールに着け、浮かないように蓋をする。
実験用の溶媒だけれど、ちょろまかしても言い訳は効くし。]
・・・稽古って言われてもなぁ。
体術は特に覚えがないから、あんまり役立つとは思えないんだが…
[…言いつつも稽古に付き合うのは、
彼の事情を知らされているから。
・・・何時彼が本当の事を知るかは、分からない。
それでも、力は生き延びる術になる。]
少なくとも、無理に攻めを入れるな。
魔物相手の戦いでは避ける事が第一。体勢を崩せばやられるぞ。
そして魔物は基本、技より力任せだ。
一撃一撃が大ぶりな分、一撃でこっちを刈り取りに来る。
どうしても隙が大きくなるから、その隙を狙って急所を狙うんだ。
[・・・結局、組手より知識面の指導になったとか。]
― 去年の記念日に ―
[全く律儀な男だと思った。>>3:75
ありがとう、も。
きみとであえてよかった、も。
そんな言葉をもらうに値するわけないのに。偽の手紙とその差出人は。]
あれ以来、手紙をよこしてくれてないってのにねえ。
今年で終わりにしたらどうだい?
[毎年、己の村に来た日が年を巡ってやってくると、ドワイトは封筒を持ってやってくる。
今年も苦笑しながら受け取った。
宛先を示す記号がないものなんか、通常は扱わないけれど。
彼に手紙を届けた人に届けてくれ、と指定されたら、分からないとは言えない。
自宅に戻って封筒を開ければ、押し花でできたしおりが1枚。
これで9回目、9枚目。]
[どうやら己はしくじったようなのだ。
何でも彼は、元々は別の名前を持っていたという。
何だいそれ。もっと早く教えてくれてりゃあ。
嘘をついた私になんで、なんてすてきな笑顔と言葉をくれたんだ、とか。
もう今更謝ることもできないじゃないか、とか。
それでも、ま、いいか、なんて。]
しかし、しおり、ねえ。
変わらないねえ。
本は読めないから、いらないんだけどねえ。
[それでも、棚に入れておいて、もし何かのきっかけで彼の目の前に落としたらと思うと、手元には残しておきたくないのだ。
だから、食べた。
毎年食べた。
おいしくはないけれど、気持ちごと食べた。うれしい。
これで9枚目だ。
果たして、今年で終わるのやら**]
― 終幕 ―
[迫る刃を避ける素振りは、一切なかった。
おかしいと思われたまま。
そうしたい、と記憶が告げたから、そのままの記憶に従って。]
[両手に、懐から取り出した二つのものを握ってから。
己に刃を埋めた相手を、抱きしめて、受け止めて。
逃がさないように、閉じ込めた。]
[反射のように。
唇から溢れた火のない煙草の代わりに、赤毛の一部に噛み付く。
皺の寄った手紙を握り締めた左腕で、背を抱いたまま。
右手に握ったナイフをそっと、己と同じ場所に当てた。
魂が共に死ねなかった懺悔の記憶が、せめてカインの肉体の終わりを共にと願うから。
濁った鮮度の無い血液が零れ、パースの髪に肩に、はたはたと落ちてしまうのが、酷く申し訳ないことのように思えた。
けれど、口端から黒い液体を溢れさせるカインの表情は。
諦めとは、きっとまた、別の*]
[処置はうまくいったからだいじょうぶ、と。ナデージュに伝えるつもりだったのに、
いきなり涙が流れたものだから、戸惑いに声は揺れて問いかけのかたちとなる。
困った顔でナデージュと一緒に首をかしげた。
涙を拭こうにも、ポケットの中にはパースとカインからのお代しかなく。
泣いてる理由を説明することもできず。
なすすべなく座り込んでいると、ナデージュの手が頭に伸びた]
……… ふ…っ――、
[撫でる手つきはあやすかのよう。
泣いているのに胸には暖かさがひろがって、しゃくりあげるような声となってこぼれ落ちる。
泣く時に声が出るのは久しぶりのことだった]
……。
[俯いて、涙をこぼし続けるスーの視界に、
やがて、するりと解けて落ちる赤が、入ってきた。
そっと顔を上げる。
ナデージュの顔はよく見えない]
[灰化が始まったのが半年くらい前。
それより前は、ただの肌荒れのように思えていたのに。
そっと左の頬に触れます。
ぱりぱりと、乾いた白い粉が頬からこそげ落ちて行きます。
あ、と、小さく息を漏らすと、唇の動きに反応するように、ぱきぱきと小さな欠片が落ちました。
もう、口元まで進行しているようです。
困りました、唇の動きというのは、なかなかに意思疎通の為に使えるツールだったのですが。
わたしはそっとそれらを隠す様に。
スーさんからも隠す様に、包帯を巻いていきます。
こんな顔を見られては、尚更、スーさんを不安がらせてしまうでしょう。
鏡があればよかったのですが、贅沢は言ってられません。
巻き終われば、首の後ろで端と端を縛りました。
おそるおそる、、スーさんに向き直ります。
解れなどが、ないと良いのですが。]
―回想―
えー。
だって他の人は相手にしてくれないもん。
[渋りつつも、トロイは稽古に付き合ってくれる。
自分の境遇に同情してくれているからだろうと
幼心に思ってはいたが、
それでも構ってもらえるのは嬉しかった]
おお、流石だ。はくしき、だな!
[彼の言葉は真剣に頷きながら聞き、
唸りながら脳内トレーニング]
ううむ。むむ。隙をみつけて、打つ。
隙を見つけて―――――…、えいやっ!
[脳内トレーニングしていた心算が思わず体が動いた。
トロイへ向けて放たれる、不意打ちの右ストレート]
[…たぶん、あとで怒られた]
[ばさりばさりと羽ばたくたびに、力無くぶら下がっていた灰色の羽根は抜け落ちて、終わりをもたらす灰とともに、ふわりふわりと宙に舞う。]
───マイダ。
[礼拝堂へと戻れば、マイダは、微笑みを浮かべているかのようにも見えた。]
マイダ、これを。
ドワイトが───おれの親友が、咲かせてくれた花だ。
[やわらかな笑みを浮かべ、金色の髪に降り積もった灰をそっと払い落として。
薄紅色のリボンの花を、マイダの髪に飾り付ける。]
[生きているって、すばらしい。
それはたとえどんなことでも。
殺しても、他人を虐げても、憎んでも、悲しみしか生まなくても。
「生きるため」につながる行為と信じて行われたものなら、全てがいじらしい。
そんな可憐な人たちの思いをつなぐため、そして己が生きるため、きれいなことも汚いこともなんでもやった。
嘘と花を飲み込んで生きてきた。
だから、目の前の諦めが許せない。]
[地を蹴り相手の喉めがけて矢を向けたけど、避ける仕草がない。
せめて欠片でも正気のあるうちに殺してやりたいけれど、抵抗されないのはさらに悲しくなる。
諦めているんだ、と思い知らされて、それが悔しくて悔しくて涙があふれる。
全く、鹿狩人に転職する気はないと言ったのに―
親愛なる鹿、変わってしまった鹿の胸に飛び込んで、ありったけの思いを込めて貫いた。]
私、は!
―回想―
[随分と時間は過ぎ、二人で漬け込んだ花を取り出す。
赤い花は見事に白く変化していた。
感嘆の声をあげながら、
それを大事そうに青い空へ掲げてみる]
…トロイ、僕、実は研究所を出ていくことになったんだ。
政府からお達しがきたみたいでね。
戦争する人手が足りないから、
此処からも誰か差し出せってさ。
[白い花は雲一つない青空に、よく映えた]
所長は無視しようとしたらしいんだけど。
そんなことして、研究所が潰れたら困るし。
だったら僕が行くって、言ったんだ。
愛してるんだ、いとおしいんだ、信じてるんだ!
だから、さいごまで、あきら、あ―
[濁った返り血を浴びながら、相手に抱きとめられながら、激情のまま喚き立てる。
そんな言葉も、噛み付かれて先を紡げなくなってしまった。
死ぬのか。
必死に片手を動かして、ポケットの中、スーからもらった小瓶の中の呪符を―
森に入る前に書いた手紙か、先ほど拾った手紙か、それともいっそ、関係ない何かに押し付け―
壊れかけの友人、スーの元へと、転移…………]
―回想―
まぁ、俺は知識ぐらいしか武器がな…
[博識と褒められて、若干ニヤケながらうんうんと頷いていると・・・
綺麗に胸に右ストレートが決まりました。
直後、トロイが綺麗に倒れるくらいに。]
ああ。確かに、隙を見つけて打つのは大事だ。
俺も思いっきり隙だらけだったしな。
・・・急所を狙うと言う意味でも、
呼吸が狂う胸を打つのは良い判断だよ。うん。
だからって、説明した相手で試すなっ!
[…気合を入れたお説教も、倒れながらでは締まらなかったとか。]
研究所の人には世話になってるし、さ。
僕なんかが役に立てるなら、それも良いかなって。
ほら、ここにいても僕にできることあんまりないし。
[白い花から青年へ視線を移して]
この花、貰っていくよ。
無茶なこと言ってごめんね。
さすがに一人で出ていくのは心細くってさ。
…何か"お守り"が欲しかったんだ。
[空と同じく曇りない笑みを見せた]
ありがとう。
トロイは立派な研究者になれよ!
今度戻ってきたときには、
また無茶なお願いするからな!
[次の日、少年は研究所を後にする。
そして二度とは戻ってこなかった]
――神の命?
[少女に、聞き返す。
少女がただの少女でないことはもう分かっていたが、認識はそれでいい。
ぴしり。
返事の前に、少女にひびが入る。]
……あたしの、未練。
それは――
[唇を動かした。
乾燥でひび割れたそれから、血は滲むことなく。]
………………それは。
[とっくの昔に、どこかに捨ててきたみたい。]
―回想、数日後―
…人が相手の戦争、か・・・
[教えた体術は結局の所、全て「魔物と戦う」為の物。
人との戦いに使うには、余りに雑にすぎるモノ。]
…だからって、お前が行くことも無かったろ。
人は、魔物とは違う。
力任せじゃなく、効率的に殺しに来る。
…魔物より、よっぽど厄介な相手だ。
[皮肉な話もある物だ。
今魔物より恐ろしい敵は、自分達と同じ人なのだから。]
[くしゃくしゃに握りつぶしてしまった手紙を開けていたならば――
その中身に、くわえた煙草を落としかける。
早く中身を教えてくれと急かされて、
盛大な溜息を一つ落として、
あー、と前置きに態とらしく発音練習をして、
そして。]
[唇を噛みしめて空を仰ぐ。
埃と灰とが浮かんだ空気を、ステンドグラス越しの光が貫いていた。
ひび割れた少女と、ひび割れた唇の感触。]
いつだって――未練は残るからさ。
[だから、進んで残そうとは思わない。]
[翼あるものが、灰よりも軽く舞い降りた。
その羽が抜け落ちて照らされている。
少女に飾られた花は鮮やかで、胸を刺すようで。]
……しあわせだね。
[くるりと踵を返した。]
…護りが欲しいんなら、そう言えば良かったんだ。
煙幕でも薬品でも、「生き延びる」為の物が用意できたってのに。
[…綺麗な笑みが、今は腹立たしい。
生きて帰れる可能性なんて殆ど無いのに、
どうしてこいつは笑えるのか、と。]
だったら、絶対生きて帰れ。
どんだけ卑怯な手を使っても良い。
戦場から逃げ出したって構わない。
・・・だから、絶対に死ぬな。
でないと、無茶ぶりなんざ受けてやらんぞ。
[・・・翌日、彼は出て行って。
そして、帰っては来なかった。]
[くしゃくしゃに手紙を握ったままの遺体と、抱きしめられる紅い鮮血の滲んだ遺体だけが、廃屋にひっそりと、残されていた。
その二つが、どんな貌をしていたのか、この場所に確かめに来る物好きなどもう、きっと存在しない。
ただ、愛おしいものを諦めた意識が途切れ、愛おしいものを諦めまいとする意識も、途切れ。
緩やかな風通り抜け、星の元へと。
世界の終わりの終わりが近いのだと、告げる**]
[教会を出て空を見上げる。
灰はまだ降り続いていた。
――帰ろう。
誰もいない、自分だけの家へ。
家から持参した傘を広げるが、もう穴が開いていた。
洗濯物を干すまではそんなこと考えなかったのに。]
……あーあ。
お気に入りのブラウスも、多分破けてるね。こりゃ。
綺麗に洗ったのに、さ。
[それでも傘を広げる。
柄を持って一度回してから、歩き出した。]
……。
[向き直ったナデージュを見て、最初にしたのは、
とにかく涙を拭いて視界をはっきりさせることだった。
上着の袖で顔をこすって、瞬きひとつ]
…ほうたい。
ちゃんと、まけてない。
[ナデージュの頬を――正確には、包帯の隙間から覗く、白く乾いた肌を指差して告げる。
空から降る、滅びの欠片に似た色に、
目が離せなくなる]
さかばのおねえさんは。
まものにならないで、はいになるの?
[からりと、割れたステンドグラスの破片が、また落ちる。
灰に覆われた空でも、微かな明かりがそこから差す。
まるで、魂を天へと導くかのように。]
セルマは───
[踵を返す彼女に、もう帰るのかと声をかけようとしたが。
言葉は出ぬまま、その背を静かに見送った。]
[スーさんの言葉に、咄嗟に掌で顔を覆います。
あまり見られたくなかったのですが、やはり、隠しきれなかったようです。
白はもう、顔の殆どまでに広がっているのですから。
わたしは困ったように笑ってから、小さく頷きます。
そうして、道具箱の蓋をそっと閉めると、立ち上がりました。]
……すー、さ、 ……どうし、 ます、 ?
[これからどうしますか、という問いなのですが、もう、声すらも渇き始めています。
少し身を屈めて、スーさんにお貸ししたケープのポケットから、小瓶と飴玉を取りだしました。
そっと飴玉の包み紙を剥き、中身を口に含みます。]
………
[甘い香りが、しました。
甘い味は、しませんでした。]
………あぁ、
[溜息のように、声を漏らします。
飴によって滲みでた、僅かな唾液は咽喉を潤します。
暫く、ころころと口の中で飴玉を転がして。
それから、困ったようにスーさんの方に向き直りました。
わたしは、情けない笑顔を浮かべていた事でしょう。]
―回想…そして、何年も時は過ぎ―
[…街を出て行く者は多かった。
魔物が出れば対処は遅れるし、食糧等の生産量は少ない。
当然、人々は安全や食料を求めまだ健在な街や村へと流れた。
研究所の面々も、ある者は去りある者は残り。
気が付けば、あの頃居た面々はだいぶ減っていた。]
「ホントに行くわけ?
片腕とは言え、居てくれた方がありがたいんだけど…」
[こうして自分を引き留める所員も、終戦後此処に来た一人だ。
この場所の変化を実感し、感傷に浸ってから口を開いた。]
…どうせ、此処の面子も変わったしなぁ。
あの頃の資料は、資料庫の主が纏めてんだろ?
俺みたいな戦力外は、素直に去るさ。
「いや、資料だけじゃなくて当時の情報も…」
[言葉を続ける後輩の口を塞ぎ、くすりと微笑む。
なんだかんだと言っても、この後輩は寂しいのだろう。
此処の所員が減ってしまう事が。]
・・・まぁ、アレだ。
戦争中に、「帰ってきたら」とか言っときながら帰って来なかった馬鹿が居てな。
…そいつ捕まえて、とんと説教してやらないかんのさ。
一体何時まで人の事を待たせるのか、ってね。
[それだけ言って背を向けて、街の外へと足を進める。
見つけた時の説教を、たくさん静かに考えながら…]
――…っ。
[胸が、痛い。締めつけられるように。
物が壊れるところも、人が墓地へ運ばれていくところも、――自分が壊れていくところさえも。
淡々と見続けられるほどに壊れかけていた頃からすれば見違えるほどに、
素直にぽろ、と涙をこぼしながら。
痛いのを押し込めて笑おうとする。
どうしたいか、という問いかけに、素直に自分の望むことと、したいことを答える]
そんなかお、……しないで。
なんでもする。
おそうじもするし、おてがみもかくし。
おいのりするうただってうたうから。
いっしょにいさせて。
[最後の言葉。
それは、眼前のナデージュに宛てたものであると同時に、
どこにいるのか分からない神様に宛てたものでもあった。
神様に祈るなんてずいぶん久しぶりのことだった。
祈るべき相手はもういない、なんて知らないから]
[セルマを見送り。
ランスに寄り添った。]
世界が、終わるわ。
[硝子細工に罅が入るように頬に筋が入っている。
身を屈めて と願うように、エステルはランスの服の端を引く。]
[ランスの額にくちづけを一つ。
次にランスの唇に触れるように落とす。]
………………。
貴方の──────
[唇同士が触れ合う距離で囁く。
ランスの眸を見詰め身を委ねながら。]
あなたの瞳に映る世界は輝いていますか?
[闇に沈む束の間、赫灼とした'星のあかいろ'で問いかけた。
闇が押し寄せれば音もなくさらさらと星粉のように消えてゆき。]
[恋仲の男女を見送り去る女、そんな構図だろうか。
残念ながら、エラリーの立場からは殆ど意味のわからぬ会話であったのだが。
セルマは、言葉を濁した。
こと、男の目算は外れたことになる。
謳うように少女から零される言葉の数々は実体を伴わず、虚ろに響く。
神が死んだ。
世界が終わる。
それは灰が降り始めて数多存在した滅亡のシナリオのひとつ過ぎなかった]
[少女の瞳が、真赤に輝いた。
彼女の瞳は、紅かっただろうか――それに目をとられる。
芯から己の言葉を信じている――狂人のたわ言なのか、否か、エラリーには判別する術はない]
――
[翼を持った男が少女に華を飾り、口付けを交わす。
絵画のような情景、
ふたりだけの世界、
完結した世界。
そこに男の立ち入る余地はなかった]
[やがて――世界が終わる。
夜よりも暗くなにもない黒が拡がり、全てを呑み込んでいく。
今際の際となって――男は口元に笑みを浮かべた。
ヒトの及ばぬ圧倒的な暴力、いや、最早現象だろうか。
それがそこにあった。
男の精一杯の足掻きも、摩耗し、僅かに残っていたエラリーという存在をも、何もない闇に還してしまう。
男が最後に浮かべた笑みがなんだったのか――そんな意味すらも**]
[幼いエラリーは身体の大きいだけの男だった。
ウドの大木だった。
鈍く、機微に疎い男には取り柄がない。
多少の恵まれた体格、力自慢程度は、獣人や魔法の存在するこの世界でのアドバンテージなど、無きに等しかった。
己の無力感と、絶望を共にする日々。
自然、男の向く先は己の裡、物言わぬ文字へと向かっていった。
男にはそれしかなかった。
辛うじて手を伸ばした先に残った文字の世界。
それを並べ立てることで認められたのは、恵まれたことであったのだろう。
少なくとも男はそう受け取った。
そしてやがて 男は気がついた。
自分は、己を切り売りしなければ文字を紡げないことに]
[二十幾年の年月を生きてきた。
卑小な身である彼も、常にどん底を生きてきたわけではない。
苦しみも、喜びも、かなしみも、楽しみも、痛みも、快楽も。
様々な思い出をもって、ここに生きている。
そして、彼にとって。
作家として生きていくことは――
思い出をねじ切っていくことだった]
[創作家は時として既存の文物から、絵画から――様々なものをインプットして、己の懐で纏めてアウトプットする。
外から取り込んだものを全て糧にして、そして新しいものを作る――
そうすることの出来る作家もいる。
けれど、エラリーにはそんな才能は存在していなかった。
男にとって創作とは、幾つかの思い出を面白おかしく脚色し、加工し、分解し、ねじ切り、そして、産み出すこと。
それを含む作業であった。
生きるためにはものを書かなければならない。
けれどそれは、多分に己を削る業であった。
物を書くたびに己の何処かが削れて、欠けて、消えていく。
灰のようにボロボロになって溶けていく。
そんな実感が男にあった。
世界が滅びへ向かっていることが分かったとき男の胸中に生まれたものは、なんだったろうか――
世界と己と、どちらが先に欠けてなくなってしまうのか、そんな疑問すら覚えた]
[夜闇に紛れて、穴を掘る。
なるべく深い方がいい、灰が届くかもしれない。
男の部屋に山とあった本は、保管用の木箱に包まれて。
少しずつ、少しずつ、土の中に埋葬された。
子どもの浅知恵だと思った。
構わなかった。
摩耗する自分、摩耗する世界。
滅びは避けられない。
いつかこの本が、この文字が。
いつか誰かに、何かに届くように]
[エラリーは。
セルマの後を追わないのだろうか。
思いはしても、口に出すことはしない。
ただ静かに、ひとときだけエラリーに視線を向け。
すぐにまた緩やかに戻す。
世界は間もなく幕を閉じる。
その責の一端を、己が───この、紅い翼が担っている。
ならばせめて。
せめて、ひとりでも多くのものが、望む形で、最期を迎えられたなら]
……なに?
[マイダに名を呼ばれ、服を引かれ。
その柔らかな笑みに近付くように、身を屈めれば。
額に、微かな熱を感じた。]
───……あぁ。
もうすぐ……。
[もうこの世界に神はいない。
直接見たわけでも、聞いたわけでもない。
けれど、それが分かる。
神は死んだ。
世界は終わる。]
おれの瞳に映る世界は───……
[瞼を閉ざす。
映る世界は。
緑の葉に包まれた、美しい森。
木漏れ日の中、笑い合う仲間達。
陽光を反射し、輝く湖。
やさしい歌声。
金の髪に薄紅色の花を差した、愛おしい───……]
[ばさりと大きく羽ばたけば、羽根が舞う。
赤黒い羽根は、宙に舞い。
漆黒へと変わり。
世界を染める。
ばさり
ばさり
ばさり
やがて、すべてが闇に沈めば───……]
[研究所を出てすぐ、
年端もいかない子供ばかりが集められた訓練所へ行かされた。
聞けば、殆どが身寄りを無くした孤児だという。
そして碌な訓練も受けぬまま、戦地へ。
自分たちの役目は理解していた。
前線で少しでも敵の動きを食い止めること。
分かり易い、"捨て駒"だった。
装備を敵に奪われてはいけないからという理由で、
大した武器すら与えてはもらえなかった。
半分が敵襲ですぐ死んだ。
残りは怪我と病苦に苦しんだ。
逃げ出して見つかり、仲間に殺された者もいた。
それは地獄というのも生温い、惨状]
(――――――…絶対に、生きて)
[…そんな、絶望の最中]
[満身創痍の少年の心を救ったのは、白い花だった。
何故か枯れずに咲き続ける白い花。
すっかり煤けてしまったが、それでも彼の宝物]
(どんな卑怯な手を、使っても良い)
[敵の大軍を前にして、
そっと息をひそめて身を隠すこともあった。
臆病者だと仲間から罵られることも多かった。それでも]
(生きて、もう一度―――――…)
[もう一度トロイに逢えたら、我儘沢山言ってやろう。
これだけ苦労したんだ。許されるはずだ、少しくらい。
まずはご馳走と温かい部屋だ。それから、ふかふかの布団。
寝転がりながら、これまでのことを話すんだ。
たくさん、たくさん…]
[戦地で一人夢想していた少年は、
鳴り響く轟音に我に返る。
敵の奇襲だった。
今自分がいる場所なら、きっと見つからない筈。
しかし、彼は気が付いてしまった。
標的となり取り残された戦友の姿。
心細く一人ぼっちにしている姿。
飛び出したところで、
犠牲者が一人から二人へ増えるだけだと分かっていたのに。
気付けば"臆病者"の少年は足を踏み出していた]
[凍えるような空気の中、澄み渡る星空が広がっている。
瀕死の少年は一人、荒れ果てた戦場に横たわる。
助けようとした友は死んだ。そして今まさに、自分も]
…かみさま。
[結局あれだけ意気込んでおいて、
自分の命を無駄にしてしまった。
何一つ、誰一つ、救うことなんて出来はしなかった]
どうか。
どうか世界から、かなしいものが、なくなりますように。
[星に祈りをかけるのだと、教えてくれたのは誰だったか。
幼子の戯言を、神が聞く訳もあるまいに]
――…嗚呼、懐かしい夢を見ていた気がする。
[壮年の男は遠い意識の中、くすくすと笑みをこぼす]
結局お願いは聞いては貰えなかったか。
いや、違うな。違う。
もう一度、彼と出会うこと。
それが何よりの"僕"の願いだったのだから。
[何処かで羽音が聞こえた気がした。
意識の隅に振る灰色の羽根は、一つ一つ赤く染まっていく。
それを何故か、美しいと思った。
村へ来てからの生を思い出す。
拾ってくれた司祭様。愛らしい子供たち。
共に生き抜いてきた村の仲間たち。
物知りな薬屋。心優しい歌姫。口は悪いが親切な隣人。
仲の良い馬と鹿。頑張り屋の道具屋。
つい世話を焼きたくなる無精者の小説家。
そして、]
聞こえるかい。
…"次"は、鮮やかに咲くと良い。
[安らかであるようにと祈りつつ、男の意識も闇に溶ける**]
[どうして、スーさんは涙を流すのでしょうか。
どうして、そんな声で懇願するのでしょうか。
わたしが笑っていないから、スーさんを不安がらせているのでしょうか。
スーさんの声が、だんだんと遠ざかっていきます。
大丈夫、と、不安そうなスーさんに告げる為に首を横に振ると、
しゃりしゃりと、首元で粉のようなものが擦れ落ちる音がしました。
大丈夫です。
わたしは、大丈夫です。
わたしはこのまま失われてしまうのでしょう。
味覚が消えた様に、今、聴覚が消えゆく様に。
だんだんと、灰と変わり、消えてゆくのでしょう。
けれど、スーさんが、スーさんの温もりが傍にあるなら。]
[羽があれば、家まですぐに飛んで帰れたかもしれない。
数時間前に「羽が欲しい」と思ったことを撤回する。]
羽がなくて、良かった。
[足の、腕の、あらゆる節々が痛む。
自分の終わりが近いことも、分かっていた。
色々ありすぎて、一日だけで疲れ切ってしまって。
破れた傘の間から、鈍い光が差し込んでくる。
灰が降りかかるのはもうこの際気にしないでおく。]
[わたしは手を伸ばします。
スーさんの身体を抱きしめます。
暖かさを感じられるうちに、めいっぱい、力を籠めて抱きしめます。
大丈夫だから。
泣かないで、笑って。
わたしのために、笑って。
わたしのお願いはそれだけです。
それだけにしては、とても酷い、我儘だとおもいます。
こんな、愚かな我儘を抱く事を、神様は許してくださいますでしょうか。]
[いっしょにいさせて。]
[最後に聞こえたのは、そんな言葉。
頷き返すことができたかどうか。
“わたし”はもう、“わたし”には感じられない。
そうして、頬笑みも、涙も、全て纏めて灰になる。
真っ白な、細かな細かな欠片になる。
灰化の進行の切欠は、支えであった神の消失か。
無にしてはあまりに重く。
有にしてはあまりに儚く。]
[――さあ、もう未練はないかい?
あたしの最後はどんな服で決めようか。
どんな言葉を口にしようか。
神様や何やらに祝福されなくても、大丈夫。
今までだってそうだったのだから。
それを最後だけ神頼みなんて、癪じゃないかい。]
ああ、他の子達は。
……どうしているんだろうね。
[生き残っているであろう数名の顔がよぎる。
どうか、後悔だけはしないように。
神を信じない女にとって、それが、精一杯の祈り。]
――ただ、幸せに思えるといいね。
あたしも負けないけど。
[ひとりごちて、笑う。
いつものからかうような笑みを。]
――あたしの見る世界は、輝いていたかな?
[光なんて随分長いこと、見ないと思っていたけど。
誰かに肯定されても、否定されたとしても。
きっとこれで良かったのだ、とだけ感じる。]
幸せ――だったかな。
─何時か何処かの蒼穹─
[既に神は疲れ果て絶望の中、諦めを選ぼうとしていた。]
(♪) (♪♪) (♪)
[神の選んだ世界。
秩序と再生のある世界。
神が苦痛と苦悩を持とうと、
星は唄い、世界を癒しに導く。]
『どうか。』
『どうか世界から、かなしいものが、なくなりますように。』
[声を聞いたのはそんな時。
殆どは'かみさま'に向けられて、
星には向けられてなど居なかったけれど。]
[落ちかかる灰を、羽と見紛う。
先程見たような赤黒い羽ではなくて、
いつか幸せな頃に、くすぐったさと安心とを得た、記憶の中の白い羽。
黄色のブラウスを、繕ってでも着よう。
あたたかいアップルティを、もう一度だけ飲もう。
机の奥にしまった懐かしい写真を見ながら、灰に埋まっていこう。]
――――ね。
アンタ、待ちくたびれたんじゃないかい。
[囁くように、亡き人へ呟く。]
寒く、なかったかい。
[大丈夫だよ、と。
少しだけ泣きそうになりながら、最後に笑った。]
[歌が、聞こえる。
抱きしめてくれたひとが、目の前で灰と変わってから、ずっと、ずっと。
それを単なる記憶の再生とは思わず。
耳元で歌いかけられているように、感じていた。
だって、さいごに息を吸い込む音が聞こえたのだから。
身体が灰になっても、こころはそばに、いっしょにいて、
歌っているに違いないのだ。
だから]
…♪
[穏やかな笑みを浮かべて、同じメロディを口ずさむ]
[――かさり。
ふいに上着のポケットの中で、何かが、音をたてた。
灰と、傷口から滲み出る赤で斑に染まった手でそれを取り出す]
…おてがみ?
こんなの、さっきまでなかったのに。
ぼくのうわぎのポケット。…つながってたっけ。
[くるり、と丸められ赤いひもでまとめられた紙。
広げて、文字を目で追う。
空の青にも似た色のインクで書かれた、愛を伝える言葉]
すき、です。
すき、……です。
[淡々と文字を読むだけだった声にしだいに感情が混じる。
未練という名の]
ナデージュさん。
ぼくは、あなたを――
[ああでも、この闇に呑まれたのなら、
同じところにいけるだろうか。
もしもいけたのなら、
*真っ先に伝えようと思った*]
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