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[死体の保存について、知識はないでもなかった。
だが、この環境でどれだけそれが意味を持つだろう。
灰を避けるために頭にタオルをかけて、男を手伝う。
虚しさの前には、灰も土も、違いなどなくて。]
[返ってきた答えに、憮然とした表情を作り]
…………。
おい、君、それって。
[頭を撫でた相手を避難するように、そこで振り返り、へらりと笑う鹿をにらむ。
が、次の言葉には目を丸くし]
星……?
それって、どういう……?
[言葉の意図を追いたくて、体の調子を確認している彼を目で追った。]
[春に花が咲くのは神が居るから。
見護り見詰め世界を維持するから。
星は見守っていても出来るのはそうなるよう祈ることくらい。]
[質問の意図が分からなかったのか、男は僅かに首を傾げた。
先と、まるで変わりのない透徹な瞳で、セルマを見返す]
……自宅に。
[ぼそりと、掠れた声で呟いた]
[お帰りと言ってくれるひとは、彼にも自分にもない。
出迎えて、ようこそと言ってくれるひとも、今ふたり失ったばかりだ。
こんな、夕食の買い出しに来てたまたま会ったような声の色なんて。
また明日、何事もなく会えると信じているような。
何の揺らぎもないような声が、どことなく恨めしかった。]
……星が無ければ、花が咲く場所を持たない当然だろ?
[意図を問うパースに、随分と大きな括りを口にした。
多少の違和感は残っても、普段のように動く分には支障ない事を確かめる。]
もっと言うなら、世界があるから、か?
……ま、世界がもう、花を咲かせることを"諦めてる"けどさ。
[マイダの肩を抱いたまま、教会の中へ足を踏み入れれば、そこは、静寂に満ちていた。
そして、友は静かに、永遠の眠りについていた。]
エラリー、セルマ……。
───ドワイト、は……?
[マイダの肩に掛けていた手に、力が籠もる。]
――――、
[男との語らいは、別の男女が訪れたことで中断される。
時間的に、女が答えることはなかった。]
……アンタ達、――――。
[やけに親しい様子のふたりになにか言ってやろうと思い、やめる。
誰も悪くない。
八つ当たりのための毒舌を持ち合わせるつもりなど、女にはないのだ。]
[自嘲気味に嗤うセルマを、男は、なんの色も見せずに見返した。
セルマがどんな事情でこの村に来たか、くらいは"知識として"知っている。
そう大きくもない村、それがどんな理由か、正しいかに関係なく何かで情報は伝わってくる]
誰もいないのに。
[鸚鵡返しに、男は頷き返した。
今のセルマの事情を鑑みたのか、推察出来るかもわからないほど揺るぎない。
事実として受け止めているのか、それともそこに関心がないようにも見えるのか――
そこに、新たな顔がふたつ、現れた>>46
身長差に、上と、下と視線が動く]
――亡くなられたよ。
埋葬は、済ませた。
[簡潔に一言二言、返した]
……死んだよ。
手当てしたけど、駄目だった。
[表情を消して告げる。
真面目なときにこそ偽ってきたそれを使わない。
少女だった頃のように、真摯に、事実を伝えた。]
[男の説明が簡潔なもので、切なさよりも乾いた土のような気持ちが際立つ。
その土を割って、花は咲くのだろうか。
希望が、水が欲しかった。]
……そうか。
[既に埋葬は済んだとの言葉に、頭を垂れる。]
ありがとう。
……なぁ。
ドワイトは、人間のままで、逝けたのか?
ギュルスタンのように……
おれのようには……なっていなかったか?
[話しながら、羽を大きく開いてみせる。
まるで、血に染まったかのような、紅い羽。]
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