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[薄く削がれた肉をパンに乗せる。
パインが入っているらしく、
生ハムメロン状態だとどこかで思う。
……甘いジャムの類よりも
道化師はこちらが気に入ったらしく仮面の下に器用に運ぶ。
二種のジャムと、淡く甘いミルク。
それに、パインが入ったパン]
ちゃんとした肉を ここで食べられるのもうれしいね。
ジャムは……甘いものが好きな人は
うれしい味付け、なんじゃないかな。
………うん。僕は、少し甘いものより
それ以外が好きだから……
………パンにパインが入ってるんだね。
いつも、こんなに作るのかい?
ぅ……。
[言い切られた。
目を閉じて口を引き結んでぺこりと頭を下げる。
その時ばかりは神妙な顔つきだったが、目を開ければ貼りついたように笑顔が戻る。
それが花水木の少女の苛立たしさをさらにかきたてるかもしれなくとも、
少女自身にはどうにもできず]
上?
お空を見てたんですか…… !?
[突如脱力する相手に、ひとしきりおろおろ。
その理由が身体の不調ではないと分かるとほっ、と息をついて]
そういえばそんなこともありましたねえ。
[大したことではない、という風に、笑う]
……確かに、彼女たちは
相手を見ているようで、
どこを見ているかよくわからないね
[現実の同級生に似たような傾向はある。
それを引き伸ばして拡大したような、
統合性のない世界を思う。]
………普通って何だろうね。
なんにしても、先生はほおって置かないみたいだけど
[と、彼女を気にし始める
シャルロッテを一度見て]
んー? ボクの名前かい?
リヴリアだよ。
リヴリアちゃんでも、リヴリア様でも
仮面ちゃんでも好きな名で呼んでくれればいいさ。
けれど、ブではないよ? ヴだからね。
[問われて隠す謂われはない。
仮面はそんなもの知らぬが、現実のカルテと同じ名前を伝えて嗤う。
変なところに拘るのは、些細な茶目っ気としておこう]
ああそうだろうそうだろう。
輝くのさ。皆の希望と願いと憧れを
描き連ねるセカイなのだからね。
キミのセカイも輝いているだろう?
……どうして、そんな極論に走るかな。
[渡り鳥だった少女の言葉に
軽く肩をすくめる。
まるで、自身の判断、配慮ばかりが
正しいも物のようないい振りに。 ]
程度の問題だろう?
違うのかな?
刺激をまったく加えないわけにもいかない
加えすぎてもいけない。
[グレイヘンの言葉の持つ"まだ"の重みを、少女は知らない。
だけど、純粋に気にかけてもらえることは嬉しいと思う]
ありがとうー。それがグレイちゃんの"お裾分け"なんだねえ。
ハルもそのうちグレイちゃんにお裾分けするからねえ。
[むずかしいことは考えない。
永遠に続くかのような"今日"のことだけ考えて生き続ける少女は、そう言ってにっこり笑った]
[なくしてしまった「星」を探している最中に、
野山の入口で動けなくなってしまったんだったか。
痛みも苦しみも、ない。
ただ寒くて震えて、それから眠くなるのだ。
動物が冬眠する時のように。
花水木の少女をちらりと見上げて、それからもう一度頭を下げた]
りぶ・・・りヴぃあ・・・・
[うまく発音ができないのは
未だこの幼い体を上手く操作しきれてないから。
というあたりをつける。]
仮面ちゃん。
きみのこと、知りたい。
[道化師の少女の見えるものは
仮面の奥に秘めたものを見ようと
じ、と再び熱い視線を向けた。]
ううん。
いっぱい、おすそわけしてもらってるから。
[ふるふると渡り鳥は首を振る。
自分は暖かい季節を自分で作り出せないから。
それが花守が自分のためにしている事でも。
おこぼれにあずかる事で恩恵を受けている]
――とりは、はるをわたるから。
[ちょっぴり笑顔を見せる。
そして柔らかな空気を胸いっぱい吸い込むと
伸びをするように翼を広げた]
[『嫌いだ』。
不健康な白い肌、倒れてしまうという繊細さ、
夜を思わせる黒い服装、星、
それら全てがいちいち
思い出したくないものを思い出させるから。
その上それを、「何でもないもの」として扱われれば]
……………そうだな。
そんなことも、あった。
[会話をするのも疲れたとでも言うように、
断ち切るための言葉一つ。
座り込んでいた地面から立ち上がる]
元気に現実を歩ける人間と同じ扱いをされて
生きていけるほど私は元気じゃない。
それだけの事よ。
[大手を振って社会に溶け込めるなら自分は此処にはいない。
それが現実であってそれ以上でも以下でもない]
そうね。
程度と、相手によりけりよ。
別に私は極論が全てとも言っていないわ。
貴方が起こしたい人の事は貴方の方がよく知ってるから。
私は別に口出しするつもりはない。
それこそ、私がやっていらぬ刺激を与えるなら。
見知った人が的確に刺激を与える方が良いに決まってる。
お裾分け、してる?
え。ハル、グレイちゃんに何かあげたっけ?
[グレイヘンの言葉に、きょとんと瞬いた。
少女には、このお花畑が自分の領域という認識も、自分が作り出しているという認識もない。
ただ、この場所は少女のお気に入りの場所。それだけだと思っている。
グレイヘンの言葉に心当たりがなくて、不思議そうに首を傾げたけれど、まあいっかあ、とすぐに考えることをやめて笑顔になる。
少女は、むずかしいことは考えない]
春は素敵な季節だよねえ。
ずっと、ずうっと春がいいよねえ。
[にこにこと、少女は自分にとって都合のいい言葉を拾い上げ、ご機嫌で笑った]
おはようございます、先生。
[シャルロッテの声にそちらを振り向く。
見た目こそ若く見えるが……
女性の年齢は考えちゃいけないというのは
父方の祖母の教えだったか。]
人並み………
絶対的、指標は きっとないのでしょうね……
普通だと絶対的に結論つけるのは
すごく難しい、とは思います。
[うまく名前が呼べぬ様子に愛らしさすら覚える。
彼女が気に入りようが気に入らまいが、仮面にはその姿とその声が気に入っていた。]
へぇ、今日はずいぶん積極的だね。
けれど、そういうのは好きだよ。
ボクは。
知りたい? 何を知りたいんだい?
スリーサイズはトップシークレットだから教えてあげられないよ?
[実際そんなものは知らない。
昨日の様とは打って変わって、知りたいとまで言ってきた少女に興味を覚えたのか、仮面は身を乗り出すように、向けられる視線に自らの視線を返す]
ハルはおはな、くれるよ。
それからえがおも、くれるよ。
[眩しい、笑顔。
当たり障りのない言葉を選びながらも。
何かとっかかりを探るように]
ハルのいるおはなばたけは。
よそのおはなばたけより あかるいの。
きっとハルがにこにこ、してるから。
[春は素敵な季節、頷く]
ん――はるはベリーがあるから、すき。
でもあきもぶどうがあるなら、すき。
それに。
たまにかぜがつめたいのも、すきだよ。
そのぶん、だれかとてをつないだら。
あったかいから。
[目を離しても。
少女はそこで黙り込む。
首元に手をやった。
此処から出て行けない、出してもらえない理由。
夢の世界にいる間に誰かが短く切り揃えてくれる、爪。
指が包帯の上をなぞった]
……君の話だったかな?
「私は」といわれても……
それとも、君の覚醒は、君には、ああ感じていた
所謂体験からの言葉、だったのかな。
[渡り鳥だった少女の言葉には
肩を竦める事ばかり。]
……少女の中には
このままでは、本当は死んでしまうこと、
知らない子もいるかもしれない。
知っていたならおきたかもしれない
知ってもおきたくない、
なら…………また話は別だけれど
[姉の話には乗らず、ただ、そうと口にする。
姉は焼身自殺未遂だった。
故に………ゆるく首を振る
結論は現実でもまだ出さない。]
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