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今日も知識の恵みに感謝して、
いただきまー…あ。
[トレイを前に手を合わせて一拍手。
それから一拝、顔を上げていざ食事。
と、洒落込もうとしたところで聞こえた声。
大きな口を開けたまま視線が仮面の片割れを見た]
呼んでるんじゃなくて、作りすぎただけ。
…食べてく?
[隣の椅子を引いて手招き一つ]
嫌だと思って投げ出した世界にも。
そこにしかないものがあるって、気付く時はあるわ。
欲しいものを、望むだけにもいつかは飽きる。
望み続ける事に疲れる。
そうして、自分を裏切った現実にもう一度期待をするの。
[あくまで語れるのは己のケースだけ]
……現実を見限った理由の数だけ。
戻る切欠はあるけどね。
[体調の事に触れられれば気怠げに首を振る。
少しくたびれた巻き毛が波打つ]
平気よ――いつもこんな感じだから。
[―――数ヶ月前。
といっても、暦など無いからそれは曖昧な時間だが……
ここに来たばかりのミズキは、
まさしく本当の意味で「何も出来ない」少女だった。
走り方を知らず転び、
泳ぎ方を知らず溺れる。
整理整頓の仕方を知らず家はぐっちゃめちゃ、
扱う言葉すらもこどものようにたどたどしく。
走り方は笑顔の仮面の少女に習った。
何がきっかけだったか、挑んだかけっこ。
何度も転び、抜かされて
けれど、みるみるうちに上手になって、やがて勝負になって
本人はきっと、教えた自覚はないだろうけれど]
[苦手なものは何だって、克服しようと努力した。
ミズキを見守る太陽は
いつだってその努力に応えてくれた。
けれどどうしても克服できないものはある。
たとえば、料理。
そして、 いま目前にいる「星」の少女]
[今日は――その言葉に渡り鳥は少し表情を曇らせる。
それを欠伸のふりをして誤魔化して]
うん。 いいてんき、ね。
おはなもげんき。
[この花畑では花は太陽だけで綺麗に咲き誇る。
雨の恵みを欲してしおれる事もなく、ずっと]
ハルは。
つめたいおみず。
のみたくなったり、しない?
[彼女……少年のような姿で
華のない箇所に住んでいるが、それでも少女、だ
に、声をかけたのは、ちょうどいいタイミング
と、言うべきか、どうか。
屈託なく大きな口をあけたシンの視線がこちらを見た。]
[肉にパンにココナッツにミルク……ココナッツミルクだろう
それに、何かのジャム。
見知った台所と違い、もっと素朴な環境で
よくもこれだけと、驚き半分]
…………おや、おや、いいのかい?
僕には御代になるものはないよ?
強いてあげるなら、
カスミの星ぐらいか
[羨望半分、手招きされれば、
そうは言いつつも、するすると入り込んで
おかれたいすに腰掛けて]
[聞こえた声で「誰か」の正体を把握し、
歩みが一瞬ぴたり、と止まる――が]
ミズキちゃん!
わあ、えっと、とにかくごめんなさいですよう!
その様子だとわたしがここにいたせいで倒れちゃったみたいで……。
[満面の笑顔、焦りを垣間見せるしょんぼり顔、そしてまた笑顔。
ころころと表情を変えながら再度近付く]
お星様が来るのを待っていたら、いつの間にか寝ちゃってたんですよう。
そう見つめられると照れるのだけどねぇ?
[見た目には彼女へは振り向かず、視線はセカイを見つめたままに仮面を傾ける。]
ごきげんよう甘き声の人。
ローザだったかな? ハルの子から聞いたよ。
見つめてくれるのはありがたいが、まずは清く正しく文通から始めるかい?
[カラカラと嗤いながら、辺りをぐるりと眺めて廻る。
彼女が抱く警戒も打算も勿論知るところではない。見ていたことに気付いただけだ。]
どうだい? 今日もセカイは輝いてるかい?
彼女たちの抱えているものを刺激しないように
気をつけなければなりませんね。
[カルテから目を離して、瞳を閉じる。
人形のようにピクリと動かなくなるが
それは向こうの世界に意識を集中しているからだ。
何かあればすぐに連絡ができるように
このチームに配属され、少女の器に入ってから
実質の不眠不休かもしれない。
本来の肉体は眠り続けているのだから不眠は少しおかしいけど。]
[鍋に入りきらなかった分のココナッツミルクは
流木で出来たカップに幾らか。
そのまま飲むのは流石にくどいのか
うっすら染まっているので何かジャムが入っているらしい]
御代?…貰って欲しいなら考えるけど、別にいらない。
あ、でも感想は欲しい。
今、用意してくるから待ってて。
[そう告げて奥に消えれば暫くして再び戻る。
トレイには、出来上がったばかりのまだ温かい
ブラックベリーのジャムの小鉢もつけて**]
……そこにしか、ないもの、か。
[夢の世界では渡り鳥だった少女の言葉に呟く。]
ヴェルは帰りたがっていたけれど、
帰りたい場所をそのまま作ることは
出来ないんだね……
矛盾を含むからかな……?
見限って、求めて……求めて、見限って。
[そこにあるのは少女の都合。
現実はそうはいかないけれど。]
………ふぅん……平気、て、
そんな感じだったかな……
[彼女の中では、これが
平気、の基準なんだと思いながら
あまり平気そうには見えない様子に
病院の寝台でゆるく首をかしげた]
冷たいお水?
[突然の質問に、少女はきょとんと瞬いた。
それから、んー、と考えて]
おやつの時間に、果物食べたりね、ジュース飲んだり、するよう?
だけど、今は別に喉は渇いてないかなあ。
[そう言って、にこにこ笑う。
ここではない別の場所で、自分の体が"生かされている"ことなど、もちろん少女は知らない。
別におなかも空いてないし、喉も渇いてない、と少女は思う]
まだごはんの時間じゃないもんねえ。
…………刺激、ですか……
[夢への介入自体が、
姉への刺激でしかない中性的な少年は
ローザの言葉に視線を伏せる]
けれど、起こすには……
現実でも声をかけたり、アラームをセットしたり
刺激を要します………
身体の衰弱によるリミットがあるわけですし……
[若い医師の言葉に静かに瞬く。
頷く動作をより省略したそれは一見無言にも見える]
……それだけの渇望力があれば、ね。
望む元気もなくなって。
それでも、愛なり優しさなりが欲しくなったら。
結局、他者を頼らなくちゃならない。
夢はそういう意味では残酷。
誰も、自分の願望を満たす事で精一杯で。
どんなに居心地が良くても所詮は誰かの作った夢物語。
[例えば、常春や常昼の太陽は自分には眩しすぎてつらい]
……私は普通じゃないから。
だから、ここにいるの。
気にしないで。
[少しだけ拗ねたように顔を背けた]
じゃあ、感想が御代、ということで。
……それにしても、すごいな。
[少女たちの世界で、空腹を個人で満たそうとすれば
それこそ飴のように甘い果実か、菓子類か
まっとうな食事を手に入れるほど
望んだものを得る力はなくて。
それだけで満足できることもできなくて。
出来ることといったら、仮面をつけたまま
器用にその仮面の下に食事を運ぶこと。
しばらくシンが席をはずして、
もって来たのは何か、黒い物体。
手を合わせて頂きますと言い
パンにつければ、それはジャムだった。]
出来立てのジャムを食べたのは
初めてだ
………シンは食事を作るのがすきなのかい?
そっか。
まだ、だいじょうぶなんだね。
[花守の笑顔は押し花のように刹那を保存しているようで。
最も美しく最も穏やかなある季節の一瞬を、
永遠に引き伸ばすような儚さを思う。
花本人も知らぬ内に枯れてしまわないか。
こうして時折様子を尋ねる]
もし のどがかわいたら。
ぐれいへんは きれいなみずべ しってるから。
つめたくておいしいおみず。
もってきてあげるね。
[彼女は自分の力でユメを叶え続けてしまうのかもしれないけど]
貴方がもし病気で起きられないような時。
アラームが耳元で鳴り続けたらどうかしら。
[相手が心身ともに健全なわけではないなら]
あまり繰り返したら。
アラームを聞くだけで時計を叩き壊したくなるかもしれない。
……難しいの。
時間が無限じゃないのも。
理解は、できても、ね。
……無理に起こして自殺未遂されちゃたまらないものね。
[自嘲するように囁いた]
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