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[今はもう、自分の記憶に欠落がある事実を受け入れられていたから。
だから、酷く事務的に、彼女へ説明してしまったかもしれない。
その証拠に、普段冷静なサリィが酷く、動揺している]
―――…、…まあ、そういう反応…、だよな。
[サリィの動揺が、繋いだ指先からも伝わるみたいだった。
曖昧に返答を返しつつ そのまま、彼女の手を引いてボート乗り場へ向かう。ライトアップしているということは、夜だけどまだ、ボートに乗れる筈だ。
係員に二人分のボート代を支払うと、『どっちに乗る?』と聞かれた。
普通の手漕ぎボート(対面式)と、白鳥の足漕ぎボート(隣席式)だ。
ビジュアル的に手漕ぎが良かったけれど、今はなんとなく、…サリィの傍に居たかったので、思案を始めた]
[ランスの言葉にはっと我に返った。
話を聞いただけの自分が狼狽えてどうする。
多分、一番きついのは彼自身の筈なのに]
………あ、ご、ごめんなさい…。
私………。
[それでも言葉は続けられなくて。
せめて…と、ぎゅっと、ランスの手を握り返した]
…………え、と。
[係員の問いかけに思案するランスを見て、
こっちの方にしませんか?と+表+表:手漕ぎ/裏:白鳥を指さした]
[『ごめんなさい』と、謝罪の言葉が聞こえて目を瞠る。
サリィの混乱は尤もだし、彼女が謝る必要はどこにもなかった。
自分の器の小ささが歯痒くて唇を噛み締めたのは一瞬の事、]
……、……。
[細い指先が、自分の手を握り返してくれる、それだけで今は嬉しくて。
その手を引き寄せ、甲へとくちづけた。そして当初の問題に、戻る。
やっぱりビジュアル重視だよな。ちら、とサリィの顔を見つめ]
……う、…解った。
じゃあ、こっちで。
[係員はどうぞーと、普通の手漕ぎボートの縄を外し、案内してくれた。
先にボートに乗り込み、サリィを誘導しようと、手を支えて。
座ってくれたなら、オールをゆっくりと動かしてボートを動かしていこうと]
[手の甲にくちづけられて、ぱっと頬が朱に染まる。
手を繋ぐことには慣れてきたけれど、これには全然慣れない]
………っ………。
[係員さんもいるのに、とか頭の中ではぐるぐる言葉が回る。
こちらは別の意味で慣れているのか何も言わない係員さんに、
余計に恥ずかしくなったり、文句はラ神に言ってくださいとか、
そんなこんなでランスの視線には気付けなかった]
あ、ありがとう、ございまっ………!
[ボートに乗ろうとしてバランスを崩しかける。
ランスが支えてくれているので、大崩れはしなかっただろうが、
それでも一瞬ランスに抱きつく形にはなっただろうか]
[係員は結構なおじいちゃんだったから、サリィの手の甲にキスしたんじゃなくて、鼻でも啜ってるように見てたのかもな…
変なところは気にするけれど、人目は余り気にしないのが俺のジャスティス]
―――…っ、あぶ……ッ、
[サリィが降って来たので、慌てて受け止める。
ボートが左右へぐらりと揺れた。
むに。
ToLOVEるくらいのラッキースケベが、ついに俺の処にも、やって来た。
ありがとう、神様。]
…よし、わかった。
…このまま、漕ぐ。
[何が解ったのかは、謎だ。
真顔で、サリィの躯をくるりと反転させて、自分の足の間に座らせようと]
[どんなジャスティスですか!人目も少しは気にしてください!!
と、もし心の声が聞こえていたら叫んでいただろう。
基本的に人前では手を繋ぐのが精一杯です。それはさておき]
………っ、びっくり…した………。
すいません、ありがとうございます。
[落下の衝撃の方が大きくて、ラッキースケベを提供したなんてまったく気付いていなかった。
だから、受け止めてもらったことにたいして笑顔で礼を言って]
………え、えぇ!?
[くるりと身体を反転させられると、不思議そうにランスを見上げて。
わけのわからない間に身体はランスの足の間におさまっていた。
そこから抜けようにも、ボートが動きだしてしまえばきっと動けない]
[心の声が聞こえていたならば、サリィは本当に可愛いなあ…なんて、更にちゅっちゅしたに違い無いが。
ゆらゆらと不安定に揺れるボートは、じいちゃん係員にサヨナラを告げてゆっくりと夜の湖へ滑り出す]
動くと危ないから、…じっとしてて。
[誰も乗っていない後方が少し持ち上がっている気もするが、何とか安定したまま漕ぐ事は出来た]
[パシャン、
水音が静寂に滲んでいく]
…サリィがもし、……居なくなったら…、
……俺、サリィのこと、忘れるかもしれない。
[本題に、戻った]
[無言で水音に耳を傾けていたが。
ランスの言葉が聞こえると、小さく息を呑んだ。
そう、今までが幸運だっただけで、今後も一緒にいられるなんて限らない。
イズミ、ユーリ、マリーベル、ランスの話からするとネッドもか。
彼らが消えたように、自分や彼が消えることだってありうる。
そして、自分が居なくなったら、ランスの記憶から消える。
でも、そんなことは………]
………ゃ、だ………。
[じわっと目に涙が浮かんだ。
忘れないでほしい、なんて無理だってわかっていても、それでも]
………忘れないで、って…お願いしちゃ、ダメですか…。
ランスさん、言いましたよね…旅行中、お願い、きいてくれるって…。
だったら………!
[あれから幾度も考えた事。
それは、『自分は彼女を守れないのではないか』ということ。
何人もの人間(ちなみにクラット大倉君もだ)が、神隠しのように消えてしまうこと自体、人ならざるものの力のような気が、していて。
守れない、それを前提として仮定する。
彼女が、もしも消えてしまったら、]
……俺、…サリィが居なくなった、って知ったらさ…、
…生きていけないような気が、するんだよ。
[懇願するかのような声が聞こえて、胸が痛んだ。
オールを置いて、胸元の彼女の躯を背中ごとそっと抱き締め、細い肩へ顎先を乗せる]
…お願い、ん…、約束したよな。
…忘れたくない、だからさ…、
…忘れない為の保険、かけておいてくれないか?
[自分がいなくなったら生きていけない、と。
そう伝えられた瞬間、鼓動がはねた。
そんなのは…]
………私だって、一緒です………。
でも…私は、忘れることも、同じくらい、怖いから…。
[ランスがいなくなる、なんて想像したくもない。
でも、もし本当に消えてしまったとしたら。
忘れてしまったら、二度と会えなくなりそうで]
………保険?
[抱きしめられた腕の中、耳許で囁かれた言葉に不思議そうな声をあげた]
[同じ言葉を、想いを返してくれる存在が愛おしい。
何時の間にかサリィが、自分の存在意義になっていた、今回の出来事にそれを思い知らされた気がしていた。
勿論仲間…、友達も大切で、だからこそ記憶が抜け落ちてしまったんだろうと、思ってはいるけれど]
…そ、保険。
…俺さ、最近ネッドとメールの遣り取りしてたんだよ。
…それ見て、朧げにだけど、ネッドっていう男の輪郭?みたいなのは見えたんだ。
…だからさ、サリィも俺にメール、ちょうだい。
…記憶無くした俺が見てこう、ハッとサリィを思い出せそうな、熱烈なやつ。
[最後はちょっとおどけて言ってみた。
どうかな?って上目遣いに甘えてみる。勿論、メールは今直ぐじゃなくていい、消えないうちに、だ]
メールが、保険………。
[ぽつ、と呟く。
差出人がたとえ消えても、メールは残る。
それを手がかりに思い出してもらえるなら、
嬉しいことではあるけれど。
ただ、それには問題もあって]
………わか、りました。
でも、熱烈って………。
[かぁっと頬を染めた。
今までランス宛にそういうものを送ったことはない筈。
メールを送るまで、当分携帯片手に悩みそうだ]
…思い出せなかったらサリィ、泣いちゃうんだろ?
[にじにじ。柔らかな頬へ頬を重ねておねだりモード]
…だから、一瞬で思い出せるような…、風呂上りのえっちなサリィ画像添付で、より効果を上げてみよう。
…動画でも……、
[飛躍しはじめた。
さすがに拙いと、自制するだけの理性はまだある]
……みんなを見つけ出して、…学校に戻ろう、な。
[誓うように、小さな声で告げた。
サリィをぎゅっと抱き締めたまま、まだ暫くは湖でふたり、迷子になっていたかった。
二人で一緒のうちは、――サリィが消える事はない、から**]
………さすがに、それは………。
でも…、頑張ります、から。
だから…絶対思い出してくださいね。
[思い出されなかったら絶対に泣くのだということは、
自分が一番よくわかっているけれど。
だからといって、ランスがいうような画像・動画添付は、
とてもじゃないけど無理だ。
無茶苦茶なおねだりには苦笑を浮かべるも、
よせられた頬のぬくもりにそれもすぐ溶けて]
………えぇ、必ず…、皆で一緒に………。
[まわされた腕を、そっと抱きしめて。
背後から聞こえる心臓の音に目を閉じた。
できるなら、このまま2人が離れることがないように…、
と、胸の内でそっと願いながら**]
[よく寝たような、そうでもないような。]
………変だな…
[例の倉庫とやらは何処なのか探しているものの、何故か辿り着けないで数時間。]
……取り敢えず。
[ロビーに座る]
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