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[その親からの仕送りで生活に不自由はないが、外出はできないから、宅配サービスが生命線になっている。遮光カーテンが開くことはなく、今が昼なのか、夜なのかも分からない。ただ、そんなことには大して興味がない。眠りたい時に眠るだけのことだ。]
[崩れたからだを支えてもらっていたとか、むしろ支えきれずにいたらしいとか、気づかず意識は那辺を彷徨う。
当然あとから来た人の事も気づいていないのだが、しかし。
この、抱っこというにはあまりに荷物的な小脇に抱えられる感覚……!]
ん……
[反応しかけたが、丁寧に抱き直されてそれは遠ざかった。
比較的発育の良い方らしい(伝聞系)身が、僅かもぞり。]
―地球防衛軍本部―
おはようございまーす。
[出勤です。]
あれ、どうしたの?
[きょろきょろあたりを見回している国代を見て首を傾げた。]
[学内が騒がしい。
それもただ騒がしいのではなく、限りなく無軌道に近い指向性を持っている。
浮き足立っているのに近く感じるが、背後に何かが見え隠れするような違和感があった。
やはり最近になって学食に増えたリッチサンドイッチランチのせいだろうか。
学食のメニューのくせに千円を超える値段と、それに見合った味とボリューム。元からあるサンドイッチランチとはパンから違うという高級感。具材も豪華だが、通は薄く塗られたバターの味に酔いしれると噂の新メニューだ。
学生にとって一食に千円以上は明らかに高い。しかしそれでも求め、手を伸ばしたくなる。そんな魔力のある罪深い代物である。
この日常でありながらどこか騒然とした雰囲気も、むべなるかなというものだろう]
−保健室−
[昨日の襲撃時、一緒に大人の味見をしていた女性をかばって気を失ったクリストファー=ラヴロック。
彼はその後、守った女性に引きずられるように保健室へと運ばれた。
数時間後、クリスが目を開けると、女性は彼の寝ているベッドの脇で、椅子に腰掛けて眠っていた。]
ずっと、看病してくれたんだね。
ありがとう、名前も知らない君。
[ベッドから腕を伸ばして、髪を優しく撫でる。]
[うちには妹がいる。自分がひきこもるようになってからはほとんど話すこともないが、祖父さんの病院は妹が継ぐだろう。妹は「大丈夫よ。私も死ぬんだもの。フヒッ。フヒヒヒッ」というのが口癖のエキセントリックなド変態だが、優秀らしいから適当にやるはずだ。まあ、自分なら病気になっても妹には診てもらいたくないが。]
―翌日―
[H県にいた時からの愛車だった赤いハッチバック式の軽自動車を乗りつけて、羽島守子は今日も教鞭をとっている。今日は珍しくマリリン・マンソンを車内で流していた。
ROCKは死んだみたいな事を歌っていた気がするが、死んでない!ROCK死んでないよ!
多分マリリンも本当はそう思っているはずなんだ。あの人実は見た目の割に結構いい奴だと思う。]
……はい、このようにローマ帝国崩壊前後の西ヨーロッパには様々な蛮族と呼ばれる民が流入していましたが、中でもやはりフン族は覚えておく必要があります。
彼らは中国の北辺りからやってきた民族で、アッティラという王の時代に最盛期を築き、王の死と共に自然消滅していきました。
ハンガリーの“ハン”がこのフン族に由来するという説もありますね。
ちなみにフン族滅亡のきっかけとなったアッティラの死因が、若い花嫁と迎えた結婚式の初夜に鼻血を噴きすぎたための失血死である事は有名ですが、テストには出ません。
…出ません。
[大事な事なので2度言いました。そうこうするうちに、今日もノルマ達成]
…。
[かっち、かっち。
時計の音が部屋に響く。
妹はエキセントリックだが、いいことを言ってもいる。
人間、いつかは死ぬ。
カウントダウンの音が聴こえる。
時間は止まっていない。
いつか死ぬ。おれも。]
…って、な。
ぷくく。
[笑ってしまう。
自分はドロップアウトした人間だった。
志久真家が手を回したのだろう。自分も学校には「出席していることになっている」。志久真家は名声に傷がつくのを恐れる。だが、もうその校舎の姿もおぼろげにしか覚えていない。…まだ、自分はあの学校に帰属意識を持っているのか。くだらない。]
オーライ、だいたい聞き終わった。
[ヘッドホンを外すと、○イマスクを新しいのに交換する。伏せ字する必要あるのか? ないか? なくてもいいじゃないか。]
なんつーかさー、みんな怪しく見えちまうんだけどな。このシカバネがエイリアンじゃねえのか、って思うわけだよ。
シカバネとか言いながら返事したり興奮したりわけわかんねーし、生きてるのか死んでるのかはっきりしねえし。
それにあれだよ、非常に言いづらい事だけどよ、ほら、なんだ、こいつなら「おっと間違えた彼は人間だったよハッハッハーまあ間違えてしまったなら仕方がないね!」とかになっても、心が一ミリも痛まないよな!
[ひどい。]
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