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……っ、かは…っ
[首を締め上げられ、息が出来ない苦痛から逃れようと、首を掴む始祖の手を引き剥がそうとする。
爪を立て、力の限り引っ張る。
始祖の手背から血が流れる事はあっただろうか。]
……っ!
[首を締め上げられたままに、鳩尾に一撃が叩き込まれると、息が出来ぬ苦しみとともに身体を折ってばたつかせた。]
[シェリーの謝罪を耳にしながら、床を蹴る。
一気に距離を詰めてリーチの長い棍を突き出した。
狙うのは、金髪の吸血鬼
下がらないなら、その胴を打ち抜く勢い]
― B2 ―
痛……畜生。
[左手で脇腹を押さえながら通路を進んでいた。
右手はモナステリーにもらった覚書を握り、
拳の背を壁につきながら…]
我会加油的…。(負けない)
[言葉と声の強さが裏腹だ。
やがて、少し開けた分かれ道に当たり、
覚書を見て方向を確認しようと、壁に身を預けた]
吸血鬼の身体がどこまで耐えるのか知らないが、私の美しい身体が傷つけられるのは避けたいものだ。
[顔に当たるかもと言われれば、自信過剰の表情が少し鎮まる。
自信もそうだし舞台役者として度胸もあるつもりだ……だが、この男のプレッシャーのかけ方は円熟しており、まさにベテランの味と言えた。
生命を賭けてやりあうなら負ける相手ではないという自信があるが……ある意味こちらの弱点を知られているようなものだから、不利な状況には違いなかった]
走れるかい?
1、2の3で後ろに向かって全速力、いいね?
[シェリーにそう囁くと、ジェフの一撃を捌きにかかった]
[かり と爪が床を引っ掻く。
口の中に溜まった熱を、赤を吐き出した。
出し過ぎた赤は、空気に触れ、酸化し始めている]
―― ……ぁ
[げほ、と喉が震えた。言わんとした言葉は、音にすらならずに消えた。
血の味は舌に残る。舌に残るのは甘味と、痺れ。
薬品の残る目玉を舐めたのだから仕方がない]
[壁にもたれて座ったまま、一度目を閉じた。
けほ と先ほどよりは軽い咳。微かな泡沫が口端に浮かんだ。]
[始祖の名を呼びながらアレクトーを探す行動は、
地下2階の迷路を奥へと進んで行く]
この階じゃないのか……それとも。
[呼び掛けが聞こえていながら応えないだけか
吸血鬼化した時、歓迎すると言われたのを思い出す
口許僅かに苦く歪めて]
[徐々に、意識は白濁してゆく。
顔面の色に蒼さが増し、唇が紫に染まってゆく。]
……
[声には出せず、何事かを呟くと、彼女は意識を失う。
最後までその瞳は、始祖を睨んだまま。]
[あるいは
あの手を振り払わなかったら何か変わってたのだろうか。
友の手は、蒼白な顔の癖に、熱かった。]
[共に戦うとしても、死んでたのは確かだったろう。
変わっていたことは ]
―― バッカ バカシ
[こほん と控えめな咳ひとつ。リアンのような片言でその考えを切り捨てた。
赤に塗れ、そして固まり始めていた左手をゆるく、結んで開いた。]
やる……っ!
[あれだけ顔と言っておきながらジェフが狙ってきたのは胴。
駆け引きの巧さに感嘆しつつ、外刃のハルパーを握る腕で胸を隠すように折りたたむ。
棍の先端が寸前に来たところで、折りたたんだ腕を外へ向けて払う。
三日月状のハルパーの内円の中に棍の軌跡を巻き込み、そのまま弾き飛ばして逸らさせる]
……ぐっ!
[不意を突かれたのとジェフの技量ゆえか、胴から僅かに逸らしただけで脇腹を打たれた。
踏ん張らず、衝撃を吸収しないように大げさに吹っ飛ぶ――舞台での剣劇で覚えた身の守り方だ]
[もしくは
あの手を振り払っていたら何か変わったか。
歪んだ笑みを浮かべた、あいつは。
確実に変わっていただろう、と思う。
男の本質は変わらなくとも、吸血などすることなく死ねたはずなのに。]
[吸血鬼にしたのなら、最後まで責任とれ。
あのとき 「まだ」って言ってただろ。
罵倒する声は音にならず、また、内容もどこかずれている。]
[降ろしていた瞼を上げるのさえも億劫に。]
今だ、逃げるよ。
[後方大きく距離をとるように吹き飛び、着地して残った慣性を使ってそのまま振り向き、暗闇の中に駆け出した。
シェリーがその傍にいれば手も引いただろう]
[熱い]
[熱は荒い息と、合間合間に溢れる血液に乗せて排出される。
こぽ とどこからかの水音。聞こえないふりをした。
それよりも鼓膜に響くのは 風の幻聴と誰かの暗唱。
男自身が幾度も繰り返した暗唱が、誰の声か、繰り返される]
[――『おお 和らげることのできぬ残酷な獣よ』]
[突きを捌くフルムセートの剣技は、どこか優美で美しい。
戦場でなら戦線を大きく乱す、後方へ飛ぶ防御]
…ッ!
[闇へと駆け出す吸血鬼。
逃がすか、は心の中でだけ。
ひゅ、追撃を狙っていた焔が一閃して手元に戻った。
弾かれた左手に走る痺れを無視して、地を蹴る]
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