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―高瀬医院―
[それから、男は再び高瀬医院に戻った。今夜は入院患者がいるという話だったからだ]
有難う御座います。お気を付けて。
[ディビッドからコーヒーを受け取り、その姿を見送った。かけた言葉は夜道についてと、体調について。ディビッドについて、余所者だから、外人だから、というような思いはほとんど抱いていなかった。初めて会った頃には色々と戸惑いもしたものだったが。
高瀬達の下にコーヒーを運び]
いえ、気にしないで下さい。
私も出来る限り手伝いたいですから。
[高瀬に首を振り、また頷いて。男もコーヒーを手にして腰掛ける。高瀬の言葉には、眉を下げて弱く笑い]
……心配ですからね。銀子さん。
[入院患者である彼女の事を思いつつ]
あ、そうなんですか……。
空気は綺麗ですし、お医者さんもいらっしゃいますし。
この村なら、ゆっくりできると思いますよ。
[多分。
気に入った、と言ってくれる雨宮と、彼に村を進めたという伽耶には、思わず綻んでしまった]
最近、ちょっとお葬式が多いみたいですけど、気にしないでくださいね。
夏ですし、仕方ないです。
ああ、そうそう。もう一人余計な奴もついて来てるんだったな。
いや、余計なんて言ったら悪いか。
[思いついたようにそう言って、親しい者のことを話す時特有の緩んだ表情を見せる]
僕らの体のことを心配して、一緒に来てくれた友人がいるんです。
須藤、と言いましてね。コックの卵なんです。
健康にいい上に美味しいものを作ってくれるんですよ。ね、伽耶さん?
せっかく来て下さった縁ですしよかったら、どうですか。今度彼の料理を食べにいらっしゃいませんか。
今日は生憎、用意がありませんが、よろしければ。腕を振るわせますよ。それだけがあいつの取り得ですから。
見習いコック 須藤暁 は肩書きと名前を コック 須藤暁 に変更しました。
そうだな…
[神威の言葉に顔を顰める]
急激に貧血患者が増えたんだ。
確かに今年は暑い。でもそれにしたって全く同じ症状の患者が増える理由にはならない。
…伝染病の可能性もあるのか…それすら分からない。
既存の伝染病の症状ではないから、あるとしたら新種…
だろうが、原因が特定出来ない以上国立に頼るわけにもいかない。
[それに、騒ぎ立てれば種々雑多な雑用に忙殺され、治療どころではなくなるだろうことも予想された。
治療できずに患者を見殺しにしたくないというのが男の気持ちの中にあった]
こ、コックさん……!
[お屋敷に住んでいる人には、お抱えのコックさんがいるのだ!
ますます憧れる。羨ましいと思う。
が、続いた言葉にますます度肝を抜かれた]
え……え、い、いいんですか……?
あ、私、何も持ってこれるものとかないんですけど、ええーっ!
[及び腰だが喜びは隠せない]
あ……ありがとうございます。
ほんとに、何もないんですけど……。
[伽耶と雨宮の快い言葉に、来てよかったと本気で思う。
コックさん、どんな人なんだろう。早速楽しみになってきた。
やっぱり、外の人は素敵だ]
それじゃあ、お邪魔させていただきますね。
あの、本当にいい村ですから……
[これから挨拶に行くなら、邪魔になってはならないと思い。
とりあえずその場を辞そうと]
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