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…わしは天才じゃのう…
のう、みっきいよ!
ほれ、見てみい。小屋に真っ直ぐ辿りついたわ。
[見覚えのある小屋が姿を表すと指差し、ミッキーにそれは嬉しそうに笑いかけ]
やればできるではないか。
[誇らしげに独りごち、小屋の向こう…また新たな人影が見えた気がして目を凝らす]
…?
幻ではあるまい…
[声と気配にぴたりと足を止め小首を傾げる]
[一瞬だけ集中し驚異的な視覚により人影を確認]
其れが私の事を云っているのなら、幻ではないわね。
[日傘の柄を握り直し地を蹴るか算段を始め]
[立ち止まった侭に闇の向こうの気配を探る]
[影が返事を返す、小さな声。幼子の声だと気づいて驚きに目を丸くさせ]
なんと、子もおったか。
可愛らしい声じゃ、娘か?
声代わり前の坊やもしれぬな…
ささ、此方へおいで。
甘い果実があるから食うといい。
一人で来たか?
[声のする方へ手招きをし、小屋を顎で指す。縁側に見えるのはウルズの姿]
ただいま。
おお…よぅ似合うではないか。
身体を起こすことはできるようになったか。
[声に敵意は感じられないけれど躊躇う気配が滲む]
[哀しげに瞬いてから闇の向こうへと小首を傾げ]
誰も、嗤わない?
[不安気に問う声は子供らしい響きをもって]
[立ち尽くして躊躇いがちに日傘の柄を回す]
声は可愛らしいのね。
でも私は可愛らしくなんて無いわ。
だから、此処に居るのだもの。
醜くても嗤わないのなら、そっちへ行くわ。
はて、何故笑うのじゃ?
[心底不思議に問い返し、しかし不安気な声にそっと諭すように声を和らげ]
可愛い声の主を笑うことはあるまい。
笑みが浮かぶことはあるやもしれぬ。
しかしそれは何か楽しいことや嬉しいことがあった時じゃ。
わしは隠すことはあまり好かぬ。
わしはお主の姿を見たいのじゃが。
此方へ来て姿を見せてはくれぬか?
[女の声に暫くは思案する間もあっただろうか]
――…嗤ったら殺すわ。
[あそこに居た者達の様に、とは小さく呟く程度]
[当然の事の様に変わらぬ声が告げ歩き始める]
[ふわり] [ふわふわ] [ふわ] [ふわり] [ふわ]
[女をはじめとする幾人かの姿に距離を取った侭]
[軽くドレスの裾を持ち上げ恭しく一礼して見せ]
御機嫌よう、たくさん人が居るのね。
それは物騒なことじゃ。
[少女の言葉にカラカラと笑い声をあげる。少しずつ、影が形となり現れた少女の姿に思わず見惚れ]
これはこれは…
[見たことのない装飾と服装をどう喩えたらよいのか、言葉を捜しあぐねているようで]
其の声に似つかわしい、とても可愛らしいお姿じゃ。
皆あちこちへと行って大分人も減っておる。
もっとおるぞ、また姿を見かけたら声を掛けて見るとよい。
わしは「すてら」じゃ。
後ろにおる逞しい男が「ミッキー」、其処の銀髪の男は「ウルズ」
姿は見えぬが何処かへ行っていなければ「ナサニエル」という
蒼髪の男もいるであろう。お主の名は何じゃ?
物騒かしら?
私は其の為につくられたのだわ。
…お父様は、私を醜いと仰ったわ。
[哀しげに瞳を伏せ弱弱しく首を振る]
すてら、すてら、すてら…
[名乗る声に瞼を持ち上げじいっと女を見詰める]
[幾度も舌の上で甘く味わう如く其の名をなぞり]
[紹介される順に他の者達も視線を送り頷いて]
ミッキーに、ウルズに、ナサニエルね。
私は――…名前は貰えなかったの。
でも祖体の呼称はヘンリエッタ。
だから、此処では私がヘンリエッタ。
ここは安住の地じゃ。そのような言葉は必要なかろう。
そうか…わしは可愛いと思うておる、それで良いではないか。
服装も少々変わっておるが、お主によう似合うておる。
[近付く少女の背を軽く押して小屋へと伴うよう促し]
へんりえったとな、また難しい名じゃ。
噛まぬように気をつけねば…まずは小屋へ入ろう。
中に果実があるから喉を潤して少し休むと良い。
[再び小屋へと足を向け、縁側のウルズと中にいるナサニエルにも声を掛ける]
ここよりも大きな屋敷を見つけた。
其方の方が皆も身体を休めることができるじゃろう。
此処もよいが、其方へと身を移さぬか?
無理にとは言わぬ、他にも幾つか家はあるみたいじゃからな。
へんりえったも一緒に来ぬか?一人では寂しかろう。
[青年達へと問い、その答え次第でまた引越しの準備を*始めるのだろう*]
[安住の地と云う単語に獣の如く瞳を細め]
人の心は遷ろうわ。
永久に続く安息はきっと――…
[言葉を切り近付く女の貌を覗き込み]
[日傘を回したたんで逆手に持ち直す]
この姿ならば、お父様も気に入ってくださっていたのよ。
でも有難う、すてらは優しいわね。
[促される侭に小屋へと踏み入り辺りを見回し]
[示された果物へと何気なく小さな手を伸ばし]
[しゃくり] [しゃく] [しゃくり] [しゃくしゃく]
[躊躇いなく齧ると甘酸っぱい果汁が口に広がる]
[唇の端に零れる果汁を紅い舌はちろと舐めて]
すてらは、ひとりは寂しいの?
[小首を傾げて問うも荷造りは素直に*手伝うだろう*]
― 川辺 ―
[朽ちかけた簡素な木造の橋の細い手摺を歩き]
[ドレスの裾をはためかせ足取りは軽やかに]
[ふわり] [ぎぃぎぃ] [ひら] [ひらり] [ぎぃ]
[日傘を差して軽やかに双方の岸の中間辺り]
[立ち止まり覗き込むは涼やかな流れに映る姿]
勝てなかったのだわ。
[薔薇の咲き乱れる日傘に隠れた表情は窺えず]
[尖らせた薔薇色の唇も揺れる瞳も隠されるか]
成れなかったのだわ。
[囁かれる言の葉は清流に飲み込まれ消えて逝く]
[か細い片手は何を求めてか流れへと伸ばされ]
届かなかったのだわ。
[伸ばし水面へ向けられた小さな掌は宙を掴む]
[胸元へ引き寄せ開くも掌を覗くも当然何も無く]
[微か吐息を吹きかけて再びそうっと握りしめる]
――…
[日傘の向こうの空を仰ぎ石榴石の瞳は揺れて]
[静かに深呼吸をして薔薇色の唇は開かれる]
[奏でられる透き通った歌声は風に乗るだろう]
Someday I want to run away
To the world of midnight
Where the darkness fill the air
Where it's icy cold....
[そのまま縁側でぼーっとしてたら戻って来たすてらから引越しを告げられて]
俺は別に良いけど…ウルズはどうすんの?
[問いかけるその目は一緒の方が良いと雄弁に語っていて。
返事如何に関わらず引越し準備は手伝うだろうが。
新顔2人―ミッキーとヘンリエッタにも極普通に接するか]
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