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……。
[ 失われたなにか、「ソレ」がかつて持っていたはずの記憶の外周を、堀を、埋めてゆくように。pierrotに篭められていたデータが、黒い本棚−書庫が整然と並んでゆく感覚。]
……。
…………、
………………。
[ 杖に縋り、立ち上がる。]
>>136
――敵性反応
[壁の向こうに走査を走らせ、avaritiaが警告を発信する。
それは、『身構えた』Tobeyに]
防御行動――!
[予備動作も待機時間もなく、刹那に熱衝撃波を発生させる。収束も拡散もなく、破壊のエネルギーが少年型のAIに向かう。
同時に後退しながら、ソレは防御のためにinvidiaの活性を上げた]
[輝きは一瞬で暗さにとって代わる。
停電――塔に負荷がかかったのか。
暗かったのは一瞬で、周りはすぐに元の明るさを取り戻したが]
『――く』
[塔への負荷が補佐AIの何らかの機能に影響を及ぼしたのか。
手元で勝手に〈FANFARE ECLATANT〉のフレームが展開し、ECLATANTが半ば輝きと化してフレーム内に引っこんでいった。
私はすぐに以前とのフレーム内部の変化に気付きフレームをまじまじと見つめた]
ショートカットコマンドのアイコンが一つ増えてる……
猫の顔のアイコン……これが拾ったプログラムを発動させるコマンドか。
……、……、……。
私、死んだのね。
[ 溜息のような、吐息。]
ふふ……、幻影と幻想に、呆気ない終わり。
彼らに死を与えられずにいたことの、なんて残念なこと。
私は、あれらの命を奪うために訪れたというのに、
うみだされたのは、複数のもの……。
[ 赤のゴーグルの先には、「塔」。
青白い顔に、嫣然と笑みを浮かべる。錯綜する情報への混乱。]
え?
[向こう側から来たのは、ant-lion――では、なかった。
しかし、ソレが敵である事に変わりはなく]
――――!
[高熱の波を肌で感知し、即座にdefence mechanismsを発動させる。
しかし一部をdeleteされたそのプログラムは不完全にしか作動せず――出現した無機質な壁には所々穴が空いていて、隙間から熱風が吹き出す]
熱ッ!!
[両腕で顔面を庇うようにしながら、身を低くする。
追撃はあるだろうか―― 一瞬間が空いたなら、より自身に有利な場――objectを求めて更に移動する]
…
[対象が熱衝撃波を防いだ、と把握して。
小さな声>>144を聞き取る。
推定される攻撃はこちらには向けられなかった]
――
トビー
[対象が離れていくことを補助AIの走査で把握する]
Babylonを揺らしたのは トビー?
[首を、傾げ。
開いた壁の穴を抜けて、Tobeyの後を追う]
―階段―
[階段の手摺に凭れ、何をするでもなく男はLittle DancerとCorneliusの会話を聞いていた。
このピースを宝と呼ぶのも、ECLATANTを蟲と呼びそれが否定されるのも。情報はどんなものでも収集していた。]
[刹那。世界が光り、暗闇に堕ち、元に戻る。それらが一瞬にして過ぎる、白色のストロボ。"塔"そのものの構成データを揺るがす眩い白。この場ごと破壊し尽くそうかという力に、僅かよろめく。]
ッ……派手な……
行ってみますか。
[Corneliusが階段を降りる。MARIAは自律行動として礼を伴って彼を見送ったが、その手を取ると男も階段を行く。
強い力に本能的に興味を惹かれる。MARIAの手を引くと、金属音を立てて段を駆けた。
もしもLittle Dancerも2Fに向かうなら、その背を追い。未だ向かわずなら、すれ違いざまに微笑みかける。]
― 1F ―
[ 1Fフロアの入り口を潜り抜ければ、そこには幾つかの争い。the noiseは、離れた場所にいるのか見当たらない。
中央中空ホログラムをちらりと見て、2Fへと階段を軽々と駆けてゆく。
2Fへ辿りつけば、iraが居る方向へ向かおうと]
―2F―
[降りた先は迷路だった。戦闘音は聞こえるが、壁に壁に阻まれて、目的の力の発生源は遠く思えた。]
[が、しかし。幾らか進むと、壁がいくつも欠損しているようだった。Corneliusが食い荒らしたとは知らず、だが、何らかの能力によるものだろうと欠損の大きな方大きな方へと歩む。
ついには壁そのものは抜け落ちて無く、一本の通路に。その先には、戦闘が見える――]
−1F−
ンがッ…
おー…
[不意に体全体を揺さぶられ、男の意識が覚醒する。寝起きは]
(ザザッ!!ザザザザッ!!)
なんだァ、今の。(ザザザ)面白ェ。面白ェじゃねェか。
ああ、どうやったんだろうな?どんなやつがやったんだろうな?
[最高だった。むくりと身を起こす]
ソイツ、ブッ壊したら…(ザザッ)やべ。たァまんねェなァオイ!!
[想像したその光景に恍惚としながら。酩酊した足取りの男は、揺れの原因を求め、塔を登る]
[フレームからコーネリアスに視線を移すと、彼は二階の方に視線を向けているようだった。
そして、私の横を通って階段を降りていく]
…………。
今ここで「はい分かりました」ということはできないよ。
お互い生き抜ければ、そういう機会もあるかもしれないがな。
[曖昧な回答。
果たして向こうには伝わったのか。
それ以上は何も言わず、ただ静かに、見送ることにした]
LittleDancer Caroleは、Chlonoise Vincentの微笑みには、無表情のみを返し、〈prism〉のフレームを展開した。
[必死に走る後ろから声が掛かる。
Babylonを揺らした――それは記憶が欠落したあの時間の事だろうか]
ち、……違うよ!
[後ろを振り返らぬまま否定し、目の前にあったドアノブを引っ張る。
――ハズレ、ベッドが一つ置かれただけのシンプルな寝室だった]
あの時、iraが――ant-lionが目の前に居たんだ。
それで、ぼくとant-lionの間に穴が開いてた……。
[説明しながらも、足は止めない。
手は見付けた部屋のドアを、片っ端から開けてゆく]
……ぼくには世界そのものを『消し飛ばす』力はないよ!
あの子にそれが出来たのは、多分あの子が――Babylonのキャラクターだから!
[だん!
目の前には扉が一つ――他に道はない。行き止まりだった。
半ば体当たりする形になって、足を止める]
[〈prism〉は全てを記録する。第一に、人の様子をリアルタイムに。
あくまで人の様子だけだから、壁の破壊や世界の消失までは、記録できない]
『ここからだと書庫にいる人が一番近いよ! どうする? Legionsのことを訊いてみる?
ていうかそもそもアタシ書庫に行きたかったんだけどね! Legionsに対抗する手がかりが分かるかもしれないからさー!』
[フレームに映し出されているのは現在地の近くの地図。
階段の近くに存在している書庫に、光点が一つ]
……それはないだろう。
[人がいないのをいいことに、抑えていた感情を、爆発させる]
あるとしたら、どこまで人をコケにしてるんだよ!
ゲームの皮をかぶった殺し合いの舞台を造りながら、ゲームのような要素を盛り込むなんて!
[敵の存在、誰が敵か分かるプログラムの存在、宝の存在。
それらが揃ったのだもう間違いない。この状況は何よりもゲームじみている。
Babylon's Characterではない者同士が仲間となって敵を倒せばそれこそ――]
[少年は逃げる。
ソレに捕食の意志がなければ、攻撃を仕掛けて来ない相手に追撃をかける意味はない。
両脇に浮かんだレーザーアイ――喰らったIrvineのアタックプログラムを模したもの――は消さぬまま]
アイラ?
[聞いた名前に、虚の瞳を細めた。
言葉を交わした少女のAI。まもるものを探すのだと、言っていた]
アイラが Babylon’s Character?
世界を揺らした?
[興味を超えた情動を原動に、ソレはTobeyの後を緩慢についていく。標準推定間合いの外。次々と扉を開き、少年は行き止まりへ]
トビー アイラはどこ?
−1F - 2F−
お?おー。
いよーゥ、いーいとこで会ったなァ。
いやぁ、悪ィ悪ィ。さっきブッ壊してやりゃあよかったか?
[ニヤニヤと、上機嫌に緩んだ顔で前を行く人影(その言葉は、AIに当てはまるのだろうか)に片手を上げる]
ちょっと見ねェ間に立派ンなっちまやァがって。
(ザザッ)
オレッチ様は実にまったく嬉しい限りだぜこのクソ犬。
んじゃァまァ、そういうわけで。
ブッ壊しタイムだぞ“失せもン”。
[男の体をノイズが包む。無造作に。ごく自然な速さで、その手が伸びた]
[行き止まりに至って足を止め、ゆっくりと振り返る。
Corneliusは攻撃体勢を解除してはいなかったが、少なくとも言葉を交わす意志はあるようだ]
そう……姿―avatar―の話をするならね。
人格プログラムは、別かもしれないけれど……。
[相手の問いに、やや曖昧ながらも頷く]
アイラは……さっきは、書庫に居た。
[自分が元居た場所だ。
辿ったルートを逆算すれば、辿り着けるはずだが]
……アイラの所に、行くの?
きみも、消されるかもしれないよ?
だが、敵に負けたら死ぬという点で、これはゲームじゃない。
『まだそう思ってるのー?』
[ECLATANTのいつも通りの暢気そうな声が。
なぜか私を責めているように聞こえて、私は駆け出した。彼女がいるフレームを置いていくように、2Fフロアへ。
だけどフレームは一定の距離が空くと手元に戻ってくる]
『アタシはもう認識を改めたよ。まだ「電脳世界で遊ぶ」って目的は果たせるって。
制限厳しくプレイしてるって思えばいいんだよっ! たとえば――』
ノーセーブ蘇生なし。
[諦めて立ち止まると、そこには壊れた壁。
今なら〈prism〉の第二機能で修復できるが、そんな気分ではない]
そういうことだろう。
ああ分かってるさ。あんたが分かってることはだいたい私だって分かってるよ。
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